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『光る君へ』感想あらすじレビュー第15回「おごれる者たち」

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道長、兄の横暴に悩む

そのころ藤原道長は悩みを抱え、異母兄の藤原道綱を呼び出しました。

「おお、何用か」

相変わらずノーテンキな口調で近づく道綱。これを認めたのは道綱か?と道長が問いただすと、関白の兄が言ったのだからと素通りさせたとか。

なんでも中宮定子サロンの費用を、公で賄うのだそうです。税金で豪華な私邸を建てるようなものですね。

さすがに道綱もやりすぎだと思いながら、兄の言うことには逆らえず、そのまま通したようです。

道長もこれ以上話しても無駄だとわかったのでしょう。兄・道隆のもとへ向かいます。

体がだるいからと参内していない道隆。彼もそろそろ糖尿病にでも罹っているのでしょう。

なんせ当時の貴族は極めて不健康な生活であり、藤原実資のような極度の健康マニアでもなければ、なかなか長生きはできません。

今日は伊周が弓競べがあるとか。

だるそうにそう語る道隆に、道長は手短に要件を伝えます。

税金で中宮定子の予算を賄うのはおかしい。そんなことをすれば政治に関与する連中が皆税金で好き勝手するようになって世が乱れる。

なぜ、そんなに予算が必要なのか?というと、華やかなサロンの形成には女房と、彼女達が着飾る衣装が必要だからです。センスのいい襲を着せて、これみよがしに見せる。

道隆は開き直ったように言います。

「細かいことを申すな。お前は実資か、はははは」

ここで補足でも。

「日記を書け」とやたらと煽られる藤原実資。しかし、道長も、行成も、日記をつけています。

では、あの描写は何なのか?

というと、実資の日記はやたらと細かく、愚痴が多いのです。行成も彼の几帳面さと優しさが伝わってくる。では道長は?

と、これが雑なのです。筆跡からして汚らしい。文字を書き損じた時の消し方が雑。雑なので透けていて、それゆえ解読することができる。

後で書き足そうと思っていただろうに、結局そうしなかったと思われる箇所がある。

文法が崩壊している。他に書くべきことがあったであろう日も、天気のことしか書いていないなどなど……ともかく雑です。

相手が道長であったら、こうツッコむべきだ。

「ちゃんと、この一連の流れを日記に書きなさいよ! まあ無理だと思うけど……」

道長の雑な性格は他にも困った事態を引き起こしていて、一条天皇の辞世の歌が数種類あったりする。

亡くなる直前だからうまく発音できず、聞き間違えたのだろうと言われていますが、日記に書き留めた者の性格まで考えると、行成が正しいのではないかと考える説もあるとか。

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そんな道長の性格を踏まえて、ここで人事のことでも。

道長は「中宮大夫として見過ごせない」と兄に迫りました。

この役職は中宮周辺を取り仕切る役目。道隆としては、道長の雑な性格と身内であることを任命の力点としておいて、不正もスンナリ見逃すだろうとたかをくくっていたのでしょう。

 


弓競べに天意が降臨する

話題をそらしたかったのでしょう。しつこい道長に対し、道隆は弓競べを見ていけと告げます。

藤原伊周が矢を次から次へと命中させており、周囲の者たちに「遠慮することはない」と言っております。見物の女性たちも、さぞやうっとりしていることでしょう。

そして道長がやって来ると、叔父上もやりませぬかと誘う。皆が気を遣って本気を出さないから面白くないんですって。

兄の道隆に促された道長は、そのような気分ではないと答えるのですが、伊周も引かない。

「怖気付かずともよろしいではございませぬか、叔父上」

甥っ子に煽られても、あくまで関白様と話に来たと返す道長。話はもうよいと道隆が打ち切ると、渋々弓を射る道長です。

結果は伊周の圧勝でした。

しかし、道長が帰ろうとしても、伊周が矢が残っているとして引き留める。

「そうだ叔父上、これからは願い事を言うてから矢を射るのはいかがでしょう?」

「面白い、やってみよ」

そう促す道隆ですが……。

伊周は、

「我が家より帝が出る!」

と言いながら、矢を放ちました。

矢は的の中心から外れ、今度は道長にも射るように促す。

「我が家より帝が出る!」

すると今度は、道長の矢が的の真ん中に刺さるではないですか。どーっとざわめきがあがります。

伊周が動揺を抑えながら、次の矢を叫びながら放ちます。

「我、関白となる!」

今度は大きく外れて、的にすら当たりません。道隆の顔から血の気が失せ、動揺を隠しきれなくなっています。

「我、関白と……」

道長が矢を射ようとしたそのとき、道隆が「やめよ!」と止めました。道長は弓を返しつつ、「先程の話は改めて」と言い、去ってゆくのでした。

素晴らしい場面でしたね。

弓を引くキリキリという音。的を見る目。道隆や周囲の人々の焦燥と恐怖。伊周も道長も凛々しく美しい。

そしてセット、音楽、照明まで、「天意」を示すように作り込まれていると思いました。

この弓競べは『大鏡』からの場面ですね。聖徳太子が主人公の漫画『日出処の天子』にも似たようなシーンがありました。

弓の特殊性を思えばわかりやすくなることでしょう。

弓とは人類にとって画期的な発明です。

足の速さでも、力の強さでも、素早さでも、他の野生動物には到底及ばない人類。それが攻守逆転できたのは、遠距離攻撃できる弓が使えたからです。

そのため日本に限らず、多くの文化において神話には弓が登場します。

つまり神との対話という意味も有する弓術は、武芸というより神事という意味合いが大きいものでした。

現代でも厄払いの弓の披露を神社が行うことがありますし、破魔矢もおなじみですね。

弓を射ることで天の声を聞くという意味合いがあればこそ、伊周は道長を誘ったとも思える。道隆も「負けるわけない」という見込みがあったからこそ、促した。

それが思いもよらぬ結果となり、伊周だけでなく、道隆も焦っています。

いたずらに天の声を聞こうとした己の浅はかさを思い、悔しがったことでしょう。

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道長の妻たち

道長は源明子のもとにいました。

明子の兄である源俊賢も宮中に姿を見せ、どうやらうまくいっている様子。

スピリチュアルなところのある明子は弓競べの話に喜んでいます。

しかし、八歳も年下の甥相手に馬鹿なことをしたと、いささか後悔しているような道長。すると明子が、お腹の子が蹴ったと嬉しそうに言います。

男子のような気がすると明子が言うと、どちらでも大事にいたせと返す道長。

するとここへ、土御門から「左大臣が危篤だ」との知らせが届きました。明子も急ぐよう促します。

源倫子藤原穆子が、源雅信の枕元にいて、婿殿が来たと告げられると、雅信が言葉を絞り出します。

「婿殿、出世もこれまでじゃな……」

権大納言でも素晴らしいと穆子が慰めても、どうやら悔しい様子。もっと「不承知」と言えば良かったと悔やんでいます。

倫子が、私は幸せだ、ご心配なくと告げています。

出世は十分だと言いたいのでしょう。

かくして16年左大臣の座にあった雅信は亡くなりました。

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享年74。長生きでした。

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