どうする家康感想あらすじレビュー

どうする家康感想あらすじ

『どうする家康』感想あらすじレビュー第16回「信玄を怒らせるな」

2023/05/01

雪が舞う中、誰かが逃げようとしている――。

このドラマは、絵的に派手なシーンをいきなり見せることをやりたがります。

わざとらしく武田菱を見せているからには、誰かが武田家でピンチなんですね。

しかし、思い入れもない奴が捕まったところで何なのか。

腹痛を抱えているっぽい信玄は、なぜ崖の上にいるのか。野菜を摂取して、お腹の調子を整えましょう。

そして例のハイテンションなナレーションと共に、信長が家康の耳たぶカプッ!のシーンを繰り返すとは、よほど大事な場面なのでしょう。

こんなノリが最終回まで続くのか?と考えると離脱者も増えそうです。

浅井 長政も先週で出番が終わりだと、大貫勇輔さんが自身のSNSに投稿しました。劇中でわかるようにするか、公式サイトやSNSで表明すべきでは?

朝倉 義景は登場すらしないまま。上杉 謙信はどうしたのでしょう?

って、そんなことはどうでもええのや!

美少年萌え、美少年推し!

家康を襲った女装美少年を、わざとらしいバイオリンの響きと共に見せてきます。

ただし……この美少年は、本気で家康を殺す気などあったのかどうか、疑問です。

榊原康政と本多忠勝という屈強すぎる武将を軽くいなしておきながら、最後の最後で家康を相手に暗殺を失敗してしまう。

結局、おもちゃに飛びつく猫のようでしたし、暗殺失敗後、そんな刺客をきちんと縛っておかない徳川家のセキュリティ感覚にも驚いてしまいます。

しかも、刺客の言葉の陳腐なことよ。くだらない説明セリフの羅列だから、全然心に響かない。貴重な若手俳優に、いったい何を強いているのでしょう。

井伊家の事情は2017年大河ドラマ『おんな城主 直虎』で描かれましたので、本作では不要だったとでも?

まさに「役者を殺すには刃物はいらぬ、駄作大河に出せばいい……」という第16話の始まりです。

 


あらすじ:古の腐女子バージョン

オイイイイイイイイ!

イケメン家康様が、井伊直虎に刺され(?)かけるとかマジ尊すぎませんか?!

これ、このあと肉体関係を持つフラグだよね。これ地上波ですよね……? 先週の耳はむといい、マジリアルで変な声出たw

しかも、虎松きゅんの言葉に傷つく神の君。フラグキタコレw

え、まってまって、ちょっwおまwwBでLですよね、わかりますwww ほんと、無理、尊い……。

さすがに歴戦の腐女子の俺でも、2週連続BLとかしんどすぎる……家族と観てて「あっ…(察し」ってなる。

絶対この2人、肉体関係持つよね。『おんな城主 直虎』とか『鎌倉殿の13人』みたいな、匂わせつつ、やりそうで、やらないとか、ありえないから。

とかなんとか思ってたらテルマエ信玄に対抗するため、上杉と同盟探ろうとしてんだけど。って、阿部寛さんは昔謙信演じていたから紛らわしいんだがw

上杉出して謙信×兼続とかやらないかな……腐った目で見ててすみませんw

ここで源三郎きゅんが出てきちゃったw

てかイケメンの勝頼に激しく攻められててw これ絶対肉体関係できてるよね。瀬名と氏真みたいに「夜伽役」とか言えばいいのに。

大河って地上波ですよね……腐妄想失礼しましたw

先週の耳はむ以来、こういうトーンの記事があったので参照しました。感想は人それぞれですもんね。

◆【どうする家康】信長の “耳カプ” が大反響「リアルに声出た」「普通に見たらボーイズラブ」戸惑う声も(→link

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どうする発声

人間の美貌とは、顔だけでもありません。発声も大事です。

『麒麟がくる』の風間俊介さんを思い出します。

もともと彼は落ち着いた美声の持ち主でしたが、2020年の大河ドラマでは、磨き上げた玉のごとく声の魅力がさらに増してゆきました。劇中で彼の言葉を聞くだけで「この家康は聡明なのだな」と伝わってきた。

