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【青天を衝け第25回感想あらすじレビュー】
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期待したい新キャスト
本作は新キャストが発表されておりました。
◆吉沢亮主演の大河ドラマ「青天を衝け」新キャスト発表、イッセー尾形ら13名(映画ナタリー)(→link)
ここから先は私の希望です。
『あさが来た』からのサプライズです。
広岡浅子:波瑠さん
成瀬仁蔵:瀬戸康史さん
そしてここはやはり、大河名物クロスオーバーを期待したい!
楫取美和子:井上真央さん
楫取素彦:大沢たかおさん
なんといっても富岡製糸場が出てくる……ここは伝説のあの夫妻を出さないでどうするというのか!
是非とも叶えていただきたいキャスティングです。
これのどこが佐幕大河なのか?
『八重の桜』と本作を「佐幕側だから」とまとめられることがありますが、勘弁してください。
会津藩と幕府は強調しておらず、孝明天皇の信任があつすぎて疎まれたこともしばしばありました。
会津藩も慶喜には不審、失望、激怒、失笑しかない。
ちなみに薩摩藩士は「会津の侍わっぜ強か!」と敬意をこめた視線も抱いており、初代警視総監・川路利良は佐川官兵衛はじめ、会津藩士を警視庁にスカウトしました。
会津藩の女性を是非とも妻にしたいと願った薩摩隼人が多く、その思いゆえに成立した夫婦も多い。
大山巌と捨松が有名です。
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新島八重の幼馴染であり、『八重の桜』で剛力彩芽さんが演じた日向ユキもそうです。
長州藩と会津藩も交流があります。
秋月悌次郎の懇願を受けた奥平謙輔は、山川健次郎の留学に尽力しました。自刃しながら生存した白虎隊士・飯沼貞吉も、長州で療養し、その地であたたかい山口の人々に感銘を受けております。
薩摩については鬼県令・三島通庸がおりましたし、長州の山縣有朋もしつこく会津にいやがらせをしておりましたが、没交渉とも言い切れないのです。
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武士として、人として、尊敬できるところはある。そういう落とし所になってもおかしくはない。
では慶喜は?
なまじ忠義を尽くしてそれを裏切られただけに、ブーイング大合唱になってもおかしくありません。
繰り返しますが、今年の大河と『八重の桜』を同列に並べることはデリカシーにあまりに欠けております。
今年の大河は幕臣や佐幕藩を持ち上げておりません。
慶喜と栄一コンビとその周辺だけを持ち上げる、極めて身勝手な作品と言えます。
歴史は現在と過去の対話である
E・H・カーは言いました。
歴史は現在と過去の対話である――。
ゆえに歴史上の人物や事件の評価であっても、時代とともに変化してゆきます。
幕末史の本を読んでいると、特定の年代が徳川慶喜を見る目がことのほか厳しい。
その年代とは、アジア・太平洋戦争経験者です。
慶喜は大坂城で、幕臣や会津藩、桑名藩士らに対して薩摩と戦い抜くよう命令を出しました。
そのあと妾を連れで単独逃亡し、江戸城を無血開城して蟄居してしまった。
奥羽越列藩同盟は戦い続けたのだから、破滅は自業自得という誤った見方もしばしばされますが、謹慎の意を示そうとしたって踏み躙られております。
それに西軍は小栗忠順はじめ、幕府側の人間に戦意ありとみなして片っ端から殺すようなことをしているのです。
これも慶喜が薩摩相手に戦うべしと発令し、かつそれを明確な形で撤回しなかったことも一因ではないでしょうか。
会津藩降伏開城式では、松平容保が列席しました。そこに敷かれた朱色の毛氈は「泣血氈(きゅうけつせん)」と呼ばれ、会津藩士たちは切り取ったものを無念の証として保管し続けました。
そういうパフォーマンスを一切せず、慶喜はふらりと消えてしまった。
アジア・太平洋戦争経験者の中には、その慶喜の姿を、満洲や南樺太から住民を残し撤退した日本軍と重ねた人がおります。
民衆の苦しみを無視してのうのうと余生を生きる慶喜のことを、どうしたって彼らはゆるせなかった。
そういう戦争体験者が生きている時代は、慶喜を褒めることはできません。
幕臣でありながら明治政府上層部とベッタリと繋がり、出世した渋沢栄一を褒めることにも気が進まなかった。
そのことも想像は尽きます。
わかりやすく言えば、渋沢栄一って『はだしのゲン』ならば鮫島伝次郎なのです。
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
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◆青天を衝け感想あらすじレビュー
◆青天を衝けキャスト
◆青天を衝け全視聴率
文:武者震之助(note)
絵:小久ヒロ
【参考】
青天を衝け/公式サイト