青天を衝け感想あらすじ

青天を衝け総評&最終回 感想あらすじレビュー「青春はつづく」

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青天を衝け総評&最終回感想あらすじレビュー
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関東大震災で俊敏すぎる動き

大正12年(1923年)9月1日――関東大震災が発生しました。

栄一は喜寿を過ぎているとも思えないほどキビキビした動き。

わざとらしく前髪も乱し、イケメンなのは良いですが、老人だということをスッカリ忘れていませんか?

老人があんなに素早く転がって、落下物を避けられるとか、制作スタッフは本気で思っています?

渋沢栄一であって、永倉新八じゃないんですよ。

※永倉新八は老いてからもヤクザ者を追い払った逸話あり(新聞記者が話を盛った可能性は考えられます)

『いだてん』から二年。

圧倒的に衰えた震災描写が続き、脳内でこんな声が聞こえました。

「あのねえ、『おかえりモネ』や他のドラマで震災はやったでしょ! まっとうな震災はそっちでいいでしょ、予算も時間もないんですよ! 大河だってありがたがって鑑賞して、ケチつけるんじゃない!」

栄一のわざとらしい演技で震災を表現する演出には、バカバカしすぎて絶句。

『いだてん』の森山未來さんが語りで描いた関東大震災は素晴らしかった。いっそ使い回しでもよかった。

『青天を衝け』では、この震災をダシにして栄一と篤二が抱き合い、ぎこちない演技であっという間に和解に変換されてしまったのです。次から次へと、なんなのよ!

史実の渋沢栄一は、関東大震災を利用して民衆に責任転嫁する【天譴論】をぶち上げましたが(詳細は後述)、ドラマの栄一は先頭に立って指揮をしています。

杖をつくような老人が被災地を歩き回るなんて危険極まりない。

NHKは一体何を考えているのでしょう。

実際の被災地を思い出すと、侮辱にすら思えてきます。転倒して怪我人が増えたらどうするのか。人に依っては、動き回らない方がよいこともある。

人間は加齢と共に学ぶべきことが多く、状況的に、余震や足元の危険性の方が先に立つと思う。

そして、この後の展開がおかしく、こうなった。

過激な社会主義者が襲ってくるから危険である

もちろん「そんな噂がある」という言葉です。しかし、噂にしては伝達速度が不自然でもあるし、どうにもおかしい。

むしろ「震災後だから不穏な噂を利用してやろう」と警察と軍が暴走し、惨劇が起こっています。

以下の事件は警察と軍が悪用し、特定の思想を持つ人々を冤罪で拘禁虐殺したものです。

関東大震災では、社会主義者が冤罪で殺害される凄惨極まりない死亡例があります。

亀戸事件
関東大震災の混乱の中、亀戸の労働組合員らが軍隊によって不法に拘束されたうえに、虐殺された事件

甘粕事件
関東大震災の混乱の中、憲兵が無政府主義者・大杉栄、伊藤野枝、僅か6歳の橘宗一らが虐殺された事件

中途半端にこうした事例に触れてしまうから、余計にことをややこしくしています。因果関係を逆転させてよいものでしょうか?

繰り返しますが、噂があったから事件が起きたのではなく、噂をでっちあげて事件を起こしたのです。

「あれこそ渋沢栄一だ」

そうバカ息子の口から言われますが、何が?

さらには、ロンドンでも敬三が無事を知るという、どうでもいい場面が挟まります。ただただ、こんなシーン、要らんと思う。

 


日米関係が悪化

関東大震災後、海外から寄付が集まり始めました。

日米関係が不穏な空気だったアメリカからも物資が届きます。

ただ、こうした支援も、数々の虐殺事件が報道されると「こんな連中に支援できるか!」とトーンダウンしたんですけどね。

『青天を衝け』でそんなこと描くわけもなく、栄一は相変わらず「友とはありがたいものだ」と文化祭が続きます。

80才超えで文化祭はいい加減、みっともないのですが、栄一は無反省の男。アメリカ議会が日本からの移民を禁じたことに失望していました。

アメリカ人がいかにも悪党のように描かれます。

おまけに劣等国の烙印を押されたと言い出す連中もいる。これは戦争を仕掛けてくるようなものだと言い出す。

何を言っているんですか?