それが今年の発声はどうにもいただけません。

わかりやすい例が虎松こと井伊直政でしょう。

まるでファミレスで暴れる高校生のような声であり、本物の女性と見紛うような美貌も台無し。

朝の連続テレビ小説『らんまん』では、自由民権運動の担い手である早川逸馬を、宮野真守さんが熱演しました。

腹の底から響く熱い美声。朝から何と素晴らしいものを聞かせてくれるのだ。明日の朝も待ち遠しい――と思うほどのデキと比べて、愕然とするほど拙い『どうする家康』の発声よ。

これは役者個々人の問題ではありません。制作サイドの指導であり、前回の豊臣秀吉のやる気のない声も酷いものでした。

全体的な底上げを期待します。

 

どうするセキュリティ意識

今週も、冒頭からダメすぎるセキュリティ問題。

捕まった刺客が「井伊虎松(井伊直政)だ」とドヤ顔で名乗る時点でもうダメだ。

刺客は身元を明かさないこともある。敢えて明かすのなら、堂々と名乗って確実に始末する。

『鎌倉殿の13人』の善児とトウは、誰の指示か明かしませんでしたよね。それがプロでしょう。

直政はプロの刺客ではありません。

とはいえ、こんな雑なことをしたら井伊荘に大迷惑がかかります。井伊直虎が知ったら泣く……どころでは済まない大惨事になるかもしれない。

そういう迷惑の危険性を踏まえた上で、この脚本は描かれているのでしょうか?

井伊直政が、一時の感情だけで動く愚か者になるなんて絶句。

『青天を衝け』の井伊直弼描写もひどかったですが、何か井伊家に恨みでもあるのですかね。

井伊はよいところなのに。江戸時代から彦根名物であったという、牛肉は絶品です。

 


どうする見栄え

つくづく目に優しくない大河。徳川家臣団が集う場面を見るだけで、気分が落ち込んでゆきます。

衣装の配色が徹底しておかしい。

このドラマって、各人の衣装をテーマカラーとその類似色でまとめるのですが、それが決定的に格好悪いのです。

ドラマ10『大奥』の徳川綱吉は、朱色の打掛の裏地が鮮やかな緑で、一度見たら目に焼き付きました。そういう補色を使うようなことはないものでしょうか。

あまりに単調で、8bitファミコン時代のドット絵みたいなセンスに思えるのです。

ああいうゲームは、パッと見てわかるよう、単純化していた。初期『信長の野望』の使い回しだらけの顔グラも連想させますね。

しかし、今は、2020年代なんですよ。

なぜそんな謎のレトロ感を出すのでしょうか。

武田信玄の襟だけ赤くてあとは白という衣装も、センスが悪すぎて辛い。

襟だけ濃くするのって、貧乏くさいんです。

江戸時代の町娘の襟が黒いのは、汚れやすいから。そうはいってもあの黒い襟が、堅実さと働き者の印象を引き立てて、とてもチャーミングです。朝ドラ『らんまん』の寿恵子でご覧ください。

本作は、そういう時代劇の衣装センスやルールを無視しているんですね。

 

どうする定石破り

「敢えて定番を破ってこそ、シン・大河なんだよ!」

そうおっしゃりたいのですかね。

しかし、定石破りは『麒麟がくる』で既に通った道ではありませんか。

あのドラマは、キャストやビジュアルが発表されるたびに「あれ?何かイメージと違う……」という困惑が広がっていたものです。

『鎌倉殿の13人』執筆中であった三谷幸喜さんは、『麒麟がくる』に出てくる人物を見ると驚いてばかりだったとか。

中でも三谷さんが演じたこともある足利義昭には「こんな仏様みたいな像は想像もできなかった!」と驚いたそうです。

衣装もそう。織田信長は黒と赤のイメージが強いから、敢えて稲妻のような黄色系にしていました。

五行説を反映しただけではなく、既存路線を踏まえて定石破りをしたからこそ、あの作品は傑作となったのでしょう。インプット量が多いからこそできたことといえます。

一方で今年は、時代劇経験のない脚本家を起用しました。

「歴史は興味がない」と公言するような方ですので、時代劇に対しても何ら思い入れは無いのでしょう。

問題は、そんな人物に「前例のないもの」など作れないということです。

「定石破り」とは定石を知っているからこそ破れるもので、膨大なインプットを必要とします。

それが今年の脚本家にはない。回を追うごとに傷口は広がり深くなっていく、そんな残念な出来ばかりです。

しかも、直近の大河ドラマ『麒麟がくる』の逆張りなんて狙えば、旧来の像に戻るばかりでなく、脚本家にインプットが足りないから、ひたすら陳腐な造形となる。

何も新しくない。既存の像と比べると劣化しているようにすら思える。そんな行き詰まりにハマっていると感じます。

本作のチーフプロデューサーは新しい大河を目指したそうですが、何もそこまで冒険せず、『風林火山』の脚本家と主演コンビで徳川家康を作ればよかったのではないでしょうか。

