PROMISE 無極/amazonより

歴史ドラマ映画レビュー

映画『PROMISE 無極』は大山鳴動して饅頭一個て!? でも憎めないトンデモ映画

私はトンデモ歴史モノが大好きです。

しかし、残念なことに数はあまり多くありませんので、敢えて範囲を広げて似たようなものを捜索するのもひとつの手だと思っています。

そんな中でも、絶対に注目したいのが中国の巨匠と呼ばれる映画監督です。

かつて小市民の悲哀を悲喜劇的に、しっとりと撮影していた監督。

あるいは黒社会映画を撮影していた監督。

そんな彼らが、有り余る巨額の制作費とイマジネーションと中国人民解放軍のエキストラを大量投入して作る満漢全席のような超大作!

こうした映画はトンデモ映画として素晴らしい出来を見せることがしばしばあるからです。

歴史娯楽大作として見応え十分な『レッドクリフ』。

ゲテモノのようで実は真面目な『グレートウォール』。

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様々なトンデモ傑作がある中で、今回その頂点に位置する作品として紹介したいのが、本作です。

これぞトンデモ映画の中の王者――それが『PROMISE 無極』(amazon)です。

基本DATAinfo
タイトル『PROMISE 無極』
原題無極
制作年2005
制作国中国、アメリカ、韓国
舞台古代中国をモチーフとした歴史的なファンタジー(叙事詩的映画)
時代三千年前の未来
主な出演者セシリア・チャン、ニコラス・ツェー、チャン・ドンゴン、真田広之、リウ・イェ
史実再現度叙事詩的映画なのでなし
特徴究極の映像美により繰り広げられる「饅頭こわい」

 

あらすじ 一個の饅頭がもたらした悲劇

昔むかし、ある国でのこと。

戦乱に巻き込まれた幼い少女がいました。

少女は戦場の屍から装備や食料を奪い、生き延びようとしています。

屍の手から饅頭を奪い、また靴を奪おうとした時、少女は木に仕掛けてあった罠に引っかかってしまうのでした。

するとそこへ、高貴な少年が現れて少女をあざわらいました。

饅頭を取り上げて、高慢そうに彼はこう言います。

「俺の家来になるなら、助けてやる」

少女は家来になると言いました。

少年に助けられた少女は、少年の被っている美しい兜を見せて欲しいと頼みました。得意満面の少年は、兜を脱いで渡します。

すると少女は兜で少年を殴りつけ、饅頭を奪いそのまま逃げ去るのでした。

「信じていたのに……俺の饅頭」

悔しがる少年。

少女は走りながら湖に饅頭を落としてしまいました。

空腹のあまり途方に暮れる少女の前に、美しい女神・満神が現れます。

「お前には 美貌、寵愛、富、栄誉を与えましょう。しかし、真実の愛だけは手に入りません。それでもよいですか?」

少女はうなずきました。

時は流れて二十年後。

饅頭を落とし、女神の籠を得た少女「傾城」。

饅頭を奪われたせいで何もかも信じられなくなった男「無歓」。

彼らの運命が大きく動き出す。

たった一個の饅頭が、あんなことになるなんて……。

 

壮大な映像スケールから繰り出される、ショボいオチ

さて、紹介すると言っておいて何なのですが。どこから始めたらよいのかわからなくなってきました。

実のところ私はこの映画が好きではあるのですが、理解に苦しんでいるからです。

プロットはそう……監督が見た「夢」をそのまんま映像化したようで、全然難解ではないにも関わらず、「まったくわからん」とさじを投げたくなるようなものなのです。

ただ発端とオチははっきりしていて、要するに饅頭が悪い。

いや、真面目に分析しますと「真実の愛が得られないのであれば、美貌、寵愛、富、栄誉を得たところで虚し」という寓話ですね。

そのことを語るために、二時間が費やされるのです。

それを言いたいがために、これだけのダイナミックな映像を見せられるのかと思うと、これは凄いことではないかと思わされます。

壮大な映像スケールから繰り出される、ショボいオチ。

美しい場面から展開される、どうしようもない痴話喧嘩。

大山鳴動して鼠一匹という言葉を、これほどまでに再現した作品はそうはないことでしょう。

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