Why ジャパニーズ ピーポー?

アメリカの言い分も聞きましょうよ。

日露戦争まで、日本は英米のバックアップを受けてやってきました。

それなのに、アジアで威張り散らすようになるわ。日系移民を大量に送り込んでくるわ。日本政府のやらかしも大きいのに、全部アメリカが悪いことにする。

しかも、ドイツのことをかすりもしないから、まったくワケがわからない。

なぜアメリカで日本人排斥論が広まったかという説明をすっ飛ばしているからです。まるで太平洋戦争がアメリカのせいで始まったと言いたげな描写に絶句。

敬三は、祖父の十年来の努力も無駄になったと言いますが、実業家を引退した元経済人が十年間何をしていたのでしょう?

いや、していたことはある。「青い目の人形」です。

昭和2年(1927)、有効の証として、アメリカから約1万2000体の「青い目の人形」が届けられました。

栄一はこれを日本各地で子どもたちに披露し、学校に寄贈されました。そしてお礼に市松人形を贈ったのです。

この人形を抱えた渋沢栄一の写真は有名で、顕彰における定番の一枚です。

おまけに実は第39回で、思わせぶりに大統領の前に人形が置いてあったと。

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外国人がわざとらしく日本人のことをウダウダと話し、ルーズベルトも日本人形相手に話しています。

この人形もあざとい伏線ですね。来週、日米で送り合うところを流すのでしょう。

スタッフの悲鳴が聞こえてきそうだ。

「せっかく市松人形用意したのに、なんで人形交換の場面がカットされているんですかァ!」

この「青い目の人形」は戦時中廃棄されたものが多く、悲話として伝えられています。そこを踏まえてカットしたのでしょうか? それとも単に忘れただけですか?

こうして他国のことを貶めながら、渋沢周りを褒める――終始一貫した妙ちくりんなドラマは、まだまだ続き、敬三の子を名付けるどうでもいい場面へ突入します。

この場面もカメラワークや演出がおかしくて。敬三夫妻が舞台上の役者というか、観客を意識した動きに見えるんですよね。

敬三は帰国します。生物研究は叶わなかったけど、お祖父様のことは知りたいと言い出します。

プレゼントをおじいちゃんにねだる小学生みたいな口ぶりですね。

そして大正15年(1926年)、第一国立銀行の取締役に敬三が就任。

12月には、大正天皇が崩御し、元号が昭和になりました。

 


土方のどこが友なのか

昭和6年(1931年)、孫たちが小説を読んでいます。

そこに土方歳三が出てくると「土方は私の友だ」と栄一は言い出します。

あーあ、言っちゃったよ。

最終回で話題稼ぎのために使っているのでしょうけど、渋沢と土方の関係については、渋沢栄一側の証言しかなく、真偽の程がわかりません。

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何らかの接点があったとしても「友」といえるほどの関係ではない。

問題なのは、そんな間柄なのに平気で孫たちに「友」だと言ってしまう、性格なんですよね。ヤンキー中学生が「トーマンのドラケン先輩知ってるからよー」とイキるのと同じです。

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だいたい尊王攘夷の志士でありながら、土方と友ってどういうことなんですか。それがガチなら、単なる信頼できない奴でしょうに。

1931年に中国大洪水が発生し、91歳の栄一は「中華民国水災同情会」の会長に就任しました。

日本は、こうやって日中友好を考えていたと示したいんですね。

そして明治村感の漂う場所で、栄一がラジオに向かって話す場面。群衆が、ありがたく聞いている場面は何なのですか?