何か新しいことをするにせよ、ある程度、前例を踏襲しなければ危険……というのは、今年の大河を見ていればわかりますね。

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どうする戦国のプレハブ

徳川家の居城はいつまで経っても壁がない、工事中のように見えます。

雨が降ったら書類が全て水没するような場所で、どうして軍議をするのでしょうか?

軍議場面は使い回しが露骨すぎて、もう演じている側も、どこなのか迷っていそうで見ていて辛い。

劇中の源三郎よりも、現場の役者さんの方が辛いのではないかと思えるほどで心配です。

 

どうする人質

源三郎って誰? ああ、『真田丸』の真田信之ね!……ってなると思いましたか。

源三郎の説明があまりに雑でしょう。

要するに家康の弟が甲斐にいるから奪還しろということです。

母の於大も、金で動くんなら動けと急かしますが……。

ダメです。人質の使い方がまるでダメだ。

・そんな手段で奪還したらリスクが高すぎる

・そもそも、そんな手段で奪還できるほど甘くない

・わざとらしく捕らえていないで、裏切ったら殺害でよいのでは?

要するに、見せ場を作るための設定としか思えません。服部半蔵の出た回が受けたから、ねじ込んだのか?とすら思えてくる。

このドラマは、正しい描写まで視聴者から突っ込まれるという妙な現象が起きています。

いや、それはさすがに「突っ込む方が悪いだろ」と思うでしょうが、根本的に視聴者と作り手の間で信頼感の問題があるのでしょう。ドラマで描かれることが信じられないから、たとえ正しくとも疑われてしまう。

要は、視聴者との関係にヒビを入れてしまい、こうなると来年以降も引きずりかねない禍根を心配してしまいます。

それにしても、源三郎の使い方も甘いですよね。

松平広忠の首をギフト感覚で持ち込んできた、『麒麟がくる』の信長を思い出すと、今年はなんて優しいのかとすら思ってしまう。

源三郎の首は無理でも、指を切って、耳や鼻を削いで送るくらいできるのでは?

 

どうするわけのわからぬ赤い武田家

武田家が今週も意味がわからない。わざとらしい赤で揃えるのはなんなのか?

戦装束を揃える発想というのは、戦国時代にはない。

むしろ個人武勇を目立たせるために、個々人のセンスを強調することすらあった。

赤備えにしたって、上杉の朱槍にしたって、流行したからみんなしていい♪ って、もんじゃないでしょうよ。ああいう色を使えたのは限られた猛者のみ。だからこそ価値があり特別でした。

 

どうする兄弟愛

源三郎がいきなり出てきて、回想シーンをやられても戸惑うばかり。

「兄弟同然だった今川氏真のことは忘却の彼方だよね?」

この調子だと、瀬名と信康の死も、喉元過ぎればスッキリ!となりそうですね。

 

どうする所作指導

相変わらず不気味なメイクの千代の横で、布陣図を見る信玄。

駒を投げるところが決定的にひどかった。

ドラマ10『大奥』では、さほど長くない将棋の場面に専属の所作指導がつきました。

将棋の駒を置くだけにせよ、綺麗でないとそれらしく見えません。

それと比較すると、あんな汚らしく駒を投げるなんて、しょうもないとしか言いようがありません。

なぜ、あの武田信玄がこんなアホになっているのか……?

味噌をべろっと舐めたり、千代といちゃついたり、こんな不潔感漂う信玄は前代未聞です。

武田に何か恨みでもあるのでしょうか。

 

どうする歩き巫女

歩き巫女が修行僧を殺す場面がありました。

ほんと、大河とソシャゲを勘違いしていませんか?

「SR千代を使えば勝利ぃww」

という程度のひどいセンスであり、武田家にも、よほど人がいないのでしょう。

戦闘シーンも、ごちゃごちゃしていて何が起きているかわからないし、千代の不気味さだけは伝わってきました。

あの巫女集団、あんな衣装で真面目に戦う気があるんですかね。

こんな弱い武田軍団は前代未聞です。

信玄さん……崖の上で武芸の稽古をしている場合じゃないです、もうこれ以上、私の共感性羞恥を刺激しないでください!

