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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第14回「金ヶ崎でどうする」】
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どうする公共放送日英格差
こんな映像が公開されました。
◆NHK大河『どうする家康』関ヶ原合戦シーンが公開?! 壮大なスケール映像にSNS興奮「映画みたい」「やばい鳥肌」(→link)
私は鳥肌よりも失笑が漏れました。
予想が当たりです。案の定、BBC『ウォリアーズ』以下の関ヶ原ですね。
ともかく予算がないことが伝わってくる、お粗末なカメラワーク。やる気を感じさせないエキストラの所作。
VFXで誤魔化しているものの、その技術センスが10年前の『八重の桜』にすら及んでいない。
デジタル数字をわざとらしく被せるセンスも、一体いつの時代なのでしょう。この関ヶ原に何を期待できますか?
英国人から見た家康と関ヶ原の戦い!BBC版『ウォリアーズ』は一見の価値あり
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どうせ関ヶ原でも、酒井忠次から受け継いだ「えびすくい」でもやるんでしょうね。期待しています。
しかし、作る側は自信満々なのがどうしようもない。
◆松本潤主演『どうする家康』第2章突入へ 制作統括は「圧倒的なスケール感」をアピール(→link)
イギリス人にならって私ならこう言いますね。
「Rubbish!」
意味は各自お調べください。
どうする勝手なリベンジ
どうして阿月が雑にこうも推されたのか?
こんな記事もありますが、
◆伊東蒼、世界の命運を背負うキーパーソンに 『どうする家康』など重要な役を担う理由(→link)
私の推察は別です。
彼女は『平清盛』に出ています。
なるべくスタッフが一致するあのドラマ要素を入れて、それでヒットを飛ばし、手前勝手なリベンジをしたいとしか思えません。
『いだてん』のリベンジも狙っているのでしょうか。こんな記事もありました。
◆【どうする家康】疾走死「阿月」が一夜明けてもネットで話題「いだてん」連想する声多数(→link)
『平清盛』と『いだてん』は、視聴率が低迷したにもかかわらず、“ネット”では大河通を自認する層が声高に「傑作だ!」と語る傾向があります。
しかし、そういうノイジーマイノリティの拡散力を頼り過ぎることは、ファンダムの断絶を招く。
そうなれば「史実でなく『いだてん』のファン狙いであの無駄な描写を見せられたの? ならもういいです。『麒麟がくる』でも見直しますね」といった反応になる人も出てくるでしょう。
なぜそれが予測できないのか?
この作品は『平清盛』と『いだてん』のファンに媚を売るようにして、『麒麟がくる』に対しては侮辱するかのような描写をする。
もしかしたら作り手当人たちは気づいていないのかもしれません。本当に厄介。
それはこういうニュースからも伺えます。
◆「どうする家康」中村勘九郎も登場 大河主演経験者4人!番組CP語る起用理由“松本潤サポート”も期待(→link)
SSRカードを集める感覚で、大河主演を集めているとしか思えません。
この役者さんにはこの役が似合う――そういう選び方をしているようには、とても見えない。
中村勘九郎さんを起用しながら、どうして武士の所作を発揮できる役にしないのでしょう。心から虚しくなってしまいます。
朝ドラの『らんまん』は神木隆之介さんが主演しています。
彼は主人公モデルである牧野富太郎青年期の写真と似ていて、これは彼が演じるしかない、といった説得力があります。
大河ではなぜそれができないのか。
結局、このドラマって、こういう話題性狙いばかりのキャスティングですよね。
適材適所という最も大事な要素が無視されているようで、そんな取り組みが成功するはずないでしょう。
鹿を指して馬と為す
本題に入る前に、三谷さん、おめでとうございます。
◆三谷幸喜氏が第41回(2022年度)向田邦子賞に決定!(→link)
まったくもって昨年が懐かしいですが、無い物ねだりをしていても仕方ありません。
本日はこの言葉に注目です。
鹿を指して馬と為す。『史記』
アルファアカウントが鹿に「#これは馬です」とハッシュタグをつけたら、なんかそれが真実になる現象。
このドラマの周辺には、どうしようもないドツボ現象が溢れていて、空気が澱んでいます。
とにかく本作は、作り手側の日本史への知識が低い。それが伝わってきて、こんなにも苛立つのかと、浮世絵を見ていて納得できました。
衣装写真を見るだけで不快感がジワリと募ってきます。
それはなぜか?
女性が特に顕著ですが、ペールカラーの薄い色合いの衣装が多いのです。
染料はお金がかかります。いい色の着物を着ていることは、それだけでもステータスシンボルとなる。
ゆえに大名家の女性ともなれば、鮮やかな色合いの服を着ているもの。あんなペールカラーは「ケチったの? 節約?」と言いたいぐらいで、とにかくみっともなく貧乏くさい。
布の柄も特別です。
着物の柄に季節の意匠を入れることはオシャレの基本です。それのみならず、絵画やフィクションではその人物の持つテーマや性格を模様に反映させることもあります。
それが日本の伝統なのに、このドラマの衣装はそういった要素が決定的に欠けている。
見た瞬間、ガッカリしてしまう。
衣装が派手だと叩かれた『麒麟がくる』の場合、そこまでおかしいと私は感じませんでした。
むしろ画面の色彩調整の問題であって、衣装そのものがおかしいわけではない。
『麒麟がくる』のド派手衣装! 込められた意図は「五行相剋」で見えてくる?