この場面って結局、日本が中国に対してしたことを消すためのロンダリングですよね。

中国との親善活動は本当に注意したいこと。アジア・太平洋戦争前の日本人は、中国の文化や歴史には親和的でした。

わかりやすいものが『まちぼうけ』。北原白秋作詞、山田耕筰作曲の童謡です。

あれは故事成語、『韓非子』の守株を元にしています。

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この時代、中国に親和的だった=中国にとって優しい人という図式を抱かないようにご注意ください。

このスピーチも酷かった。

「反日に負けないで! 私たち日本人は優しくてスゴイ! 素晴らしい! 私たちってホントサイコー! 仲良しサイコー! 手を取り合いましょー! 助け合いましょー! なかよくしないととっさまやかあさまにしかられる、手を取り合いましょう!」

って、最終回まで文化祭でした。高校生が読み上げる赤い羽根募金のスピーチより届かない。

90歳を超えてまで「とっさま」だの「かっさま」だの言う教養人は嫌だ。心底嫌だ。まるで成長していない。何に感動しろと?

感極まっている兼子は首まで皺があるのに、栄一はどうして鬼舞辻無惨様状態なのでしょう? なぜ、頑なに老けメイクをしない?

「届いたかなあ? 本当かい?」

そんなことより自分のスピーチ力に興味津々なのか。早く評価して(褒めて)もらいたい出す栄一。このシーンは、SNSで

「号泣! 栄一の言葉が胸に届いた!」

となってコタツ記事で出ますね。

私がこう書くと結構当たるんですよね。

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兼子はじめ周囲の反応がいいから、なんとか見られる印象ですが、どうせSNSやニュースで「今も通じるよね!」と飛び交うのでしょう。

◆『青天を衝け』40話「生きていてよかった」渋沢栄一と徳川慶喜、笑顔の別れ。次回最終回(→link

この言葉は、むやみに日本人を敵視し、排斥しようとしているアメリカ西海岸の人たちに向けたものでもあり、かつて、会ったこともない外国人を殺そうと計画していた自分への言葉でもあるだろう。そして、今のネットでの誹謗中傷問題や、移民問題にも通じる話だ。

 

