鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第7回「敵か、あるいは」

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第7回「敵か、あるいは」
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外で箒を掃いている女の名は亀

安房の頼朝は相当ストレスが溜まっているようです。

いつまでここにいるのかと安達盛長にあたっている。

と、外を箒で掃く女がいました。盛長が追い払おうとすると、なんだか頼朝のイライラが治ったようです。

警護担当の三浦義村北条時政が去ろうとするところで、頼朝が呼び止めました。

「そういえば舅殿。わしを置いて先に船で逃げたらしいな。耳に入ってくるのだよ、そういうことは」

時政は焦ります。密告の場面はありませんでしたが、義村がそっと告げていてもおかしくなさそうですね。

謝り出す時政の弱みにつけこむようにして、頼朝は今一度、武田信義が参陣するよう説得せよと命じます。

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手ぶらでは同じことの繰り返しでしょうから、そのための仔細は盛長が渡す、だから今すぐ行けってよ。

しかし時政は、武田信義相手に「家臣になります、院宣を持ってきます」と言ったままシラを切っているわけでして……。そんなこと頼朝に言えるわけもなく、追い払われるように出ていきます。

そして邪魔者を追い払った頼朝は、盛長に何かを頼みます。

盛長は安西景益に、先ほど庭を掃いていた女のことを尋ねています。

背が高く目が細い女は、亀というらしい。近くの漁師の“娘”である。安達盛長は「佐殿がお気に入りだ」と告げています。

嗚呼……嫌だなあ。

貴人というのは女を落とすにせよ、自分でやらず側近に頼むことが往々にしてあります。

源氏物語』では光源氏のそばにいる藤原惟光が色々大活躍でした。情事の最中に夕顔が頓死した時なんか、死体の処理までこなしています。

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そんな日本の伝統を大河で描くか、描かないか。ここが重要でしょう。

