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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第36回「待ち望まれた日」】
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土御門で出産に備える中宮
中宮は出産のため、土御門に向かいます。
源倫子が「ゆっくり休んで、存分に書いておくれ」と声をかけ、その心遣いに感謝するまひろ。
顔見知りで笑顔も見せなかった中宮が、帝の寵愛を受けるほど明るくなったのは藤式部のおかげだと倫子は感謝していました。
なんでも、帝と中宮を変えたと殿から聞いているのだとか。
母として何もしてやれなかったのに、まひろが中宮を救った、心からありがたく思っているあらためて礼を述べ、これからも中宮を頼むと念押しするのでした。
まひろも丁寧に礼を言います。
若い頃から知っている土御門だから、自分の家のように過ごすようにと倫子は付け加えます。
まひろは、謙遜してはいますが、実は時折、計算通りだと言いたげな得意そうな顔になっていますね。
人の目がないとき、その表情が出ます。策が当たった諸葛孔明顔です。
このふてぶてしい顔を出せるからこその吉高由里子さんじゃないかと私は思います。このかわいげのなさが実に素晴らしい。
瑕(きず)こそ その人をたらしめるもの
人の心の好悪 苦(はなは)だ 常(つね)ならず
好めば 毛羽を生じ 悪(にく)めば瘡(きず)を生ず
人の心の好き嫌いは、いつも同じではない。
好きになれば羽が生えたように持ち上げるけれども、嫌いになれば瑕(きず)ばかり探しあててしまう。
まひろが白居易の『太行路』を詠み、中宮に教えています。
中宮は「私も帝に瑕(きず)を探されてしまうのか」と心配そうにすると、まひろはこう切り返しました。
瑕は、大切な宝である。
きょとんとしている中宮に「瑕こそ、その人をたらしめるものだ」と語るのです。
これは、まひろなりの人物論に思えます。
彼女は、あれほど大事な道長の欠点を理解しています。道長にせよ、まひろは若紫のようではないと、からかうように語りかけたものです。
これは『源氏物語』の作風にも通じるものがあると思えます。
光源氏はじめ登場人物は大仰なまでに美しい、素晴らしい、前世にどんな徳を積んだのかと褒められます。
その一方で「ちょっと軽薄ですね」「何を考えているのでしょう」というような、チクリとした語り手の論評も挟まれます。
本作では、ききょう(清少納言)に対し、崇拝者の陰の部分も知りたいと語っていたまひろ。
光だけではつまらない――。
そんな持論があるのでしょう。
相手を深く知れば知るほど、確かに瑕は見えてくるものです。
すると、中宮の元へ、道長が子どもたちを連れてやってきました。
次女の妍子が姉である中宮に祝いの言葉を告げると、まだ幼い教通はまひろのことを指し、あれは誰かと尋ねています。
道長の次女・藤原妍子は派手好きで自己主張強め!三条天皇に嫁ぎ一人娘は皇統を繋ぐ
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中宮が「藤式部だ」と紹介し、私の大切な御指南役だと続けます。すっかり心を掴まれているようですね。
そのころ彰子の女房である左衛門の内侍は赤染衛門に疑念を呈していました。
藤式部に中宮の御指南役の座を奪われてよいのか?
そう焚き付けているのです。
彼女も中宮にとって一番そば近くに仕え信頼されている座を奪われていました。
赤染衛門はそれが中宮が求めたことならば仕方ないと話を打ち切ろうとするのですが、左衛門の内侍はなおも粘る。
衛門様は昔から藤式部をご存知なのか? 左大臣と藤式部はどういう間柄なのか?
まひろと道長の関係を怪しんでいる彼女に対し、赤染衛門がシラを切ろうとすると、さらに「ただの主従ではない」と目を光らせるのです。
素っ気ない赤染衛門に対し、左衛門の内侍には確信がありました。
藤壺でも左大臣は藤式部の局によくお立ち寄りになり、ヒソヒソと話し合っている――そう確信を込めて告げ口するように迫っても、赤染衛門はろくに応じずそそくさと話を切り上げるのでした。
女房たちの間ですっかり噂になっていることを、まひろは気付いているのでしょうか……。
清少納言が『源氏物語』に興味を抱く
皇后定子が命と引き換えに産んだ媄子内親王はわずか9歳で亡くなってしまいました。
伯父の藤原伊周は喪服に身を包み、同じく喪服のききょうと向き合っています。
ききょうは定子の死後、竹三条宮で定子の子である脩子内親王に仕えており、亡き皇后を思い出して日々を過ごしているとか。
定子の長女・脩子内親王(一条天皇の第一皇女)母亡き後はどんな生涯を送ったか
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伊周は「秋には中宮に子が生まれる」と悔しそうな表情を浮かべます。
何もかも左大臣の思いのままだ。帝の御心さえもそうだ。
伊周が嘆いていると、ききょうも「信じられない! 皇后一筋だったのにどうしてしまったのか!」と驚いています。
そこで伊周が帝の心を捉えている“物語”の存在をききょうに明かしました。
藤式部という前の越前守藤原為時の娘が書いている。
中宮と帝の背後にいる、まひろの存在を初めて知ったききょうは驚愕の表情。
あの旧知のまひろが、帝の心を動かすものを書いたのか……。
帝は『枕草子』を破れるまで詠んでいたのに、今はあの物語がお好みだと伊周が語ると、ききょうの目に光が宿る。
「伊周様、私もその物語を読みとうございます」
何やら不穏な空気になってまいりました。
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