こんばんは、武者震之助です。
今週からいよいよ「おんな城主」誕生、という宣伝を見かけますが、その前には辛い別れがあるわけです。
桶狭間で大量退場があったばかりなのに、これではしんどすぎるのではないかとちょっと気が重いです。
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『おんな城主 直虎 完全版 第壱集 [Blu-ray]』(→amazon)
幼き頃からの放浪生活を終え、井伊に戻ってきた直親の悲しき最期
軽装に僅かな供をつけて今川家の待つ駿府まで出向く井伊直親一行。彼らは掛川城手前で今川からの刺客の手にかかります。
井伊谷で次郎が水垢離をし無事を祈る中、直親と近臣たちは切り結ぶもついに力尽き、屍をさらすことになります。
「井伊はどちらだ……」
井伊谷の方角を探りながら、息絶える直親。
ほんの少し前まで、精悍な青年そのものだったのに、生命が体の中なら流れ出すように死相に変わってゆきます。三浦春馬さん、渾身の演技でした。
幼い頃から彷徨い、井伊に戻ることを夢見てきた直親。
死の直前に、懐かしい井伊谷の方角だけでも求めた、まさに彼の短い人生が凝縮されたような言葉でした。
井伊直政の父としてほんの少しだけ出てきた井伊直親の人生は、本作で甦りここに尽きました。
短く苦難に満ちた人生ですが、彼は一生懸命生き抜きました。
直親の死は哀しいものですが、死者の中に井伊直盛が命をかけて救った奥山孫一郎がいるのも、「直盛の犠牲は無駄死にだったかもしれない」と虚しさを増します。
こういうところが本作はえげつないと思うのです。
水垢離をする次郎の前に、幻か、魂なのか、直親が姿を見せます。
次郎はその姿を見て、倒れてしまうのでした。
井伊谷にこの悲報が届きます。何度も続く逆縁、切腹すら許されなかったことを嘆く直平。次郎は高熱を出し、寝込んでしまいます。
意識を失いながら、宙に手を伸ばす次郎。母の祐椿尼は「直親、手を離しなされ! とわを連れていくでない!」と叫びます。
この場面は見事だったと思います。何も見えない空間に、確かに直親の魂が漂っているような、そんな気がしました。それを止める母の強い思いも伝わって来ました。
直親の妻・しのが次郎の手を払い責め立てる
直親らの遺体を回収にいった龍潭寺の南渓、傑山宗俊らは無残な光景に思わず号泣。
もしも傑山たちが護衛をしていたら直親は死なずに済んだかもしれません。
しかし直親は、自らの潔白を証明するため敢えて軽装、護衛をつけていなかったのです。
そのことを思うとやるせない思いが強くなります。史実では直親は斬首されていますが、流石にそこまでは描きませんでした。
三日三晩死の淵をさまよっていた次郎は、やっと目を覚まします。
そこへ直親らが無言の帰宅です。
冷え切った直親の遺体を目にして呆然とする次郎ですが、死者を偲ぶことすら許されないのでした。直親の妻であるしのが泣きながら、次郎の手を叩きます。
「おまえがあの時(第10回、しのの父・奥山朝利殺害時)、小野但馬(政次)を成敗しておけばかようなことにはならなかったものを。全て何もかも、そなたのせいではないか!」

しのの妹・なつは姉が錯乱しているからと庇いますが、次郎はしのの言う通りだとつぶやくしかありません。
しのは憎まれ役になりそうではありますが、先週、直親が次郎としのに告げた言葉を思い出すと、しのの気持ちもわかります。
最期の最期まで、直親はただ、許嫁であった次郎=おとわだけを愛していたのです。
しのはそのことを感じていたのでしょう。やり場のない怒り、無念を次郎にぶつけるしかないのです。
しかし、しのは次郎がこれまでも自らを責めてきたことを知りません。
次郎は、言い返すこともできず、ふらふらと立ち去るしかないのでした。
次郎と直親、この二人がやっと隣同士に並ぶことができたのは、墓に入ってからだと思うと切ないものがあります。なんとも哀しい星の巡り合わせです。
氏真、左馬助の鼻の穴に菓子を突っ込み!
