玉木宏さんが演じる鶴見中尉や、矢本悠馬さん演じる白石由竹など。
よくもこれだけ絶妙な配役を揃えられたもんだな!として話題になって実写版映画『ゴールデンカムイ』。
その続編はドラマで放送されることが決まっており、鯉登少尉(鯉登音之進)のキャスティングが発表されると、エックスでもトレンド入りの話題となりました。
なぜなら、あの濃ゆ~いキャラを演じるのが中川大志さんだったからです。
若手イケメン俳優として大河ドラマでも大活躍。
人気実力共にトップにいる中川さんが演じる鯉登少尉とは一体どんなキャラで、どんな歴史的背景が考えられるのか?
物語が終わった後、どういう生涯を過ごしていくのだろうか?
12月23日は鯉登音之進の誕生日。
本記事で、その個性を深掘り考察してみましょう。
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漫画『ゴールデンカムイ』16巻(→amazon)29巻(→amazon)
“ボンボン少尉”というお約束
『ゴールデンカムイ』は、作者の野田サトル氏が好む海外の小説が映画へオマージュが随所にみられます。
鯉登音之進の場合、軍隊ものや貴族もののお約束を踏まえている。
ファンブックによれば、鯉登と月島の関係はご令嬢とお付きの女性になるとのこと。

月島基『ゴールデンカムイ30巻』(→amazon)
イギリス貴族の場合、貴族のボンボンには従者がつきます。日本でも有名なのはウッドハウスのジーヴスシリーズでしょう。
どこか抜けたバーティ・ウースターと、切れ者の「従者」ジーヴスのコンビを描いたシリーズ作品です。
どういうわけかこのジーヴスを「執事」と翻訳したためか、日本のフィクションでは執事と従者の混同が見られます。
執事:家政を取り仕切る男性
従者:貴人の側について世話を見る男性
従者は基本的に同性にのみつきます。
お嬢様と執事というコンビはよく見かけますが、あれは間違いだと認識してください。お嬢さまには侍女がつきます。
男性の貴人に、便利な従者がつく。女性の貴人の場合、侍女となります。
日本でも大人気のドラマ『ダウントン・アビー』で説明するとこうです。
お嬢様と侍女のコンビは、メアリーとアンナ、グランサム伯爵夫人のオブライエンのコンビとなります。
男性同士の場合、グランサム伯爵付の従者として、ベイツが該当します。
主従はボーア戦争において、士官と従卒という組み合わせでした。このコンビは軍隊における士官と従卒や副官が、復員後もペアになった例です。
鯉登と月島はこうした軍隊制度においてペアを組むことになった関係といえます。
西洋の軍隊制度は貴族制度と関係性がありますので、彼らはお嬢様と女中、ボンボンと従者のようなコンビであることは確かです。
なお『ゴールデンカムイ』には財閥令嬢・金子花枝子が登場します。ふてぶてしく世慣れした女中が彼女の側にいます。あれもそうしたコンビです。
軍隊内では、キラキラした士官につく従者は往々にして、相手に憧れることもある。
あるいは冷淡に「仕事だから面倒を見る」と割り切る場合も。
鯉登と月島は割り切りタイプです。
月島がいちいち感激するタイプであれば、鯉登はおそらく、やりにくかったことでしょう。
薩摩隼人であり、英国紳士になりかけている
鯉登音之進は、華族の母を持つ勇作とは異なり、両親ともに薩摩出身です。
ジゲン流を得意としています。
幼い頃、兄弟そろって父からジゲン流の稽古を受けている場面があります。先祖から新選組の逸話を聞いていたようにも思えます。
彼の祖父あたりは土方と対峙していてもおかしくはありません。
明治維新によりのしあがった、生粋の薩摩隼人なのでしょう。
彼は世代的に英国紳士らしさも入り込んでいます。明治の薩摩隼人は、いちはやくイギリス流を取り入れた一面もありました。
薩英戦争以来距離が近く、留学生も多く、薩摩の独擅場とささやかれた海軍はイギリスを規範としています。

薩英戦争で鹿児島に押し寄せるイギリスの軍艦/wikipediaより引用
鯉登平二は、積極的にイギリス式を生活習慣に取り入れていたことが見て取れます。
他の人物は、幼少期に和服を身につけています。着流しの杉元や月島少年。貧しいながらも袴を身につける宇佐美少年。いずれにせよ和装です。
それが鯉登は洋服を身につけている。函館の家も洋館です。
陸軍士官学校では外国語の授業があります。鯉登はロシア語を選択していなかったと思われます。
彼がロシア語を習得しているとプロットの邪魔になるという事情もありますが、海軍人を目指していたために英語を選択した可能性が高いのです。
鯉登は自転車や三輪車を乗りこなせる。紅茶を飲む場面では、ティーカップの持ち手に指を通していない。
スチェンカの場面では、ボクシングを習っていることがみてとれる。
薩摩隼人でありながら英国紳士でもあるという、実に明治らしい設定です。
七三分けという舐め腐った髪型
鯉登音之進は髪を伸ばし、七三分けにしています。
兵卒は丸刈りでなくてはならないものの、陸軍将校は長髪が認められています。そのため、第七師団を裏切った尾形はやっとオールバックに伸ばしているのです。

『ゴールデンカムイ』8巻(→amazon)
とはいえ、鶴見はじめだいたいがオールバックにしています。
30歳も過ぎて貫禄も出てきて、そこでやっとオールバックにするくらいが、空気の読める士官です。
それが鯉登は士官学校出たてで、あの長い七三分けですよ!
