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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第43回「資格と死角」】
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京のイケメン貴族にのえウルウル
実衣が、桜の花見からうきうきした顔で御所に戻っています。
姉がいないだけでこんなに伸び伸びできるなんて!
そう言い、のえに話しかける。
実衣は夫・阿野全成の言葉を忘れたのかもしれない。権力に酔いしれ、あわよくば時元を次の鎌倉殿にしようと企み、迷走しているように思えます。
そしてこれまた危険なのえ。
ため息をついていると、向こうから仲章が歩いてきます。
「執権殿の奥方でいらっしゃいますね」
「そうですけど」
なんだ、この人妻のよろめきじみたけしからん展開は。
二人は桜を見ています。何がけしからんって、のえはこんなロマンチックな時間を義時とは一切過ごしたように思えないところですよ。
彼女は「永福寺が素敵だった」とか語り始める。
仲章は「嵐山の桜も見頃かもしれない」などと言い出す。
向こうにずっといたのか?と、ときめくのえ。仲章はここだけの話と言いつつ、未だに坂東の水が合わないと打ち明けると、私もそうだとのえ。
彼女は遠江(静岡県西部)の生まれだけど、東国の水がなじまないと気取っています。前世はきっと帝に仕えていたってよ。
そんな彼女に仲章が「佇まいが雅だ」と褒めると、「よく言われる」とニヤけ顔ののえは、京の話を続けたがります。
いつでもつきあうと言い残し、去っていく仲章……って、一体なんなんだよ、きみたち本当になんなんだよ!
三谷さんは腕を上げられたと思うところがあって、それはいやらしい会話術の気がします。ここの二人の会話は実にいやらしい。
のえの浅はかな見栄っ張りぶりよ。本物の京都育ちである千世にはないワナビー感が痛々しい。
そういう背伸びした女を転がすなんて、仲輝からすれば簡単コロリ。実質的に不貞としか言いようがない目線をビシビシと送っていて、これはあんまりだと唸ってしまいましたね。
こういう色気のある作風だとは思っていなかったので、ただただ驚いています。古典春本の口説き場面じみた粘りがありますよね。
まったく、けしからんドラマだ。
義時の妻・伊賀の方(のえ)はなぜ伊賀氏の変を起こしたか?
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そして仲章は、平賀朝雅に毒薬を渡した前科があるわけでして。
仲章経由でのえが毒を手に入れられるのではないか?という期待すら抱いてしまいます。
まぁ、そんな期待をされる北条義時も、一体どういう主人公なのかと思いますけれども……。
仲章との会話で、かえって義時には伊豆に戻って穏やかに過ごす時政ルートはないと示されたようなものでしょう。
どんな酷い最期になるのか、本当に期待です。
義村の告白に揺れる公暁
公暁は読経に励んでいます。
そこで息子の駒王丸を連れてやってきたのが三浦義村。
千日の間は誰ともあってはならいのではなかったのか?と尋ねると、公暁は性懲りもなく「また明日はじめからやり直す」とのことです。
そんなことよりも公暁が気になるのは頼仁親王の件であり、進んでいるのかどうか問いかけると、義村はお耳が早いと感心していますが……。
外界から遮断されることも意義である、そんな千日参篭の意味がないのでは? もっと真面目に仏事をして欲しいところです。
「私が鎌倉殿になる芽は摘まれた。そういうことか、そういうことか?」
「無念にございます」
なぜ自分は鎌倉に戻らねばならなかったのか。
公暁が悔しそうにその意味を問うと、義村は、意味深なことを語り始めます。
「鎌倉殿になれば必ず災いがふりかかるから、これでよかった」
「どういうことか?」
煮え切らない義村に対しイライラを隠せないつ公暁。母上から何も聞いていないのか?と義村がわざとらしく驚く。
公暁は父が無念の病死だと母から聞かされていました。
しかし、それは真実にあらず。つつじ殿が平穏に暮らしたいからこそついた嘘であり、その思いには逆らえないと渋ります。
義時は長年の友だからこれ以上は言えないとまで引っ張る。
散々ジラされ、いよいよ我慢できなくなったのでしょう。
公暁が強く迫ると、義村は頼家が北条の手によって殺害されたと内情をバラします。
それで公暁の記憶がつながった――。
幼いころ、見知らぬ老婆が言った。北条を許すな、北条を許すな。その老婆は比企尼です。
頼朝を救い育てた乳母・比企尼~なぜ比企一族が悲惨な最期を迎えねばならんのか
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義村はさらに畳み掛けます。北条は貴方の家族を殺した。わずか6歳の兄上も殺された。北条を許してはならない。北条の助けで鎌倉殿となった実朝もまた、真の鎌倉殿にあらず。
そう吹き込むと「許せぬ!」と怒り心頭の公暁。
さて、この場面からして、今後の惨劇の黒幕を三浦義村とみなすことはできるのか?