ただ一人直親を、井伊の井戸で弔い教を読む次郎。
歌うような美しい声も、やがて涙声になり、すすり泣きとなって途切れてしまいます。
悲嘆にくれる井伊谷に、今川が追い打ちを掛けてきます。
虎松(のちの井伊直政)を殺すようにと告げる命令を聞いた井伊直平。井伊直満死後の亀之丞(直親)のように、遠くへ逃す手配をしようとします。
夫に続いてまだ二歳の我が子すら失うのかと、取り乱すしの。そこへ新野左馬助が、自らの命を賭けて、命乞いをしてくると旅立ちます。
その心意気はよいにせよ、勝算はあるのでしょうか。
左馬助は誠意しかありません。今川氏真はそんなことを聞き届けるわけもありません。
激怒して菓子の皿を蹴り飛ばし、拾えと命じる氏真。化粧の下の顔色は悪く、ひきつり、平静を装いつつも彼も苦悩していることがわかります。
氏真は「お前の老いぼれた首なぞ価値がない。別のわしが欲しい首を取ってこい」とニヤリと笑い、左馬助の鼻の穴に菓子を突っ込みます。
氏真の欲しい首とは誰のものか、この時点で視聴者にはあかされません。
今川氏真という人物は父・義元の遺産を失った暗君とされ、本作でも序盤はそのように描かれていたと思います。
それが先週あたりから、ただの暗君ではないなかなか味があり、かつ恐ろしい人物となってきました。
短い出番ながらも、なまじ父親より器が小さいぶん厄介かもしれない、と思わせる演技が見事です。
この菓子を鼻の穴にねじこむ場面には、幼児性とともに、人を見下す傲慢さが凝縮されていました。ああ、こういう大人げない悪党っているよなあ、と思わせる尾上松也さんの演技が見事です。
今川義元の代から比べて、同家の対応はやり過ぎになっています。
同じ謀叛の疑いで処断するにせよ、井伊直満の時よりも直親の方が弁明の場も与えられないまま、不意打ちというえげつないやられ方をしています。
これでは国衆の反感は増すばかりで、どうにもスマートさに欠けるのです。
これも氏真の幼児性、焦りをふくんだゆえの処置なのでしょう。
三河の一向一揆では本多正信も敵方に……苦しむ松平元康
井伊谷に戻った左馬助は、氏真の要求を直平らに報告。
井伊を留守の間に株が下落している小野政次は、氏真の側にいます。
接待用の薄ら笑いを浮かべて側に侍る政次は、松平信康が寺社の反発を受け、一向一揆勢に苦戦していると報告。
元康を苦しめた一向一揆に、政次は一枚噛んでいました。
やはり彼は井伊家で最も頭が切れる男です。その彼ですら寿桂尼の掌で転がされていたのですが。
氏真は「悪い奴じゃのお、そなたは!」と上機嫌です。
元康は一人芝居であたふたしていますが、この阿部サダヲさんの演技がどこか去年の内野聖陽さんと重なって見えます。
ご本人は「参考にはさせていただいていますが、すぐにまねしたら駄目ですよね」と語っていますが(エンタメOVO)、徳川家康のキャラクター性が昨年と今年で近い位置にあるので、自然と似てくるのかもしれません。
このあたふたとして、今にも尻のあたりから異臭が漂ってきそうな狼狽ぶりは、昨年とそっくりです。
いやあ、見ていて楽しいんですね。
この三河一向一揆は、昨年さんざん真田昌幸に馬鹿にされていた「三方ヶ原の戦い」、昨年敵勢を押し通った「伊賀越え」と並ぶ「家康三大危機」に数えられます。
何が恐ろしいかというと、どんな苦難においても家康に忠誠を誓ってきた、律儀者の三河家臣団の多くが一向宗側についてしまったことです。
昨年、近藤正臣さんが演じていた本多正信すら敵側についたのです。
元康は碁盤の前であわてふためていますが、いわば味方の碁石が勝手に敵の色に変色するような状況です。
この短い場面から、元康の苦難をお察しください。
酒盛りに集う井伊の男衆はすっかり人も減り……
井伊谷ではすっかり心が折れた次郎が、虚しい日々を送っていました。
ライフワークであった竜宮小僧としての手伝いすら辞めてしまった次郎。私が関わると皆不幸になるんだよ、とやさぐれてしまいます。
そんな次郎に、南渓が酒を持たせ、戦に出る直平の元に持って行けと告げます。直平には長年の願いがあるとか。
直平のために屋敷に向かった次郎は、酒盛りを目にします。
しかし参加者は虎松を膝に乗せた直平、新野左馬助、中野直由だけ。井伊谷はここまで人が減ってしまったのか、と愕然とします。
思えば井伊家にはどうしようもない家臣もたくさんいました。いたところで頼りない人ばかりでした。
しかしそんな人でも、欠けてしまうとこんなに虚しいものなのでしょうか。
がらんとした空間で、無理矢理声をあげてはしゃぐ直平らの姿に虚しさがこみあげてきます。