なぜ、岩の上でいちいち雄叫びを上げるのよ……。

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どうする親子の情愛

於大が源三郎の枕元できゃんきゃん怒鳴り散らして、もう心から見ちゃいられない。

生きるか死ぬかで戻った我が子を、枕元で叱りつけるって、どんな鬼母よ。

本作は、年配女性を徹底的に貶めることが癖になって……いや、老若男女関係なく貶められていますね。

 

どうする『戦国自衛隊』と『47 RONIN』

本作の“ひどい扱い”は本当に酷い扱いなのか。

せいぜいが昭和の鬼部活動ぐらいではありませんかね。

武田勝頼の初登場も、部活動の鬼センパイとってしまいました。

作り手としては、

千葉真一さんのご子息登場!

アクションに期待!

とでも言いたいのかもしれませんが、アクション史上最高の武田勝頼は既にいます。絶対にあれを超えられるとは思えない。

映画『戦国自衛隊』オリジナル版の真田広之さんです。

ヘリコプターに飛び乗る勝頼を超えることなどできまいて。千葉真一さんが主演を演じられておりますし、戦国・武田ファンなら『戦国自衛隊』は必見ですよ。

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ついでに『47 RONIN』もプッシュしておきます。

真田さん繋がりだけではありません。

こんなに謎の闘技場が好きな時代劇って、『どうする家康』と『47 RONIN』しか思いつかないんですよ。

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どうするキャスティング

いい!と思った役者さんは、大河に出て欲しい!

皆さんにそんな願望はございますでしょうか。

『らんまん』で天才ぶりを見せる神木隆之介さんは、再来年の『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』で平賀源内あたりを演じて欲しいと思いました。

今年は出て欲しくありませんね……経歴に傷がつきかねませんから。いっそパペットアニメでよいのではないかと思ってしまうくらい。

こんな記事が出るほどです。

◆宮沢りえvs松嶋菜々子“花の73年組”「大河ドラマ対決」 NHK御用達の“アラフィフ女優”の2人(→link

『鎌倉殿の13人』で当たり役を引いた宮沢りえさんと松嶋菜々子さんが比較されていて……。

 苦戦が続くNHK大河ドラマ「どうする家康」は、嵐・松本潤(39)の“黒歴史”になってしまうのか……。

昨年、小栗旬(40)が主演を務める「鎌倉殿の13人」の最終回にサプライズ出演までした松潤。2つの大河ドラマの“視聴率対決”を期待する声があったが、既に2ポイント近い差で「どうする──」が下回っている。

さらに、「鎌倉殿──」と「どうする──」に関しては、“花の73年組”と称されている宮沢りえ(50)と松嶋菜々子(49)の2人の対決にも密かに注目が集まっていた。同じ1973年生まれで同学年の2人が、脇を固める重要な役どころで出演しているからだ。

松嶋菜々子さんもお気の毒としか言いようがないのですが、問題はそれだけではありません。

夏以降、キャスティングができない可能性も出てきます。

ただでさえ出演料が低く、出るメリットも下がりつつある大河です。淀の方のような役ですら、断られる可能性がある。

実際、過去にもこうした事例はありました。

『花燃ゆ』です。

夏以降、キャストがどんどんおかしくなり、話題性だけで起用したと思われることも多々ありました。

◆「花燃ゆ」に乃木坂46・十福神が出演決定! (→link

とりあえず『真田丸』『おんな城主 直虎』『麒麟がくる』から役者さんを引っ張って来ることだけはご容赦お願いします。

こんなドラマに出て、武田関連大河の素敵な思い出を壊されたくありません。

 

どうするBGM

BGMの使い方が決定的におかしくないですか?

単独で聞けばそこそこ悪くないと思えるのに、使い方がおかしい。

BGMって普通は盛り上げるためのものなのでしょうが、このドラマはかえってテンションが下がります。

BGMの使い方が秀逸なのが『らんまん』です。

西洋音楽に出会ったばかりの日本らしさがあり、レトロで情緒あふれていて、切ない場面を彩る。あるいは自由民権運動の高まりに連動する。

と、ここまで書いて思いましたが、そもそもダメな場面ばかりでは、いくら音楽が良くても意味がないですもんね。

 

