『おんな城主 直虎 完全版 第壱集 [Blu-ray]』/amazonより引用

おんな城主直虎感想あらすじ

『おんな城主 直虎』感想レビュー第19回「罪と罰」歴史に翻弄されこそあれ面白きかな

2017/05/15

こんばんは、武者震之助です。

今川と武田の同盟が破棄されようかという時なのに、なぜか今週は木材窃盗騒動とのこと。

井伊谷では、収穫した綿花から又吉という男の指導により布を作ることになりました。

「綿毛の案」は、なかなか好調です。

この場面での井伊直虎は、小袖の上半身を脱いで腰の部分で袖を縛っています。考証担当者力作の戦国ファッションとのことですので、是非ご注目ください。

そんな井伊谷を騒がせたのが、井伊谷三人衆の一人である近藤康用が持ち込んだ材木泥棒騒動。なんと井伊から何者かが近藤領に入り込み、材木を盗んだとのことです。

昨年の『真田丸』でも材木窃盗をめぐり、信繁らと村人同士が乱闘していました。

戦国期の材木は燃料であり、建築材であり、合戦にも欠かせないもの。今以上に価値があると言えます。死活問題です。

康用が井伊を疑うのは、綿栽培のために人を呼んで働かせていたからです。現在も移民は犯罪につながるという排斥論がありますが、よそ者は警戒されるわけですね。

後ろ暗い奴ら、怪しいものがいるのではないかと康用に言われて、直虎はカチンと来ました。直虎は自分自身を批判されるより、自分が庇護している者や大事に思う者が悪く言われることに腹が立つタイプです。

二人が一触即発となったところを、奥村六左衛門が「山狩りをしましょう!」と提案しておさえこみます。

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近藤領だけでなく井伊領も材木窃盗の被害に……

犯行現場に山狩り部隊がたどり着きました。

直虎たちは想像以上の被害に驚きを隠せません。これは計画的、組織的犯罪ですね。

しかも近藤領だけではなく、井伊の土地まで伐採のあとがあると判明。これで疑いが晴れたかと直虎が思ったら、康用は「井伊の自作自演では?」と疑いだします。

「そんなすぐにこんな大規模な伐採ができるわけないだろ!」

怒る直虎。二人の争いはこじれてゆきます。こうなったら、解決はもはや真犯人逮捕しかないようです。

直虎は政情の変化を感じとり松平と結ぶため、山伏の常慶と接触しようとしますが、まだ接触できていません。一方、駿府で、は小野政次瀬戸方久今川氏真から火縄銃製造進捗をせっつかれます。

「いやあ、尻の穴の溝がうまくできないんですよぉ」

のらりくらりとかわす方久に、氏真が怒ります。

「尻の穴の話はもう聞き飽きた! いいからさっさと種子島を作れ!」

いくら銃の話とはいえ、尻の穴を連呼するとは……。

氏真は追い詰められていて、余裕がありません。寿桂尼は死の淵から復活したものの、状況は芳しくないようです。

 


材木窃盗の犯人たちとバトル勃発! 傑山の弓が炸裂す

龍潭寺で手習い中の虎松は、年上の学友相手に五目並べで「勝ちはしないが、負けもしない」状況に持ち込めるほど成長しています。

山狩りから三日経過。

龍潭寺で傑山をレンタルして、そのまま連れて現場に向かった直虎は、隠れ潜んでいる中野直之に合流します。と、そのとき、ただならぬ声が聞こえてきました。

立ち上がる直虎たち。このとき傑山がカモフラージュ用の布をはねのけてブワッとジャンプする姿が見事でした。

駆けつけると、康用と配下の者が乱闘になり、犯人を追い詰めています。しかし敵は強く、苦戦中。犯人たちは投げ網や吹き矢を使い、巧みに戦います。

しまいには高性能の吹き矢で次々と眠らされてしまいます。刺さったら即座に寝てしまうって、どんな吹き矢だ!

傑山は敵の気配を察知し、自慢の弓で射貫きます。

傑山は弓の名人という情報はあったものの、実際に射つ動作は初めてです。

他の僧とは違って袖をまくり、常に筋肉を見せ付ける魅惑のマッチョ僧・傑山の武力が、今解き放たれます! おお、これはカッコイイ!

