半天狗

『鬼滅の刃』13・14巻/amazonより引用

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『鬼滅の刃』上弦の肆・半天狗を徹底考察~あまりに卑劣で不快なサイコパス

アニメ『鬼滅の刃』「刀鍛冶編」の放映をご覧になられましたか?

遊郭編」で上弦の鬼・陸(ろく)が登場し、今度はその上にいる伍(ご)と肆(し)が登場。

数多いる鬼の中でも、不快感指数トップクラスにいるのが、この「肆の半天狗」でしょう。

ずる賢いだけでなく、妙な生々しさがあり、人が本能的に嫌がる要素を持ち合わせているような……だからこそ興味深くもある。

半天狗とは一体なんなのか、考察してみましょう。

【TOP画像】コミック『鬼滅の刃』13巻(→amazon)14巻(→amazon

 


分裂し、感情を司る半天狗

遊郭編の敵であった陸(ろく)の兄妹とは異なり、刀鍛冶編の鬼は卑劣で、格好悪く、とにかく不快です。

しかも肆・半天狗は嫌なリアリティがあり、それがかえって見る者の心をざわつかせる。

半天狗には、上弦の証として瞳に浮かび上がる数字「肆」の文字が体にあります。目は半ば閉じられていて、瞳は白目の部分まで黒く染まっているからでしょう。

そしてそこから、感情を司る分身が出てきます。

半天狗が登場する少し前に、炭治郎とカナヲの場面がありました。

重傷を負い、眠り続ける炭治郎に花瓶に生けた花を持ってきたカナヲ。

彼が目を覚ますと、花瓶を落として驚きながら黙って彼の枕元にいました。花瓶は落ちたままで片付けもしない。

その様子を見にきた隠(世話係)の一人が、炭治郎が目覚めたのに誰にも告げず、花瓶を片付けないカナヲに呆れていました。

他の人たちが炭治郎の回復に気づき、泣き笑う場面が対照的に描かれます。

カナヲは感情表現が苦手なのです。

彼女だって炭治郎の回復に驚いたし、嬉しい。だからこそ手にしていた花瓶を落としてしまう。けれども、その感情をうまく出せません。

「刀鍛冶の里編」で活躍する霞柱・時透無一郎も、感情表現がうまくできません。

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不死川玄弥は素直な少年です。

しかし兄である風柱・不死川実弥ともども、当時の価値観やジェンダー観もあってうまく言語化や表現ができず、人間関係の構築につまづいています。

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炭治郎と恋柱・甘露寺蜜璃は、むしろ感情表現が赤裸々です。

そのためちょっとずれていると誤解もされますが、不器用な周囲を和ませることもできます。

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そんな彼らと半天狗を比べてみましょう。

半天狗は、感情を司る分身を生み出します。

空を自在に飛び回る「空喜」。

錫杖から電撃を放つ「積怒」。

三叉槍を操る「哀絶」。

天狗のように、八手の葉で作った団扇を手にし、トップをお起こす「可楽」。

さらにば喜怒哀楽鬼を結合させた「憎珀天」、「恨」の鬼をも繰り出します。

半天狗は鬼になった時点でかなり歳をとっていました。加齢により感情のコントロールを身につけ、老獪になっていた人物であったことがわかります。

 


奉行のお裁きで打首宣告された人間時代

老獪な半天狗は、人間時代からその感情を悪用していました。

彼は19世紀初頭に無惨に呼び出されていて、その前には鬼になっています。

人間時代は江戸時代中期以降を生きていたと推察でき、当時の悪事からして、あまりにせせこましいものでした。

盲目を装い、親切心につけこんだ犯罪を繰り返していたところ、当道座(江戸時代の盲人互助組織)の仲間から、悪事を告発されます。

その相手を殺して捕まると、奉行の前に引き立てられました。

奉行は厳しく追及します。

「貴様のした事は他の誰でもない貴様が責任を取れ」

「この二枚舌の大嘘付きめ」

「貴様は目が見えているだろう」

「以前この白洲の場へ来た按摩(あんま)は私が話し始めるまで塀の方を向いていたぞ」

奉行は盲目は嘘であると見抜いていたのです。

それでも見苦しく言い訳をする半天狗。

「儂が悪いのではない! この手が悪いのだ!」

「手が悪いと申すか! ならばその両腕を切り落とす!」

過去の悪事も裁いた奉行により、半天狗は投獄され、打首の前日、無惨に鬼にされたのでした。

鬼になった半天狗は奉行を襲います。

奉行は死を前にしても命乞いをすることもありません。

「貴様が何と言い逃れようと事実は変わらぬ 口封じしたところで無駄だ。その薄汚い命をもって罪を償う時が必ずくる」

そう言い残して死んだのですが、その峻烈な正義感から、この名もなき奉行は人気があります。「サイコロステーキ先輩」に勝るとも劣らないとか。

このように半天狗は、鬼の中でも同情の余地がなく、かつせせこましい悪事を働いています。

無惨もさしたる期待もせず、なんとなく鬼にしたのでしょう。

それが時折鬱陶しいと感じるものの、実力的には大当たり。ついに半天狗は上弦にまで上り詰めたのです。

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