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『光る君へ』感想あらすじレビュー第17回「うつろい」

2024/04/29

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第17回「うつろい」
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権力は人を変える

大河ドラマは「主人公を持ち上げるために周囲を貶める作劇手法がある」と指摘されます。

典型例が昨年ですが、こちらの記事でもご参照ください。

◆善と悪が分かりやすい『どうする家康』 淀君はなぜ魔物のような悪として描かれるのか(→link

◆ムロツヨシの秀吉はどうしてあんなイヤなヤツなのか 『どうする家康』が隠そうとしない「強い悪意」(→link

反対に主人公側は無理矢理ロンダリングする手法もあります。

幕府崩壊過程において、慶喜をいい人扱いする『青天を衝け』は一体なんだったのか。

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むろん、そうではない作品もあります。

『麒麟がくる』の織田信長はどこかずれていたものの、彼を初めてみた光秀は、純粋性を見出しました。

『鎌倉殿の13人』の北条義時にせよ、その父の時政にせよ、はじめは伊豆の田舎の人のよいお兄ちゃんとおじさんでした。

どちらも権力に近づくことで、どす黒くなり、呑まれてゆく――『光る君へ』も、道隆と道兼の描き方からそうだとわかります。

おっとりした春の日差しのようだった道隆は権力を得ると、黒ずみ錯乱してゆく。

一方、道兼は、父から後継者を外されてからは、透き通った目になりました。

思わぬところで関白の座がめぐるものの、それもあっという間に終わるため、清らかな印象で退場すると推察できます。

では道長はどうか?

まひろとの誓い。実資の期待。こうした要素を反故にしかねない伏線はあります。

道長は、良くも悪くも、確固たる思想や基盤もないように思えます。

まひろと誓って善政を目指すことは素晴らしいようで、実資や公任とは違います。

実資は有職故実の達人です。

公任は「貞観の治」を掲げ、『孟子』を読みこなしています。

そうした教養なり知性の裏付けがない、誰かへの愛情だけだと案外人間は脆いのです。

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『麒麟がくる』の信長は、光秀や帰蝶への承認欲求で動いていたからこそ、目標が膨らみ、歪んでゆきます。

対照的なのが家康で、最終盤には光秀に政治思想論議を持ち掛けていました。

『鎌倉殿の13人』の義時は、頼朝から学んだ謀略を駆使します。

とはいえ、民を思いやる政治改革に乗り出すのは『貞観政要』を熟読していた泰時の代から。

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どこかで道長が折れたとき、まひろが自らが漢籍講義をしていた彰子とともに反旗を翻すのであれば、見どころは十分にあります。

どうして今まで紫式部で大河ドラマを作らなかったのか。

それとも時代が進んだからこそできる作品なのか。

毎週新たな驚きがあります。

 


ボーイズクラブが作品の価値を決めていた

『光る君へ』はもっとバッシング記事が多いかと予想していたのですが、幸いなことにそうでもないようです。

平安時代が舞台であり、合戦もないにもかかわらず視聴率は2桁を割らない。手堅くまとめてきているのだと思います。

ここで、大河ドラマと合戦についての悲しい話に触れておきたいと思います。

中国のベストセラー作家である馬伯庸原作の朝鮮出兵(中国では万暦朝鮮之役)ドラマが放映されるそうです。

よいことだと思います。この戦いを扱った韓国映画やドラマは多いものの、明目線は少ない。明の精強な装備や戦術が描かれると思うとワクワクします。

このことを海外の友人と語っていて、日本目線の朝鮮出兵がどうにも消化不良だとこぼしたところ、

「大河がお粗末すぎるんだよね」

と指摘されました。

スタジオ撮影と顔芸でチマチマやられてもそうなるのでしょう。結果、海外の日本史ファンからも期待されていない状況に陥っています。

これは満を持して登場した『SHOGUN』への反応でも感じているところです。

あれを見た日本史ファンからは「当時の日本人はもっと高潔で道徳心があった」とぼやく意見がありました。

ニーズを理解していないのでしょう。

国際的に中世を描くならば理不尽さや暴力性は欠かせない要素とされます。

それに加えて、海外から見たい日本の姿って、理不尽さが罷り通るものではないのでしょうか。

そういう海外のニーズや世の移り変わりを見ないことに、どこまで危険性を認識できているのでしょうか。

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『光る君へ』についていえば、打毱やかな書道、女性文人の活躍といった要素が海外からも受けています。

