食文化博物館模擬1977年香港/photo by Charlotte1125 wikipediaより引用

中国

中国料理の歴史がマジぱねぇ!下手すりゃスープ一杯で国滅びます

投稿日:

世界三大料理といえば?

中国
フランス
トルコ

この中から一つ選ぶとすれば?

おそらくほとんどの日本人が中国料理(中華料理)をチョイスされるでしょう。

三大料理はいずれも大陸で発展し、様々な文化の要素が流れ込んでおりますが、日本人の舌に圧倒的にフィット。
諸外国に出かけて、現地オリジナルの食べ物が口に合わなくても、中華街に出向けば、一通り満足な食生活を送ることができるでしょう。

なんせ大きく分類するだけでも、現在、八種類の系統があるとされています。

1 山東料理
2 四川料理
3 湖南料理
4 江蘇料理
5 浙江料理
6 安徽料理
7 福建料理
8 広東料理

その歴史の深さも特筆モノです。

・孔子(紀元前552-479)の時代から、ウンチクが残されている
・遺跡から、凝った料理の存在を示す遺物が発掘される

日本人が縄文クッキーを食べて、ヨーロッパ人が獲物を焼いていた頃、
・中国では豪華な宴会が開かれ
・グルメ談義があった
というのですから、こりゃもう降参するしかありません。

まるで宇宙のような中国料理(中華料理)の歴史
本稿では、その背景にある思想やエピソードについて考えてみたいと思います。

 

孔子が語る 食事のマナー

酒池肉林――。
この有名な故事成語を聞けば、誰もが「宴でどんちゃん騒ぎだね」と美女や美酒を思い浮かべることでしょう。

この言葉、実は中国における食文化を示すとも言えまして、以下のような意味もあるのです。

「酒池肉林のように、マナーをわきまえずにどんちゃん騒ぎをする連中は滅びても仕方ないことですね」

要するに、マナーを守って食べることこそ正しいのだ、と。
飲食、礼儀、道徳まで一体となっているのです。

70代の父と10代の母から生まれた孔子の生涯 『儒教』はいかにして作られた?

中国においてあるべき礼を定めた孔子は、食事についてもきっちりと決めております。

・主食>肉であること
・穀類を主食として食べること
・酒はたくさん飲むことは問題なし、ただし乱れてはならない
・買った酒や売り物の干し肉は食べない(※食の衛生に気をつけて、食中毒を防ぐため)
・祭で出した肉は、三日以内に食べること
・食べる時や寝る時は、やたらと喋らない(※飲食や睡眠が不足するかもしれないから)
・粗末な食事でも、感謝を欠かさない
・村で宴会をする時は、杖をついて歩く老人を先に退出させて、年長者に敬意を示す
・服喪中は大量に食べたり飲んだりしない

 

あれれ?
現代社会でも通じる食のマナーであり、安全とも言えますね。

実は孔子の語り残したことは、こういうことが多い。
合理的かつ、食品の衛生にも気を遣っています。

 

いつしかお持ち帰りが前提に

一方で、孔子がとなえた儒教的観念から、今とは異なる部分もありまして。
現在ならば、マナー違反となるような行為が、賞賛されることもありました。

儒教ってそもそも何なのか?荒くれ者にも優しく諭した孔子の教えと君子の道

それは
【宴会からの食物の持ち帰り行為】
です。

食品衛生的に問題がありますし、お行儀が悪いでしょ。
でも、動機次第なんですね。

「こんなに美味しい料理は、家で待つ老母にも是非味わっていただきたいのです。持ち帰ってもよろしいですか」

そう言い出す者がいれば、圧倒的にその場で「いいね!」の嵐になります。
親孝行の極みとされる。儒教的価値観ゆえですね。

陳(6世紀)の徐孝克は、事前に断ることもなく盗み出して持ち帰りました。
が、動機が親孝行であったため、やっぱり「いいね!」の嵐です。

「盗んで怒られるリスクを犯してでも、老母に美食を持ち帰りたい! もう、これは泣く……!」
と、なるんですね。

唐以降は、もうおおっぴらに盗んでも大丈夫。
時代が降ると、はじめから親に持ち帰るためのお土産パックも準備されるようになったとか。
明代まで時代が降ると、むしろ残すと怒られるほどです。

「ちゃんと持ち帰って、親御さんに食べていただくまでが宴でしょっ!」

そういうあたたかい気遣いが、そこにはありました。

 

地獄のような石崇の贅沢ライフ

一方で、孔子が見たら眉をしかめてしまうような、当時からドン引きもの、最悪の飲食事例もあります。

酒池肉林も、その一例ですね。

※『封神伝奇-バトル・オブ・ゴッド-』のような世界観には、やっぱり酒池肉林だね!

この手のバカ話が頂点に達するのが、魏晋南北朝あたりです。

三国志』の後、乱世でタガが外れてウェーイしていた奴らがいました、と記録に残っています。

「酒は水だーッ、肉は豆の葉だもんねーッ!」
というのが、当時パリピの風潮。

パリピたちの宴/wikipediaより引用

そんな地獄のような贅沢ライフをちょっとご紹介しましょう。

西普の高級官吏であり、リッチセレブだった石崇(せきすう)の場合です。

・食器を洗うのに砂糖水を使う(※特に意味はない、ただの贅沢自慢)
・白蝋を薪として使う(※特に意味はない、ただの贅沢自慢)
・豚に人乳を飲ませる(※特に意味はない、ただの贅沢自慢)
・楽器を演奏する美人ホステスが間違えると、殺害(※特に意味はない、ただの贅沢自慢)
・食や酒を勧める美人ホステスがミスすると、殺害(※特に意味はない、ただの贅沢自慢)
・美人ホステスが勧めたものを客が食べないと、殺害(※特に意味はない、ただの贅沢自慢)

恐ろしいほどに全部意味がない……。
なんだこいつら、痛い目にあってしまえよ!と突っ込みたくなりますよね。

その結果がコレです↓。

『三国志』時代はとにかく人が死にすぎ! 実に7割もの人口減で漢民族の滅亡危機だった!?