どうする医療考証

信玄が腹痛なのは、死への伏線ですよね。

なんだか「これから死ぬよ、安心してね」と言いた気がして、何が何やら……。

今年はおそらく、医療考証も十分ではないのでしょう。

『麒麟がくる』は医者である駒と東庵が出てくるだけに盤石でした。

『鎌倉殿の13人』も、源頼朝の死が諸説あることを踏まえつつ、医療考証をしているとわかりました。

とはいえ、今年も頑張っていますよ。赤面疱瘡との戦いは見事で……というのは本物の大河ドラマ『大奥』でしたね。

シーズン2は医療がさらに重要な扱いになりますので、重要な考証リソースは大奥へ注ぎ込まねばなりません。限られたリソースを分配する、NHKの采配が光ります。

そうとでも思わないとやってられませんね。

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どうする義信

信玄の後悔というのは甲斐という土地を領有したことじゃない。義信を殺したことでしょう。つくづく親子の情愛がないドラマだ――。

そう言いたくなったけれども、そもそも義信の存在を忘れているんだから仕方ありませんね。

それでも『風林火山』から使い回した仏像が見られたのは良かった。せいぜいそれぐらいですかね。

過去の遺産を食い潰すだけでなく、未来へ続く大きな功績を残して欲しいものです。

 

どうする風林火山

大河ドラマ『風林火山』で山本勘助を演じた内野聖陽さんは、重々しく説得力に満ち、様々な決意や思いを感じさせる「風林火山」を読み上げました。

オープニングテーマにも含まれており、サウンドトラックで今でも聴けます。迫力ある美声です。テンションがあがります。

疾きこと風の如く

徐かなること林の如く

侵掠すること火の如く

動かざること山の如し

お決まりの文句と言えば確かにそのとおり。しかし先行作品への敬意があれば全文を読み上げ、役者さんの見せ場とするのがドラマでも見どころとなるでしょう。

しかし、本作はこの調子。

「いざ風の如く進め!」

なんや、これ……と拍子抜けするばかり。

しかも厳密に言うと、誤ちのようにも思えてきます。この一文では、進軍速度だけを問題にしているように見えてくる(だったら重い甲冑を脱いでおけ、と突っ込みたくなりましたが)。

ちなみに武田信玄の旗印「風林火山」にしても、全文の引用ではなく、書き記すと以下のようになります。

兵は詐(さ、騙すこと)を以て立ち、利を以て動き、分合(ぶんごう)を以て変を為す者なり。

故に其の疾きこと風の如く、其の徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷震(らいしん)の如く、郷に掠めて衆に分ち、地を郭(ひろ)めて利を分ち、権を懸けて動く。

『孫子』軍争篇

兵法とは、敵を騙してこそ成立し、利のために動き、分散集合によって変わりゆくものだ。

風のように迅速に進み、林のように静かに待ち、火が燃え盛るように攻め立て、山のようにみだりに動かず、暗闇のようにわかりにくく、雷鳴のように激しく動き、村落を強奪し兵士に分配し、土地を奪えば要所を分け与え、権限を分散して行動する。

このとおり結構な長さとなるため、フィクション作品では「風林火山」に省略するのが基本となります。

しかし、なぜ本作は「進軍速度だけ」を取り上げたのか。

百歩譲って「風」「林」「火」「山」のうちどれか一つの要素しか選べないなら「火」でしょうよ。

「侵掠すること火の如く」ならば、赤い衣装の武田ともマッチするし、武田軍団の怖さも伝わってくる。

それが

「いざ風の如く進め!」

ですからね。

春の運動会じゃないんだから。

信玄が発泡スチロール全開の岩に立つわ。家康はずっと同じカナブン甲冑を使い回すわ。軍議ではみんな立ちっぱなしだわ。

そうした描写と比較しても今回の「風林火山」は想像以上に精神的打撃が大きくて、ちょっと呆然としています。

武田信玄を出しながら「風」しか読まないなんて……大河ドラマ『風林火山』の再放送を強く希望します。

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どうする劉禅

いくら嫌いだろうと、褒めるところは褒めて欲しい――。

本レビューに対しては、そういった要望もあるようです。

今週は『風林火山』の使い回し小道具がよかったですが、その他には特にありません。

基本的には駄作としか言いようがない。

無理に『どうする家康』を褒めるということは、『三国志』の劉禅を褒めるチャレンジみたいな話ですよ。

国力低い蜀を継いだ時点で無理があった。そういう類の擁護は確かにできるでしょう。

しかし、劉禅の能力そのものを褒めるということはできない。

そういうことなんです。褒めるところが何もない。

 