最後までスピリチュアル

募金は集まったものの、満州事変に抗議するため、中国は物資受け取りを拒みます。

そりゃそうだ、こんなの日本が悪いでしょうよ。それなのに、中国人が悪いと言いたげ。

それをいかにもメソメソと、

「大正義渋沢栄一を拒む中国が悪いのぉ!」

と誘導するようで、一体何なのでしょうか。

そして昭和6年(1931年)11月11日。

日本の行く末を憂いながら渋沢栄一は亡くなりました。

「手をつなげ、みんなで……幸せに……」

今年の大河は死ぬ場面すらおかしい。辞世すらない。

どいつもこいつも成長の跡のない子どもじみたことを言いながらなくなる。こんな教養人は嫌だ。

たとえ辞世が現代にまで残ってなくても、スタッフが作れることは『おんな城主 直虎』の小野政次が証明しています。

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しかも、死ぬ間際まで元気なんだよなぁ。

特に栄一はなかなか死なず、くどいほど時間稼ぎをします。

兼子はちゃんと加齢しているのに、栄一は目に強い光があると思ってしまいます。兼子より老けメイクが薄いのはなぜなのか。実年齢はずっと上なのに。

臭いBGMがピロピロと重なってくる演出。どう演技したらよいか分からず、戸惑うような遺族たち。

そして明治村感あふれる舞台で、敬三が何かを言い出します。

「私は、祖父のことを偉人ではなく、故郷の血洗島村のもとで励む1人の青年のように感じていました。偉人という響きはどうも祖父には似合いません」

敬三まで儒教知識のない愚か者にされましたね。

先祖を「偉人じゃないし」と言いきる敬三。なんという不孝よ。

これって脚本家さんの見解ですよね。

◆ 『青天を衝け』生い立ち丁寧に描き“愛すべき栄一”に 脚本・大森美香氏「偉人伝ではなく人間ドラマとして描いた」(→link

大森氏は「偉人伝ではなく人間ドラマとして描きたい」と考えていたという。その狙い通り、栄一の生い立ちをしっかりと描くことで、応援したいと思うような愛される人物に。

というか渋沢栄一の経歴を描き出したら、とてもじゃないけど感情移入できませんしね。

テロリストとしての活動。

女狂い。

ハンセン病患者隔離。

工場法成立阻害。

天狗党の助命を握りつぶしたこと。

ステルス討幕派。

関東大震災被災者バッシング。

日本の公害第一号・足尾銅山に根深く関与。

女性関係を曖昧に少しだけ見せておき、他の都合悪いことはすべてカット。そりゃ、そんなこと描かれたら大河の主役どころか「お札にしていいのか?」となってしまう。

ゆえに、無理にでもロンダリングしまくり、愛される人物にしなければならなかった。

毒は苦いから、甘い飲み物に毒を仕込む。それがいかにも才能だと言いたげに語る脚本家と褒めるメディア。

あまりにも不誠実です。

敬三の演説は続きます。もったいぶって伝言とやらを言い出すのです。

「長い間お世話になりました。私は百歳まで生きたいと思っておりました。今度という今度は立ち上がれそうにもありません。これは病気が悪いのであって。私が悪いのではありません。死んだあとも私は皆様の事業や健康をお守りするつもりでおりますので、どうか今後とも他人行儀にはしてくださらないようお願い申し上げます。 渋沢栄一」

最後までスピリチュアルアピール。渋沢栄一の写真を持っていれば病気にかからない! そんなテスラ缶信仰じみたことを言っても驚きません。

そしてどこかのワンダーランドにいる栄一は、若返ってこう言い出します。

「今の日本はどうなってる?」

「それが恥ずかしくてとても言えません!」

「ははっはははっ何言ってんだい! ハハハハ! まだだまだ励むべぇ!」

この場面はおそろしかった。

渋沢栄一ら天保老人の呪縛が爆発し、日本史上最低最悪の悲劇であるアジア・太平洋戦争があった。

栄一を見て敬三は涙ぐんでいますが、敬三が祖父の尻拭いをしたことを思い出すと、どういう涙なのかと思いますね。

とっさまとかっさまと、千代たちもいるらしいワンダーランド。

栄一はバカそのものの笑いをしています。

「ハーハハハハハわーあはははははー」

栄一が若返ったのみならず、肉付きが格段によくなって、ドタドタ走っているところがなんとも見ていて辛い。

絶叫ばかりしていた。

主演は、肉がついた。

この苦行もやっと終わりました。

 


総評

もしも一世紀後、こんな国民的コンテンツがあったらどう思いますか?

「ある寿司店社長が海外の海賊を消滅させた! そんな素晴らしい経済人を讃えます!」

おいおい、未来人よ、大丈夫か? もっとちゃんと調べようよ。

と、そう思いますよね。

◆バズった「すしざんまい」美談 「ソマリア海賊消滅に貢献」の裏側(→link

◆すしざんまい社長とソマリアの海賊巡る記事削除 プレジデントオンライン謝罪「事実確認が疎かでした」(→link

なぜ、こんなことを書くか?というと『青天を衝け』も同様のコンテンツであろうと思からです。

すしざんまいのニュースを肯定的に取り上げ、はしゃいでいる人を見た時は、知っていればいるほど、悲しくなりました。

どうしてこんな雑な嘘で感動できるのかと。

思えば大河に関してもずっとそんな感じでした。

しかも社長が、たとえホラ吹きでも善人ならまだ許せますが、そうでもなかったら?

◆すしざんまいは“助成金不正”ざんまい【全文公開】(文春オンライン)(→link

幸田露伴が伝記の執筆後、

「あれは要するに時代の流れに乗っただけ」

と言い、話を避けるようになったという渋沢栄一。

『獅子の時代』は渋沢大河の計画だったけれども、山田太一が変更した説もある、そんな渋沢栄一。

『獅子の時代』と『青天を衝け』までの間に、日本はどうなってしまった?