 

旅の男は殺すべきか、百叩きで済ますべきか

傑山の矢を受け、直之に捕まった男の正体は、直虎が出会った旅の男(演:柳楽優弥さん。第16回から登場)。

直虎は驚き、男は「この方には旅先で直虎に水もらいましてね〜(第16回)」とへらへら言います。

康用は激昂して即座に斬り捨てようとしますが、直虎が井伊へ引き渡してもらいたいと止め、連行することにします。旅の男は牢屋に閉じ込められるのでした。

直虎は直之から「あの男とどういう関係なんですか?」と問い詰められ、綿毛栽培(第16回)と虎松の件(第17回)で知恵を借りたのだと言うしかならなくなります。

一件落着と笑顔の直虎に、直之はこう言い放ちます。

「おかげで、こちらであの男を打ち首にしなければならなくなりましたけどなあ」

何も死罪にせんでもと及び腰の直虎に、直之は「井伊の先祖が守った土地から材木を盗んだ男に甘くしてどうするんですか」と迫ります。

六左衛門はとりあえず戻った政次に相談しては、と言いますが問題の先送りに過ぎないでしょうねえ。

六左衛門ってあまり役に立たない存在に思えるんですけれども、現代のオフィスにもいる調整型の中間管理職ぽくて、同情してしまいます。

直虎はやっぱりあいつを斬りたくないなあ、と悩んでいる様子。

翌朝、政次に相談しますが彼の結論も「死罪」です。

政次の場合、康用と違って怒りにかられてというよりも、その男と一党が起こしかねない犯罪の抑止に重きを置いています。

直虎はいつものように政次と反対のことをすると宣言。死罪ではなく「百叩きにでもすればいい」と結論を出します。

 


恒例となった政次の六左衛門尋問タ~イム

政次は直虎の態度に不審を抱き、恒例の六左衛門密着尋問タイムで事情を聞き出します。

井伊家臣と井伊家臣の顔が近いぞ。高橋一生さんの嫌味な演技パターンが面白いのです。

納得いかない直之は、直虎に賊を斬首しないとどうなるかと詰め寄ります。直虎は「うるさい! 女の部屋に入ってくるな!」と追い払います。

そこへ南渓から直虎に呼び出しが。直虎が龍潭寺に向かうと、そこに待っていたのは政次です。思わず逃げ出そうとする直虎。先週は直虎が政次の袖をつかみましたが、今週は政次が直虎の袖を掴みます。

政次は盗賊を見逃してさらに領内で犯罪が起こったらどうするのか、と犯罪抑止の側面から説得にかかります。

理詰めで迫られて直虎は「殺すことはない、労役に用いればいい話。そもそも人手が足りないんだから」とやっと反論をひねり出します。

政次は一応これで納得した様子です。しかしこのときの政次の態度を見ていると、本当に直虎の提案通りにするのか疑問が生じます。そしてこの場面「恩に着るぞ。鶴!」と言われてどこか嬉しそうな政次の様子がねえ。

 

今川が松平と手を結び、井伊も武田の敵となる!?

直虎は政次から政治状況を聞き出します。

今川と武田の同盟はもはや風前の灯火。そうなればおそらく松平と結ぶはずとのこと。

井伊にとって次の対戦相手は武田になるわけです。織田の次は武田と戦うことになるって、ベリーハードモードにもほどがあるでしょう……。

直虎は南渓とともに、図を書きながら同盟関係を整理します。

こういう情勢の説明はナレーションと地図を使うことが多いのですが、今年の場合は直虎の目線を通して説明します。

牢屋ではあの男が、傑山から直虎が何故領主になったかを聞いています。

ドラマを見ている視聴者にはわかりきった話ではありますが、注目すべきは傑山の思いでしょう。

「直虎様は生まれてこの方、御家のためにしか生きておらぬのかもしれぬのう……幸せなのかのう。しかしあれは竜宮小僧ゆえ、あのようにしか生きられぬのじゃ」

幼いころから直虎を見守って来た傑山ですが、本音は複雑でした。

いつも冷静で時に厳しく、時に優しい彼がそんなふうに思っていたわけですね。

するとそこへ六左衛門が見張りの交替役としてやって来ます。ふてぶてしく、死罪を前にして落ち着いた囚人と、六左衛門。嫌な予感しかしない。

直之は自邸で弟・直久を厳しく鍛錬中。そこへ政次がやって来ます。

政次は思いが同じ直之に、近藤康用に引き渡すことを相談しにやって来たのでした。直之は直虎の思いに背くことに悩みますが、賛成することになります。

その様子を直久が見ていました。本作の人物は子供の観察眼を過小評価する傾向があります。

 