どうするNHKの信頼感

こんな記事がありました。

◆自由な「あまちゃん」、個人描く「鎌倉殿」 NHKがドラマ作る意義(→link

◆「ネット私刑」にみる公共性のゆがみ 辻愛沙子さん語るNHKの役割(→link

NHKの意義・責任について記されています。

 「雨の日」で特に感じたのは、公共放送ならではの責任の重さです。

NHKの現場スタッフはとても誠実でした。公序良俗に反しないようにフィルタリングをかける一方で、作品が一番届けていきたいコアの部分はぶれさせてはいけない。

そのバランス感が公共放送には求められるのだなと、一緒に仕事をして感じました。

今年の大河は「NHKがドラマを作る意義や責任の重さ」を感じているのでしょうか。

今年はただ出来が悪いだけではない。

視聴者と作り手の間にあった、信頼感を壊しています。参考にしてほしいのが本郷和人先生のこちらの記事。

◆本郷和人 なぜ話が進むほど『どうする家康』に違和感を覚えるのか?優柔不断なドラマの家康と、現実の家康の間に存在する「決定的な違い」について(→link

小学生を相手に徳川家康の話をすることになった本郷先生。

まず最初に一万円札の話を持ってきて「信頼性」について語りました。

原価の安い貨幣というのは割合早くできます。しかし、それが現実に流通するかどうかは国の信頼次第。

往年の漫画『北斗の拳』では、世界崩壊後のチンピラが弱者から奪った1万円札を握りながら、こう叫びます。

「こ〜んなもんもってやがった ケツをふく紙にもなりゃしねえってのによ!」

国家の信用がゼロになったことを端的に、しかもショッキングにわかりやすく示す表現ですね。

今年の大河は、紙幣を紙クズにする愚行そのものに思えます。

史実としておかしくない箇所にもツッコミが入ったりする。それは大河への信頼性低下の証でしょう。

しかしそれに対して「残念でしたw 伏線ですw 正しいですw」と小馬鹿にするのは、正解なのかどうか。

例えば「三河味噌ラーメン」の店があったとしましょう。そこで客がこう言い出しました。

「なんか味がおかしい。このスープ、三河味噌を使ってないんじゃないの?」

こういうとき、店主や他の常連客はどうすべきか。

もしも半笑いで、こんな風に返したらどうでしょう?

「は? 三河味噌使ってますよw なんなら厨房から持ってきましょうかwww そんなのわからないくせに、よくラーメン食えますよねw」

「クレーマー、マジウケるwwここのラーメンが嫌なら他の店行けば?」

「味もわかんねー奴は、自宅でカップラーメンでも食ってろww」

店側も常連も、「三河味噌を使っている」という点に関しては、間違ったことは言っていません。

けれども、その客は二度と来店しないだろうし、なんならブログやSNS、あるいはGoogleマップに書き込むかもしれない。

気の好い店主であれば、例えばこんな風に答えるのでは?

「あれ? いつもと同じのはずだけど、違うかな。季節の変化でスープの調合にズレが出て、三河味噌本来の味が出てないのかもしれんな。見直してみるよ、ありがとうな」

こういう店なら、もう一度行ってみようと思えません?

今年は、そういう信頼関係まで、破壊しているように思えてならない。

大河という店を守ることを、もう一度真剣に考えて欲しいのです。

 

鶏肋――どうする伏線回収

SNSとドラマが結びついた影響でしょう。

昨今は「伏線回収」という言葉が大きな存在感を放っていて、SNSでもドラマ通になれる「マウント材料」となりつつあります。

それが好きな方かつ「鶏肋」の意味がわからない方は、ググることなく先に進みましょう。

伏線回収への期待感が最高潮になったのが、朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』です。

「伏線 カムカム」で検索すると、ドッサリ出てきます。

多すぎるので省略しますが、この「伏線」には罠がある。

大河でもできますね。こんなふうに勝ち誇る投稿が。

「ワンパターンですよねw 信長が鉄砲連射するのは、長篠の戦いの伏線ですよww」

「家康と築山殿がイチャラブするのは、このあとの悲劇への伏線ですよw ショックを与えるためにベタベタしているってわかりませんか?www 五徳がチクリキャラなのも怖いよねw」