現代からするとややクラシックな髪型ですが、当時からするとオシャレど真ん中。それどころか大変チャラついた生意気ヘアーです。
令和ならば高校生のツーブロックあたりですかね。
「あいつは一体何様のつもりだ!」
そう周囲がイラついていてもおかしくない。目をつけられる髪型です。
花沢勇作の髪型は軍帽をかぶっているため、あまりよくわかりません。しかし、短く刈っている可能性の方が高いでしょう。彼の兄である鯉登平之丞は短髪でした。
そもそも鯉登は軍帽をかぶる場面すら少ない。いろいろと舐めた態度なんですね。
ああいうチャラついた少尉が、生真面目な花沢勇作のあとにやってきたことを考えてください。
「なんだべ、あのチャラついた少尉は……」
「はんかくさいんでねえが」(バカじゃないのかな)
こうなってもおかしくありません。
制服もきっとムカつくオシャレを極めている
鶴見ら他の士官が黒い肋骨服である中、鯉登音之進はカーキ色のボタン式制服を着ています。当時の最新鋭です。
軍服は色等の規定を遵守していれば、生地や縫製はある程度自由がききます。
つまり、金に余裕があればおしゃれにできる。そうでないなら、安っぽくなる。
軍服というのはなかなか残酷なものです。
ボンボンである鯉登の場合、あえて舶来ものの高級生地を用いていたり、あえてエルメスのブーツであっても不思議はありません。
そういうボンボンっぷりを見ているだけで、周囲はイラついていても不思議はないのです。
連隊旗手を意識しているためオシャレという設定ですが、周囲からすれば「それでもやりすぎでなんかイラつく」となっていてもおかしくはありません。
愛され、苦労をかけるバカ息子なのか?
鯉登父子は『ゴールデンカムイ』ではむしろ例外的な父子関係といえます。
月島や尾形のようにむしろ冷たい父の記憶を持つものもいる。ウイルクだって杉元が言うように、娘のアシㇼパを道具扱いしているともいえる。
キロランケだって北海道にいる妻子よりも、ソフィアとウイルクが大事にすら思えます。
しかし鯉登平二の場合、むしろ我が子を思いやっています。
軍人らしく愛情を前面には出せないし、突き放そうとするようで、結局は我が子のためならば何でもするという愛情深い父でした。
しかし、息子の鯉登音之進はどうか?