このやっと残った数少ない武将三名が、出陣してしまうのです。
氏真が望んだ首とは、松平元康のものでした。それを取るために、井伊谷から男たちを駆り出すというのです。
かつてこんなに恐ろしい氏真がいたでしょうか。
男たちは「守るために死んでゆく男は果報者ですよ」とさわやかに笑っていますが、こんな悲惨な酒盛りそうそうありません。
今川家は薪を火にくべるように、井伊谷の男たちの命を燃やしてゆきます。
直平の願いとは、出家してしまった次郎と酒を酌み交わすことでした。
ずっと「次郎が男であればと思っていたけれども、女でよかった」と笑う直平。女であれば逆縁にはなりそうもないと笑っています。
思えばこの人の人生は逆縁だらけでした。直平がこうも明るいのは、あの世で愛おしく先立っていった子や孫に会えると思っているかもしれません。
この宴で酒の味を覚えてしまった次郎。上戸だったらしく、井戸の脇で飲んだくれてしまいます。
「井伊家当主の一人っ子なのに男でない、誰かを守るために戦に出るわけでもない、さりとて愛しき我が子もいない。我って一体何。無用の長物……」
かなり身も蓋もない嘆きを南渓相手につぶやき、もたれかかるとそのまま寝入ってしまいます。
こんな嘆きは実の親にも、いや親には絶対に言えません。かつて次郎が結婚を断るために直親に語った「かびた饅頭」という言葉を思い出します(第6回)。
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『おんな城主 直虎』感想レビュー第6回「初恋の別れ道」 甘いロマンチックの中に一匙の腹黒さ
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黒ずくめのダーク政次が井伊谷に乗り込んできた
この次の場面で、井伊直平、新井左馬助、中野直由が出陣していき、そのまま高速三連続ナレ死を遂げます。
それと入れ替わるように、黒ずくめの一団が馬にまたがり、井伊谷に乗り込んできます。
『指輪物語』の「指輪の幽鬼」や、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』のファーストオーダーを思い出しました。
この先頭に立つのが、闇を身にまとった小野政次バージョン2.0です。
亡父・小野政直と同じ髪型、口調まで吹越満さんそっくりになってしまった政次。
さらに政次は、のちに「井伊谷三人衆」と呼ばれる鈴木重時(温厚そう)、近藤康用(昨年の加藤清正以来のもみあげ天然パーマ、熱血体育会系)、菅沼忠久(髭、この中で最も知将ぽいクール系)の三名を連れて来ます。
井伊谷から減ってしまった人材を、今川の息がかかった人物で埋めるわけです。
さらに政次は、今川から虎松の後見を任されたと言います。弱り目に祟り目、転んだ相手を蹴り飛ばすかのような今川の所業。激震が井伊谷に走ります。
しかしここで考えたいのが、政次の本心です。
ひょっとしたら虎松の後見となることで、実は庇うつもりではないのだろうか、敢えて悪役を演じているのではないかと思わされます。暗い瞳に隠された、政次の本心はわかりません。
その頃、次郎はアルコール依存症気味になり、井戸の横で飲んだくれていました。そこへ小野政次がやって来ます。
コンタクトレンズでもつけているのか、照明のせいなのか、それとも純粋な演技なのか。先週まで時に光り輝いていた政次の瞳から光が消えています。
井戸の横で次郎を見て一瞬だけ目に光が戻ったかに見えた政次ですが、ここで次郎が政次を突き放します。

「皆死んでしまったのに、政次だけ助かったのだな。何故じゃ、どうやって助かった? 裏切らざるを得なかったのか、裏切るつもりだったのか?」
容赦なく政次の心を抉り踏みにじる次郎。もし彼の心に一筋の光のように良心があったとしても消え失せたことでしょう。
このとき視聴者は、次郎にこう叫びたいと思ったことでしょう。
違うんだ、政次は井伊を救うため罠にからめとられる道を選んだのだと。
直親が父・直満と同じ道を歩んだように、政次も父・政直を同じ道を選んだように思えますが、事情はそんなに単純ではありません。
政直の生きていた頃、今川は義元の時代であり安泰でした。今川に取り入ることで出世も望めました。
ところが今は違います。
駿府にいたからこそ、政次には今の今川の危うさ、氏真のもろさを知っているはずです。今の今川につくということは、巻き込まれる可能性があるのです。