「姉川で信長が家康の陣に鉄砲を打ち込んだのは、関ヶ原の小早川秀秋の伏線ですよww知りませんでしたか?」

こういうヤリトリは、送り手と受け手の知識が合致しないと通用しないんですよね。

そして噛み合って「やった!」とならないと、盛り上がらない。

SNSでもそういう値に合わせてあるから、あまり複雑だと、かえって気付かれないで終わる。それどころか「わからない!」「雑w」「意味不明w」と嘲笑すらされます。

これまた朝ドラでは『ちむどんどん』がそうでした。

琉球文化独自の伏線とその回収があった同作。

ヒロインの料理を食べ続けた妹が、体調が回復している――といった、東洋医学の根底にある「医食同源」の結果も示されたりしました。

琉球は日本本土よりも中国に近いぶん、そうした思想が濃い。それを反映していた。

ところが、東洋医学や琉球文化を知らない視聴者からすれば、こうなる。

「なんであの妹体調いつの間にか回復してんのwww 雑www」

朝ドラであれば、現在放送中の『らんまん』も、現時点で伏線と思える描写が「地味w」だのなんだの言われかねないかと危惧しています。

大河ですと『麒麟がくる』の伏線回収が見事でしたね。

タイトルの時点で、光秀の行動原理と、本能寺の変の動機が説明できた。

麒麟とは、織田信長が花押に使っていたものです。信長は東洋思想を学んでおり、安土城のインテリアにも中国の聖人をモチーフにした装飾を用いていたとされます。

劇中の光秀は、幼いころから儒教思想を信奉していました。

そんな光秀が、麒麟を掲げる信長を見たら、吸い寄せられるように惹かれることが思想からわかる。

けれども信長に仕えてみれば、彼は麒麟が到来するという泰平の世を作るようには思えない。彼のいる限り、戦乱は終わらない。

そう落ち込む光秀は、徳川家康に麒麟到来の素質を見出します。

光秀と家康が楽しそうに談笑する姿をみたとき、信長は怒りに燃えました。聖獣麒麟の化身が、己を見かぎり、次を見出しつつあることに怒りを抱いたとも思える。

結果、信長は光秀を打ち据え、そしてドラマは本能寺に向かってゆきます。

このように「麒麟は儒教の聖獣である」と深掘りや考察をすれば、解ける謎でした。

長谷川博己さんはこうした役作りのために儒教書籍を読んでいたそうです。これぞ深掘りでしょう。

『麒麟がくる』で「来ない」と話題になった――そもそも「麒麟」とは何か問題

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しかし、『麒麟がくる』でそんな儒教トークが盛り上がっていたかというと、そんなことはない。

漢籍教養で伏線を読み解けば、めんどくさい奴と言われかねない空気が優勢でした。

麒麟? ビールのアレ? ぐらいのノリの方が多かったでしょう。

『鎌倉殿の13人』は、序盤に退場した北条宗時が作品の根幹を語っていました。

平氏でも源氏でもない、坂東武者の世を作る――そのロングパスを義時が引き継ぐ。

義時に敵対する後鳥羽院は最終盤に出てくると、坂東武者を「東夷(あずまえびす)」と蔑む。

東西の対決が、序盤から設定されていたわけです。

これぞ伏線では?

伏線なりトリックというのは、SNSではしゃぐだけではなく、知識を吸収し、生かし、考えてこそ見えてくるものでは?

オタクという言葉には、かつてネガティブなイメージがつきまとっていました。

とはいえ、そのころは、考察本のようなものも売れて、知識をコツコツとインプットする連中がオタクだという暗黙の了解はあった。

それが今では、SNSで盛り上がってウェーイww いいねとRTをつけてはしゃぐことが大河通のセオリーとなっているようにも感じる。

『貞観政要』を読んだのか。この戦法は『孫子』ならどこを参照すればよいのか。そんなことしたらウザがられるのでしょう。

PVを稼ぐことが正義の今、こんなことを言っても無駄でしょうが、SNSでワーワー盛り上がるのは、本質的な考察でも、解像度の高い深掘りでもないと思います。

おそらく、2000年代以降、大手掲示板で実況していた感覚が抜けない層が「フラグキターーーー!」のノリで目立っているのでしょう。

それを切り取って記事を作ればウケるのでしょうが、そろそろ時代錯誤に突入しつつあると思います。

 

SNS受けは“鶏肋”かもしれぬと?