今年はやっとNHKが看板ドラマにおいて舵を切った年として、歴史に刻まれることでしょう。

2024年上半期は、大河ドラマも朝ドラも、女性脚本家となっております。

どちらの作品でもジェンダーを前面に出しており、それが嫌われるどころか見どころとされている。

ヒロインには、数年前ならば叩かれた女性登場人物と重なる言動もあります。

まひろは漢籍や儒教倫理に詳しく民衆救済考えています。『麒麟がくる』の駒と共通する特徴です。

朝ドラ『虎に翼』の寅子は、気が強く、反論し、空気をさして読みません。

NHK東京制作朝ドラは、2010年代後半から気が強く、空気を読まないヒロインを送り出してきました。

その中でも頂点に立つほどの猛者が寅子です。

ところが、今回の寅子は迷惑行動も割としているにも関わらず、礼賛されています。

脚本家が公式SNSを更新していることも、プラス材料とされています。

条件的に近い『半分、青い。』への激烈なバッシングを考えると、あれはなんだったのかと思えてきます。

駒や『半分、青い。』ヒロインおよび脚本家の罵倒は間に合っていますので、送っていただかなくて結構です。

人間にはそれぞれに倫理や個性がある。私は彼女らに腹が立つどころか、むしろ好きなのです。

つまり、彼女らが嫌いな方とはそもそも気が合わない。だから無視してくれればいい。気の合う人同士で楽しく会話をなさっていれば平和ではないでしょうか。

前置きが長くなりましたが、要するにNHKドラマ周辺の空気も変わっているということです。

『虎に翼』には、崔香淑という朝鮮からの留学生も登場し、ハ・ヨンスさんが好演しております。

『あまちゃん』では韓国車がでるだけで、騒ぐ声が出ていたことを思い出すと、隔世の感があります。

そんな『虎に翼』は概ね好評のようで、バッシング記事もあります。

◆博多大吉「朝ドラ受け」もモヤモヤ、過剰な描写が物議…『虎に翼』ネット批判につながる「4つの危うさ」(→link

この記事については大量のツッコミがついているので、いまさらではありますが。

「オジサンに、優しくない朝ドラには、ぴえんなんだゾ(T . T)」あたりでまとめてよろしいかと。別に朝ドラはおじさんセラピータイムではないのですが。

ジェンダー考証がつくあたりで、客層は推定できますよね。

なぜ、森羅万象が俺様向けでないとヘソをまげるのでしょう?

◆全女性にパワー与える 朝ドラ「虎に翼」、ジェンダー考証・前川氏(→link

それを見ていくうちに、あることに気づきました。

◆昭和10年女子は本当に「ビールを飲んでいた」のか…朝ドラ『虎に翼』の根幹につながる「違和感」(→link

この記事の言わんとするところは、まとめれば「若い女の子が、カーッと、ビールを飲むなんて、オジサンは、いただけないんダナ(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾」というものです。

確かに昔は女性の飲酒はタブーでしたが、この場面は外食ではなく家でのことであり、そんなの家庭ごとによるとしか思えません。

そもそもビール云々以前に、当時の女性が法律を学んでいる時点で極めてレアケースです。

同じ媒体で、年代が近い男性ライターを起用している時点で、叩きの風を吹かせたい意図はわかりました。

そしてさらに考えてみます。

出来が悪いわりにメディアでは好評意見が目立った昨年大河は、こうした中高年男性へのサービス要素が多かった。

ボーイズクラブ御用達として、褒める記事が探れるのでは? と、検索してみた結果が以下の通りです。

◆『どうする家康』古沢良太氏と『鎌倉殿の13人』三谷幸喜氏、「奇才」2人の類似点(→link

◆「史実からかけ離れたファンタジー」なのか?繰り返される大河ドラマの史実問題…それでも『どうする家康』が“ナシ”とは言い切れない理由(→link

◆ついに「関ヶ原」でクライマックスを迎える『どうする家康』が、最後に危惧される「痛恨の懸念材料」(→link

◆結局、『どうする家康』とは何だったのか…コラムニストが1年間見続けたワケ(→link

◆『どうする家康』 なぜ徳川家康はこんな軽々しい人として描かれるのか その意外な事情(→link

あらかじめ「ボーイズクラブ」に適応するかどうかで、褒めるか貶すか決めておく。そうやって風を吹かせることでドラマ評価も決するようにする。

そんなことをしても本質には何の影響もないどころか、むしろ悪化するばかりかと思います。

今年はそんな風を呼ぶ動きまで絶って欲しいところです。

大河ドラマが時代遅れの象徴と化してゆく様は全く嬉しくないのです。

💟 『光る君へ』総合ガイド|紫式部の生涯・宮中・平安文化を網羅


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【参考】
光る君へ/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

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