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【バーフバリ 王の凱旋】
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勧善懲悪の世界観
本作は、力強い勧善懲悪の世界観に貫かれています。
プロットは、シェイクスピアの『ハムレット』と似ているとされておりまして。
元々は北欧に伝わるアムレート伝説を物語にしたものです。
シェイクスピアというのは実はアレンジの達人で、各地に伝わる古典的な伝説を元に、多くの戯曲を残しております。
その特徴は、古典が持つ完全懲悪の単純さを変更して、もっと複雑で暗く、苦悩に満ちたものに改変する点。
本作は、そういうシェイクスピア的な、
「古典や伝説のスカッとした勧善懲悪は、まあすっきりするけど単純だわな、そうはうまくいかない挫折、失敗、悪が勝利するような局面があるからこそ、複雑さってもんが出せるんじゃねえの」
という考えを、全力で全否定している。
時計の針を巻き戻しよった!
だからこそ爽快なのです。
ハムレット王子は復讐の過程で暗く悩み苦しみますよ。
でも、バーフバリは悩まないッ!
そこが爽快感なんですね。
脳が神話の世界まで先祖帰りする
本作の感想は「見ると体調がよくなる」といったレベルのあやしげなものもあります。
しかし、これは真実だと思います。
あまりに原始的で、人間の根源的な願望に直結する展開だけに、かつて私たちの先祖が神事に参加したあとに味わったような興奮を覚えるのではないでしょうか。
何度も書いてきたように、本作のプロットはむしろ原始的で、斬新ではない。
ただ、その神話そのものを、ありとあらゆる技術を駆使して再現する――そこに意味があると思うのです。
ともかく、とんでもない映像が出てきます。
これは技術としては新しく、実写化するというのは大変なことではあるのです。
肉体美を極めた俳優は、筋力をともかく増強したそうです。
その結果が、あの神像がそのまま動いているかのような、究極の美と力強さを兼ね備えた動きとなっています。
豪華な衣装も、想像力の限界に挑んだかのような画面も、力強い歌声も!
すべては英雄の物語を作り上げるため、最高のクオリティで生み出されているのです。
きわめて原始的、古典的な発想、見るだけではなく古代インドを体験できる。
そんな体験型、陶酔できる凄みに満ちている、と申しましょうか。
おもしろい映画は、たくさんある。
すてきな映画も、たくさんある。
しかし、見終えたあと不思議な葉っぱを吸い込んで、焚き火の周囲を叫びながら回ったような、心地よい陶酔感と疲労感を味わえる作品は、本作ぐらいでしょう。
映画を超えた神事、そのくらいのインパクトがあるのが本作なのです。
神や英雄の偉業を言葉に記すために、いにしえの詩人は神の加護を願い、智恵を振り絞ってきました。
正直に申しまして、私の拙い筆では到底吟遊詩人のようにこの物語の魅力を書き記すことはできません。
目にした者しか味わえない。
本作の偉大さは理解できないのです。
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著:武者震之助
【参考】
『バーフバリ 王の凱旋』(→amazon)