こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【『どうする家康』感想レビュー総論・後編26~48話】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
第31回:史上最大の作戦って何が?
家康の秀吉倒す倒す詐欺は続きます。
ダラダラとしか話が進まないのに、秀吉を「倒す倒す」と鬱陶しい。
本当に描きたいのは、お市との恋らしいのは伝わってきます。
ラブコメがやりたかったなら、なぜ大河にした?
話を100%女関係に振り切った井原西鶴の『好色一代男』でももじって、『好色大権現家康』を夜中2時にでも放送していたら、歴史ファンの間で話題作になったかもしれません。
『どうする家康』感想あらすじレビュー第31回「史上最大の決戦」
続きを見る
第32回:このドラマを罵倒するやつはマジでセンスねえな!
本当にダメな脚本家は、オブラートに包みつつ、登場人物にこんなことを言わせます。
「俺は傑作を作ってんだよ。理解できねえお前がアホなのか、センスがねえんだよ!」
この回では秀吉の口を用いてそうされました。
最終回では茶々の口でやってますよね。
なんだよ「つまらない国になる」って。茶々は、何年後のことをイメージして言ってたの? 現代を指しているの? 茶々がそれを想像できてたというの? なんじゃそりゃ。
雰囲気だけで、そんな陳腐なセリフを作るから、恥ずかしいシーンになるんですよ。
共感性羞恥で見てられませんでした。
◆NHK大河「どうする家康」ムロ秀吉の悪口に対するアンサーが話題に 視聴者「全てのSNSユーザーが胸に留めたい」「正論かましてきた」(→link)
◆ 茶々からの現代批判「つまらない国になる」(→link)
・サプライズに頼り切り
第32回放送は、城田優さんが予告なしに鬼武蔵こと森長可として出てきました。
そういうサプライズだけが後半の売りでしたね。
大河のような長編ドラマは、序盤から人物を丁寧に描くことで視聴者を惹きつけます。
サプライズ頼りということは、負けを認めたに等しい。
けれど、制作陣の精神性が幼稚であれば、そんなことを素直に認めるワケがない。まぁ、そうした度量がないからこそ、現実にしょーもない駄作に終わったのでしょう。
本作のしょーもないスタンスには、実は一貫性があります。第32回でこんなことが語られました。
「義元に学び、信長に鍛えられ、信玄の兵法を習得する」
要するに有名人の名前をずらずらと並べるだけで具体的な中身はない。
たまにいませんか?
もう社会人になってかなりの時間が経過しているのに、学生時代の自慢をする人。
学歴。
模試の点数や順位。
友達の数やヤンチャの思い出。
部活動で良い成績をあげたなどなど……。
そういう自慢をする人とは距離を置いたほうが無難ですよね。
精神の成長が止まっているからには、まともな会話は成立しにくく、会話かと思っていたら、一方的に話を聞かされて終わるパターンです。
このドラマの家康も、そんな人物像でよしとしてしまう感覚も、過去の栄光に縋る中身のない人だからかもしれません。
以前、あるエリート男性と「科挙」の話をしたことがありました。
その受験地獄ぶりを語ったところ、小馬鹿にしたように「でもさ、俺の受験勉強と比べたらそこまで辛くなくね?」と言い出しました。
私は瞬時に察しました。
この人は世界史でなく、受験対策で日本史専攻にしたのだろう。世界史を学んでいたらこんな恥ずかしいことは言えないはず。
しかも、学校を卒業したら歴史を勉強する気はさらさら無く、とりあえず人の言うことにケチをつけることがお約束だ。
そうしてマウントを取る姿勢がいつしか身に沁みついてしまい、周囲もおだてて気遣うものだから勘違いしたまま成人し、もはや矯正は不可能となっている――。
世の中には、こうしたマウントの被害に遭ってきた方も少なくないでしょう。まさか大河で直面するとは思いませんでした。
『どうする家康』感想あらすじレビュー第32回「小牧長久手の激闘」
続きを見る
第33回:石川数正の出奔よりも、グルメリポートが見たい
石川数正が出奔します。
しかし、松重豊さんが演じるためか、海外のサイトでまでこんなボヤキが投稿されていました。
「いいから、なんかうまいもん食って語ってくれよ」
『孤独のグルメ』の方が好かれているんですね。台湾の戦国史ファンもそういう反応でしたし、日本でも同意見の方が多いのでしょう。
石川数正の裏切りより、この大河ドラマを作った制作陣の、視聴者に対する裏切りの方が度し難いですが。
・秀吉のキャンドルに、ハエトリ紙じみた真田布
小道具すらおかしいこのドラマ。秀吉たちはどうしてああも大量にキャンドルを使うのか。
真田のインテリアに垂れ下がる布は何? 戦国時代のハエ取り紙?
本当にどういう発想でしょうか。気が散るだけです。
『どうする家康』感想あらすじレビュー第33回「裏切り者」
続きを見る
第34回:こんなハズレ女でも迎える家康は偉いよな!
このドラマの作り手は、家康のどのあたりが偉いと思っているのか?
