鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第43回「資格と死角」

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トキューサの蹴鞠技がキッカケかい

北条政子藤原兼子という二人の女性政治家で行われている話し合い。

後鳥羽院はその行方が気になると同時に、「自分と会いたくない」という政子には、いささかご機嫌斜めの様子です。

慈円が「自分如きは釣り合わないと言っていた」とフォローするかのように伝えると、そういう卑屈さが腹が立つと苛立っています。

しかし、ここで面白い情報が。

鎌倉一の蹴鞠名手である北条時房が来ていると聞かされ、後鳥羽院は興味津々になっています。

どうやらこのお方、蹴鞠でも一番にならないと気に入らないようでして。

時房がぼんやりと佇んでいると、そこへ突然、蹴鞠の球が投げられてきました。

「ああ、すまぬがこちらに蹴ってくれぬか」

普通の貴族を装った後鳥羽院がそう言いながら時房に近づき、その腕前を確認しています。

球をつま先で回転させたり、つま先とスネで挟んだり、あるいはまたいだり……蹴鞠の場面をじっくり見る機会はなかなかないので、これは非常に面白いですね。

現代ですとサッカーのリフティング、それを進化させた「フリースタイルフットボール」にかなり近いんではないでしょうか(むろん現代のほうが技ははるかに進歩していますが……)。

想像以上に後鳥羽院が上手だったからか。

時房はニコニコと、形ばかりを気にする都の人にしては大したものだと満足げで、そう言われた後鳥羽院も東夷にしては筋がよいと返します。

そして後鳥羽院を親しげにバシッと小突く時房。あーっ、いけません!

ドヤドヤと警備が駆けつけ、たちまち時房は取り押さえられます。

「あんたいったい……」

「上皇様であらせられる!」

「ご無礼をお許しください!」

「トキューサと申したな」

「トキューサでございます!」

「いずれまた勝負しようぞ、トキューサ」

よかったな、時房。平知康のすすめで、佐原義連由来の「時連」を捨ててまで改名して。トキューサとして親しまれてよいではないですか。

しかも、これでスッキリしたのか。後鳥羽院は親王を鎌倉に送る話を早く決めてやれと、慈円に促しています。

トキューサで笑ってごまかされそうだけれども、後鳥羽院が敗北する理由がわかりました。

このトキューサが泰時ともども都に乗り込むと思うと皮肉なんですよね。

何が駄目か?

・感情由来で物事を決める

→後鳥羽院が上機嫌になったのは、自分の権力にトキューサが平伏したということにスッキリしたからに思えます。戦というのはそんな感情ではなく、利害を考えて起こさなければ危険。

・ワンマンでやる

→そういう感情的な人物を止める人が周囲にいればいい。しかし、なまじ才知溢れる後鳥羽院は自分一人で決めてしまう。蹴鞠ですら一番出ないと気が済まないという感情由来で戦おうとしても、誰も止めない。

・「東夷(あずまえびす)」

→ハッキリと言ってしまいましたね、「夷」と。

このドラマは北条宗時が序盤に「坂東武者の世を作る」宣言をして以来、個人的にはずっと脳内に「華夷」という言葉がよぎってなりません。

高橋昌明先生のご著書『都鄙大乱 「源平合戦」の真実』(→amazon)のカバーと中身も同時に思い浮かびます。

「都鄙」も、「華夷」と似た言葉です。

「華」とは朝廷で、「夷」は坂東。この本来は華が勝る秩序をひっくり返す。そんな運命が流れていて、義時という人間はただその巨大な運命に引き摺られているだけに思える。

日本だけのことでもなく、中国大陸でも同じで、南宋が滅び、元が成立して華夷秩序が逆転します。

そうして逆転した「夷」同士、元と鎌倉幕府がぶつかり合う。そういう流れが興味深い。

後鳥羽院が時房を「東夷」と呼んだことで、そんな流れがますます加速したように思えました。

 

東大寺の大仏様似

兼子はすっかりご機嫌になっていまして、世の中では政子のことを悪く言うものもいると語りかけます。

稀代の悪女とか。きっと鬼のような顔だろうとか。

しかし兼子は、政子には政子ならではの考えがあったと理解を示します。

「どこが鬼ですか。むしろ東大寺の大仏様に似ておられるわ」

そう褒められ、政子は「ありがとうございます」と返しています。

現代人は、仏像に似ていると言われても嬉しくないかもしれませんが、昔は仏像に権力者の顔が反映されたと言います。

武則天は龍門石窟の盧舎那仏を、自分の顔に似せたそうですよ。

兼子はすっかりご機嫌で、酒は飲めるのかと政子に語りかけます。ほんの嗜むほどだと返されると、お近づきの印に一杯誘います。

「ぜひ……」

「持って参れ」

かくして大河では珍しい女性同士の飲酒が始まるようです。飲む場面までは入りませんが。

それにしても、この女優二人の素晴らしさよ。

シルビア・グラブさんは外見や所作も素晴らしいのですが、なんといっても声が絶品ですね。絹の上で玉をコロコロと転がすような、そんな美しさがあります。

そして小池栄子さんが北条政子というのはわかった気がする。

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頭巾姿が似合いますし、仏像に似ていると言われたら納得できる。

