光る君へ感想あらすじレビュー

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第36回「待ち望まれた日」まひろの毒に痺れるばかり

敦康親王が漢文の授業を抜け出し、中宮彰子のもとへ来ています。

そこへ宮の宣旨がやってきて、彰子に荷葉(かよう/ハスのこと)の香りを嗅がせようとすると……思わず顔を顰めてしまう中宮。

一体何があったのでしょう。

 

中宮の懐妊

藤式部が中宮の学問を指導しているようですよ。

赤染衛門源倫子にそんな話をしていると、猫が一瞬映り、次に道長があわてて走りながら中宮懐妊を伝えにきました。

感極まった様子の夫妻に対し、赤染衛門は恭しく祝意を示します。

女房たちはより一層、中宮に甲斐甲斐しく仕えることと誓い、まひろも満足げに頷いています。

中宮は、すっかりまひろを信頼しており、他の女房をさがらせて二人きりになりました。

まひろが体調を気遣うと、気分がいいから内緒の話をしたいと言い出します。

恋バナではないところがポイントでしょうか。中宮は、なぜまひろが漢籍に詳しいのかを知りたがっていました。

学者である父が、弟に読み聞かせるうちに覚えてしまったまひろ。

「私には無理か?」と中宮に尋ねられ、「学ぶことはいつからでも始められる」と答えます。この時代の女にとって、学問と出世は関係ありません。本人のやる気次第です。

中宮は帝が語っていた白居易の言葉に興味を抱いていました。

高者未だ必ずしも賢ならず。下者未だ必ずしも愚ならず。

あれは何の話か?と問われて、白居易の「新楽府」だと回答。

民のことを聞いて政治を行うことを説いているとまひろが解説します。中宮はますます帝に心惹かれ、学びたいとのことです。

「内緒で……」

そうつぶやくとまひろは「内緒?」と聞き返します。中宮は、亡き皇后も好きだったという漢籍教養を、密かに学んで驚かせたいのでした。

定子は、母である高階貴子が幼いころから漢籍を学ばせていたのでした。

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真心を尽くすものが人の上に立つべき

まひろは唐太宗について読み聞かせています。

中国史上最高の名君とされる唐太宗は、戦がうまいだけでなく、時運に乗じ、人に真心を尽くしたからこそ、皆が皇帝に付き従ったのです。

「真心を尽くす……」

そう感じ入る中宮。政治の頂にあるものが人の心を掴むのは並大抵のことではないとまひろは説明します。

まひろと視聴者の脳裏に浮かんでいるのは、政治家としての道長の姿かもしれません。

本作で道長が見せる最大の長所は、人の心を掴むところにあります。

ただし、このドラマを見ていると、道長のせいで摂関政治が崩れるのではないか?と思うこともあります。

道長のように、人徳と強運に恵まれたハズレ値の人物を土台にシステムを作るのは危険なことです。

摂関政治は、藤原氏に娘が生まれ、入内し、男子を産み続けなければ維持できない。藤原氏の長者が人徳に欠けても、嫌われて崩壊に至るリスクが高まります。

むしろ運の悪い人間でもどうにかなるようなシステムを構築することが大切で、盤石な体制も維持できるようになるでしょう。

徳川幕府は前期の段階で幼い将軍が輩出され、政治能力に疑念がつく者もいましたが、あれだけ長続きしたのはシステム構築が盤石だったからでしょう。

昨年の大河ドラマでその辺の巧妙さを見たかったのですが、今更ないものねだりをしても栓なきこと故、この辺りといたしまして。

 

次の東宮は誰か? 皇統のゆくえ

道長は、斉信、公任、行成、俊賢らと酒を飲んでいます。

「中宮の子が男子ならば道長は盤石だ」と語る斉信。

公任は「めでたいことはめでたいが、皇子となるとややこしい」と危惧しています。

すると、性根の真っ直ぐな行成は、ややこしくないと言い張る。居貞親王のあとは敦康親王だと納得している様子です。

公任は、その敦康親王の後見を道長がやめたらどうなるのか?と危ぶんでいるのですが、肝心の道長は黙りこくっている。

そして重々しく口を開きました。

次の東宮の話はしない。それは帝の譲位に繋がる。そしてこの話はもう終わりだと宣言します。

軽薄な斉信は、これからが面白いのに……と公任に語りかけますが、やはり道長は人格が優れているとわかる場面です。

話題にされていた居貞親王(後の三条天皇)は、兄である花山院の死を知り、冷泉天皇の血を引く皇子が絶えたことを嘆きます。

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次の東宮が敦明親王でなければ、冷泉の血は途絶えてしまう――そんな焦りを募らせ、中宮彰子の産む子が皇子でないことを祈るばかり。

そこには能天気な道綱がやってきており、こればかりは生まれなければわからないと答えています。

と、そこへ敦明親王がやってきて「父を大事にせよ」と道綱に言います。

なんでも敦明親王はこれから狩りに行くのだとか。力があり余っているから、人にぶつけるより獣にぶつける方がよいだろうと豪快に笑っています。

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狩りは苦手だと尻込みする道綱に対し、肉は食わないのか?と尋ねる敦明親王。

道綱が「食べる」と答えると、肉を食うくせに自分の手を汚したくないとは何事かと聞かれ、参るしかありません。

居貞親王は道綱にこれからも中宮の様子を知らせるよう、念押しするのでした。

一方、敦康親王は、里に下がるから学問に励むようにと中宮に言われています。

しゅんとして、子が生まれたら私と遊ばなくなるのだろうと残念がる敦康親王。

そのようなことはないと中宮は言いますが、敦康親王はわかっています。

「中宮様の子でないからには、実の子が愛おしくなるのは道理だ」と悟っているのです。

しかし中宮は、親王様がほんの幼い頃から一緒に生きてきた、これまでずっと帝のお渡りがない時からそばにいてくださった、拒まれても決して親王様の心を裏切ることはないと勇気づけます。

感動的な場面ではあります。

ただし『源氏物語』を踏まえるとなかなか複雑に思えてきます。

光源氏は幼くして母を失い、母によく似ている藤壺の宮に憧れて生きてきました。

それが母への愛から恋心へ代わり、ついに二人は一線を超えてしまうのです。

この中宮と敦康親王にもその気配が漂ってきている。

敦康親王が光源氏のモデルとされるのもわかります。しかも、中宮のいる場所は藤壺です。

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