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戦国一の狂槍「人間無骨」人の身体は骨無き肉塊【戦国浮世絵ANARCHY6】

徳川家康の祖父・松平清康のみならず、父の松平広忠を死に追いやったり。

息子の松平信康が自害するとき介錯に使われたり。

妖刀村正」と言えば、徳川家を呪った刀として知られる。

武器にまつわるこの種のエピソードは、なんだか怖いもの見たさで手にとってみたくもなるが、個人的に『絶対に触れたくないな……』と思う槍がある。

森長可もりながよしの「人間無骨にんげんむこつ」だ。

読んで字のごとく

「人の身体には骨がない。肉だからザックザク切れる。この槍はそんな風に感じるほど切れ味がよい」

というもの。

切れ味鋭い村正は人気も高く、東海地方で数多く出回っていたため「妖刀なんて単なる偶然でしょ」という見方もあるが、「人間無骨」は持ち主が持ち主だけにシャレにならない。

この方、敵からも味方からもドン引きされそうな狂気のエピソードが残され、ついたアダ名は「鬼武蔵」。

まさに狂槍・人間無骨の持ち主に相応しい方だった。

 

弟は美少年・蘭丸 父は猛将・可成

鬼武蔵こと森長可は、織田信長の小姓として有名な森蘭丸の兄である。

美少年として知られる蘭丸の兄弟が「人間無骨」とは……。

そんな印象を抱かれるかもしれないが、そもそも兄弟の父・森可成も猛将として知られ、【佐和山城の戦い】では浅井朝倉の大軍を相手に寡兵で立ちはだかり、激しい戦闘の末、討死しているほどだ。

しかし、森長可も負けてはいない。

【森長可エピソード】

・長島一向一揆の初陣で27もの首を取る

・関所の係を斬り捨て

・軍令違反は日常茶飯事

・日頃から乱暴すぎて信長に心配される

・高遠城の戦いでは屋根に空けた穴から無差別射撃で大量殺人

もはや無茶苦茶だが、実際「人間無骨」も大量の血を吸ったことであろう。

 

刺すのではなく抜くところ

とにかく切れ味鋭く薄気味悪いその槍を長可と共に【鞘エもん】イラストを構築してもらった。

それが、以下の一枚である、どりゃあああああああああああああああああ!

口元に不敵な笑みを浮かべながら、槍を突き刺す、この長可。

著者・鞘ェもんによると、切れ味よすぎて壁まで刺さってしまい、今は【槍を抜こうとしている】ところだという。

刺すのではなく抜く――とは意外や意外。

まるで「刺して殺す方がラクwww」と言ってるようにも見えるし、槍の先でうなだれている骸骨が、ゴム人形のようにザックリと斬られたという様子もじんわり伝わってくる。

まさに人間無骨――。

なお、森長可の詳細については以下の記事にお譲りするので、併せてお楽しみいただきたい。

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絵・鞘ェもん(ツイッターサイト
文・五十嵐利休

【参考】
国史大辞典
『日本刀 妖しい魅力にハマる本 (KAWADE夢文庫)』(→amazon
『織田信長家臣人名辞典(吉川弘文館)』(→amazon

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