少年時代の彼はむしろ父からの愛が足りないと思っていました。
これは彼のコミュニケーション能力不足でしょう。音之進自身が悩んでいて、兄の代わりに死ねばよかったとすら思っているほど。何か問題があるという意識はあるようです。
平二も我が子との関係に何か悩みがあった。たった一人残された息子はどこかがおかしい。教育を間違えてしまったのかと、悩んでいてもおかしくはありません。
鶴見はそういう父子につけこんで洗脳したともいえる。

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やはり鶴見は、なかなか悪辣です。
そんな鶴見に対し、全面的に依存しているようでそうでないのが鯉登の面倒なところでもある。鶴見に叱られ、遠ざけられるのではないかとマイナス方面の妄想をこじらせています。
キルレシオが作中随一
『ゴールデンカムイ』のキャラクターは、当時の日本人離れした筋肉が特徴です。
腕力も当然ながら高い。日露戦争体験者も多く、戦うとなると皆高い戦闘力を発揮します。
そうしたキャラクターの中で、鯉登音之進には際立った特徴があります。
キルレシオ(殺害率)が高いのです。
腕力だけならば体重が重い谷垣の方がはるかに強いとは思えます。しかし、殴り合いならばともかく、致命傷を与えるとなると違ってくる。
初登場時、鯉登は鈴川聖弘を即座に射殺しています。
強キャラ感が半端ない鯉登の登場。これもこの過程を見ていくと、相当個性が出ています。ひっかけの会話術は後述するとして、この拳銃で射殺する攻撃が凄まじい。
作中でも、このとき鯉登が手にしていた拳銃は威力が低いと言及されます。
全体的に将校用拳銃は威力が低く、実質的に自決用と言われるほど。
しかも確実に死ぬためには口に咥えて引き金を引くべきと言われるほどです。しかもこの場面は不安定な片手撃ちです。
将校用拳銃の威力が低いことは、彼自身理解しているとも思えます。
鯉登が本気で相手を殺そうとする時は、軍刀を用いる。そして軍刀装備時のキルレシオはさらに高まります。
これは彼が幼少時から習得している薩摩ジゲン流が強いということももちろんありますが、それだけともいえません。
鯉登が軍刀で攻撃する際、当たる箇所はほぼ首から上です。これがキルレシオの高さと直結しています。
アシㇼパさん追跡時にはどこか気の抜けた顔で拳銃を構えていました。やる気が出なかったのでしょう。
鯉登が致命傷を与える場所を狙いにいく点についていえば、先天性と思われます。
13歳で鶴見相手に杖を振り下ろした際にも、その特性は発揮されています。
先天的に、人間の弱点を狙いにいく特性を身につける人間はいるのか?
少ないながらも存在します。
成長してそれがタブーだとわかればやらなくなるものの、それができない幼少期にトラブルを起こすタイプの子です。
噛みついたり、思い切り叩いたりして、指導を受けるタイプの少年だったと思われます。
鯉登の幼少期は孤独で、友人がいない様子がみてとれます。手のつけられない子として、孤立しがちだったのでしょう。
徴兵制が導入される近代、人類はあることに気がつきました。大半の人類は、殺戮に対して抗うのだと。
当然至極のようで、これが体系立てて考えられるようになっていくのは、帰還兵が抱えたトラウマが社会を悪化させかねないと認知されてからのことなります。
作中の鶴見は、こうした原初の心理学を悪用していると思わせる描写があります。
しかし、鯉登は“普通”ではない。
花沢勇作と比較してみましょう。実戦経験のない少尉同士でありながら、勇作にはある殺人への禁忌がない。
鯉登がお銀を斬首した時、赤ん坊の声が響きました。母を殺し、その子が泣いたらトラウマにでもなりそうなのに、鯉登は平然としている。彼は“普通”ではないのです。
明治のコミュ障
サーカスで大人気となる場面が印象的であった鯉登音之進。
それでは彼が人気ものかというと、どうもそうではなさそうです。
顔がよく華があるにも関わらず、あまり周囲から好かれていないと思える場面が多いともいえますし、幼少期は孤立していました。
それもそうでしょう。落ち着きのない性格で、やたらとソワソワしている。苛立つと足を踏み鳴らし、眉間に皺を寄せていて近寄りがたい。避けられても仕方ないと思える特徴があります。
お嬢様たちから一方的に好かれるものの、デートのあとで幻滅されるタイプですね。
サーカスの場面も、実は孤立しがちな彼の特性がよく出ています。