◆平然と嘘をつくようになった

『獅子の時代』のように架空主人公ならば自由が効く。そして視聴者は「ドラマだ」とワンクッションを置ける。

そういう安全装置なしに『青天を衝け』は堂々と嘘をつき続けました。

◆現実逃避に陥った

こんな記事がありました。

◆日本が国際的地位を格段に下げている痛切な事実 いつの頃からか日本人は「謙虚さ」を失っている(→link

記事には以下のような記述があり、

日本の地位がこのように低下しているにもかかわらず、日本人はいつの頃からか、謙虚さを失った。

大河はじめエンタメもそうではないでしょうか。

かつて韓国のテレビクルーは九州から電波を拾って、日本のドラマを見ていました。

大河ドラマは憧れの的であり、いつかこんなふうに自国の歴史をドラマにできれば……そう思い続け、それが実現され、2004年にはNHKが『チャングムの時代』を放映しました。

そして2021年、若い世代は韓流時代劇に夢中です。

中国もそう。華流時代劇も大人気です。

一方で日本は「おじいちゃんおばあちゃんの娯楽」と時代劇を切り捨てた結果、大河以外はほぼ消え去りました。

そんな時代に、大河では惨めたらしく、

「日本の渋沢栄一のおかげで韓国も中国も繁栄できたんだぞ!」

と現実逃避をしている。

先ほどの記事にあったことそのまんまの状態です。

韓国の高い成長率に学ぶ必要であるというと、「韓国は日本の支援で成長したのを知らないのか」という意見にぶつかる。

どの国にも良い点と悪い点がある。

自国の問題点を強調するのは、それを改善したいからだ。他国の良い点を指摘するのは、それが自国を改善する参考にならないかと考えるからだ。

事実を正しく認識することは、事態を変えるための第1歩だ。

そして、1960年代の謙虚さを取り戻すことが、日本再生のための不可欠の条件だと思う。

◆制作サイドに謙虚さがない

先ほどの記事のタイトル通り、本作は謙虚さがありません。

『麒麟がくる』のインタビューが手元にあるのですが、だいたいみなさん謙虚です。「俺すごい! ドヤァ!」などしていない。

それに引き換え『青天を衝け』は一体何なのでしょう?

視聴率だって初回で20パーセント、前作のご祝儀ありきで取ったものですぐに下落。それ以降は特に高くもありません。評価もそれほどでもないだろうし、渋沢関連書籍もそこまで出るわけでもない。昨年はドラマ完結間際まで関連記事があった歴史雑誌ですが、今年は秋には消えました。

それなのに、類を見ない大成功を収めたとばかりに浮かれている。

◆ 吉沢亮、渋沢栄一を演じて改めて実感「新一万円札にふさわしい人」 91歳演じる苦労も語る (1)(→link

◆『青天を衝け』生い立ち丁寧に描き“愛すべき栄一”に 脚本・大森美香氏「偉人伝ではなく人間ドラマとして描いた」(→link

◆「『転機になった作品』と一生言っているような気がします」吉沢亮(→link

平清盛』や『花燃ゆ』の主演は、しおらしく反省をなされていたものですが……。

謙虚さは己を省みるのに必要なこと。それが失われたらどうなるか?

未来の成功はあるのかどうか?

それは今後の活躍が証明してくれるはず。

例えば吉沢亮さんが、経済を語るのにふさわしい知性の持ち主と評価されたなら、長谷川博己さんのような起用もされるでしょう。

 

なお、来年のインタビューを読むと、皆さま謙虚でよい感触だなぁと思う。

なぜなら自信がない人ほど、威嚇する猫のように毛を逆立てる傾向は人間にもある。

大河という注目度の高いドラマである以上、そんな余計なメディア対応なんかに気を使ってる場合ではなく、役や歴史そのものと本気で向かい合わなければならない。そう構えていなかった証拠でしょう。

逆に、アピールしている時点で負けなのです。そんなもん、自分で言うことじゃなく、他人から判断されることですから。

◆ 付和雷同(ふわらいどう)

由来は渋沢栄一も大好き(ということにしておきます)な孔子『礼記』より。

【エコーチェンバー】と言ってもよいでしょう。

『花燃ゆ』のとき、大河クラスタを自認するアカウントはともかく手厳しかった。

「こんなイケメン少女漫画で釣ろうとかふざけるなよw」

「雑なプロパガンダだな、おいw」

散々そう突っ込んでいたものです。

『西郷どん』までは、その勢いがあった。

それがこの二作と大同小異の『青天を衝け』ではどうでしょうか?