SNS全盛期、PVを稼げれば勝ち。

そんな時代は、正しいかどうかよりも、感情を動かす方がウケると思う層はいます。

SNS特化ばかりを狙うことは、果たしてどうなのか。

最大公約数を叫ぶ競技に適応することは正しいのかどうか。

根本的な問題として、SNSはどこまで信頼できるのか――。

「知ってる? 6に6をかけると36になるw ろくろくさんじゅうろくww マジウケるよねw」

こんなどうでもいい意見でも、RTされたらバズったことになる。

一体その先に何があるのか。

今、若い世代は韓流や華流に夢中です。

大ヒット作品である『魔道祖師』およびそのドラマ版『陳情令』の視聴者たちは、劇中のモチーフである魏晋南北朝時代の本売り上げに貢献している。

特集を組んだ『すばる2023年6月号』は、あっという間に売り切れたほど(私も買い損ねました)。

そういう知識欲ある見方こそ、オタク本来の考察や深掘りでしょう。

『どうする家康』で「耳カプwww」「これがわからないヤツはバカww」と盛り上がっている一方、若い世代が『陳情令』に流れる。

だからこそ大河ドラマという枠そのものの信頼性に危機感を覚えるのです。

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昨今はSNSのファンダム空気を読むかどうか、これが重要です。

朝ドラですと、ともかくひたすらNHK東京作品を貶し、NHK大阪作品は何が何でも褒めることがルール。

今期『らんまん』には放送前から「反省会」タグがありました。

「主演が『るろうに剣心』映画で悪役だったからダメでしょw」といった、よくわからない投稿まであった。

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中身はどうでもいい。

手っ取り早くNHK東京朝ドラ叩きに乗れば乗るほど勝てる。

界隈が好きと認めた作品を、褒めない者、批判する者を叩く。

界隈が嫌いな作品は、ひたすら叩いて面白がってよいという、空気を作る。叩かない奴はダメ。

これが昨今のファンダムの作り上げる空気であり、ルールです。その中心にはアルファアカウントがいて、指示を出すように動く。

そういう層を狙った方が効率はよいのでしょう。

しかし、大河ですと『天地人』『江』『花燃ゆ』『西郷どん』は、貶していい位置に落ち着きました。出来が悪いので、仕方ないとは思います。

こうした作品と共通する短所がありながら、むしろ褒めることがドラマ通ルールとなったためか、過大評価されていたのが『いだてん』『青天を衝け』でしょう。

大河通を自認する誰かがいたら、好きな作品、嫌いな作品を挙げてもらい、分析するのも一興ですよ。

では「鶏肋」について。

鶏肋とは鶏ガラのことで『世説新語』にこんな話があります。

曹操は劉備の割拠する漢中攻めを行ったものの、思わぬ苦戦をしてしまい、どうにも攻めきれません。

「鶏肋……」

苛立った曹操がボソッと口にします。

そこで伏線回収のプロである楊修は見抜きました。

「鶏ガラは食べるほどの肉はないけど、スープにするとうまい。つまり、そこまで価値がないけど捨てると勿体無い。そんな曹操様のエコロジー精神だね! でもま、今回は撤退ってコト。みんな引き上げよ」

こうして撤退準備を始めました。

内心、揚修の「伏線回収www」というドヤ顔が嫌いだった曹操は、このあと彼を処刑しました。

この処刑には曹操の後継者争いに関係あるなど、諸説ありますが、今それを説明するのも面倒なので割愛します。

『軍師連盟』や『三国志 Three Kingdoms』に出てきております。

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鶏肋という言葉は、今は辞書にも掲載されていますし、ググれば出てきます。

とはいえ、この曹操の漢中攻めの時点では、楊修しか読み取れなかった。

それを読み解いたからこそ、曹操は楊修がかえって嫌だと思った。

そういう周囲からはむしろ理解し難く、不気味な考察くらいが、伏線を読み解くという技術ではありませんか?

例えば『どうする家康』では家康と瀬名について、

「こんなに、らぶらぶな瀬名チャンがこのあと殺されるなんて……この胸キュンも伏線なのね」

とかなんとかSNSで触れられたりしますが、ごく普通の歴史が描かれているだけで、とても伏線と呼べるシロモノではないでしょう。

「寝る前に水を飲んだらトイレに起きる羽目になる」

言ってみりゃ、その程度のことです。

それでもSNSでバズればよいって?

果たしてそれで良いのでしょうか。

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文:武者震之助(note

【参考】
どうする家康/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

-どうする家康感想あらすじ

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