サーカスに出演するという突拍子もない発案に、皆戸惑う中、鯉登はキリッとした真面目な顔で常に練習しています。
彼は素晴らしい動きで大人気となるものの、まったく周囲の空気を読めていないとわかります。
たとえば投げキッス。
鯉登は言われた通りに動いているだけで、周囲がどれほどざわつこうが気にしていません。
あれだけキャーキャー騒がれたら調子の乗ったり、頬を赤らめたり、ちょっとはサーカスで生きていこうかと思っても良さそうなのに、彼は目の前の目標到達だけを考えています。
鶴見の写真があればそれだけを目指す。
サーカスが終わればひたすらアシㇼパを探しに向かう。周囲の意図よりも目的達成が大事。彼には空気が全く読めません。
これは気前の良さにもつながっています。金を惜しみなく使うことは、もちろんボンボンだという家庭環境も大きい。それだけでなく、金銭交渉が面倒で言われるまま払っていると思えます。
月島はインカラマッが鯉登から金を巻き上げていると察知しています。いつもそんな大雑把さがあるのでしょう。金持ちなのに、気がつけば借金を作っていそうな性格です。
好奇心だけでなく、猜疑心旺盛
鯉登音之進は好奇心旺盛で、まるで幼児か動物のよう。フレップやトナカイが気になると勝手にどこかへ去ってしまいます。
しかも猜疑心まで旺盛です。
アホで能天気なようで、暗い顔をしていることも多い。思ったことが顔に出やすく、ニヤニヤと笑ってしまうこともあれば、怒りや不機嫌さが露骨に出てしまうこともある。
逆に心の底から嬉しいと思っていなければ、そうならない。
サーカスでの投げキッスはあくまで冷静で、教えられたまま振る舞っています。
あまり興奮していないのでしょう。彼は周囲からの影響を受けにくい相当マイペースな人物です。
コミュニケーション能力が低いことはすでに述べましたが、自分の中で理論づけたことを相手の反応なぞお構いなしに滔々と喋り、理論展開することもある。
興奮すると薩摩ことばとなってしまいますが、そうでなくともそもそも会話が成立しにくいのです。
月島はもうあきらめたのか。聞いたふりをして、鯉登の言葉を淡々と受け流していることがあります。
そのマイペースさは独自の世界に突っ走っていくこともあります。
前述のとおり猜疑心が強い人物ですから、サーカスでは杉元が自分に嫉妬していると疑った。
映画撮影の際には、月島が自分よりいい役を得ようとしているのではないかと疑っていた。
尾形が「(鶴見に)満洲鉄道のことを聞いてみろ」とヒントを漏らしただけで、そのあと折りに触れて何事か考えている顔になります。
あの時点で猜疑心旺盛である彼はもう手遅れ。鶴見を信じられなくなっていきます。
ものごとの危険性を察知できない
これはキルレシオの高さとも一致する特徴ですが……。
鯉登音之進は何かした結果、どれだけ危険な目に陥るのか、その認識が欠けています。
初登場時からそうです。
飛行艇に後先考えずに飛び移っています。
鯉登は作中でも随一の高所移動をこなしますが、落ちた結果どうなるか意識することがないように思えます。
他にもクズリに襲われる。
キロランケの爆弾を深く考えずに作動させる。
怒った杉元に接近する。
自分の身を危険に晒すだけならまだしも、サーカスでは杉元がハラキリショーで使う模造刀を真剣に差し替え、遅すぎる後悔をしています。
月島がいなければ、一体彼は何度死んでいたことでしょうか。
不注意を通り越して、恐怖や危険性をまっとうに感知する機能が壊れているとすら思えます。しかし、その特性ゆえに最終決戦では勝利できました。
土方との対峙では、己の中にあるわずかな恐怖心すら消し去りました。土方は“普通”の相手ならば避ける危険性を囮にしようとした。しかし、“普通”ではない鯉登にはそれが通じなかったのです。
危険性に鈍感といえば、痛覚も鈍感なように思えます。この作品は負傷しながら突き進む人物ばかりですが、そんな中でも鯉登は痛かろうがどうにかしているように思える場面が多い。
これまた月島が止めねば失血死しそうな局面があります。
アブダクション(逆行推論)が得意
鯉登音之進はアホそのものに思えて、実は作中でも屈指の考え込む人物です。
そのやり口に相当癖があるため、理解しづらいうえに、会話時におかしい。
特殊な会話術は、初登場時に出てきます。
薩摩弁で鈴川に話しかけ、和やかに会話を楽しんでいると見せかけて、彼がボロを出すところを待っていた。
