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【『どうする家康』感想レビュー総論「前編」】
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第16回:ジャニタレゴリ押し大河
この回はジャニーズ事務所から長尾謙杜さんが出ました。
しかも一般的に知られておらず、重要でもない家康の弟役です。
・映画とのタイアップでゴリ押し
長尾謙杜さんは映画版『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』において、若年期の主役を演じています。
しかしこれも妙な話で、高橋一生さんとは似ておらず、必要性も感じさせない。
映画はNHKドラマ版のスピンオフであり、かつ『どうする家康』と衣装デザイナーが同じです。
『レジェンド&バタフライ』といい、映画とタイアップしたようなことを大河ドラマが平然としていいのでしょうか。
公共放送の意味が薄れません?
・オイラ、井伊直政は初回から堕ちるだけだ
井伊直政が初登場。
女装して家康を暗殺しようとしましたが、思えばここが本作の直政全盛期でしたね。
もしも『おんな城主 直虎』を見ていたら、とにかくワケがわからなくなったことでしょう。
家康を殺そうとしていましたが、井伊の仇は徳川ではありません。
この直政は「なんか気に入らない」ってだけで重要人物を暗殺しようとする残念な倫理観の持ち主。
とにかく最低最悪の直政でした。箇条書きにしておきましょう。
・甲冑が似合わない
・主語が「オイラ」→江戸期以降の東国で使われるもので設定に無理がある
・義経と同じでイケメンなのに力自慢だと言う→むしろ義経は腕力が弱いことがコンプレックスだった
・罰ゲームかと思うほど似合わないダリ髭を装着
・赤備えのためか、兜に映り込む白い天井照明が最も目立ってしまう
『どうする家康』感想あらすじレビュー第16回「信玄を怒らせるな」
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第17回:信玄はサンタクロース
本作の信玄は、なぜかモコモコしています。
衣装の最悪さが露呈していました。
・ローマ人というか、サンタクロースというか
演じる阿部寛さんが『テルマエ・ロマエ』の主演であるためか。
ローマ人だなんて言われていた本作の武田信玄。
本作の特徴でもある衣装センスの最低さが存分に発揮されています。
なぜか赤い着物がモコモコとしている。そのうえ、襟だけ白い。和服ではそう言う作りにならないでしょう。
なんかこう、デジタルでデザインして、ペイントツールで色を塗っているような残念な感覚ですね。
アナログでデザインしているとは思いますが、なぜ、こんなことになってしまったのか?
武田信玄がサンタクロースじみて見えるなんて、何を言っているのかわからないけれども、実際にあったのだから仕方ない。
2023年「信玄公祭り」での信玄役は、大河の阿部寛さんではなく、『大奥』で徳川吉宗を好演した冨永愛さんが務め、話題となりました。
当然の帰結だと思います。あんなサンタクロース信玄は無用。
そもそも別の祭りでは、大河主演俳優が強引な発注をし、弁当屋に迷惑をかけたなんて話も文春砲にはありましたね。
「信玄公祭り」運営者の判断力が光ります。流石です!
『どうする家康』感想あらすじレビュー第17回「三方ヶ原合戦」
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第18回:シン・大河ってなに?
サブタイトルが「真・三方ヶ原合戦」。
薄ら寒いこのセンスを誰か止められなかったのでしょうか?
だいたい「シン・」と頭につけて喜ぶ層って、リアルタイムでアニメ初代『エヴァンゲリオン』を見ていた年代だと思います。
それって本当に若者向けなの?
・ノベライズ担当者に持ち上げさせる宣伝センス
この「シン・大河」は本作ノベライズ担当者が発祥かと思われます。
この著者は、磯CP作品のノベライズを担当し、本作脚本家のファンだと公言。
幇間のような優しい質問を得意とするためか、インタビュアーとしてもよく仕事をつとめています。
どんなドラマでも褒めるのであれば、「ポリアンナ(何でも良かった探しする人のこと)ちゃんだな」で済ませることができます。
しかし、自分がノベライズ担当者だと褒めちぎり、そうでもないドラマ、叩いた方がPV稼ぎができるとあれば貶す――となると誰だって色々と考えてしまうでしょう。
◆ 松潤主演NHK『どうする家康』は「シン・大河」になる? 大ヒット大河ドラマ“勝利の方程式”とは(→link)
こういう“ぬるま湯”に浸かってばかりいるから、肝心の仕事が失敗するのではありませんか?