政次だって辛いんだよ。なぜわかってやれないんだ次郎よ、そう私は言いたいのですが、届くはずもありません。
「恨むなら直親を恨め。下手をうったのはあいつだ。何度も同じことを繰り返し、井伊は終わるべくして終わったのだ」
政次はかすかな良心すら鋭く冷たい刃に変えて、次郎の心を抉る言葉を吐きます。
これも次郎を攻撃するとみせかけて「お前だけのせいで井伊谷が災厄に見舞われたはずがない。直親、そしてそんな直親を止められなかった俺のせいでもあるんだよ」という意味があるかもしれません。
政次の言動は常にダブルミーニングに思えてくるのですが、それもこれまでの脚本と演技の積み重ねゆえであると思います。
北斗神拳究極奥義「無想転生」パターン、発動
佑椿尼は南渓和尚を後見にするしかないと頼みこみますが、南渓は隠し球として次郎を持ち出します。
南渓は次郎の大胆な発想と行動に賭けます。
やさぐれ次郎は暴力路線に走り、昊天宗建の槍を持ち出します。
酒に溺れて、今度は暴力沙汰を辞さないヒロイン。斬新です。あわてて止めようとする昊天ですが、南渓と傑山は「小野の屋敷に殴り込みをかけるなら一緒に行くぜ!」と暴力僧侶ぶりを発揮。
しかし次郎は流石に無理と悟ったのか、地面に槍を叩きつけヘシ折ります。
「私の槍……」
唖然とする昊天。はい、ココが今週最大の笑いどころです。ありがとう、昊天さん、癒やしと笑いをありがとう!
「どうしろというのか! 私のせいで皆死んでしまった! 我は災厄をもたらすだけじゃ! 我には災厄をもたらす力だけがある! ならばこれ意外に、我に何ができるというのじゃ!」
昊天の槍に八つ当たりをして泣き崩れる次郎。

そこで一人の小僧が「竜宮小僧ではありませんでしたか」とおずおずと言います。
南渓は、己を責めたとて死んだ者は帰らない、だが生きていれば死んだ者をその中に生かすことができると諭します。
こういう死者の思いを背負って戦うパターンは、古い少年漫画だと『北斗の拳』の哀しみを背負った者のみが習得できる北斗神拳究極奥義「無想転生」パターンですね。
『真田丸』の最終回でも、真田幸村が先に死んでいった者や志を全うできなかったものの思いを背負い、戦場を疾駆していました。
今年もまた、志半ばに散ったものたちの思いを背負い、主人公は立ち上がります。
頭巾を外し、佑椿尼から深紅の裲襠を着せかけられるヒロイン。
直親と夫婦約束のときに作っていたという、辻が花の裲襠です。冬に雪に耐えて咲く椿の花弁のような、あるいは血のような深い紅。墨染めの衣を脱ぎ捨て、彼女は身にまといます。
直盛も直親も、彼女のこの姿をどれだけ見たかったことでしょう。
直親は最期に旅立つ前、戻ったら一緒になろうと言っていた、それはこういうかたちであったかもしれない、と彼女はつぶやきます。
「我が井伊直虎である」
水垢離のあと高熱を出して手を宙に伸ばしていたとき、佑椿尼は見えない直親の魂に娘を連れて行こうとするなと語りかけました。
今、それとは違うかたちで直親の魂がそこにある気がします。
彼は直親を死の淵にひきずりこむのではなく、背後に立ちともに歩もうとしています。多くの死で闇に覆われかけた井伊谷に光が差し込んできます。
彼女も彼も一人ではありません。井伊谷にとって希望の光であった直親は、かたちを変えてまたこの場に戻り、愛する人とともに谷を照らし出します。
代替わりした家臣たちの席の前で、南渓がこう告げます。
次期当主は「井伊直虎」であると。
家臣たちも知らない「直虎」の名。隠し子でもいたのかと皆が首をひねる中、政次だけが「まさか」とつぶやきます。鶴と呼ばれていたころから、政次は彼女の可能性と力を知っているのです。
そしてここへ、直虎がやって来ます。
「我が井伊直虎である。これより井伊は、我が治めるところとなる」
志半ばで斃れた魂を背負い、井伊直虎誕生! 直虎と政次は、目線で火花を散らします。主君として政次をみおろす直虎、血走った目で見返す政次。井伊谷は新たな戦いへと向かってゆきます。
特別枠スーパーヴィラン賞:冥暗の波動に墜ちた小野政次(闇)
血迷ってソシャゲーのキャラクター名のような形容をつけてしまいましたが、完全に彼は墜ちました。
目に光がない。先週までの小動物のような善良さ、ちょっと屈折した愛嬌は全て消え失せ、つや消しの黒で塗りつぶしたような黒さです。
それでも全ての言動に「本当は井伊家をかばいたいのでは」と思わせるところもまた見事です。
高橋一生さんはいつか明智光秀を演じて欲しいと思います。
あの夢も希望も愛も何もかも捨てた目で、「敵は本能寺にあり」と口走っていただきたい!
MVP:井伊直虎
竜宮小僧として健気に頑張っていた姿もよかったとは思いますが、何か物足りないものがありました。
それがやっと今週化けました。この変貌は、大坂の陣前に覚醒した昨年の真田幸村と重なるものがあります。
ありとあらゆる思いを背負い、立ち上がった凛々しさは言うまでもなく素晴らしいのですが、私がぐっときたのは優等生ぶりを捨てた去った斬新なヒロインぶりですね。
ヒロイン、しかも出家の身にあるまじき酔態、暴力沙汰に及ぼうとした挙げ句八つ当たりで昊天の槍をヘシ折るやさぐれぶり、そういう駄目な部分にむしろ魅力を感じました。
柴咲コウさんは目力が強烈なのに声は高めでちょっと裏返り気味なのですが、その欠点にもなりかねないところが「強気なようで実は駄目なヒロイン」という、キャラクターに合ってきたような気がします。
来週も城主の役目に早くも嫌気がさしてしまうようで、こういう優等生ではなく、欠点のある主人公というのもいいですね。
凛々しさ、強さ、健気さ、そして放っておけない欠点。
死に覆われた暗い展開の中、ヒロイン自身がキラキラと輝きだし、物語を引っ張ります。
総評
春の終わり、年度末というのは大河でもターニングポイントですが、今年のこのカーブの周り方はかなり乱暴なコースラインを突っ走ったと思います。
スピードをまったく落とさず、片側のタイヤをコースアウトさせながら、荒々しくも豪快なハンドルさばきで突っ走ってゆきました。
昨年の『真田丸』が複雑な史実を扱いながら綺麗なコースラインを描いていたのとは違い、今年は荒削りながら引きずり込む運転で、私たちを次のコーナーへと連れて行こうとしています。
井伊直親の非業の死、遺体の帰還、葬式、次郎の嘆きが次から次へと描かれる前半。
さらに虎松を守ろうとして新野左馬助が失敗した挙げ句、今川からさらなる出馬を要請される展開。
虎松を抱いた井伊直平、新野左馬助、中野直由が酒をくみかわしている場面で「こんなに人がいないのか」と唖然としていると、そこから容赦なくナレ死でこの三人が散るという「超高速井伊家関係者死亡」展開。
さらに入れ替わるように、小野政次一行が戻ってくる不吉極まりない場面。
今川が井伊家乗っ取りをすすめているのに、肝心の次郎は飲んだくれている始末。
そこから次郎な暗黒化した幼なじみの政次に容赦ない言葉でドン底まで突き落とされ、立ち上がり、「我が城主じゃ!」と宣言するこのスピード感。
この情報量、この容赦のなさ、『真田丸』終盤の九度山編を一回に凝縮したような濃さでした。
直親の魂が次郎の周囲を飛んでいるような、そう錯覚させる脚本も独特なんですね。
竜宮小僧伝説の取り入れた方といい、人と人ではない何かの境が曖昧な、今年ならではの個性を感じさせます。
オカルト風味ではなくて、人ではないものが生きている人々をそっと包んで守る、あたたかい毛布のような居心地の良さがあります。
容赦がないようで、どこかあたたかい。死と闇にまみれているようで、光があふれだす。荒い運転、ジェットコースター、見る側をゆさぶり続けるような魅力が本作にはあります。
直親の死という哀しみから始まったのに、直虎がたちあがるラストシーンは希望と光にあふれています。
今年のはじめ、本作を珍味「生ハムメロンのようだ」(第1回)と評しました。
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そして何度も味わった結果、風変わりだけど本作は美味であると確信しました。
一言では表現できない風変わりで複雑な味わいが、本作を噛みしめると広がります。
メルヘン調の序盤に脱落した方は、是非お戻りください。損はさせませんよ。
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絵:霜月けい
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【参考】
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』公式サイト(→link)


















