2019年公開の映画『サムライマラソン』に、小松菜奈さん演じる安中藩の雪姫が登場。
黒船来航以来の激動の時代において、彼女は「もはやジッとしてはいられない!」とばかりに、遭遇した盗賊と自ら戦い薙ぎ倒す――そんな強い女性キャラクターを演じていました。
この雪姫の活躍は創作です。
しかし、幕末という時代は、全国の志士だけでなく、お姫様にとっても激動そのものでした。
城の奥でヒッソリしていたと思われがちな彼女らは、一体どんな運命を迎えたのか。
幕末のお姫様八名の足跡を追ってみました。
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毛利安子(長州藩主・毛利元徳夫人)
2015年大河ドラマ『花燃ゆ』にも出てきた「銀姫」の名で知られる女性、それが毛利安子(やすこ)。
「そうせい侯」こと毛利敬親にとっては我が子の嫁にあたります。
※以下は毛利敬親の関連記事となります
幕末の長州躍進を陰で支えた毛利敬親「そうせい候」と揶揄されて
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ドラマでは脚色が酷いもので、アイドルグループが演じる夫の側室に嫉妬するわ、ヒロインの美和信者だわで散々でしたが、史実は違います。
実際の彼女は、激動の長州藩をじっと支えた賢夫人だったのです
はじめこそ世継ぎが生まれず苦しんだものの、代々側室が世継ぎを産むことが多かった毛利家において、5男1女に恵まれました。
明治以降は、派手な暮らしよりも、女性人権活動や医療福祉分野でのボランティアや寄付に尽くす、そんな生涯を送っています。
戸田極子(大垣藩主・戸田氏共夫人)
幕末から明治にかけては、大名家と公家の間での婚礼も多いもので、父はあの岩倉具視。
「極子」は「きわこ」と読みます。
岩倉具視・薩長ではない幕末の下級貴族がなぜ明治政府の主要メンバーに選ばれた?
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彼女は父が寵愛した母・槇子の美貌を受け継ぎ、際立った美女として成長。
幕末の動乱よりも「鹿鳴館の華」としての活躍が際立つ女性です。
音楽にも造詣が深く、夫がオーストリア大使となった際に、その才知がきらめきます。
なんとあのブラームスの前で、琴の演奏をしたのだとか。
ブラームスはその音色に聞き入り、戸田夫妻と交流を続けたとされています。
鍋島栄子(侯爵・鍋島直大夫人)
明治時代の美女写真ランキングでは定番、鍋島栄子(ながこ)です。
その美貌は、フランス軍士官ピエール・ロティはじめ、国内外の目線を集めたもの。公卿・広橋胤保の五女にあたります。
最初の夫は岩倉具視の子である南岩倉具義でした。
彼は僧侶であったため、還俗して父の分家を立て、栄子と結婚したのです。
この夫との死別後、鍋島閑叟(直正)の子・直大に嫁ぐこととなりました。彼はイタリア大使であり、その赴任を苦にしない妻が求められていたのです。
栄子はその要求に応えました。
イタリア王妃マルゲリータ・ディ・サヴォイア=ジェノヴァの寵愛を受け、指輪を贈られたこともあるほどだったとか。
洗練された宮廷マナーを身につけた美貌の栄子は、西洋の宮廷生活でも耳目を集めたのでした。
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