『おんな城主 直虎 完全版 第壱集 [Blu-ray]』/amazonより引用

おんな城主直虎感想あらすじ

『おんな城主 直虎』感想レビュー第24回「さよならだけが人生か」


「まだ私は若いし、若く見えるっていうし!」

駿府に向かった直虎は、縁談相手の庵原助右衛門(朝昌)の屋敷に乗り込みます。
一通り直虎を褒めたあと、助右衛門は直虎の意図を見抜きます。
「泥舟から逃げ出すだけではなく、泥舟を堅い船にすることも考えていただけませんでしょうか」

そう己を売り込む助右衛門。戦で命が危うくなっても忠義を貫けるのか、と問いかける直虎。

助右衛門はこう答えます。

「できます。忠義を貫くことが生き延びる道だからでございます。最後まで忠義を尽くした者こそ、敵にまで惜しいと思われるのではないでしょうか」

申し分のない若者、と評価され縁談は進められるようです。
少々ネタバレになりますが、この助右衛門はこの先いろいろと活躍することになります。

直虎は桜に「この状況で庵原家に嫁ぐのは不安かもしれないが、相手はなかなかいい若者だから嫁いで欲しい、何かあればSOSを出していいぞ」と告げます。
桜はおずおずと「年齢差は無視して、嫁ぎたいと思いましたか?」と若干失礼な質問をします。

「まだ私は若いし若く見えるっていうし! 嫁げるなら嫁ぐし!」
そう口を尖らせる直虎ですが、正直この人の男を見る目はあんまりない、と思います(直親とか龍雲丸とか)。

ともかく縁談は成立です。

直虎はその後、たけが里に下がったと祐椿尼から聞かされます。後ろ髪を引かれるため、直虎には告げずに去ったのです。

そのたけを追いかけ、直虎は馬を走らせます。役に立てずとも側にいて欲しい、このまま年老いて井伊で死ね(看取るとかそういう言い回しでないところが直虎らしさ)、と訴える直虎。乳母の進退も描くのは今年のようなスケールのちんまりした作品らしさですね。主従、涙の別れです。

 


直虎、北条家との縁談も画策する

直虎と政次はその夜、碁盤を挟んで語り合います。

たけとの別れもふまえて、覚悟を固める直虎。直虎は政次に、桜の姉(二女)・桔梗と北条家の者との縁談を進めて欲しい、と持ちかけます。
北条は今川唯一の同盟相手であり、かつ動きも知りたい家です。
政次もおとわの考えに感心した様子です。

「われは幸せじゃ。井伊の為に身を捧げてくれる者に囲まれて」
「今更気づいたんですか」

このやりとりが、あとでジワジワと効いてきそうです。周囲の献身を知ったことで、直虎も一歩成長しました。

翌朝、たけの幽霊が出たと直虎が聞きます。確かにたけの幽霊か、ドッペルゲンガーというレベル、要するに役者が同じ人物がいます。
たけの姪・梅でした。
どういう演出なんだよ! ちゃんと演じ分けておりますので、たけはよろよろした老女、梅はしゃんとした中年女性、ではあるんですけどね。芸達者です。

岡崎では、徳川家嫡男・竹千代と織田家の徳姫との婚儀が行われます。
それに伴い、竹千代の母である瀬名も惣持寺から岡崎城に移ったのでした。このときは幸せそうですが……。

政次は、桔梗と北条家臣・狩野家の縁談を早速まとめます。ここの場面、いい感じで直虎と政次が微笑みあっているのに、方久が駆け込んで来るとぱっと離れます。この空気がなかなかじれったいです。

方久は、井伊での材木を中村屋で取引できることになった、と知らせを持って来ます。ビッグなビジネスチャンスです。
直虎は様々な試練を経て、成長しました。
おとわとして、姫としての日々はついに終わります。

 


MVP:織田信長

この圧力、迫力は今川義元退場以来ではないでしょうか。
本作の信長は、歴史的考証に基づくというよりも、衣装や演出としてはスタンダード路線、皆がイメージする信長像そのものかと思います。
まあ『信長の野望』のパッケージから飛び出して来たようですね。だからこそ、信長ってやっぱりカッコイイ、と素直に思えました。

カッコイイだけではなく、市川海老蔵さんが歌舞伎役者らしい発声とやや大仰なまでに演じており、これがまた異様さを醸し出していいんですねえ。
先週まで「戦国ビッグネーム不足」であったところに、ガツンとストレート直球の信長を投げ込んでくる。
やっぱり信長ってカッコイイね、としみじみと思えました。

 

総評

さらば、おとわ、姫としての日々……でしょうか。
ほぼ折り返し地点まで来て、第二部終了といったところでしょう。第二部からは女領主としてスタートを切った直虎ですが、女と侮られて怒ったり、過去の失恋をひきずったり、新たな恋の予感にどぎまぎしたり、どこか姫らしさも残していました。

そんな姫としての部分と今週は別れを告げました。
乳母のたけとの別れがその象徴でしょう。

女として侮られる経験も受け止め、女性を政治上の駒として使うスキルも身につけた直虎。彼女の人生は例年と違い、結婚や出産といった明確な区切りがないため、精神的な成長を見せることでステップアップを描く必要があります。
本作はそれをうまく描いていると思います。

そんなちんまりとして直虎との物語に、投げ込まれたのが信長です。
成長した直虎の前に立ちふさがる戦国乱世の象徴として、まさにこのタイミングで登場しました。

他の人物と比べて明らかに異質で、恐ろしくもある信長。
殺気をギンギンにたぎらせた彼を見ていると、やっとこの時が来たという感覚があります。

戦国の小さな幸せや生活が、大きな激流に飲み込まれる。
そんな新展開が待っています。


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著:武者震之助
絵:霜月けい

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【参考】
おんな城主直虎感想あらすじ
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』公式サイト(→link

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