下戸であることを否定するような会話に持ち込むことで、偽物と見抜いて射殺に至っています。
ちょっとした会話の断片から正しい推察をする場面は、エノノカとであったところでも発揮されます。
アイヌ語を混ぜて話すエノノカの言葉を聞き、状況から意味を推察し読み取っています。
わずかなヒントや会話の糸口から推論を組み立て、結論に至る――名探偵のような推理術を彼は披露しています。
尾形のわずかなヒントから鶴見の陰謀を推理し、自ら洗脳を解けたのは、彼の思考力ありきの展開です。
鯉登は鶴見の洗脳を自力で解いた、かなり意思強固な人物です。
自分を納得させられれば強いが……
鯉登音之進はわかりにくい人物像といえます。いや、これ以上ないほどわかりやすいとも思えます。鶴見に認められたいという一心で突き進んできましたから。
目標を設定し、それに向かってまっすぐに進めと言われれば強い。
しかしそれは逆に予定変更に弱いということでもあります。
鯉登は自分の想定や予定が変更されると、パニックに陥ったり、怒ったりします。
樺太では異常なまでの量の荷物を持ち込んでいましたが、想定外の事態に備えすぎてああなったのでしょう。
初登場時、飛行船の上で尾形を見つけて怒ります。予想外だったのでしょう。鶴見と思わぬところで出くわすと叫ぶ。先遣隊派遣を聞かされると叫ぶ。
それでも自分の力で考えて納得すれば、かえって前に進めるようになります。
尾形が投げかけた「満洲鉄道のことを聞いてみろ」というかすかなヒントをもとに推理し、自力で鶴見の洗脳を解く。最終局面では永倉新八との会話で精神的欠点を悟り、克服することでついには土方歳三を撃破します。
鯉登は自力で考え、自分を納得させることができれば著しく成長します。
最終回でも月島は鶴見の形見を探していたのに、鯉登は完全に割り切っている。それどころか、部下を庇い抜くという次の目標が定まっていて、迷っている時間はありません。
月島から見ると、その姿は確かにどこまでも真っ直ぐなものでした。勝敗が定まればそれに悩まず撤退し、敗戦処理へ進める。名将の条件を彼は備えています。
ただし、その思考回路が掴みにくいし、日頃ものすごく頭が悪そうな言動ばかりを繰り返してしまう。
すぐに出る表情。極端な喜怒哀楽。鈍感すぎるか、敏感すぎるか。
振り幅が広すぎて、周囲からすれば理解できません。
規格外、どこかズレている鯉登音之進
ユーモアセンスがおかしい。
悪いことをしてもあまり謝らない。
キレやすい。皮肉っぽく、失礼なことを平然と口にする。
そういう人間的な弱点だけでなく、長所も多い。
プラスにせよ、マイナスにせよ、振り幅が常人と異なるがゆえに、理解しにくい。
これは本人も自覚があるようで、周囲に気遣うよりも一人でいる方が気楽そうではあります。
けれどもたまに理解する鶴見のような存在ができると依存してしまう。
そんな鯉登音之進は、鶴見よりも月島の方が自分にとってははるかによい理解者だと悟ったラストに思えます。
鯉登は作中随一のチートキャラともいえます。
あの無茶苦茶な状況で軍法会議を潜り抜け、第七師団長になるとすれば、どんな手を使ったのか気になるところです。
それでも彼ならどうにかできるような気がする。彼は規格外ですから。
鯉登の長い人生はまだまだこれからだが
鯉登音之進の苦労はこの先にあるとわかります。
彼は軍人をやめない、むしろ士官で居続ける。
するとこれから、空気の読めない彼にとって地獄のような歴史が始まります。
自分で納得できないことは、気になって仕方ない上に従えない。そんな彼にとって「日本はすごい!」という神頼みで戦う時代は、醒めない悪夢そのものでしょう。
最後の第7師団長から名前をとったとはいえ、彼がそうなることがどれほど苦しいことか。
自分を納得させ、酔いしれるしかないのか。
そうしたにせよ、醒めたときはどれほど辛いことか。
彼は後天的な要素よりも、先天的なズレにより苦労が蓄積する宿命にあります。
金塊争奪戦は、どこかずれた彼の人生の始まりに過ぎません。あるいは、あるがままにふるまえた最後の青春の日々でしょうか。
飄々として明るく能天気なようで、彼はどうにもわだかまりがある。
燦々と陽の光がさすのに、激しい雨が降っている。
そんな生きることそのものが天気雨のような鯉登は、どう昭和へ向かっていくのか。
想像すると切なくなるのです。
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