時代を超えた普遍的な美貌で、ただ美しいのではなく、豊かさをもたらすように思えます。古今東西女神像にありそうなお顔立ちなんですよね。

そりゃ大江広元も酔いしれますよ。風格が違う。

 

私が執権になるよ、ははははははは!

かくして実朝の将軍後継者には頼仁親王が決まりました。

御台所に知らせねばと張り切る実朝。

源仲章は実朝が左大将に任じられたことを祝っています。右大将の頼朝をも超え、しかも尼御台は従三位になった。

上皇様がいかに鎌倉殿を大事にされているかの証だと仲章は言います。

実朝はこうなったら太郎泰時にも官位が欲しいと言い出します。

菅原道真と同じ讃岐守はどうか?

仲章がそう提案すると、泰時は畏れ多いと答え、義時も国司は早いと牽制しています。

それでもなって欲しいと実朝。上皇様ならば聞いてくれる、自分が頼めば必ずだと仲章は意気揚々です。

はぁ……なんだこの実朝は。もしも和田義盛の亡霊がいたら「ウリン、それはねえぜ!」とでも地団駄を踏みそうな流れだ。

実績でなくて上皇との距離感で官位やら国司がもらえるというのは、明らかにおかしいでしょうよ。危ういですってば。

なおも仲章はいやらしく、北条はめでたいこと尽くしだと義時に迫ります。

しかも頼仁親王が鎌倉殿になったら、関白として政治を進めるとか言い出す。いや、そないに思ったことをペラペラ喋らんでもなぁ。

さすがに苛ついたのか、義時が「決まっているような言い方だ」と答えると、「朝廷と鎌倉を結ぶ役に私より適任がいるか」と仲章は完全に調子に乗っています。

執権殿は伊豆に帰ればいいとまで言い出した。

すっかり暗い顔になった義時は、沈んだ声で、それがかねてより望んでいたことだと返します。

「そうなったら私が執権になろうかなぁ、ははははははは!」

むかつく笑いを繰り返す源仲章。

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なんて清々しい嫌味顔なんでしょう。開き直った下劣な笑顔で、演じる生田斗真さんが楽しそうでなによりです。

若い頃からイケメンと言われ尽くしで、もう飽きましたもんね。こんなトリカブトの妖精みたいな役をできて素晴らしいことじゃないですか。

 

義時が目指してたものとは?

さて、北条泰時は自宅でぼやきタイムです。

弟の北条朝時から讃岐守はすごいと言われ、妻の初からまさか断らないだろうと念押しされますが、表情は浮かない。朝時は断ったら俺がなるってよ。今週もダメな弟だな。

と、そこへ闇の物体そのもののような義時がやってきます。

初が、また夫が何かやらかしたのかと心配していると、朝時が「ちぐさ」という女と揉めたことを詫び出している。いや、だから、お前は本当にダメな奴か。

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冷たい表情のままの義時。

太郎と話があるから外せとあっさり言い切ります。

そして単刀直入に、讃岐守を断るように迫ると、泰時は「わけ」、理由を知りたがります。

義時は、自分がよく思われてないと知った上で、泰時のことは認めていると言い、だからこそと説明します。

いずれ泰時は執権になる。

泰時ならば、自分が目指してなれなかったものになれる。

そうなったとき、あの男――源仲章が立ちはだかる。

好きにされてはならない。だから気をつけて借りを作るな。

泰時は讃岐守は辞退しようと思っていると言います。

「気が合いましたね」

「帰る」

話が通じたことを理解したらアッサリと帰り支度を始める義時。親王将軍を受け入れるのは人質になると真意を明かします。

そんな父を引き留め、泰時は「なろうとしてなれなかったものは何か」と尋ねます。

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義時は無言のままでしたが、答えはおおよそ浮かんできます。

義時は「守成の英雄」になりたかったはず。

創業の英雄は、乱世の奸雄として悪事に手を染めねばならず、義時は自分がそうではないと思いたかった。頼朝の悪辣さに憤る側の人間だと思いたかった。

しかし、思った以上に乱世が長い。

清廉潔白であれば畠山重忠のように滅びてしまう。生き延びるために汚く染まってしまった自分が悲しくなる。

でも泰時はそうではない生き方ができる。よりよい世を作れるはずだ。

そう信じているのでしょう。

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