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『光る君へ』感想あらすじレビュー第2回「めぐりあい」

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第2回「めぐりあい」
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まひろは嫌われる女になるだろうけど、だがそれがいい

まひろも、嫌われヒロイン要素が詰まっています。

賢い。

身分が低い。

男に対しても容赦なくダメ出しをする。

まひろよりもおとなしい『麒麟がくる』の駒のことも、また考えてしまいます。駒があんなにしつこく叩かれたのだから、まひろもそうなるかもしれない。そんな駒について語ると、思わぬミソジニーを観察できてしまうのです。

私の駒擁護に対し、こんな意見を見かけました。

「駒は現代人みたいだから嫌いなんだってばw 将軍の愛人でもないくせに、意見をズバズバ言うとかお姫様気取りでしょw」

駒の願いとは、貧民にも医療含めた生活保障をすることでした。お姫様の願いってそういうものでしたっけ?

そしてこの意見から、今何かと話題の「女性上納システム」とは何か?というのが透けて見えました。

女が意見を通したいなら、えらい男、アルファオスに性的奉仕せよと。

そういう意識を持つ人を、大河ドラマの話から見出せるとは思いませんでした。

 


女嫌いからの決別を

さて、そうした前置きの後、この時点で見られた「大河ドラマとミソジニー」について触れたいと思います。

まずはこちらの記事に注目。

◆志尊淳、佐藤健でテコ入れも?NHK大河『光る君へ』超低空スタートで憶測「吉高由里子さんが登場すれば」関係者は強気だが…(→link

◆NHK大河「光る君へ」はイケメンてんこ盛り!吉高由里子じゃ盛り上がらないとNHK仕込み(→link

論旨をまとめると、「女はイケメンが好きだから投入しとけ!」というものです。

女はバカだからイケメンでしか気が引けないという偏見丸出しであり、後者の記事は、早速、吉高さんを貶めていて、より悪質です。

この記事はメイン読者である中高年の苛立ちを掬い取るように書いているのに、「女はこういう女が嫌いだからさ」と原因を女のせいにしているのです。

だいたい、どうしてこの人ら、男女ともに受信料は同額なのに、勝手に大河は男のものだと所有権を有するような言動をするのでしょう?

いつ、誰が、何の根拠でもって、そんなことを決めたのか。

こういうことを言い出す人は、女が喜ぼうが、嫌がろうが、どのみち貶すのでは?

現在は、海外の配信サービスでも、アルゴリズムから「性別」を不採用にしています。

男女間の差は、そこまでないと証明されつつあるのです。

そもそも「戦! エロい女! 戦国時代!」という男の子大好き欲張りセットを展開した2023年が大失敗しているじゃないですか。

いいかげん、ボーイズクラブは時代遅れだと気づいて欲しい。

 