アカウントやブログをざっと確認してみると……。

「毎回神回だね……」

「号泣!」

「完璧な慶喜像!」

見事なまでに大絶賛ではありませんか。

もちろん、人の感想なんて好き勝手でよろしい。人それぞれ自由に感じていいし、発信してもいい。

しかし、幕末明治史の基礎的なところまでミスを連発する大河に、こんなに優しい目線が向けられるものでしたっけ?

史実のミスを指摘した記事や意見には、苦しい言い訳をしていることもある。

いわゆる【ポリアンナ症候群】です。

ポリアンナ症候群とは(Wikipediaより)

ポリアンナ症候群(ポリアンナしょうこうぐん、英: Pollyanna syndrome)は、直面した問題に含まれる微細な良い面だけを見て負の側面から目を逸らすことにより、現実逃避的な自己満足に陥る心的症状のことである。 別の言い方で表すと、楽天主義の負の側面を表す、現実逃避の一種だと言い換えることもできる。

なぜ、こんなことになるのか?

『スマホ脳』等、ネット心理を解析する本を読むとヒントがあります。

フォロワーさんが誉めているドラマを貶すわけにはいかない……本当はつまらないけど、誉めあうと楽しいし、空気壊したくないし。

ファンアートを投稿すればきっといいねがついてRTされる!

こんな気遣いをする方も見てしまった。

「すみません、私はこのドラマは史実に反するうえに侮辱的なので楽しめなくて……でも某さんと気が合わなくて残念です」

「いいんですよ。私は私なりの楽しみ方をみつけています。あなたが私に賛同しないことは残念ですが」

「すみません! ほんと、申し訳ないです!」

なんなんですか、この卑屈なまでのへりくだりは。居酒屋で見かけた上司と部下でしょうか。

『青天を衝け』の場合、放送前はそれこそ『花燃ゆ』の再来かと危惧されていたのに、初回が20パーセントを超えたもんだからイケイケドンドンになった。

そんな風潮に押されてしまったのでしょう。

今はもう感想を自力で書くのもめんどくさい。検索かけて、それっぽいものをリツイートし、ニュースをつぶやく。それで自分もいっぱしの鑑賞ができたとうなずく。

そしてその気持ちを乱す奴がいたらぶっ叩いてスッキリする。

自分の頭で考えるというより、共感性が欲しい。そんなインスタントな感動を求める。幕末も近代史も勉強したくないけど、カリスマアカウントをRTしていれば歴史に詳しいとアピールできる、と。

そんなダラけた共感装置としては、上出来のドラマだったと思いますよ。私はこんなものに乗っかるのはごめんですが。

そのあたりの心理効果をうまく把握して、NHKが広告宣伝でもしたのか? ライターさんもイケイケのアゲアゲで大絶賛する記事を書いていましたね。

SNSを切り取ったコタツ記事は、日曜夜にはすぐ出てきました。

毎年そんなもんだろ、と思われますかね?

『麒麟がくる』なんて些細な揚げ足取りで叩く記事がありました。

ただ単に「駒がムカつくから駄作!」「架空キャラが出るからファンタジーだ!(※『獅子の時代』はじめ歴代大河を知らないんでしょうか)みたいなもの。

今年はそういう記事をほぼ見かけません。

実は私が気になって仕方ないのは、ドラマの作り手も、ドラマ記事を書くライターも、漢籍知識が曖昧なこと。

そのくらい最低限の勉強をしないものでしょうか?

中国思想研究者でもない渋沢栄一と、その妻・兼子が愚痴混じりで話した軽口を引きながら、

「儒教には性的規範がない」

と堂々と書く記事には閉口しました。思想をこうも容易く侮辱して一体何なのでしょう。

不吉極まりない大河です。

王朝の末期って、古今東西やらかしがちな破滅ストーリーがあります。

祖先崇拝というオカルトに陥る。

限られたリソースを、しょうもないそうしたことに費やし、現実逃避をする。

経済がこれほど停滞し、あの国のようになってはならないと言われるそんな日本。

そんな斜陽の国が、過去の人物をひたすら持ち上げ、「この英雄が見守っているから大丈夫だ!」と陶酔している。

実に不気味です。

こんなニュースがありました。

◆百田尚樹著『日本国紀』に「歴史改ざんファンタジー」のPOPを掲げた大阪の書店 店長が語る「『批評』の意味で掲示しました」(→link

「歴史改ざんファンタジー」がウケる理由はよくわかります。大河だってそうだもの。

 

このレビューに苛立ち続けたあなたへ

なぜ私の好きなドラマを貶すの! 許せない!