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『鎌倉殿の13人』は、畠山重忠の衣装写真初めて見た瞬間、既視感がありました。
こういう色、こういう表情を見たことがある。そうだ、武者絵だ! 武者絵が動くんだな! と、ハッとさせられました。
しかし今年は見た瞬間にモヤモヤする。この違和感はなんだろう、と『鬼滅の刃』のアニメや浮世絵を見たらスッキリしました。
浮世絵は言うまでもありませんが、『鬼滅の刃』も色彩や着物の柄が伝統を再現しているのです。
そういう伝統を破壊して、本作では無理やり自分たちの世界観を必要以上に押し付けてくる。
衣装の色合いだけでなく、所作も、展開も、語彙力も……武士に備わっている魅力をバカにしているとしか思えません。
三谷幸喜さんはユーモアセンスがあるためか誤解されることがありますが、彼は幼少期から武士の魅力を叩き込まれてきたことがわかる作風です。
宮藤官九郎さんの場合、武士というより落語に出てくるような、市井の人物に魅力を感じていると伝わってきます。
そういうテーマの大河に再挑戦して欲しいものです。
幕末の熱気を庶民目線で描いた正月時代劇『いちげき』が痛快傑作だ!
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森下佳子さんも、知識をギチギチにインプットしているからこそ飛躍できる方でしょう。
池端俊策さんは、漢籍教養でも固めているからこそ出せた魅力がある。
では本作は?
そういう知識を小馬鹿にして、芸能界裏情報でマウントをとってくるような胡散臭さが漂っている。
「綺麗事言うけどさ〜。人間汚いじゃん?w それがわかる奴こそ本当の意味で賢いんだよ、わかる?」
といったノリですね。
人間の人生には限りがあって、得てきた知識も当然異なります。
中年以降になると、その蓄積の差が出てくる。するとマウントを取るために、自分の知識を大仰に見せようとしてきます。
大河ドラマを見て、自分の知識を再確認することもきっとそうなのでしょう。
「フラグ立ったw」
「ラスボスと対面したw」
SNSでそんな風に書き込めば、アピールになるという思考。
◆ほのぼの家康の上京物語、一方でラスボスとの初対面に悲鳴も【どうする家康】(→link)
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◆「どうする家康」第13話:京の都で今後のフラグが立ちまくる(→link)
歴史を「暗記科目で過去のことだから変わらない」という認識だからそうなるのでしょう。
しかし重要なことを見落としていませんか。
なぜお市は大事な姫君を連れて上洛してくるのでしょう?
家康と茶々をあわせるという、雑なフラグを立てるためだけですよね。
そしてこういうことも。
◆【TV視てますか?】「青天を衝け」「鎌倉殿の13人」の伏線を利用する「どうする家康」 今後もどんな力業を見せるか「どきどき」(→link)
作品が別であれば「伏線」とは言えないでしょう。
そういう伏線だのフラグだの、ネットで語ることが2000年代以降の「教養」になった感はあります。
しかしそんなものは実際には教養ではなく、ただの迎合です。
みんなで言い合っていると、自分たちは個性的でセンスが良くて賢いと思えてくるから、「鹿を指して馬と為す」が起こる。
NHK作品が今後レベルアップしてゆくためには、海外の目を避けて通れません。
それなのに、日本の伝統的な魅力すら理解せぬまま、昭和感覚で雑なドラマを作る。
芸能界通を自認する人が喜びそうな、そういうワイドショー的なネタばかり積み重ねてゆく。
歴史的におかしいと言われると、どういう反応をするのか?
図書館で歴史小説を読んでいた暗い奴をいじる感覚で、こういうことを言えばいい。
“発狂”とは、すごい言葉を使うものですが、文中に出てくる週刊誌記者の言葉も凄まじく、同時に大きな勘違いをされています。
「そもそも、これって〝史実を基にしたフィクション〟じゃないですか(笑)いちいち目くじら立てる人って、何が目的なんですかね…。そりゃあ、時空が裂けてエヴァンゲリオンに乗った少年が本能寺の変を阻止し、織田信長を延命させるようなストーリーならキレるのも分かりますけど、こんなの全然許容範囲では?
大体、同作は『ステレオタイプな家康像とは違う新解釈を届ける』と明言しているわけで…。そんなに史実が大事なら、歴史ドキュメントの再現ドラマでも見てればいいでしょう。そのお門違いと来たら、そば屋に来て『パスタがない!』ってキレてるようなものですよ」(週刊誌記者)
史実通りじゃないからキレているのではありません。
つまらないから、キレているのです。
なぜ、それがわからないのでしょう。
中国には『天意 レジェンド・オブ・キングダム』という、項羽と劉邦で有名な「楚漢戦争」にSFをぶち込んだパワー溢れるバカ時代劇があります。
この作品では張良がレーザーバズーカ砲で始皇帝暗殺を企て、火鍋屋で「鴻門の会」を繰り広げられます。
そんな脳みそが蒸発しそうなバカ展開だろうが、役者は真剣です。史料を元に展開します。そして面白い。
面白いという基本的な要素が達成できていなかったら、キレる権利はありますよ。
そば屋に来て『パスタがない!』とキレているのではありません。
飲食店で生ゴミを出されたのです。
とりあえず金は払ったあとで、保健所に粛々と通報している。ネットに投稿して燃える様を待つ。そういう状況です。
まいじつさんにムキになっても仕方ありませんが……ここはとりあえず『天意 レジェンド・オブ・キングダム』は傑作だとだけ言っておきます。
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【参考】
どうする家康/公式サイト