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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第2回「めぐりあい」】
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道兼の野望
兼家と亡き時姫の間の子どもたちは、上流貴族としての道を着実に歩んでいました。
長男の道隆。
二男の道兼。
そして三男の三郎は成人して道長となっております。
道長の姉である藤原詮子は皇子を産んだものの、関白・藤原頼忠の娘である中宮になったのは藤原遵子です。
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ここで円融天皇と遵子の仲睦まじい姿が映されます。
信じ合い、相手を美しいと褒める帝。なんて幸せそうな姿でしょうか。
道長が弓を引いていると、梅壺の女御がお召しであると告げられます。
詮子のことです。また姉上のお呼びかと、周囲はヒソヒソ……。
すると藤原兼家は詮子にとんでもないことを告げていました。
兼家の邸である東三条に下がれ、と。
何年も帝のお召しがないことを心配しているのかと詮子が返すと、兼家は野望を全開にします。
懐仁親王を次の東宮にして、ともかく早く天皇にしたい。
これがなかなか無茶苦茶です。整理しましょう。
今上帝である円融天皇をまず追い払い、花山天皇は速攻で退位させるという狙い。
なんという悪党なのでしょう。
詮子が困惑していると、兼家はただ一人の皇子を人質にとって退位を迫ると言います。手元に息子を置いておけば、生かすも殺すも私次第だと。
内裏を去るのは負け犬のようで気が進まない、今少し考えたいと答えを引き伸ばす詮子。
兼家は、帰り際に道長とすれ違います。そして「父の言うことに従うのがよいと言っておけ」と念押ししている。
現時点では兼家が本作随一の悪党ですね。
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しかし、若い頃はああはなりたくないと思っていた詮子も、道長も、父に似てくるのでしょう。
詮子は現時点で負けず嫌いなところが似ています。
詮子の悩み
道長は仕事中に呼び出させれたとぼやいています。
それはこの前も聞いたと詮子。
「だって道長しか心許せる人はいないんだもの!」
詮子は、円融天皇とそうできないんですね。彼女は帝の心をなんとしても、もう一度取り戻したいのだとか。
「えっ」と道長が驚いていると、彼女は切実に、懐仁の父であるだけでなく、私にとってただ一人の殿方、東三条には戻りたくないと訴えています。
さらには「この世の中に心から幸せな女なんているのか」と嘆くほど。み〜んな、男に翻弄されて泣いている。諦めきれない、力を貸してくれと頼みます。
道長が、自分にはそんな力がないと困惑しつつ、こう答えます。
「忘れられぬとは、何年経っても忘れられないものだ」
ただし、帝の心を取り戻す策はわからないと姉に返答すると……。
「道長! お前、好きな人がいるのね!」
途端にはしゃいでしまう詮子。道長の思い人を見てみたいと言い出し、私も頑張ろう!っと張り切っています。
詮子は寂しい。こんな他愛のない恋バナをしたいのに、誰も相手がいないのですね。ちょっとした雑談すら気兼ねなくできる相手がいない。
それにつきあえる道長も、この時点で只者ではありませんね。何か人を惹きつける魅力があるのでしょう。
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柄本佑さんが道長役なのがよくわかります。
いかにもキラキラした優等生タイプとは違うけれども、人間的な魅力がある。
『鎌倉殿の13人』での大泉洋さんでも思いました。こういう深みのあるタイプが女の人になぜか好かれると、なんだか「けしからん!」という気持ちが湧いてきて、忘れ難いものとなります。
鶏鳴狗盗
藤原為時は、息子の太郎を相手に漢籍の講義中。
今日は鶏鳴狗盗です。
鶏鳴狗盗(けいめいくとう)
鶏の鳴き声が得意な男と、犬のようにケチな盗人でも、孟嘗君は食客としていた。