そんな皆様へ。

今更ですが、『青天を衝け』を絶賛するソウルフルなレビューはたくさんあります。そちらへどうぞ。

きっと美辞麗句で褒めています。

◆『青天を衝け』40話「生きていてよかった」渋沢栄一と徳川慶喜、笑顔の別れ。次回最終回(→link

◆ 『青天を衝け』草なぎ剛“慶喜”の名場面を振り返る「生きていてよかった」「輝きが過ぎる」(→link

◆『青天を衝け』最終回は吉沢亮の“全力の走り”に注目 大森美香が紡いだ渋沢栄一の情熱(→link

◆ 「『転機になった作品』と一生言っているような気がします」吉沢亮(→link

もちろん、大河とこの時代に詳しい先生も絶賛しております。

◆秀逸だった「青天を衝け」今までの幕末大河ドラマと何が違う? 渋沢栄一と時代を生きた人々(→link

知名度では、同時代の著名人に比べて後塵を拝するかも知れない渋沢ではあるが、近代日本を描くにはもってこいの人物である。渋沢を知ることによって、日本の近代のスタートやその後の在り方を学ぶことが可能であり、現代に生きる日本人に様々な示唆を与えてくれる傑出した存在、それが渋沢なのだ。

なお、視聴率は『麒麟がくる』が盛り上げておいて落としましたが、それでもあの『西郷どん』と『いだてん』よりは上げたのでオッケーなのだそうです。

物はいいよう、ですね。

◆NHK大河「青天を衝け」最終回 「当たらない近代もの」の声はねのけた 期間平均視聴率14・1%(→link

徳川家康(北大路欣也)の存在も大きい。大河に限らず大きなドラマは「最初だけ見てみるか」という視聴者も多い。第1回の冒頭に徳川家康が出てきたことで心をつかまれた層は少なくないはずだ。
栄一の13歳から91歳までを熱演し「新しい扉がバンバン開いた」と表現した吉沢ら主要キャストとともに、脚本を始めとしたスタッフの智恵と力が結集した作品となった。このコラムを書くために、台本を読ませてもらっても内容の変更が多く、放送用の映像が直前になっても完成していないことがほとんど。そんなところからも、ギリギリまで最善を尽くす裏方さんたちの情熱を感じられ、取材していて楽しかった。関係者の皆様、読者の皆様、10か月間ありがとうございました。

前述の視聴率分析を掲載した記事では、徳川家康のせいで視聴率を落としたことになっていましたが、こちらの記者の感覚では逆ですね。

数字より感性を重視するのであれば、この記事も心地よいものとなるかもしれません。

 


原敬暗殺――暴力の日本近代史

この大河を見ていて気づいたことがありませんか?

明治になってからも暗殺が多発しています。

大久保利通伊藤博文。原敬。立て続けに亡くなりました。

教科書でもそうだったっけ……と、流しそうになってはいけません。

なにせこのドラマの主人公は渋沢栄一です。宣伝でもさんざん「志士になる」と繰り返していました。

なぜ、日本人の要人はテロの被害に遭い続けたのか?

国のトップが暴力革命を成し遂げたからです。その暴虐に民衆が染まらなかったはずもない。

これについては、以下の書籍がオススメ。

藤野裕子『民衆暴力: 一揆・暴動・虐殺の日本近代』(→amazon

一坂太郎『暗殺の幕末維新史-桜田門外の変から大久保利通暗殺まで』(→amazon

エイコ・マルコ・シナワ『悪党・ヤクザ・ナショナリスト 近代日本の暴力政治』(→amazon

日本人はおとなしい……そんな印象論で生きておりませんか?

歴史はそうではないと証明しております。

そしてその原因には渋沢栄一も関わっているのです。

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