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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第17回「うつろい」】
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姫様と大納言の関係は?
まひろが『荘子』を書写しています。
漢籍の書き方と、かな文字の違いに注目したいところです。
漢字書道とかな書道は別物。
現在の学校教育で習う書道は漢字書道となります。
吉高由里子さんは左利きで、右手で筆を持つとかえって力が抜けてよいのだとか。
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すると父の藤原為時が入ってきて、大納言様こと道長との関係を尋ねてきます。
素っ気なく、何とも無いと答えるまひろ。
為時は、看病の様子が只事ではなかったと食い下がりながら、道長の妾になることを遠回しに進めてきます。どうでもいい女子の看病をあんなに熱心にするわけがない。
「それはない」ときっぱり断るまひろ。
もしそうならば、今ごろ文が届いていると返します。為時はこれからくるかも知れぬと粘るものの、まひろは打ち切ります。
「お望み通りになれず、申し訳ありません」
為時なりに考えたんでしょうね。あの誠実さなら、娘は捨てられない……と。
しかし、当の娘がこんな調子ではどうしようもない。とぼとぼ部屋へ戻ろうとすると、いとが引っ張って「あれは絶対に何かある!」と迫ります。女の私にはわかるのだとか。
「姫様と大納言様は間違いない! 私の目に狂いはない!」
と、大興奮しているいと。これは倫子も女の勘で道長とまひろの関係を見抜くという前振りでしょうか。
一方、道長は、まひろの様子を見てくれと百舌彦に頼んでいます。
抵抗するも、断固として道長に命じられてしまう百舌彦。
いやいやながらもやってきた百舌彦は、庭掃除をする乙丸に、犬の鳴き真似で話しかけます。
乙丸も、道長様の命令で来られても困る、そちらの殿にもやめさせて欲しいと訴えています。
「誰?」
まひろが出てきました。
乙丸が「野良犬です」と返すと、「百舌彦ではないか?」とアッサリ見破られ、しぶしぶ「おひさしゅうございま〜す」と返す百舌彦。
百舌彦も悲田院で助けてくれたのか?というと、相手はシラを切ります。
「ありがとう」
丁寧にお礼を言うまひろ、戸惑う百舌彦。しらを切り、ほっつき歩いていたら乙丸に会っただけだと言います。
「本当に懐かしいわね」
さて、そのころ道長は疫病対策を実施中。近国から招き寄せ人手不足を補うと指示を出しています。
資金が高くついても構わないと命令を下すわけですが、その資金源は倫子でしょう?
そりゃ百舌彦も、まひろの様子を見たくないわけだわ。
一方で、まひろは考えています。
なぜ道長は悲田院に来たのだろう?
まさか七年前の約束を覚えている?
思わず考えてしまうまひろ。
彼女が望む世を作るべく、精一杯つとめようと胸に誓うと彼は語りました。
ギターの情熱的な調べが響いています。今年は劇伴がドラマチックで美しい。
貴公子たちは今日も女子と戯れる
中関白家では、藤原道隆が貴子の膝枕で休んでいました。
「子どもの目がある」と貴子が言うと、藤原伊周は「ご遠慮なく」と返す。弟の藤原隆家は呆れているようにも見えます。
貴子を見そめたのは、内裏の内侍所(ないしどころ)であったと振り返る道隆に対し、そうだったと応じる貴子。
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このあと兄弟は廊下に出て、二人で話を始めます。
伊周は太政大臣の三の君・光子のところへ通うのだとか。かりそめの女子にしては身分が高いようです。
伊周は家に帰ると子が泣いていてうるさいと言っていますが……彼もまた子ができるとよりつかなくなるダメ夫でした。
あんな父上(道隆)を見ていられないと張り切って出かけることにするのでした。
なお、太政大臣とは藤原為光のことです。
故人であり、太政大臣の娘だろうと、父が亡くなれば困窮してしまう。
こういう姫君は、貴公子がちょっと手出しするには、ガードが緩くて身分が高くてお買い得。そんな半額シールが貼られた惣菜のような扱いにまで落ちてしまいます。
とはいえ、ここで「三の君」とありました。他に姉妹もいることを覚えておきましょう。