難しいところです。
これは『麒麟がくる』の正親町天皇と光秀の関係もそうでしたが、動機を煽っただけで黒幕とみなすことには少々無理があります。
あくまで決めるのは公暁の意志。
比企尼にせよ、義村にせよ、煽っただけとも言える。
義村は黒幕になりきるとか。積極的に何かやり遂げるとか。そういう確信はなく、ただ状況を見出すために策をばら撒いている感があります。むろん悪どいことには変わりませんが。
義村にせよ。実衣にせよ。藤原兼子にせよ。
自分が権力を得るチャンスに鼻をひくつかせている――そういう軽薄さがあるといえばそう。一直線に目標に向かう公暁とは違う軽さがあって、実にいやらしい。
「じゅさんみッ♪」
建保6年(1218年) 4月29日、政子が鎌倉に戻りました。
出迎えた実朝に「従三位!」とはしゃいでいます。
実朝の頬をぺちぺちと叩き笑うところは、頼朝が征夷大将軍になったと政子と喜びあった場面と似ていますね。
そして、部屋に戻るやゴロリと寝転がり「はあー」と一息つく。気取らない、そんな姿勢が魅力的です。
しかし仲章が「まずはおめでとうございます」というと一気に胡散臭くなる。
一日も早く親王様に譲り、父上も見ることがなかった景色を見るべきだとか言い出しましたよ。
しかし、その前にやるべきこともあります。
左大将拝賀式、その後に直衣始(のうしはじめ)が盛大に執り行われる。
鶴岡八幡宮の絵図面には「大銀杏」との表記が……。
7月8日、左大将となった実朝が初めて直衣を着て参拝する直衣始が行われます。
半年後に同じ場所で繰り広げられる惨劇を、誰も知らないと語られ今回は終わります。
そこには様子を伺う公暁の姿が……。
MVP:北条政子と藤原兼子
以前から楽しみにしていた、二人の女性政治家の談判。
日本中世において女性がどう権力を持ち、行使できたか。そこを語る上で大事な場面に思えました。
男性同士である後鳥羽院と時房の場面とも対照的に思えます。
むしろ感情的で気まぐれ、思いつきで進めるのは後鳥羽院の方に見えます。
そして兼子が政子に酒を飲もうと誘う。
些細なようでこれもすごく重要に思えました。
女性の飲酒というのは、儒教文化圏ではタブーです。韓流ドラマや小説だと、女性が酒を飲むことがいかに大変であるかがじっくりと描かれることがあります。
これは日本でもそうで、女性が堂々と酒を飲めるようになるまでいろいろ乗り越えるべき壁がありました。
男性相手にお酌をしつつ。男性と差しつ差されつつ。
そういう局面ではなく、女性同士が親睦を深めるために飲酒する。
大河で描くのは画期的に思えます。飲むところまでは入りませんでしたが、果敢な挑戦が見られました。
総評
奇妙な仕上がりになってきています。
義時は主人公なのにセリフと動きが少ない。最終章突入後その傾向はありましたが、今回は特にそうでした。
一方で、北条氏の政治を示す要素も増えてきました。
干し蛸を貶された政子は、かつてだったら引っ込めていたかもしれない。
それが民衆の暮らしを考えるべきではないかと提示するようなもっていき方で反論。
こういう言い方は、「あなたとちがって私たちは民衆の生活を見ている」という確信なしではそうそう言えないことでしょう。
義時は泰時の前で、自分にはなりたかったがなれなかったものがあると示す。その上で泰時ならばできると託すかのようだった。
彼らの理想像を探り、泰時が成し遂げたことをみていくと、北条氏の政治が見えてきます。
一方で、後鳥羽院から「東夷」と呼ばれたのが時房であり、ここで坂東武者の属性が再度確認される。
坂東武者の政とは?
「撫民」であり、それを成し遂げるのであれば華も夷も関係ない。そんな政治思想を持ち込む北条には義があると。
このドラマの北条義時は確かに悪どくて、のえに一服毒を盛られて苦しみ抜くのが相応にも思えます。
しかし、そんな悪党というだけでも仕方ない。
ゆえに、北条氏の歴史における役割や、政の意義をきちんと見せるようにまとめてきている気がします。
最終章はみどころが実に多いと感じるのです。
藤原兼子~後鳥羽上皇の乳母から出世して北条政子と対談~鎌倉と京都を動かした
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北条政子はどうやって鎌倉幕府を支えたのか 尼将軍69年の生涯と実力を振り返る
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※著者の関連noteはこちらから!(→link)
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◆北条義時 | 三浦義村 | 北条泰時 | 伊賀の方 |
北条政子 | 阿波局 | 源実朝 | 公暁 |
◆北条時政 | りく(牧の方) | 牧氏事件 牧氏の変 | 平賀朝雅 |
畠山重忠 | ◆和田義盛 | ◆大江広元 | ◆八田知家 |
後鳥羽上皇 | 源仲章 | 土御門天皇 | 承久の乱 |
◆三善康信 | 北条時房 | ◆中原親能 | 泰時の妻 初(矢部禅尼) |
仁田忠常 | 源頼家 | 阿野全成 | 北条宗時 |
◆梶原景時 | 上総広常 | ◆比企能員 | 木曽義仲 |
源頼朝 | 源義経 | 源義朝 | 源範頼 |
◆三浦義澄 | ◆二階堂行政 | ◆安達盛長 | ◆足立遠元 |
後白河法皇 | 平清盛 | 清和源氏 | 桓武平氏 |
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文:武者震之助(note)
絵:小久ヒロ
【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト