そして、過去の愚かさや失敗を学ぶこともまた、同じぐらい楽しみ、かつ、ためになるものであります。
そんな失敗の中でも特に楽しめるのが、イギリスが開発したトンデモ兵器――。
「突然何言ってんの?」と思われるかもしれませんが、世界中で作られたきた数あるトンデモ兵器の中でもイギリスは別格ともっぱらの評判なのであります。
では、英国の何がどう違うのか?
『図説 世界の「最悪」兵器大全』(→amazon)を参考に、数例をあげてみました。
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シゼール・バーウィック装甲車 1915年
イギリス空軍が考え出した、110馬力の航空機エンジンでプロペラを回して走る、まさに奇想が盛り込まれた車両です。
誤解なきよう申し上げておきますが、プロメラで空を飛ぶのではなく、前へ進もうと言うのです。
問題は、ラジエーター部と車両後部につけられたエンジン部が剥き出しだったこと。
ここを狙われたらそれで終わりという点でした。
なぜ開発中に気づかなかった!?
また、搭載している.303口径機関銃はごく狭い前方しか狙えません。ええと……開発者さんの視野も狭すぎたような……。
K級潜水艦 1916年
蒸気機関で動く潜水艦です。当時世界最大の潜水艦でした。
ディーゼル式より素早いスピードが魅力のはずでしたが、案の定問題が続出します。
蒸気式であるため艦内は蒸し風呂のように暑く地獄のよう。潜水する際には煙突をしまいこみ、多数の開口部を閉めなければなりません。
しかもこのとき激しく揺れるものだから、ほとんど制御不能。ジョージ6世が乗っていたK26は船首を海底につっこみ、あやうく沈むところでした。悪い方向で歴史を変えそうになったわけですね。
こんな潜水艦ですから、当然のことながら事故も多くなり、竣工した17隻のうち5隻が事故で失われました。
1918年にはメイ島の戦いと呼ばれる事故が発生し、制御不能となったK級潜水艦同士がぶつかりあい、2隻が沈没。
結局、戦うことなくお払い箱となったのです。
銃剣付き拳銃(ハンドガンバヨネット)1915年
第一次大戦では塹壕での戦いが熾烈を極めました。
塹壕内の接近戦ではライフルは役には立たず、ナイフや拳銃のほうがはるかに使い勝手において勝りました。
そこで考え出されたのがリボルバーに銃剣をつけた武器です。
なかなかよいアイデアのように思えますが、銃剣をつけたせいでリボルバーのバランスが崩れました。
しかも銃剣は使いにくい。良いところどりのつもりが、両方とも使えなくなった失敗作となったのでした。
まぁ、結局予備のナイフや弾を持ち歩く方がいいんですよね。
気持ちはわかります。私もラジオ付き懐中電灯を買ったことありますし。ああいうのって結局使わなくなるんですよね。
ただしこの手の商品は現在でも入手できるようです。ユーザーレビューはなかなか好評のようですが、果たして……。
No.74粘着手榴弾 1940年
この手榴弾は敵の戦車に貼り付けるために、粘着性のある樹脂をくっつけたものです。
まあ、字面を見れば発想はわかります。手榴弾がくっついてとれなかったら、相当厄介ですよね。普通は思いついただけで開発しないんではないかと思いますが、何故か作られました。
ガラスの球体に入った中身はニトログリセリン。これはもう予想がつくことかと思いますが。この爆弾は敵よりも使用者に対して遙かにくっつきやすいという重大な欠点がありました。
そして投擲前提であるにも関わらず、投げても敵にはうまくくっつきません。ガラスに劇物のニトログリセリンを入れている時点で嫌な予感がしますが、揺れたり落としたりすると爆発します。
持ち歩くだけで命を賭ける覚悟が必要です。絶対持ち歩きたくねえ!!
敵より味方を効率的に殺傷する兵器というわけで、当然失敗作でした。しかし、武器が何もないよりはマシとして、1940年に組織されたドイツ軍の侵攻に備えて結成された市民軍・祖国防衛部隊に支給されました。
祖国防衛部隊の支給武器には、この他にも、槍の柄に銃剣を取り付けたインベーション・パイク(イギリス版竹槍といったほうがよいかも)、最大射程200メートルとされ様々な弾薬を投擲するノースオーバー・プロジェクター等があります。
どれもこれも正直なところ、トンデモ兵器と言わざるを得ないものばかりです。
こうしたトンデモ兵器を見ていると、歴史的にイギリスがなんとしても敵軍の上陸阻止を目指した理由がわかる気がします。上陸されたら、こんな武器で立ち向かうはめになるわけですから。
お次は個人的には最も噴いてしまった……TOP画像にもあるパンジャンドラムに注目です。
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