第34回はそのヒントになります。
「ブスでババアでも正室に迎えるなんてマジすげえよなw」
旭姫との婚礼は、こんな認識でしょうね。
家康の醜女フェチズムをプロットに練り込んだ映画『首』の方がまだしも上品に思えます。
・夢オチだらけ
このドラマは夢オチが本当に好きでした。
本能寺前の信長といい、石川数正に襲われる夢を見る家康といい、使い回しな展開ばかり。
映画『レジェンド&バタフライ』でも、「本能寺から逃げ出した信長と濃姫が南蛮船に乗って海外へ飛び出す」という、陳腐な夢を見ていました。
あんなもん、映画館で見てたら、ポップコーン吹き出しますよ。
・演技プランがおかしい
旭姫役の方はルイ・アームストロングをイメージしながら演じたとか。
なんじゃ、それ? 通りであんなわけのわからない演技だったのか、と時代劇に全く合っていない理由に納得できました。
これは本作の役者だけでなく、ドラマそのものの問題です。
時代劇特有の所作や演技指導が十分でないため、役者が思い思いのことをしてしまう。
・貴人の前でも平然と尻を向ける
・アドリブでダチョウ倶楽部じみたことをする
・プロレス技を披露する
・「おい!」とリレー状態で呼び合う「おいリレー」
制作陣は、他の真っ当な時代劇を見て恥ずかしくなりませんかね。
NHKドラマ10『大奥』では時代劇初挑戦の方でも、このあたりはまっとうでした。『どうする家康』は大ベテランの高畑淳子さんですら演技プランがおかしいと思えます。
くどいようですが、役者だけの問題ではありません。
時代劇らしさを全く重視しない、発言権の強い誰かが制作スタッフの中にいたことが問題なのです。
その弊害が最も出てしまったのが本多正信(松山ケンイチさん)でしょう。
彼は演技が上手い。それをどこかセーブした上に変なブーストをかけたようにも思える。時代劇というより現代劇のぶっ飛び名探偵キャラ。
『平清盛』では問題なかった加齢演技も今回は感じられませんでした。主演を引き立たせるためにセーブしたのか?と思うほどです。
磯CPに関わった大河2作でこの仕打ち。演技力があっても報われないなんて……悲しくて言葉になりません。
別に傑作とは言わず、マトモな大河ドラマであれば、存分に実力を発揮できたでしょうに。
・センスはニコライ・バーグマン、スイーツを超越した、あやしいドラッグ大河
第34回は記憶に残った回でもあります。
石川数正が隠し持っていた仏像が出てくる。すると謎のセンスを発揮する押し花が出てくる。
一体なんじゃこりゃ……と、こちらも思っていたら、その香りを前にして教団の呪文である「あほたわけー!」と絶叫。
『三国志』の周瑜なら吐血していると思うくらい精神的に辛い場面でした。
あらためて違和感を確認しておきましょう。
・あんな押し花、戦国時代にないでしょ(※ニコライ・バーグマンのフラワーボックスへのオマージュと後の文春砲で記されていた)
・干した花の香りをポプリとして用いることは、当時の日本ではまず考えられない。何の香りがするんだ
・ヤバい草の香りを嗅いでテンションを上げて叫ぶって、嫌な予感しかしない
文春砲によると、あの謎すぎる押し花は、松本潤さんのセンスだったとか。
「俺のセンスはニコライ・バーグマン」と語ったとのことで、もしこれが事実なら明らかにやり過ぎ。そんなものはプライベートでやることであり、共演者にでも贈ったらよろしい。
伝え聞くところによれば、彼はジュリー藤島さんの寵愛を受けているとか。
その流れで後輩ジャニーズの演出も手掛け、後輩メインのステージでもどういうわけか自分が目立つらしく、ジャニーズファンの間でもなかなか困りもの……とか、そういう芸能裏話なんて一切知りたくないんですよ。
しかし大河ドラマを見る上でどうしてもそういう情報が流れ込んでくる。まさか文春砲まで絡んでくるとは、本当に今年は異常事態が続いています。
当初は、フザけた仕事ばかりしている小道具の担当者に怒りを覚えていました。
それが文春砲にあるような横槍があったとしたら、小道具担当者も被害者でしょう。その苦悩を思うと切なくなってきます。
そしてヤバい草でラリっているような描写も。
『どうする家康』では出演者が大麻で逮捕されるという、『花燃ゆ』以来の失態を成し遂げました。
『花燃ゆ』は放映後。
『どうする家康』は放映中。
妙な草で本当にラリラリしている人がいたとは……もう本作は、スイーツやお花畑大河ドラマどころか、ドラッグで怪しいお花箱大河ドラマですね。
第35回:欲望の怪物は自己紹介だ、いいから『パリピ孔明』を見よう
昭和温泉街みたいなムフフ演出を見ていると、ドラマの作り手による自己紹介に思えます。
・星宿を知らない軍師
実力不足の書き手が物語を展開させるときに、よく使われるのが“偶然”に頼る手法。
本作もご多分に漏れず、やたらと廊下で重要人物同士が出会います。
家康と三成もそう。
しかも会話の内容がアホみたいに幼稚。
「西洋では星と星を繋げて星座にするんだって!」
と、まるで東洋人は星座を知らないような言い草でした。
星と星を繋げて星座にする発想は古今東西どの文化でもあります。日本では、大和と琉球の場合は中国発祥の星宿で、アイヌには独自の星座があります。
この星宿がかなり重要です。
生まれた時どの星宿か。運命も決まると考えられていたし、呪術や祈祷では重要だから、昔の貴人は生年月日を隠すことすらあった。
軍師として星を読むなら、その辺を知らないなんてまずありえません。
ドラマ『パリピ孔明』では、孔明が星宿を踏まえた祈祷を行なっていたんですけどね。そこまで知識がなくとも、北斗七星くらいは一般常識としてあるでしょう。
もしかして、あれですかね。テレビの情報番組などでやってる「今朝の星占いランキング!」でも見ていて思いついちゃった的な?
全てが『パリピ孔明』にも全く及ばない大河ドラマでした。向井理さんも、ディーン・フジオカさんも、こちらに出て大正解。
ドラマ版『パリピ孔明』の気になる名言・名場面・兵法・故事を徹底解説
続きを見る
『どうする家康』感想あらすじレビュー第35回「欲望の怪物」
続きを見る
※続きは【次のページへ】をclick!