宇土古城址(中世宇土古城)千畳敷への虎口/photo by Simasakon wikipediaより引用

敗者たちの城?だがそれがいい『戦国廃城紀行』で麒麟がくるを二度堪能!

2020年の大河ドラマは『麒麟がくる』。

主人公の明智光秀は、本能寺の変織田信長を討ったことで知られますが、同時に自身の天下があっという間に終わってしまった、非業の人物であることもよく知られた話でしょう。

言ってみれば日本一有名な敗者――。

これに続くのが関ヶ原で西軍を実質率いた石田三成あたりでしょうか。

そんな彼らにスポットを当てたのが澤宮優氏の『戦国廃城紀行』(→amazon)、負けた者たちの城を巡るという一冊です。

そっとしておいてやれよ、趣味が悪い、などと言うなかれ。

世の中は「無関心」こそが最大の非礼。

まずは本書をチラッと紹介させていただきますので、少しばかりお付き合いください。

世の中の自粛が終わったら……これを片手に大河スポットを実際に巡ってみたり、色んな楽しみ方が増えることも珍しくないはず。

『麒麟がくる』では必ず舞台になるであろう「坂本城址」の石垣

 

「敗者の城を探る」とは

「敗者の城を探る」の敗者とは、具体的に誰のことか?
それは以下のようなラインナップです。

・石田三成
長束正家
・大谷吉継
小西行長
浅井長政
松永久秀
・六角義高
・六角義治
・明智光秀
高山右近
豊臣秀次
加藤清正

関ヶ原の西軍をはじめ、織田信長と敵対して滅亡したり、豊臣秀吉に滅ぼされたり。嵐のような戦国期に呑み込まれていった方たちです。

そんな敗者たちの城を歩く意味とは、何なのか?

勝者の城は、戦乱で廃城となっていても、なんだかんだで取り上げられる機会に恵まれます。

むしろ、主役といった趣すら漂わせていて、たとえば藩庁やシンボルとして機能していたなんて場合には、地元民のシンボルとして復興されたりするケースも珍しくありません。

大阪城(大坂城)がその好例でしょう。観光シンボルとして蘇り、多くの人々から愛されています。テレビや雑誌で大きく映し出されることも多い。

一方で、敗者の城はそうではありません。

縁起が悪いもの、振り返られないもの、朽ちてゆくままに果てていくもの……忘れられる運命として、ひっそりと扱われるのが定番です。

勝者によって地中へと埋められ、積極的に破壊されたものも少なくありません(徳川幕府に埋められた豊臣秀吉の大坂城もそうですが)。

要は、誰も近づかない。

現代においても、わざわざ足を運ぶ人がごく少数なため、案内や交通機関の整備されていないこともありました。

それゆえ敗者の城を訪れるなら、相応の苦労が必要になることが、本書ではよくわかります。

 

城とその主の物語

なんと言っても一城目がいいですね。

石田三成の佐和山城。
この城のある彦根市は、江戸時代以降、彦根城が圧倒的シンボルです。

徳川家康を支えた井伊直政以降の井伊家居城であり、佐和山城は完全に端っこへと追いやられました。

まさに光と影の城のうち、圧倒的影の城から本書は始まるのです。

石田三成にスポットが当てられても、ほとんど注目されることない佐和山城

本書はたとえば、千田嘉博先生の城ガイドとはまた異なる美点があります。

城とその主人をテーマにした、物語を辿るような構成をしているのが読みやすい。

著者は城だけではなく、旅の中で多くの人とも出会っています。

城まで向かうタクシー運転手や、途中で出会った地元の人、そして研究者。彼らから、いろいろな話を耳にします。

ひっそりと地元で慕われてきたこと。

再評価が進んでいること。

後世伝わる悪名は、水増しされているのではないかということ。

筆者の澤宮氏が、お城エリアにある息遣いや空気を感じ取っていることが伝わってくるんですね。

城主奸雄伝説は間違いではなかったのか――そう確信するまでの過程には、力強い想像力と発想を感じます。

小説といった書籍だけではなく、インターネットでも情報が手に入る時代です。

ゲームで得た知識からその人物を知ることも当然あるわけです。

そういう印象を否定するわけではありませんが、その土地に立ったからこそ、わかるものがある。

本書は物語としても楽しめる一冊なのです。さらに……。
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