盗人の処遇でさんざん揉めるも、気づけば男は脱走し……

直虎は囚人の労役をどうするか考えます。

龍潭寺で虎松、亥之助、直久にアイデアを聞いて見る直虎。亥之助は天然ボケめいた答えを出すのですが、虎松は「木を盗んだのなら木を植えさせましょう」とよい答えを出します。

直久はここでおずおずと、兄と政次が囚人を鈴木康用に引き渡すつもりだを告白してしまいます。

直虎は怒り、直之のもとへと向かうと相手を小突きながら「誰が主君だかわかっているのか!」と責めます。

さらに政次の元へ向かうのですが、ちょうど政次の配下の者が康用の元へ向かおうとしているところです。直虎は政次に羽交い締めにされ、男は康用の元へと出立してしまいます。

直虎は命を無駄にするんじゃない、血を流すな、と政次に詰め寄ります。

「我はこれでも女子でな! 女子は血など見飽きておるからな!」

出た。なかなかクリティカルな台詞を放つ今作。

女性脚本家ならではの優しさや繊細な感性――と安直なことは言いたくはありませんが、これは女性脚本家でなければ出てこない台詞です。

直虎が引っかけた意味を知り、ぎょっとした顔になる政次。政次は直虎に背中を向けていて相手に顔は見えていませんが、視聴者には見えるわけです。この時の政次の当惑する顔が、本当に凄い。

ここでふと思い出したのですが、直虎は父、許嫁、曾祖父ら大事な人を失い、血が流れる様を見てきたわけです。

きちっと中身のつまった「血を流してどうする!」という叫びだと思います。流血にはもう、ウンザリなんですね。

政次の理屈も筋が通っています。彼は賊が虎松に危害を加えたらどうするか懸念しているのです。

政次は直虎の甘い判断のせいでさらなる流血を招くぞ、と言うわけです。ヒロインが感情論で叫ぶろ怯む展開ではなく、きっちりと政次は反論します。

そんな二人の元へ、なんと、例の男が脱走!との知らせが。

 

あの野郎、今度見かけたら鋸引きにしてぶっ殺す!

男は六左衛門を吹き矢で眠らせ、牢屋に穴を掘って脱走したのでした。

『ショーシャンクの空』みたいですね。

直虎は「これじゃ私がアホみたいじゃん! あの野郎、今度見かけたら鋸引きにしてぶっ殺す!」と地団駄を踏むのでした。

鋸引きって、ゆっくりと斬首する究極の極刑。さっきまで「血を流したくない!」と言っていた態度と真逆の発言に思わず噴き出しました。

あの男が仲間としてレギュラーメンバーになるのはいつでしょうか。引っ張りますね。

もうひとつ引っかかるのが政次の「これだけの穴でも金掘衆でも仲間にいれば掘れるだろう」ですね。そんな特殊技能を持つ人間って、ちょっと引っかかります。

康用は犯人逃亡の知らせに激怒。

政次に対して「あの女じゃ駄目だと太守様に知らせたらどうだ!」と詰め寄ります。

表情にあらわれた動揺を隠しつつ、「今、太守様は大変な状況で、それどころではないのです」と返す政次。

康用はややクールダウンして、「武田はどうなりましょうな」と政次に問いかけます。この問いかけは疑問というより、確認のように聞こえました。

 

生きるか死ぬかの切羽詰まった状態で、日常の問題にジタバタ

武田が牙を剥いて襲ってくる。そして今川配下の国衆としてそれに立ち向かわなければならない。

生きるか死ぬか。そういう状況です。

それなのに彼らは材木窃盗という日常の中で、目の前の問題を解決するためにジタバタしています。

これがリアルな戦国。

小さな世界に生きていて、破滅的な事態を回避するほどの権力も持たない人々。

小さな山里で、谷で、日々を生きることだけで精一杯の姿。

スケールが小さいと言われる本作ですが、小さなスケールの中で生きるしかないその姿だからこそ、紡ぐことのできる物語、見える景色があるのではないでしょうか。

駿府にはついに破局的な知らせが届きます。

武田義信が廃嫡され、氏真の妹とは離縁。

氏真は「信虎を受け入れたのは今川なのに、信玄の恩知らずめ!」と激怒します。

寿桂尼は「親を追放するような者に理屈は通じませぬ」と断言。関係修復をあきらめました。彼女は次の一手として、「西にいる恩知らず(=松平元康)」との同盟を提案します。