漢民族は異民族により殺害され、なんと七割減少というとてつもない事態に陥ります。

しかし皮肉にも、こうした悲劇が、新たな飲食文化の変化をもたらしました。
異民族の飲食が伝わったのも、民族の大移動あればこそです。

そんな中、漢民族はこう言い合うわけです。
「パリピみたいにバカな飲食をしていると、痛い目いあうから気をつけるんだ。孔子の精神を取り戻せ!」

そう。
中国の歴史と飲食文化は、切り離せないのです。

例えば、主食ひとつとってもそうです。
現在に至るまで中国北部は粉食、南部は米食が優勢であるとされます。

「中国は春節に、餃子を食べるもの」
というようなこともチラホラ見かけますが、これもちょっと誤解があります。

北に行けば行くほど異民族由来の食を含めた文化となり、南は漢民族固有のものが残っているもの。
気候もあるとはいえ、これは確かなことです。

多くの文化が入り混じって、中国料理があるのです。

 

美食を楽しんでこそクール! それがルールだ

美食を楽しむことはよいことなのか?
それとも悪いことなのか?

東坡肉/wikipediaより引用

これには、いろいろな考え方があります。
ヨーロッパの場合ですと、宗教改革の結果、真っ二つに分かれました。

カトリック:美食に凝って何が悪いの? いいじゃないの
プロテスタント:美食に凝るとか、軽薄でありえないから

実はこうした結果は、戦争や歴史にも影響があります。
ナポレオン戦争の後半にある「半島戦争」においては、フランス軍とイギリス軍が対峙します。
ここで、両者のグルメへの対応が明暗を分けます。

◆フランス軍
「戦場で食料を得るのは大変だ! だが、俺らは工夫して美味しく食べられるんだぜ」
「だよな!」
「こりゃうめえ!」

◆イギリス軍
「戦場で食料を得るのは大変だ。しかも、俺らは調理できねえ!」
「もうダメ、マジで腹減った……」
「ここで終わりかもしれない……」

まぁ、結果的にはナントカ、半島戦争ではイギリス側が買ったとはいえ、こういうこともあるんです。

これは日本人もイギリス人を笑えた義理じゃないんです。
「武士は食わねど高楊枝」
と、言うではありませんか。

井伊直政は、若い頃食事に苦労して、
「醤油ないですかねえ」
とぼやいたところ、周囲から小馬鹿にされたそうです。

「武士は粗末な食事で耐えてこそでしょ!」
というわけで。

井伊直政42年の生涯をスッキリ解説・年表付!徳川四天王・井伊の赤鬼の生き様

細川幽斎伊達政宗のように、グルメを極めたい人もいるにはいました。
しかし、天下を取ったのは「飯なんてものは食えればいいんだ!」という三河武士です。
贅沢は敵だったんです。

その点、中国は違います。

「孔子の教えにもある通り、贅沢はダメだけれども、その土地にあるグルメを存分に味わってこそってやつなんですよ!」
こういう考え方ですね。

「文人はグルメを楽しんでこそだねッ!」
そんな考えを実行に移した代表格が、北宋の天才・蘇東坡です。

今日も美味しく豚の角煮が食えるのは~ 蘇軾(そしょく)さんのお陰です~♪

天才・蘇軾(そしょく)のエンジョイ流刑66年 詩を料理を愛し、トンポーロウを産み出した

彼だけではありません。

例えば清の袁牧も、グルメについてまとめた『随園食単』を刊行しております。

袁枚/wikipediaより引用

『随園食単』は、西のジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン『美味礼賛』と並ぶ、究極のグルメ本として名高いものです。

ただ、こうした美食礼賛の思想は、プレッシャーともなりえます。

中国の文人、士大夫は
「琴棋書画(※琴・囲碁・書道・絵画)」
が出来てこそとされます。

十八學士圖/wikipediaより引用

大変です。

科挙合格も目指しながら、数々の素養とグルメを身に着けねばならないんですから。

アナタも「科挙」を体感してみません? 中国エリート官僚の試験はマジで地獄DEATH

世界一難しい官僚採用テスト「科挙」の歴史 カンニングや替え玉受験は千年前からあった!?

要は、勉強だけでなくグルメでまでチェックが入るんですね。

「あの人は、あのお店に入ったらしいよ」
「あの人が好きなメニューは、絶対に食べたいよね」
「あの人って、料理人をちょっとえこひいきし過ぎている」
「ガッカリだよね。食事マナーがなっていないなんて」

とまぁ、こんな風に言われ続け、辛い。
だから鍛えるしかない……てなわけで中国で食文化が発達するのも納得がいきます。

確認される項目は、こんなところですね。

・きちんと料理人を扱っているのか?
・あまりに美味い料理を作るからと、料理人に高い地位を与えていないか?
・宴席マナーはちゃんとしているのか?
・来客にきちんと料理をふるまっているのか?
・過剰な贅沢をしていないか?
・食品衛生に注意しているのか?
・旬の食材を使っているのか?
・食器もチェックポイント! 料理にあっていない食器はダメ
・酒ももちろんチェックの対象です

いかがでしょう?
厳しいですよね……。
(゚A゚;)ゴクリと飲み込みながら先へ進みましょう。

次のページへ >



-中国,

Copyright© BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン) , 2019 All Rights Reserved.