歴史漫才

創作だっていいじゃん、墨俣一夜城|半べー&官べーの歴史漫才『戦国史原論』

半べー
半べー
「今回は、一晩でお城を作れちゃう、こちらの「いかだ材木セット」をご紹介! 今なら980万円!」
官べー
官べー
「墨俣一夜城を、深夜の通販番組みたいに言うんじゃないよ」

半べー「先着10名様に限り、すぐに逃げ出す足軽10人もお付けします!」

官べー「だから、要らんて」

半べー「しかし、今回の大河ドラマでは、墨俣一夜城をどう描くんだろうねー」

官べー「最近は創作だと知ってる人も多いもんな」

半べー「そもそも“一夜DE城”なんて無茶、誰が言い出したの?」

官べー「いや、フランス語みたいに言うな」

半べー「ウィ」

官べー「最初に“一夜で”という話が出たのは天明七年(1787年)頃の『太閤真顕記(しんけんき)』らしいよ。講釈師・白栄堂長衛(はくえいどうちょうえ)の話をまとめたものでさ」

半べー「長衛さん、話をしているうちにテンション上がっちゃったか」

官べー「それが約10年後に発売された『絵本太閤記』では、挿絵も入って、爆発的な大ヒットになったのよ。下の絵が、そのシーンの一部ね」

『絵本太閤記』木下藤吉郎洲の股に砦を築く

『絵本太閤記』木下藤吉郎 洲の股に砦を築く/国立公文書館

半べー「この絵を入れただけでベストセラー? そりゃ悔しかろー」

官べー「何が?」

半べー「『太閤真顕記』の版元だよ。イラスト代をケチらなければ、爆儲けだったのに!」

官べー「まぁ、そうだけどさぁ」

半べー「春町先生が生きてりゃよぉ、べらぼうめ!」

官べー「だから蔦屋重三郎みたいなことばかり言ってんじゃないよ」

半べー「ちなみに、この下の人は何してんの? なんか誰かを小馬鹿にしてるようにも見えるけど」

『絵本太閤記』洲の股の砦一夜に成る

『絵本太閤記』洲の股の砦一夜に成る/国立公文書館

官べー「一夜城ができて、驚いている斎藤軍の兵だな」

半べー「二人とも、全然怖がってないな。それどころか絶妙に良い表情している。今度は自分たちが攻められる状況だと、わかってないでしょ」

官べー「まぁ、緊張感はないよね」

半べー「墨俣一夜城は創作だとしてもさ、川並衆はさすがに実在したんでしょ?」

官べー「実は、川並衆という名称も『武功夜話』にだけ記載があって、他の史料では見つからないのよ」

半べー「史実と認定されてないんだ?」

官べー「そうだね。ただ、木曽川流域に川並衆のような集団がいたんだろうなぁとは思われている」

半べー「ラスボスも?」

官べー「ラスボスって?」

半べー「ドラマにも出ていた、えぇと、たしか……すがしょうかつ……?」

官べー「はちすかまさかつ(蜂須賀正勝)だろ! 蜂(はち)ぐらい読めよ!」

蜂須賀正勝の肖像

蜂須賀正勝/wikimedia commons

 

半べー
半べー
「蜂須賀さんは、尾張出身だよね。秀吉さんの美濃調略を手助けしたんでしょ?」
官べー
官べー
「そうそう。それなのに野武士とか盗賊の頭領だと勘違いされている」

半べー「盗賊じゃないの?」

官べー「正しくは尾張の土豪(どごう)だよ」

半べー「土豪?」

土偶

遮光器土偶/wikimedia commons

官べー「そりゃ土偶(どぐう)だろ! 土豪(どごう)だよ」

半べー「川並衆が実在しないとか、蜂須賀さんが実際は土豪出身とか、ややこしいな」

官べー「土豪ってのは、地域に根ざした武士のことでさ。実際は地侍とか国衆とか、厳密な区別は難しいようだけど……。蜂須賀さんもそうした層の出身で、川並衆のような仕事をしていても不思議じゃないってことだよ」

半べー「ハハッ、ちょっと何言ってるかわかんない」

官べー「聞け! 土偶のような遠い目してないで、オレの話を聞け!」

半べー「あぁ、ごめんごめん。土豪に興味はあるのよ。ただ、官べーの話し方がなんか退屈だからアタマに入ってこなくてさ」

官べー「木曽川に叩き落とすぞ!」

半べー「で、実際、どうなの? 肝心の墨俣一夜城が創作だとしたら、秀吉の活躍も無かったってことにならない?」

官べー「それは大丈夫。永禄八年(1565年)に秀吉が出した文書があるんだ」

半べー「どんな内容なの?」

官べー「秀吉が調略したであろう美濃の武将に、信長が領地を保証している、きちんとした文書なんだよ」

半べー「マジで? 秀吉の証拠ってこと?」

官べー「そうだけど、何かおかしい?」

半べー「いやぁ……秀吉が……実在するのか……」

官べー「そこは創作なわけねーだろ!」

半べー「本人が“はにわのことは 夢のまた夢”とか言ってるから、ぜんぶ夢なのかと思ってさ」

官べー「秀吉の辞世は、“にわ”じゃねーよ、“にわ”だよ! つか、埴輪とか土偶とかやめろ、頭が混乱する!」

埴輪

※参照:秀吉の辞世「露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速(なにわ)のことは 夢のまた夢」

 

半べー
半べー
「ところで、今回から始まったこの連載だけど、こんな感じで続けていいの?」
官べー
官べー
「歴史記事からギリギリ逸脱してないんじゃない?」

半べー「最初に“野武士”とか言われたときは、てっきりメシを食う漫画の話か?とも思ってさ」

官べー「なにそれ?」

半べー「ほら、あるじゃん、久住昌之さん原作の漫画でさ」

官べー「それは『野武士のグルメ』だろ」

『野武士のグルメ』(→amazon

半べー「そうそう、同じ原作者でドラマ化もしたのに『孤独のグルメ』のようには……という作品ね」

官べー「『野武士のグルメ』も漫画版は売れたんだよ!」

半べー「でも、ドラマは12話で終わっちゃったんでしょ?」

官べー「まぁNetflixではね……」

半べー「まさに、二番煎じで一夜城!」

官べー「やめろー! ドラマも好評だったと、アメリカの雑誌では評価されてるんだからさ」

半べー「ドラマ版には秀吉さんも出演していたからじゃない?」

官べー「それは本物の竹中直人さんだよ!」

👉️ということで詳細については別記事「墨俣一夜城」と「川並衆」をご覧ください

📚 戦国時代|武将・合戦・FAQをまとめた総合ガイド


参考書籍

呉座勇一『真説 豊臣兄弟とその一族』(2025年11月 幻冬舎)

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川和二十六

歴史学科を卒業。大河ドラマ『豊臣兄弟』レビューおよび歴史エンタメ記事を担当。歴史記事以外でも様々な分野のライティングや編集業務もこなしている。 ◆国立国会図書館データ https://id.ndl.go.jp/auth/ndlna/001138406

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