三浦義明

三浦義明と三浦義澄(勝川春亭画)/wikipediaより引用

源平・鎌倉・室町

孫の重忠に攻められ討死した三浦義明89年の生涯~超長寿な坂東武士の生き様

こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
三浦義明
をクリックお願いします。

 


孫がジーチャンを追い詰める

因果なことに畠山重忠は、三浦義明の娘の子供、つまり孫でした。

このころ重忠は、父である畠山重能(義明からすると娘婿)が京で仕事をしており、半ば清盛に人質として取られたようなものでした。

畠山重忠/国立国会図書館蔵

立場上、致し方ないとはいえ、そのため「孫(重忠)がジーチャン(義明)を殺しに来る」という凄まじい構図になってしまったのです。

実は、畠山重忠と三浦義明が衣笠城で戦う前にも、両軍の間では一悶着ありました。

ドラマでも描かれていたように、石橋山の戦場付近で偶然出会ってしまった両軍は、当初「身内での戦いは避けよう」と決めたのですが、そこへ事情を知らぬ和田義盛らの軍勢が攻撃を仕掛け、あれよあれよと戦闘が勃発していたのです。

整理しておきますと。

三浦義明・三浦義澄・三浦義村with和田義盛
vs
畠山重忠

という構図ですね。

さらにややこしいのですが、畠山重忠と三浦義村と和田義盛は、祖父の三浦義明を通じて従兄弟関係です。

簡単な系図を以下に記しておきましょう。

三浦義明を頂点にして、ドラマでも有力な武士が名を連ねていますよね。

ともかく頼朝を中心に、運命の歯車が狂い始めてしまった、親戚同士の畠山と三浦。

両軍の間で衣笠城合戦が始まります。

城にこもっていた三浦軍は、次第に押されてゆき、もはやこれまで……と覚悟を決めた義明は、嫡子・三浦義澄や孫の三浦義村に後事を託して、彼らを城から落ち延びさせます。

そして89歳という老体で最期まで戦い抜き、討死したのでした。

一方で「老齢で足手まといだから置いていかれた」という、ちょっと現実的であり、哀しい見方もあったりします。

いずれにせよ、敵が畠山重忠だったのは、結果的に孫の武名を上げることでもあり、武士として本望だったかもしれません。

 


息子はその後、鎌倉軍で活躍

三浦親子はその後、頼朝に仕えて活躍をします。

源義経の逆落としで有名な【一ノ谷の戦い】や、平家の終焉である【壇ノ浦の戦い】、そして奥州藤原氏を滅ぼした【奥州合戦】にも従軍。

頼朝死後の二代将軍・源頼家の重臣として十三人のメンバーにも選出されました。

畠山重忠も衣笠城合戦から程なくして味方となっており、その後、活躍を続けます。

これなら義明も浮かばれたでしょう。

もし源氏将軍がもう少し続いていたら、義明と義澄は二代に渡る忠臣としてもっと知られていたのかもしれません。

一応、平家物語の異本『源平盛衰記』に登場していて、江戸時代には挿絵にも描かれているのですが、

『源平盛衰記』の挿絵に登場する三浦義明(絵・楊洲周延)/wikipediaより引用

パッと見て源氏方か平家方かわからないせいもあってか、知名度はイマイチなんですよね。

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも、残念ながら名前だけ登場するパターンでした。

ただ、昨今はゲームなどでもシニアキャラが必ずいますし、今後、源平時代を扱った作品が出てきたときにはぜひ登場してもらいたいものです。

最期まで熱く戦い抜いた老将として人気が出ても良いのではないでしょうか。


あわせて読みたい関連記事

三浦義澄
三浦義澄(義村の父)は頼朝の挙兵を支えた鎌倉幕府の重鎮~史実でどんな実績が?

続きを見る

三浦義村
殺伐とした鎌倉を生き延びた「三浦義村」義時の従兄弟は冷徹に一族を率いた

続きを見る

畠山重忠
鎌倉武士たちの憧れだった畠山重忠の生涯~時政と牧の方にハメられた悲劇の最期

続きを見る

和田義盛
坂東武者のカリスマ・和田義盛の生涯~愛すべき猪武者はなぜ滅亡へ追い込まれたのか

続きを見る

関東八平氏
関東に拠点を築いた坂東八平氏~なぜ清盛に従ったり源氏についたりしていた?

続きを見る

桓武平氏
桓武平氏とその他の平氏たち 一大勢力となったのは清盛を輩出した伊勢平氏だけ?

続きを見る

長月 七紀・記

【参考】
『国史大辞典』吉川弘文館(ジャパンナレッジ公式サイト
安田元久『鎌倉・室町人名事典』KADOKAWA(新人物往来社)・1990年(→amazon
三浦義明/wikipedia

TOPページへ


 



  • この記事を書いた人
  • 最新記事

長月七紀

2013年から歴史ライターとして活動中。 好きな時代は平安~江戸。 「とりあえずざっくりから始めよう」がモットーのゆるライターです。 武将ジャパンでは『その日、歴史が動いた』『日本史オモシロ参考書』『信長公記』など担当。 最近は「地味な歴史人ほど現代人の参考になるのでは?」と思いながらネタを発掘しています。

-源平・鎌倉・室町
-