それにしても、シルエットすらうつらない信玄の不気味さと大きさときたら。

当時、真田昌幸は血気盛んな青年として、信玄の薫陶を受けていました。

この信玄の教えを守ったからこそ、昨年『真田丸』で見てきた昌幸はああいう策を使ったのだなと腑に落ちるものがあります。

今後の防犯対策を直虎が考えていると、祐椿尼が衝撃の知らせを持って来ました。

なんと直親の娘と名乗る者が龍潭寺来ているとのこと。今川に届いた知らせより暢気ではありますが、それはそれでショックだ! 娘の正体は次週にて!

 

MVP:直虎&政次

二回連続はどうかと思いますが、ネクストステージへと踏み出した二人を選ばずにはいられませんでした。

政次は衣装にまで鶴カラーの青、直虎カラーのレッドを取り入れています。

顔つきも心なしか険しさが薄れ、特に直虎と二人きりの場面だと鶴の部分がはっきりと見えるようになりました。

今週は「恩に着るぞ、鶴!」と呼ばれてキュンキュンするわ、羽交い締めにするわ、「女子は血など見飽きている」発言に動揺するわ、ときめきのネクストステージじゃないですか。

直虎はそういう相手の変化に気づいているか、いないのか。

満面の笑みで「鶴!」と呼びかけるし、「血など見飽きている」発言で相手を動揺させるし、天然の小悪魔ですか。

直虎は表情が豊かで、ディズニーアニメのよう。

感情も剥き出しだし、気にくわなければくってかかるし、反論もするし、タフで強くて、それでいて「よい子」の枠には絶対はまらないという、新しくて素晴らしいヒロインだと思います。

でもこの幸せは、期限を切られたものだとわかっているわけです。

先週までは秘めた思いの切なさ、そして今週からは「この幸せは長くは続かないのであった」という次元で胸を抉るこの構造。

こんなことを書けば後悔するかもしれないけれど、本作の魔力にすっかり参ってしまっています。

 

総評

本作をスケールが小さくて、単純だと言い切ってしまうのはすごく簡単で楽なことですよ。

武田の脅威が迫っているのに材木窃盗や隠し子騒動で大騒ぎしているなんてくだらない、と言い切れたらそりゃそうなんですよ。

そういう日常でもかけがえのない思いは交錯するわけです。

今まで縦糸として戦国の日常が描かれてきましたが、横糸としてつむがれる人間同士の感情が強くなってきたと思います。

家臣の個性も出てきましたし、何といってもMVPでも散々書いた直虎と政次のコンビがうまく回っていることがあると思います。

政次を見ていると、去年のきりを思い出します。

性格は正反対なのですが、カップルの相手としては主人公とすんなり結ばれないものの、強い同志愛でつながれているあたりが似ていると思います。

きりは大坂の陣で戦う信繁という、最悪の人が最も輝いている瞬間を目撃しました。

政次も、直親は決して見ることができなかった、城主として活躍する直虎という、最も輝いている姿を目にしています。

きりも政次も、愛する人が戦いに赴けば危険なことはわかっています。それと同時に、その危険の中でこそその人が輝けるのだと知っていました。

また、きりも政次も、愛する人と夫婦になることはなく、子も作ることはありません。

しかしシッカリと絆で結ばれ、戦友として生きていました。

それはある意味、とても幸せなことではないかと、きりは昨年視聴者に示したわけです。そういう愛のかたちもあるし、そういう幸せもあるんだと。

その幸せが長くは続かないことを、調べてしまえば視聴者はわかります。だからこそ、この幸せが一瞬でも長く続いて欲しいと視聴者は願ってしまうわけです。

歴史の流れだけではなく、歴史に翻弄される人の思いも面白いと今年の大河は描いています。

普通なら切り捨てられかねない小さな思いも、すくいとっているのです。


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絵:霜月けい

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【参考】
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』公式サイト(→link

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

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