若い女性層を殴り続けて何を言うのやら

このドラマは大河史上初回最低視聴率を記録しました。

覚悟はできていたと思います。まず、題材発表の時点でシーンと静まり返ったと、大石さんも振り返っているほどですから。

そしてこんな分析が出ました。

◆NHK『光る君へ』初回で躓き、マーケティング失敗か 大河最低の視聴率を記録、狙っていた若い女性層が離反(→link

当然の帰結でしょう。

大河という時点で、はなから若い女性は避けています。

マーケティングの話でもない。ましてや本作だけのせいでもない。

大河という枠そのもの、ひいては日本史周辺までもが、若い女性を蹴散らすようなことをここ10年ほど続けています。

2008年『篤姫』の大成功は、本当の意味での女性向け大河を作り出すための偉大な一歩でした。

しかし、二歩目が続かない。

2011年『江』は、『篤姫』の勝因を見誤りました。

セレブがイケメンと結婚する話を、同じ脚本家で書かせたらよいだろう――そんな表層的な要素をそのまま使おうとして失敗していました。

2013年『八重の桜』は、思えば至極まっとうな女性向け大河を目指していたと思います。

むろん、震災復興枠のために福島県を選んだという要素がありますが、それだけでもありません。

八重は戦場に立ち、明治以降は女子教育に尽力する偉大なるパイオニアでした。

しかし、この作品にもおかしいところはある。

当初は、幕末は銃で戦った八重が、明治以降は知識を武器に戦うという枠組みで話が進んでいたことが、初期の番宣資料からわかります。

それが明治以降、どうにもおかしくなる。

八重は家事能力が高い女性であったことは確かです。しかし、夫を支える面ばかりがクローズアップされ、気の強さや頑固さはかなり下方修正されました。

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そして2015年の『花燃ゆ』はコレだ。

「松下村塾には、おにぎりを握ってくれる松陰先生の妹がいるぞ!」

一体何を考えているのか。キャッチコピーの「幕末男子の育て方。」の絶望的な酷さよ。

育てるどころかテロリストになったり、死んでしまう男子もいる。そのくせ「若い女性はこういうのが見たいんでしょ!」と押し付けがましい。

このドラマは大変なことをしでかしました。

宮村優子さんは歴史に造詣が深く、素晴らしい脚本家です。

なまじ誠意があればこそ、選ばれたともいえる。そしてだからこそ、テロ要素をきっちり描いてしまったともいえる。

彼女ほどの逸材を、こんなドラマに使い、途中降板させた罪を思い出すたびに、私は怒りに震えます。主演の井上真央さんも気の毒でした。

2018年『西郷どん』は、モテだのBL推しだの、求めていない女性向け要素が持ち出されました。

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2019年『いだてん』は、偽装上手で浅いジェンダー観だからたちが悪い。

人見絹枝の描き方はよいようで、実はそうでもない。彼女は日本のスポーツ界に利用され、過労死に追い込まれたようなものです。

「東洋の魔女」だって、指導はセクハラじみていて美化してはいけないものでしょう。

2021年『青天を衝け』は、女性をおちょくるという意味では、大河史に残る凶悪さを秘めた作品。叩けば叩くだけホコリが出ます。

そもそも資本主義とフェミニズムは、対立関係にあります。

女性の担うケアワークを無償労働扱いすることで、家に縛りつけ、企業にとって都合のいいシステムにする。そういう女性を踏みつけにして利益を追い求めるシステムが資本主義です。

それなのに日本の資本主義の父を讃えろとは、何を言っているのか。このドラマは、若い女性に「肉屋を絶賛する豚にはなれ」と言いたいのでしょうか?

それでもこのドラマは偽装工作だけは一流でした。

これまたジェンダー論点からいくと大問題。それでも話としては口当たりのよい『あさが来た』から脚本家を引っ張ってきました。

あれほどの才知と度胸を誇る広岡浅子を「ぴっくりぽんのかっぱー」と叫ぶ残念な女性にするわ。五代友厚や夫にすがらないとピンチを切り抜けられないほど性能を低下させるわ。

相当な問題作だと思います。

ともかく、そういう成功した優等生的な脚本家を起用する。

そして全ての女性が面倒臭い性質でもありません。

イケメンやエロ要素を持ち出されると、空気を読んではしゃぐ人だって大勢いるものでして。

『青天を衝け』は、未成年の主人公が無駄に下着一枚になったり。留守を守ってきた妻と再会後、気遣うどころか子作り宣言をしたり。

ハラスメントとサービスが噛み合った場面が豊富でした。

そういう場面ではしゃぐ様をSNSで投稿すれば、満足感は得られるかもしれませんが、そこからはみ出した視聴者、ましてや若年女性にとっては悪夢そのものでしょう。

撮影時はアドリブで咄嗟にキスシーンがあったとも報道されました。

撮影時に性的同意を無視したのでしょうか。あまりに良識がないのでは?

