豊臣家一族の肖像画

上段(大政所・豊臣秀吉)下段(豊臣秀長・朝日姫)/wikipediaより引用

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秀吉の実家はどんな家族構成だったのか? 父母ときょうだいの血縁関係に残る謎

大河ドラマ『豊臣兄弟』が始まり、第一回放送で印象的だったのが「秀吉の実家」であろう。

弟の秀長の他に、母なか、姉とも、妹あさひ、という計4名がいて、父親はすでにお墓の中。

いずれのフィクションでも彼らは定番メンバーだが、では適切な史実なのかどうか? というと、昔から「謎だらけ」と指摘されるような状況となってしまう。

豊臣秀吉の肖像画

豊臣秀吉/wikipediaより引用

そこで本記事では、最新の研究事情を踏まえて、秀吉の血縁関係を仕切り直してみよう。

 

きょうだいの父親 全員同じ可能性

豊臣秀吉の“きょうだい”とされている人物は、前述の通り、全部で3人いる。

姉・とも(瑞龍院日秀)

豊臣秀吉

弟・秀長

妹・朝日(旭)姫

従来は、姉のともだけが秀吉と同じ父(木下弥右衛門)で、秀長と朝日姫は異父(竹阿弥)とされてきた。

なぜ、そういう扱いだったのか?

というと『太閤素性記』や、それを元として後年に描かれた物語の影響が大きかったためであろう。

物語の中で秀吉が秀長に「俺とお前は種違いだ!」と叱責するシーンがあり、ドラマや小説だけでなく学術界でもそう扱われてきたので長年定着していた。

しかし近年の研究では「秀長や朝日姫も秀吉と同じ父では?」とする見方が出てきている。

『絵本太閤記』に弥助昌吉として登場する木下弥右衛門

『絵本太閤記』に弥助昌吉として登場する木下弥右衛門/wikipediaより引用

弟・秀長の生年と推測される天文九年(1540年)時点で、木下弥右衛門の生存を示す記録が発見され、「秀長と朝日姫も弥右衛門の子では?」と考えられるようになったのだ。

 


さらにややこしい竹阿弥

豊臣兄弟の父としてもう一人出てくる名前が竹阿弥である。

物語によっては、この竹阿弥が秀吉の父ともされるからややこしい。

先程「木下弥右衛門は秀長の誕生時点で生存していた」と記したが、その状況に対してこんなツッコミもある。

生存していただけで、秀長と朝日姫の父親である証拠とはいえない。

弥右衛門が戦傷で働けなくなり、なかが生活のためにやむなく竹阿弥と関係したのではないか。

さらに「秀長の幼名である小竹は竹阿弥から一字とった」とか、「秀吉も”小竹”と呼ばれたことがある」とか、「小竹は父の名から取られた息子のあだ名であって幼名ではない」とする見方など、いずれも複雑な様相を呈している。

さらに問題をややこしくしているのが、秀吉本人が大村由己の『天正記』で「皇室の落胤」など、自らの出自を大仰に喧伝していることであろう。

大村由己像

大村由己像/wikipediaより引用

秀吉の出世後の言動については他の史料で検証できるが、出世前についてはほぼ皆無。

比較や検討が困難なため、秀吉の言いっ放しになってしまう。

では、母なか(大政所)の言動に何かヒントはなかろうか?

 

兄弟を名乗り出た者を処刑

秀吉は「きょうだいです」と名乗り出てきた者について、なかに事情を尋ねたことがある。

しかし、なかが恥ずかしがったため、その者を処刑したという。

大政所(なか)の肖像画

大政所(なか)/wikipediaより引用

こうした状況を考えると「なかは生活のためにやむなく複数の男性と関係していた時期があり、本人も誰が誰の父なのかわからなかった」という可能性が出てくる。

なかは、とも・秀吉・秀長・朝日姫の他にも子供を産んだとする説もある程だ。

当時の医療技術や衛生環境では「何人も子供を産める体質の女性」が重宝されたであろうことは想像に難くなく、彼女がそうだったとしても不自然なことではない。

そうした理由により、記録から彼らの血縁関係を断定することは非常に困難となっている。

ただし、今後、科学の面から探求できる可能性はあるかもしれない。

秀吉・秀長・朝日姫の直系子孫は残っていないが、なか・ともの子孫は近代以降の旧華族や皇室と繋がっている。

遺伝子鑑定の技術進展によっては、血の繋がりを科学的に検知できるかもしれない。

むろん可能性の話であって、今はまだ諸説の考察にとどめておくのが限界である。

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参考文献

  • 小和田哲男『豊臣秀吉』(中央公論新社〈中公新書784〉/1985年11月21日/ISBN: 978-4-12-100784-1・ISBN-10: 4121007840)
    版元(中央公論新社)
    Amazon
  • 菊地浩之『豊臣家臣団の系図』(KADOKAWA〈角川新書 K-290〉/初版年月日: 2019年11月10日・書店発売日: 2019年11月9日/ISBN: 978-4-04-082325-6・ISBN-10: 4040823257)
    版元(KADOKAWA)
    Amazon
  • 堀新(編著)ほか『秀吉の虚像と実像』(笠間書院/奥付の初版発行年月: 2016年07月・書店発売日: 2016年06月28日/ISBN: 978-4-305-70814-4・ISBN-10: 4305708140)
    版元(笠間書院)
    Amazon
  • 新人物往来社 編『豊臣秀長のすべて』(新人物往来社/1996年7月/ISBN: 978-4-404-02334-6・ISBN-10: 4404023340)
    書誌(NDL)
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  • 柴裕之(編著)『豊臣秀長』(戎光祥出版〈シリーズ・織豊大名の研究14〉/2024年11月上旬刊行/ISBN: 978-4-86403-547-7・ISBN-10: 4864035474)
    版元(戎光祥出版)
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  • 『国史大辞典』(吉川弘文館/1979年3月/ISBN: 978-4-642-00501-2・ISBN-10: 4642005013)
    版元(吉川弘文館)
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長月七紀

2013年から歴史ライターとして活動中。 好きな時代は平安~江戸。 「とりあえずざっくりから始めよう」がモットーのゆるライターです。 武将ジャパンでは『その日、歴史が動いた』『日本史オモシロ参考書』『信長公記』などを担当。 最近は「地味な歴史人ほど現代人の参考になるのでは?」と思いながらネタを発掘しています。

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