カーリングの歴史

ニューヨークのセントラルパーク(1836年/ジョン・ジョージ・ブラウンの作品)/wikipediaより引用

イギリス

実は500年の歴史を持つカーリング~紳士の競技はこうして始まった

ウインタースポーツは、どのようにして生まれたか?

スキーにしろ、スケートにしろ、ソリにしろ。

成立過程を聞けば、なんとなくその歴史も理解できるもので。

「移動がラクだから!」

「獲物を追いやすいから!」

という感じで人間の本能が道具を発達させ、そしてそれが遊びやスポーツへと発展したことがわかります。

しかし、冬季五輪にも採用されている競技の中で、一つだけ『なぜ、こんなものが生まれたのだろう?』と、首をヒネらざるを得ないものがあります。

カーリングです。

漬物石みたいな大きな石を氷上でスベらせて、中心を取る――。

ルールは極めてシンプルながら、だからと言って、どうして石ころを転がそうだなんて発想したのか?

ご理解できる方は少ないでしょう。

そこで本稿では、この競技がいかにして生まれ、競技化されていったのか。

カーリングの歴史を振り返ってみたいと思います。

雪中の狩人(遠景には氷上でカーリングをする人たち)/Wikipediaより引用

 


16世紀のスコットランドで誕生

ウィンタースポーツの中心は、やっぱりスキーとスケートでしょう。

実際、その歴史もかなり古く、

スキーの歴史4500年

スケートの歴史3000年

とされています。

スキーの歴史
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スケートの歴史
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では、カーリングは?

まずは発祥地から遡ってみますと、これがなかなか意外な国でスコットランド。

時代は16世紀頃、つまり約500年の歴史となります。

少しジックリ考えてみれば、妥当な地理条件かもしれません。

スコットランドは美しい湖沼で知られる地方です。

グレートブリテン島の北部に位置して寒さは厳しく、冬場になれば河川や湖が凍結、それでいて積雪量が多くはない。

納得の条件ですよね。

実際、スコットランドの湖の水を抜いてみると、16世紀初頭の原始的なカーリングストーンが発見されることがあるそうです。

スターリングという都市には、世界最古のカーリング石も保存されています。

 


「轟音のゲーム」と呼ばれていた

「カーリング」という単語の初出は16世紀です。

スコットランドのパースで印刷された、ヘンリー・アダムソンの詩が出典でした。

ブリューゲルの絵にみえるカーリングの様子/Wikipediaより引用

それまでは「轟音のゲーム」と呼ばれていました。

石のぶつかる音が大きかったからですが、印象深い名前でありますね。

なお、「カーリング」という語の由来は、ストーンを投じるときのモーションを「カール」と呼んだことから来ています(諸説あり)。

 


紳士のスポーツ

カーリングは、スコットランドで盛んだった、とあるスポーツと関係が浅くありません。

ゴルフです。

・グリーンの上にボールを乗せて芝目を読んでカップインさせる

・氷上のデコボコを読んで石を滑らせ中心に寄せる

ゲームの主目的が同じ構造であることに加えて、審判員が存在しないセルフジャッジの伝統も、共通しています。

ゴルフもカーリングも、紳士のスポーツです。

敵に勝っても露骨に喜ぶ、不正を働くような、そんな行為を慎むのがマナーであり、ルール。

もう勝ち目がないとわかったら、潔く負けを認めて相手を称える――そんなスコットランド紳士らしさが要求されるスポーツなのです。

ゴルフを楽しむスコットランド氏族(18世紀)/Wikipediaより引用

 

スコットランド、冬の娯楽として発展

1716年、スコットランドのキルシスで、世界最古のカーリングクラブが誕生しました。

驚くことに、このクラブは現存。

2014年冬季オリンピックソチ大会の銀メダリストであるマイケル・グッドフェロー選手も同クラブ出身です。

キルシスは、世界史上初のカーリング専門の競技場が作られた場所でもあります。

当時は100×250メートルほどの面積であったと記録。

初期のカーリングストーンは、そのあたりから拾ってきた底が平らの石でした。

ボーリングの球のような穴を開けたものもあります。

ただ、競技として昔は、今ほど慎重&正確に投げてはいませんでした。

スコットランド産のウイスキーをグビッとあおって体を火照らせ、ワイワイと楽しく遊ぶ。

そんな冬の娯楽でした。

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