この食客を活用したことで、窮地を乗り越えることができた。
つまらぬ才能の持ち主だろうと、重用すれば思わぬ役に立つ。
誰の話か?と父に問われ、「平原君?」と返す太郎。横で聞いているまひろが「孟嘗君」とボソリ。
不正解の息子に対し、為時は真面目にやれと怒ります。
やっているけど賢くない……と拗ねる太郎は、賢さは全て姉上が持っていったとやり場のない怒りをそらそうとしています。
それでも元服したら大学に入らねば、官位は得られないと父が諭しても、大学に入れないのも官位が低いのも自分ではどうにもならない、と諦めきっている太郎。
「明日まで『史記 孟嘗君列伝』を誦じておけ」
そう言い切って為時は講義の終わりを告げます。
太郎がまひろに正解を尋ねると、太郎……答えは為時が「孟嘗君列伝」と語っていたでしょう……どうにも彼は思考もゆるいようで、最終的には
「学問が好きすぎる姉上が気持ち悪い!」
とまで言い出します。
まひろが微笑みながら「漢詩や物語や和歌が好きなだけ、賢いぶんを全部持っていったわけではない」と答えます。
本当に純粋に好きなのでしょう。
一方、学ぶ楽しみが見出せない太郎は残念ですが、これは何事もそうですよね。
他ならぬ大河ドラマにしても、学ぶことが好きな役者さんやスタッフがいれば、そうでない人もいます。
撮影に時間がかかるからやりたくないと明かすとか。セリフがちんぷんかんぷんで覚えるだけだと語ってしまうとか。歴史はフィクションだの、必要最低限しか覚えないとか。そういう太郎タイプは大河に不向きですね。
本作は、漢籍の引き方がえげつない。なかなか皮肉な使い方です。演じる方たちも、見る方も、なかなか大変かもしれません。
孟嘗君は名君です。
とはいえ、この故事にしたって使い方次第。
兼家からみた為時が「鶏鳴狗盗」の類だとすればどうか。
つまらない才能の持ち主でも、飼っておけば使い物になる。
為時が磨いている才なぞ、兼家からすれば鶏の鳴き真似程度に過ぎぬとすれば、なんとも酷い話です。
忘れられぬ相手と再会する
まひろは代筆の仕事に出かけていきます。
すると以前の客だった麻彦が、歌を突き返されたとか。
まひろはショックを受けています。事情を聞けば、歌の中身が「別の女のことか?」と怒られたそうで、彼女は麻彦と桜を見たことがないそうです。
もっと話を聞いておけばよかったと悔やみながら、別の歌を詠むと言い出すまひろ。
二人で見た思い出の花は何か?と問うと、麻彦が夕顔だと答える。
『源氏物語』のオマージュが入っていますね。前回はまひろの小鳥が逃げたことが、雀の子が逃げたと紫の上が走ってきた場面をなぞっていたのだとか。今回は「夕顔」です。
そのころ散楽好きの道長が、お忍びで街へ繰り出しています。
テーマは女御同士の争い。
「孕め」「宿れ」「子を産みました」と連呼されます。
夜8時枠だから露骨な濡れ場はないものの、そこはかとなくエロスを漂わせたいという本作。艶笑のようなセンスがそこにはあります。
とはいえ、中身は姉をおちょくられているわけで、道長は笑っている場合でしょうか。
「弟よ! どうしたらいいの、助けておくれ!」
詮子を演じる者にそう迫られた道長も困惑しています。
代筆に向かおうとしているまひろは、石を踏んでしまいます。思わず蹴り飛ばしたところ、履物が脱げて飛んでいってしまい、道長に当たってしまう。
履き物を拾い、まひろに履かせる道長。
うーん、けしからん男だ!
相手の身分が低いとか。あるいは気づかないとか。履かせなかったら、それはもう道長じゃない。
道長はこういう何気ない親切心と、セクシーさが入り混じった罪な男なのでしょうね。女性と履き物には、どことなくエロチックな感覚があります。
いつも石を蹴るのかと道長が尋ねると、がっかりすることがあるとそうするとまひろが答える。と、彼女は、道長の足の傷に目をとめます。
「もしかして、足で字が書ける人?」
そう驚くまひろに、そういえば子どもの頃は自分の名前を足で書いていたと道長が答える。
「何を驚いている?」
「さ、三郎?」
忘れられぬ相手との再会に、二人は驚いています。
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