甘ったるく褒める人間に、ノベライズだの大口の仕事を与えることが、公共放送としてやるべきことでしょうか?
NHKは受信料を徴収しておきながら、物販で利益を得ているNHKエンタープライズが存在します。
公共放送なのに金勘定をし、それに忖度する者を有利にするとは、倫理はどうなっているのか。
ただでさえ視聴者の目線が厳しい最中に、それでいいと本気で信じているのか。
そんなことを続ければ早晩滅びます。
無様な終末を私は見たくありません。
・アル中が中高年の共感を得られると思っているくだらなさ
本多忠勝の育ての親である叔父・忠真をアル中にして、それがおもしろいと思っているあたりはこのドラマの馬鹿馬鹿しさでしょう。
歴史的観点からみますと、兵を率いる将がベロベロに酔っ払うって、軍律違反なので切腹ものです。
確かに酒乱の逸話を持つ武将はいます。それにしたってせいぜいが宴会での話です。
気候も寒冷で米も貴重な時代に、「酔いどれ侍」がキャッチフレーズになると思っているという時点で小っ恥ずかしい。
ウケ狙いで実在した人物を侮辱しないでください。
今、世界規模でアルコール消費量が減っています。
若い世代は「ソバーキュリアス」(しらふで好奇心を持つこと)がクールな時代。
それなのにこんなノリを押し出し、それが若者向けだと思っていることそのものがくだらない。
「今時の若い連中はさ〜、飲み会嫌がるんダヨナ〜」
こうおじさん構文で愚痴っているようなものだと気づいてください。
つまらないだけでなく、この駄作はひたすら時代錯誤。自分が若いと勘違いしたおじさんらしさが滲んでいて、鬱陶しいのです。
『どうする家康』感想あらすじレビュー第18回「真・三方ヶ原合戦」
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第19回:話題作りのためなら出演者の身内も使え!
本作の武田勝頼は暗愚じゃない!
とかなんとか、そんなことが喧伝されましたが、勝頼の再評価など珍しくないでしょう。
それこそ『真田丸』では短い出演時間にもかかわらず、凛々しい人物像として描かれ、ファンになった人も多いはず。
本作の場合は、研究成果の反映というより、もっとくだらない理由が垣間見えます。
・出演者親族の死すら利用する
大作家スティーブン・キングは、妻タビサも作家です。この夫妻の息子にジョー・ヒルという作家がいます。
日本ならば親の十四光で華々しく売り込んだことでしょうが、ヒルはそうなりたくない。
純粋に自分の筆力を試したい――そう考え、親のことは伏せ、わかりにくいペンネームでデビューしました。
世界的に世襲アピールは古臭くなりつつあるのです。
しかしここは日本。
世襲議員の割合が世界最高と言われる世界観です。
芸能界だってこの流れに乗っかるものですが、そうはいっても作り手の匙加減ではあり、近年大河で最悪なのがこの『どうする家康』です。
このドラマでは、本来信玄の嫡子であった武田義信にまったく触れません。
実際には信玄の認識では嫡孫を跡継ぎに指定しており、勝頼はあくまで中継ぎでした。これが勝頼と家臣の間にある関係にマイナスの影響を及ぼしたことも、勝頼の不運とされます。
ところがこの信玄は、勝頼をともかく褒めまくる。期待をかける。
歴史は関係ない。勝頼を演じる眞栄田郷敦さんと、亡くなったその父である千葉真一さんの関係を重ねているだけでしょう。この放送にあわせ『ファミリーヒストリー』では親子が取り上げられていました。
出演者の親族の死まで話題作りに利用する浅ましさ。そういうドラマの作り手の卑しさは、歴史や死者の扱いにも反映されます。
本作の信玄は、山の中で死に、野晒しになったような演出が為されました。
勝頼は諏訪法性兜を父から引き継げていません。それをドラマでは、毛の部分が赤い偽物を被らされています。