2021年『青天を衝け』で出てきた平岡円四郎も、京都では主君である徳川慶喜のために、女の斡旋やら交渉業務をしていたわけです。

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でもそんなこと知りたくないですかね。

そこなんです。あったことを露悪的でも見せるか、見せないか。その覚悟がちがいます。

要は盛長は出会いのセッティングをしたんですね。そこまでが従者の仕事です。

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「ご自分で必ず勝てるとおっしゃった」

義時は懸命に広常を説得にかかっています。

そのしつこさを広常が指摘し、しつこさが裏目に出ることもあると助言している。

しかし「俺は嫌いじゃねえがな」と言うあたり、少しは心が揺らいでいるようです。

広常は、これみよがしに砂金を見せてきました。陸奥から贈られてきたようで、藤原秀衡とと繋がっているんですね。

どいつもこいつも味方につけたくて必死だな、といささか呆れる様子で、袋に入れた砂金を義時へポンと投げる。

「くれてやるよ」

「いただけません」

「こう言うときは素直に受け取るもんだ」

「いただきます」

結局、受け取ってしまう義時が笑えるようで、なかなか面白い場面ではあります。

砂金が重要ということは感覚的にわかりますよね。

例えば日本が貿易している宋は、北宋ではなく南宋です。金の鉱山は北部にあった。それが金王朝の領土になって採れない。そこで日本から金属や刀剣を輸入した。

それが日宋貿易です。

日本の陸奥から南宋まで、交易で繋がっていると見ることもできるのです。宋代舞台の華流ドラマを並行して見るのもありですね。

それともうひとつ、広常の態度です。

前回、広常は酒瓶から直接口をつけてグビグビと飲んでいました。誰かと分け合うつもりがないからこそ、ああいうことができる。

そんな自己中心的な男が、義時に砂金をくれてやる。寛大になったからこそ、素直に受け取って欲しかったのでしょう。

要は、頼朝を担いで坂東を取り戻す案が悪くないと認めてはいる。

ただ、それだけでは足りない。

ここで義時は本音を語ります。

自分は次男坊に過ぎず、兄は佐殿のために討死した。自分は足を突っ込みたくはなかった。米倉で木簡でも数えている方が性に合っていたのです。

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「そいつは気の毒だったな」

広常は義時に興味が湧いてきたようです。

「しかし、兄の思いを引き継いでようやくわかったのです。こんなに面白いことはないと」

平家隆盛の世に、平相国に兵を挙げる。奴らを西に追いやり、新しい坂東を作る! 愉快だとは思いませんか? そう同意を求めています。

しかし広常はあくまで現実的。愉快だと言われても、首を切られたらおしまいだとそっけない。

そして必ず勝てると誓えるかと、義時を問い詰める。

「誓えます!」

「言い切ったな」

「ご自分でおっしゃったじゃないですか。上総介殿が加わってくれれば必ず勝てると」

とんちのようでとんちじゃない。確かに広常はそう言っており、義時にそれを指摘され何かを感じています。

自分だってわかっていたはずだ。俺の判断ひとつで勝敗が決まる。その面白さに目覚めたのです。

するとそこへ家人がやってきて、長狭常伴の襲撃計画を伝えてきました。

頼朝が殺されるかもしれない。すぐにでも……と義時は動揺しますが、広常はこう言います。

「お前はここにいいるんだよ」

頼朝が天に助けられるならば、無事である。そんな一か八かの証明を求めてくる広常です。

これは盛り上がります。

しかも頼朝は、ゲスな目的を夜に遂げるわけであって……どうなることやら。

 

人妻だった亀は「夫も討ち取って」

盛長が三浦義村に護衛を休むよう告げています。

そうはできないと相手が言うと、佐殿の命令だと盛長は返す。

嗚呼、昔の従者は辛い。なぜこんなゲスセッティングのために苦労をしなければならないのか。

義村はあっさりここで引き下がりつつも、頼朝と亀の姿が小屋に消えていく姿を見てニヤけています。今ごろ政子がどうしているのかを考えると、頼朝に怒りが湧いてきますのぅ。

次の場面じゃ、もう小屋で頼朝と亀が隣り合って寝ていますからね。ゲスにもほどがある。

そこへ盛長が入ってきます。

「お逃げください、この女の夫が乗り込んでくる!」

頼朝はここで「人妻なのか!」とびっくり。亀はケロリと「言ってなかった?」と返す。安西景益が「漁師の“娘”」と答えていたのが悪かったのでしょうか。漁師の“妻”でもあったわけです。

亀の夫の権三が仲間たちと迫真の声をあげ、松明を掲げて走ってきます。

「亀! 亀はどこだ、亀ー! うあー!」

もう生々し過ぎて見ちゃいられないよ!

それにしても日本人がおとなしいというのはあてにならない話でして、中世まではこういう襲撃が顕著でした。

真田丸』でも森林資源をめぐって、村人同士が武器による戦闘をする場面がありました。三谷さんはそういう稗史(はいし・民間の歴史)も取り入れるわけです。

大河の弱点として稗史軽視傾向はあると思います。

『麒麟がくる』には駒のような人物がいるだけで「ファンタジーだ」と批判する記事を見て、残念に感じていました。

海外のドラマではアノ手の人物の存在は珍しくもありませんし、それも歴史フィクションの定番技法です。

そんな浮気を罰しようとする漁師と、長狭常伴率いる暗殺団が出くわしたから大変だ。混戦のまま殺し合いに突入しています。

逃げ出した頼朝、亀、盛長が「命拾いした」となりゆきを見ていると、護衛の義村がやって来ました。

「よくぞご無事で」

そして、敵を討ち取ってくると告げると、亀がこう来た。

「ついでにうちの人も討ち取って!」

極悪にも程があるだろうに……。本作、気の毒な夫ランキングにおいて、不動の一位と思われた江間次郎(八重の夫)が早くも陥落しました。

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権三は今回しか出番がありませんし、何せあの三浦義村が襲撃しています。

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おそらく彼は……冥福を祈りましょう。来世はもっと優しい妻と一緒になれるといいですね。

ほのぼのと残虐が同時展開するこの中世感。それにしても、頼朝が天に守られるって、ムラムラしたらラッキー命拾いということですか?