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2023年『どうする家康』は、主演がアイドルというだけで女性サービスをしたつもりになっています。

しかし、40代男性アイドルや、暴力的なBL描写は、果たして若い女性層に届くサービスだったのでしょうか? それどころか、女性受けという触れ込みのジャニーズ投入が裏目に出てしまいました。

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要するにここ10年の大河ドラマは、若い女性に対して散々セクハラを働く、おじさん上司のような枠になっていたのです。

「あれ〜? 若い女子ちゃん来ないのカナ? おじさんが歴史を教えてあげるのにな!」

「ですよね〜、ホント、最近の若い子って空気読めないっていうかぁ」

それがどれだけの損失か、考えたほうがよいでしょう。

今年は、そのことを踏まえていると思えます。

 

大河は今、変革の真っ只中

本作は、十分に意識しているのでしょう。

そうとわかる記事がございます。

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「例えば中国や韓国の時代劇で、人物関係を知らずに見ても、その人の真心や喜び、悲しみが伝われば楽しめる。朝廷を舞台にした権謀術数や愛の泥沼も、細かな感情を描けば必ずや楽しんでいただけるものになる」と確信している。

内田CPは、海外、しかもアジアの時代劇を意識しています。

その狙いは想像がつきます。

今、中国や韓国の流行を見ていると、若い女性が時代劇にハマっていて、分厚いファン層を形成している。

アプリにも反映されていて、中国時代劇なりきりゲームは定番です。

こういう層を掘り起こす重要性を感じているのではないでしょうか。

日本のコンテンツ産業も、ここを耕さないと、かなり危険な状況になるはず。

華流ドラマ『陳情令』がブームになった結果、中国史でも屈指の難易度を誇る魏晋南北朝の人気が高まっているとか。

確かに中国書籍の書店に行くと、知識を求める読者に向けて、かなり本格的な本が並んでいます。

しかも、ターゲットは若年女性層であることは、書籍を宣伝するポップからわかります。

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佐藤信弥先生の『戦乱中国の英雄たち』は、帯に大きく『陳情令』の写真を使うことにしたそうです。

昔だったら『三国志』の英雄が掲載されそうなところを、今は若い女性層を狙ったマーケティングが効くと。

中国エンタメ特集を扱った文芸誌「すばる」2023年6月号は、あっという間に売り切れ、初の増刷がかかったほどです。

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本来、日本史沼へやってきそうな女性層が、今ものすごい勢いで東洋史に流入している。

これは早急に対処せねばならないのでは?

もっと暗く深刻な話をしますと、歴史に興味のある女子高生が、進路から日本史を外し、別の歴史にする傾向があるとするアンケート結果を見たこともあります。

歴史が好きな女性は一定数存在する。実際、歴史への興味関心においては男女差は出ないとされています。

でも日本史周辺にある、ミソジニーが嫌だから、大河は避けるし、むしろ別の国の歴史にはまる。

こういう女性が増えることは、大変深刻な問題でしょう。

そこへ歯止めをかけるために、強いハートと剛腕を持つ女性脚本家、敢えて挑む時代で、2024年と2025年は果敢な挑戦をしてきているのだろうと私は思います。

海外目線への意識、ジェンダーについても重要です。

言うまでもなく、『源氏物語』は世界規模で人気を誇る作品です。

海外のファンも、今年の大河ドラマは興味深く見守っていることが伝わってきているし、海外展開も歓迎されるのではないかと思える要素が本作にはいくつもあります。

例えばこのドラマでは、女性たちが男性の身勝手を嘆きます。こういう女性の苦悩を描くことこそ、海外展開を狙うならば避けられないところ。

実は華流にせよ、韓流にせよ、ジェンダーも女性受けしている重要な要素です。

そういう現実から目を逸らしたい層は「どーせイケメン目当てだろw」と語りがちですが、見誤ってはいけません。

反面教師は2023年です。

初回からヒロインをトロフィーにして、男同士が取り合うような残念ドラマは、その時点で振り落とされます。

昨年は本当に酷く、あくまで私の観測範囲ながら、中国や韓国のファンは全く買っていません。

日本には悪いことを隣国に押し付ける癖があるようですが、昨年の大河は中国や韓国から失笑されています。

むしろ影響を真面目に受けていたらあんな惨状になっていないと指摘しておきます。

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人の心を描き、問題提起をしていくこと。

そこに敢えて挑んでいるにもかかわらず、シャイなようで、大口は叩かない。

そんなまひろに似ている本作の個性と勇気に、私は大きな期待を抱いています。

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文:武者震之助note

【参考】
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