清少納言が花瓶に入れた花を運んでいると、藤原斉信がなぜ返歌をよこさないのかと話しかけてきます。
軽くあしらう清少納言。
斉信は「とぼけるな、俺をコケにするとはけしからん」と言いつつ、清少納言の胸元に花を差し入れます。
「深い仲になったからって、自分の女みたいに言わないで」
突き放す清少納言に対し、男ができたのか?と邪推し始める斉信。前の夫とよりを戻したのかと問い詰めます。
「だったらどうなの?」
「……そうなんだ」
悔しそうな斉信に対し、そうじゃないとあしらいながら、こう続けます。
「そういうことをネチネチ聞くあなたは本当に嫌」
唇を重ねようとする斉信からするりと身を引き「そろそろ(定子たちが)お来しになるわ」と言い残す清少納言でした。
これぞ恋愛の達人といったところでしょうか。
『枕草子』には斉信がストーキングしていることが書かれている。清少納言はさんざん相手を焦らしている。その様がこうして描かれています。
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彼女は藤原行成とも優雅な恋の戯れをしておりました。
斉信も、恋する男の愛嬌が見えています。
政治やら家の存続を抜きにして、出世には何の関係もない、身分の低い女に翻弄されてしまう。
斉信の恋する姿が見られるのは清少納言のおかげであり、『枕草子』はやはり偉大だと思います。
清少納言がリア充アピールをした結果、その相手は名を刻んだのです。
全くたいしたファムファタルですね。
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道隆の寿命は尽きた、改元しても天命には響かない
藤原道隆は笛を演奏している最中、皆の前で倒れてしまいました。
『枕草子』で描かれた幸福感あふれる世界は、かくして終わってゆくのです。
その道隆に安倍晴明が呼び出されました。
目がかすんで喉が渇く。手がしびれる。誰かの呪詛に違いないと語る道隆。
道兼、詮子、道長の心持ちすらわからず、皆がわが死を待ち望んでいると訴えるのですが……それは呪詛ではない、寿命がつきかけていると素っ気ない晴明。
ならば寿命を延ばすよう祈祷せよと道隆に言われると、一応は「難しいがやってみる」と返します。
しかし晴明は自邸に戻ると、従者の須麻流に「関白の祈祷をせよ」とそっけなく命じます。
須麻流が驚いていると、関白は何をしても助からないと答える晴明。ならば、苦しみをやわらげるために祈ると須麻流も返します。
「あー、疲れた! 病のものの穢れをもらった」
晴明が、うんざりしたようにつぶやき、自分自身のために祈るのでした。
995年が明けます。
道隆が「長徳」に改元すると強引に言い出しました。
自らの不安を覆したいのでしょうか。表向きは疫病からの復興かもしれませんが、晴明とのやりとりの後にこんなことを言い出すと、手遅れ感に満ち溢れますね。
これを吟味する公卿たちはどうにもピンとこない。実資が「チョートク、チョートク……」とつぶやいています。
「長徳」どころか「長毒」だと、文字が苦手な藤原道綱が言い出しました。
まあ、道綱が愚かだと言いたいようで、実際そういう意見は当時あったとか。
実資は帝の若さを嘆いています。「いくらなんでも関白の言うことを聞きすぎである」と言うのですが、その帝が御簾の奥で聞いているのです。
長徳になれば災いが増えると実資は嘆きますが、結局、改元されてしまいました。
これほど博識な実資の意見が通らず、日記でその嘆きをたどるほかなく、横暴が通ってしまうところが日本史政治の闇でしょうか。
「門閥制度は親の仇」と書き記した福沢諭吉と、実資は気が合いそうですね。
定子は父を見舞いたいと嘆いています。
帝は会いたければ実家に行ってもよいと言うものの、定子は帝のそばに居たいのです。兄から父の様子を聞くと言い出します。
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愛情ゆえのようで、もっと切実な背景があると前後の流れでわかります。
定子は痛いほど理解しています。父が最も喜ぶものは、定子の男子懐妊であると。
帝はそんな定子にこう言います。
「定子は朕が守るゆえ、好きにいたせ」
「はい、お上」
このやりとりが実資の嘆きのあとだと思うと、なんと切ないことか。
公卿からは定子の父の言いなりだと嘆かれる。一方で定子を守ると言っても、どこまでできるのか。
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