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【加賀騒動の顛末】
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あらぬ疑いをかけられる
財政改革を推し進めねばならない場面で、家臣たちが対立してしまった加賀藩。
延長二年(1745年)、事態は急激に動き始めます。
藩主の前田吉徳が脚気で亡くなると、後ろ盾のいない伝蔵は、蟄居を命じられてしまいます。
理由はこう。
「伝蔵の看病不行き届きのせいで藩主様が亡くなられた!」
しかも悪いことは続くもので、今度は前田吉徳の後を継いだ前田宗辰が急死してしまい、これも「伝蔵が暗殺したんだ!」と疑われてしまいます。

前田宗辰/wikipediaより引用
結果、寛延元年(1748年)4月、越中・五箇山へ流罪となってしまうのです。
しかーし!
家老たちの怒りはまだまだ収まりません。
同じく寛延元年の夏、江戸の加賀藩邸で茶釜に毒が混入し、吉徳の正室・浄珠院と前田宗辰の後を継いだ前田重煕(しげひろ)が暗殺されかけるという事件が起きました。
この未遂事件では、吉徳の側室だった真如院が疑われると、その老女・浅尾と共に実行犯とされ、二人とも処罰されています。
しかも「真如院と伝蔵が密通しており、重煕暗殺未遂もこの二人が企てたものだ」とみなされました。
伝蔵からの書状が多数見つかったそうで……あまりにも急で出来すぎた展開で、露骨なまでに怪しいっすな。
それでも、二重三重に疑われた伝蔵は追い詰められ、寛延元年(1748年) 9月に自害。
真如院は本人の希望によって寛延二年(1749年)2月に絞殺され、浅尾は10月に殺害されました。
真如院の男子二人も金沢で幽閉され、10年ほど後に亡くなっています。
この件の関係者かつ犯人側と目された人々がいなくなった時点で、騒動はピッタリ止んでいます。
なんとも気味の悪い話で……。
各所でネタにされた加賀騒動
加賀騒動は、騒動だけで終わりません。
・舞台が百万石という大藩だったこと
・新興家臣vs家老たちというわかりやすい構図
・不義密通と後継者争いまで絡むなんて!
という、あまりにも美味しいネタが揃っていたもので。
案の定、歌舞伎などのフィクションで演じられ、かなり脚色されて世間へ知れ渡っていきました。
江戸時代は、幕府によって様々な規制が設けられ、そのたびに著者や演者たちは抜け穴を探し、創作物を作っています。
それは大河ドラマ『べらぼう』でも散々描かれてきましたね。
劇中では取り上げられませんでしたが、加賀騒動も人気を博した事件の一つ。
作品によっては浅尾への蛇責めなどが加わり、おどろおどろしく仕立てられたものが多々ありまして、とりわけ『加賀見山旧錦絵(かがみやま)』という作品は大好評だったようです。
中身は、半分オリジナル、半分加賀騒動といった内容で、
「とある藩邸で起きた大名の妻同士の争いにより、一方が自害した後、その侍女が仇討ちする」
というストーリーです。
これは「女の忠臣蔵」とまで呼ばれ、武家の女中が宿下りする際に見るのにふさわしいとされ、毎年3月に上演されたとか。
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参考文献
- 大石慎三郎『江戸大名(知れば知るほど)』(実業之日本社, 1998年8月, ISBN-13: 978-4408102849)
出版社: 実業之日本社(公式商品ページ) |
Amazon: 商品ページ - 榎本秋『身につまされる江戸のお家騒動(朝日新書)』(朝日新聞出版, 2012年7月, ISBN-13: 978-4022734587)
出版社: 朝日新聞出版(公式商品ページ) |
Amazon: 商品ページ - 山本博文(監修)『江戸三〇〇藩 物語藩史 北陸・甲信越篇(歴史新書)』(洋泉社, 2015年5月, ISBN-13: 978-4800306579)
書誌データ: 版元ドットコム(出版社提供の書誌) |
Amazon: 商品ページ - 『国史大辞典』(吉川弘文館, 全15巻17冊)
出版社: 吉川弘文館(国史大辞典 公式案内ページ/ジャパンナレッジ) - 『日本国語大辞典(第2版・全13巻+別巻)』(小学館)
出版社: 小学館(日本国語大辞典 第二版 公式案内/ジャパンナレッジ) - 『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館, 書籍版25巻)
出版社: 小学館(ニッポニカ 公式案内/ジャパンナレッジ) - 『世界大百科事典(改訂新版)』(平凡社, 全34巻)
出版社: 平凡社(公式商品ページ) - 『新版 歌舞伎事典』(平凡社, 2011年3月, ISBN-13: 978-4582126426)
出版社: 平凡社(公式商品ページ)