どこまでも他者を舐めきったドラマです。
・発想が性犯罪者、フェチを感じさせる
最終回で家康はダラダラと、何一つとしてやりたいことなんてないと言います。
しかし、この回は「お手つきしてどうする!」です。
要するに蒸し風呂でエロい女にムラムラして、子どもまでできたという話ですね。
「電車が動いで尻に手が当たっただけなんだ! わざと触ったわけじゃない!」
「あの子が誘ったんだ!」
ウダウダとそう言い出す性犯罪者を思い出しましたよ。
『どうする家康』というタイトルで、迷う選択肢の中に「美女を抱いちゃう? それとも我慢できるカナ?」があるとは思いませんでした。WEBのエロ漫画広告じゃないですか。
側室のお愛が家康の尻を叩く場面もセールスポイントだとか。阿茶が家康の頬をビンタする場面も撮影されていたとか。
公共放送で己の性癖を披露しないでください。
そういうことをすると、主演俳優のスキャンダルまで探られるので悪手だと思いますよ。
◆ 広瀬アリス 松本潤のお尻叩きシーン「遠慮がなくなって…」(→link)
「松本(潤)さんから、遠慮なんかしなくていいからどんどん来てくれって言われたんです。最初のうちはどうしても遠慮をしてしまっていたのですが、テストをしているうちにだんだん慣れてきちゃって(笑)。強くなっていきました」
◆松本若菜、NHK「どうする家康」未公開シーンで松本潤へ両頬ビンタしていた「私の武勇伝となりました」(→link)
続けて大役を演じ切った松本潤へ「そして、殿。本当にお疲れ様でした。あなたの背中を間近で見れてたくさん学びました。幸せでした」とねぎらいの言葉を送り、「もしかしたら殿の人生で初だったかもしれない両頬ビンタをしたことは(本編ではカットされていました。※アドリブではありません。台本にしっかりと書かれていました笑)決して忘れません。私の武勇伝となりました」と告白。
『どうする家康』感想あらすじレビュー第19回「お手付きしてどうする!」
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第20回:男がやる気を出すのは金か女目当てだ
鳥居強右衛門といえば、勇者として知られます。
逸話の内容から、精悍な武士像として描かれるのが一般的です。
それがこのドラマではふくよか。
そのくせ甲冑をつけたまま泳げてしまう上に、余裕こいてマヌケな歌まで歌えちゃう、凄まじいアスリートミュージシャン。
ただし、話の展開は阿月マラソンのせいで二番煎じ感が凄まじい。鳥居強右衛門の墓前で謝ってきてください。
・おじさんは女か金でないとやる気出さないんダナ
鳥居強右衛門が勇者の中の勇者とされるのは、危険を承知で死線を突破したから。
仲間を救うため、己の勇名を残すところが素晴らしいとされた。
しかし、このドラマの作り手は、そんな武士の心情など全くわからない。
そういう高潔さの代わりに、性欲と金銭欲がインプットされている。
作り手がそんな調子だと、劇中の武士も、勇敢さより劣情がフックにされてしまいます。
本作の鳥居強右衛門は、主君の娘である亀にデレデレし、金で釣られる最悪の存在と化しました。
そんな浅ましい感情を公共の電波に乗せて平然とできる、クソ度胸に驚かされるばかりです。
ゲス野郎を描きたかったならば、『仁義なき戦い』の山守親分目線バージョンでも作っていればよかったのに。
前述の通り、文春砲によると、脇役が目立つ回となると松本潤さんはお怒りだったとか。
気持ちはわかります。怒る方向性は違いますけれど。
『どうする家康』感想あらすじレビュー第21回「長篠を救え!」
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