昭和六十年(1985年)6月1日、上野動物園で国内初の人工授精によるジャイアントパンダが生まれました。
童童(トントン)という名前のメスのパンダ。
2000年まで生きていたので、見に行ったことがある方も多いのではないでしょうか。
実はこれより約一年前にも、初初(チュチュ)というパンダがトントンと同じ両親から生まれていたのですが、お母さんの下敷きになって2日足らずで死んでしまっています(´;ω;`)
パンダの繁殖能力が非常に低いことはよく知られています。
もしかするとこういう理由で「生まれた直後に事故死」というのも結構あるのかもしれませんね……。
雄雌ペアで年間1億円のレンタル料
トントンの誕生により上野動物園は常に満員御礼。
飼育舎も手狭になったため、ここから二年後に拡張工事を行っています。
また、その工事と平行してトントンの弟にあたるユウユウ(悠悠)というパンダも生まれ、上野動物園のパンダ舎は大賑わいとなりました。
その後の1992年、日中国交正常化20周年の記念行事(?)の一つとしてパンダのオスを交換することになり、ユウユウは中国・北京動物園へ行きました。
代わりにリンリンというオスがトントンのお婿さんにやってきましたが、残念ながら子供は授かっていません。
「だからどうした」といわれればそれまでですが、日本としてはこれって結構懐の痛い話だったりします。
パンダ外交という言葉がある通り、中国はパンダを贈呈したり貸し出すことで大きな収入を得ているからです。
ということは日本を始め、パンダを借りている側としては相当の金額を払うことになりますよね。
昔は贈呈した時点で相手先の国籍になっていたため、繁殖に成功すれば中国へお金を払う必要はありませんでした。
が、ワシントン条約その他諸々の影響で、現在中国から他の国にパンダが行くときは「贈呈」ではなく「レンタル」という名目になっています。
そしてレンタルであれば当然料金が発生するということで、つがいで年間一億円もの超高額料金を払っているのです。
ついでにいうと、寿命以外の理由でレンタル中のパンダが死んでしまった場合、数千万単位の賠償金がかかります( ゚д゚)
一応そのお金はK産党ではなく、パンダの保護や研究に使われているそうなのですが。
人工授精をさせないと絶滅してしまう……
ではなんでそんなにお金をかけてパンダを借りるのかというと、「客寄せ」の他にもう一つ理由があります。
前述した通り、パンダは繁殖能力が非常に低く、乱獲によって数が激減した今、動物園などで人工授精をさせないと絶滅の可能性が高いからです。
そして、上野動物園をはじめとした日本国内の動物園では、トントン以降数回の繁殖に成功しています。
中国の動物園にも、日本で生まれたパンダの子孫がいるくらいです。
残念ながら、日本が所有権を持っている(=レンタル料がかからない)パンダがおらず、また上記のルールにより「レンタル中のパンダから生まれた子供の所有権は中国のもの」と決まっているため、当分の間レンタル料金を払い続けることになりそうです。
中国のほうでも本腰を入れて保護活動に取り組んでいるため、1980年代と比べてパンダの数はかなり増えているのが明るい兆しではありますね。
とはいえまだ2000頭程度なので、密漁者が増えるようなことがあれば逆戻りしかねません。
シャチやバンドウイルカ、アムールヤマネコにツシマヤマネコ
さて、パンダに限らず、人間のせいで絶滅してしまった動物はたくさんいます。
特に帝国主義の時代までは、世界各国で珍しい動物を殺して剥製にしたり、毛皮を取るのが流行っていたので、動物達にとっては非常に迷惑な話でした。
その辺は以前取り上げたことがありますので、よろしけれ以下の過去記事をどうぞ。
日本でもニホンオオカミなどの例がありますので、決して他人事ではありません。
さすがに現在では自然保護や動物愛護を考えることが主流になってきましたので、各動物園・水族館などで絶滅に瀕した生き物の人工授精がいろいろ試みられています。
たまに「動物を閉じ込めて金儲けをするなんてけしからん!!」という人がいますが、動物園や水族館にはそういう役割もありますので、その辺の銭ゲバと一緒くたにしないでくださいね(´・ω・`) 現場の飼育員さんや研修者の方々は、時には命の危険にさらされながらも頑張ってらっしゃいますので。
千葉県の鴨川シーワールドで、シャチやバンドウイルカの繁殖を成功させたのが特に有名ですかね。
他にも東京の井の頭自然公園でアムールヤマネコの人工授精、福岡市動物園でツシマヤマネコの繁殖に成功しています。
身も蓋もないことを言えば、自然界のためには人間が滅びるのが一番なんですけども、さすがにそれは我々も受け入れがたいところでしょう。
人間にしかできない方法で、動物達を助ける方法があるのならやるに越したことはないですよね。
長月 七紀・記
【参考】
トントン (ジャイアントパンダ)/Wikipedia
笹川平和財団
産経ニュース
千葉市
繁殖研Kぶろぐ