どういうことなんだ……。

 

遅参するものなど戦では役に立たん!

朝、義時は一睡もできなかったようです。眠りもせず、広常の館で座って待っていました。

すると広常から頼朝が助かったことを聞かされます。

長狭常伴が襲ったとき、既にもぬけの殻だったとか。どう悟ったのかは不明だけど、無事に逃げ延びたのです。

主人公がホッとする感動的な場面なのに、なんなんでしょう、このモヤモヤ感……。

大泉洋さんがお子様に見せられないという意味はわかりました。教育に悪い!

千葉常胤、ついに頼朝の前に参上――。

歓迎されたのに、身動きしません。寝ているのかと不思議がる一同。土肥実平が「千葉殿」と声をかけます。

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そして気づく。ひょっとして、泣いておられるのか?

泣いてました。

なんでも佐殿のお姿が、亡き義朝様と重なってしまたってよ。感極まった中で、頼朝はこう言います。

「千葉殿……わしはこれよりそなたを父と思うぞ」

「佐殿……」

「よう来てくれた!」

抱き合う二人。本当に頼朝っていやらしいなぁ。人の心を魅了するんだなぁ。

常胤は、土産があると言い出します。何か嫌な予感がする壺のようなものが……頼朝と盛長の二人が中身を覗いて

「あっ!」

なんでも下総の国衙に平家の目代がいたものだから、館に火を放ち、首を刎ねて土産にしたそうです。

「手にとってご覧ください」

いかにも温厚そうな千葉常胤が恐ろしいことを言い、頼朝たちは「後ほどゆっくりと」と話を逸らしています。

あんなマトモそうなおじいちゃんが生首を土産にするんだからなぁ。

でましたね……期待の遺体損壊。と、なぜ大河に遺体損壊が出ると喜ぶのか?

いくらなんでも趣味が悪いというのは承知の上でちょっと比較させてください。

生首の扱いにも当時の価値観が反映されます。

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そしてここでさらなる朗報が! ついに上総介参陣です!

「でかした小四郎!」

頼朝が叫びます。和田義盛と向かってくる予定ですが、広常は現れず、途中でぼーっとひなたぼっこをしているそうです。

義時がそんな広常に声をかけると、相手は自信ありげにこう言います。

「俺の軍勢を見ろ。その数二万。戦の支度は整っている」

そう自慢げな相手に、佐殿が待っていると促しても、相手は止まりません。

「これがどういうことかわかるか? 頼朝は太刀をつきつけられてるのさ、喉元にな。行こうか」

かくして対面。

名を名乗る上総介広常に、頼朝はこう言います。

「帰れ!」

「は?」

頼朝は昼前から待っていたのに、無礼にもほどがある、帰れ! キリッと構えてそう言う。義時が焦って嗜めても止まりません。

遅参するものなど戦では役に立たん!

頼朝は大軍勢であることを理解した上で、礼を知らぬ者と相手を罵る。焦らして己の値を吊り上げたと見抜き、さっさと帰れとまで言います。

しかも一戦するなら、受けて立つと。

この辺が頼朝の強さです。広常は参りました。遅参したことを詫び、田舎者の無礼だと許しを請い、これより先、身命を賭して仕えると誓う。

頼朝も認め、互いに平家を倒すと誓い合うのでした。

義時が感極まった顔をして、目をパチパチとさせつつ、二人のやり取りを見ています。

もう無邪気と言っていいくらいで、こんな幼くて素直な顔を小栗旬さんはするのかと感動すらしてしまいます。

しかし、愛嬌だけでもない。

きっとこうした場面から色々なことを吸収し、この先、活かしていくのでしょう。そんな恐ろしさも感じます。北条義時の凄さがわかる、説得力に繋がります。

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