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【キロランケの戦う理由】
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ヴィクトリアおばあちゃんの孫たち
はい、ここであのラップバトルをもう一度ご覧ください。
ここでおっさん……もとい君主どもが、3:45あたりで写真を見ながら「おばあちゃ〜ん!」と言い出します。
そのおばあちゃんとは? ヴィクトリア女王です。
即位時の可憐な姿。
NHKでも放映されたドラマのイメージがあるかもしれませんが、あちらのイメージは、むしろおばあちゃんですね。
存在そのものが巨大であるがゆえに、世界史でも屈指の影響力を持っています。
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そんな彼女の、ロシアにとって最大の影響とは?
血友病でした。
悲劇の血を継ぐヴィクトリア「血友病」の恐怖がヨーロッパを襲う
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近親婚の危険性は、王室につきまとうもの。
スペイン・ハプスブルク家の弊害は有名です。
もうひとつの恐るべき例が、このヴィクトリア女王から始まります。
彼女の血を引く王女たちがヨーロッパ王室に嫁いだ結果、いくつもの悲劇が生まれたのです。
偉大なるヴィクトリアの血がヨーロッパにいきわたった結果、王室全体が危機を迎えるという、壮大な恐怖。
その結果、皮肉にも「えー、平民出身王、しかもフランス移民でしょ? あんなもん即座に終わるわ」とされてきた。
そんなスウェーデンのベルナドット王朝が、現在に至るまでピンピン元気! ノーベル賞授章式に出てくると。
ロシアに話を戻しますと……。
やっと生まれた皇太子。
そんな我が子に血友病が出てしまった!
皇帝夫妻はパニックに陥り、藁にもすがる思いである人物の祈祷を信じます。
ラスプーチンです。
はい、ここでラップバトル、「ラスプーチンvsスターリン」。
この二人以外も、いろいろと出てきますが。BBC版ほどできはよろしくありませんが、楽しいことは確かですよ!
ここでスターリンは「何が母なるロシアだ、ビッ*じゃねえか!」と悪態をついています。
ソフィアの気持ちも、そんなところでしょう。
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老いゆくヒグマを喰らうもの
そうしたシステムが老いてゆくヨーロッパに対する、新興国大日本帝国という立ち位置。
これもまた、頭の隅にでも入れておかれるとスムーズになります。
「脱亜入欧? 所詮おたくの君主、ヴィクトリアおばあちゃんの孫じゃないし……?」
こう言われてしまうと不愉快極まりない話。
とはいえ、鹿鳴館だ、文明開化だ! そう日本が主張しても、どうしたって一段下に見られている。そういう史実から、目をそらすことはできないのです。
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さらに突っ込んでいくと、どうしたって不快感があるのですが。
倒幕において薩長を支援したイギリス。彼らの狙いは何か?
ロシア牽制――。ロシアの立ち位置を、先程のラップバトルから思い出しましょう。
彼らはスラブ系であり、宗教もロシア正教である。
西欧からすれば、半分ヨーロッパ人、半分アジア人という、中途半端な立ち位置なのです。
ロシアの誇りであるピョートル大帝すら、フランスでは「何あの田舎者〜ダッサ〜!」と、思われていたという悲しいお話も。確かに言動がいちいちワイルドだけどさぁ。
ナポレオン戦争にせよ、第二次世界大戦にせよ。
味方として団結する一方で、一段下に見られる。ロシアとは、そんな位置にあります。
ご自慢のコサック騎兵にせよ、ルーツはヨーロッパ以外であり、野蛮だとみなされていたほどでして。
ここで、ソフィアのことを思い出しましょう。
農民の娘に偽装していた彼女は、言動の端々にフランス語が出てしまい、貴族だと察知されておりました。
彼女は貴族であるがゆえに、フランス語を話せたのです。
ロシア語は野蛮だからこそ、皇族や貴族はフランス語を話し、フランス人家庭教師から教育を受けるべきだ。そんな美学が彼らの間にはあったのです。
アレクサンドル1世は、コルシカ訛りのあるナポレオンよりも美しいフランス語を話すことができたほどでした。
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『戦争と平和』のピエールのように、時にフランス語名すら名乗りました。
自らの名前すら否定する。西洋への憧れがありました。
野蛮人とみなされたくない。そんなロシア人の背伸びがあるのです。
いつまでも、西洋諸国の秩序にいたら?
ロシアは、仲間のようでそうじゃない、半端な存在のままになってしまう。
ならばいっそ、世界初の共産主義革命を成し遂げてこそ、その因習を打ち破れるのではないか――。
ロシア革命では皇族が虐殺され、多数のロシア貴族が亡命し、災難に直面しています。
そのことを踏まえますと、貴族のソフィアはなぜ革命家になったのか? そう思えてきませんか?
そこには、彼女なりの打破願望があってもおかしくはありません。
ソフィアは、ユニークな個性を持っている。
義賊であり、貧しいものを救いたい気持ちはあった。彼女の言動の端々からは、そのことを感じさせるのです。
それと同時に、支配されたくはない。
男性であるウイルクやキロランケにも引かず、立ち向かう強気があります。
誇り高き貴族にして義賊――ゆえに、ソフィアは革命戦士になったのでしょう。
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そんなロシアは、西欧諸国から見ても厄介ではあります。
文明では一段下とはいえ、軍事力はある。どうにかして牽制したい。
ナポレオン戦争がひと段落したあと、西欧諸国の思惑が交差します。
そこで彼らが目をつけたのは、極東の島国・日本でした。
日本よ、ロシアを牽制せよ
フランスは幕府。
イギリスは倒幕勢力。
そんな勢力争いを繰り広げた仏英。
サムライがスゴイと感嘆する、親日家だったから日本に目をつけた?
いや、そんな幼稚なロマンで介入するほど、彼らは暇ではありません。イギリスの脳裏には、ある思考があったと歴史をみていけばわかります。
この新興国に、ロシアを引きつけさせればよい!
明治政府の外交政策には、そんなイギリスの影響がなかったとは、到底言えません。
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「江戸で戦争して市場を破壊した挙句、私たちの大好きなショーグン・徳川慶喜を始末したら。絶対許さないからね」
英仏ともどもそこは一致団結して、プレッシャーをかけておりました。
元幕臣の福沢諭吉は、勝海舟シンパの徳富蘇峰にこう煽られまして、バトルになりました。
「勝さんは政治干渉を避けたかったんですよ!」
「ハァ〜〜? その言い草、超うけるんですけど」
幕臣として倒幕過程を見ていた福沢には、その言い草は笑えて仕方なかったようです。
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そんな外交政策に翻弄された島が樺太です。
樺太領有権は、イギリスの干渉を受けます。幕府は、樺太は日本領だと認識しており、それは明治新政府にも引き継がれたはずでした。
江戸後期には、会津藩はじめ東北諸藩が蝦夷地や樺太に上陸し、警備にあたっておりました。
会津藩家老・山川大蔵(山川浩)は、幕末混乱のさなか、幕府のロシア使節に参加しています。
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しかし明治になりますと、パークスを窓口としたイギリスの干渉で、この島はロシアのものとされてしまうのです。
樺太という島は、日本人にすれば不本意な状況で引き渡されたものとなりました。
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日露戦争は辛勝であったにも関わらず、国内は日清戦争級の賠償金と領土を得る声が高まっておりました。
そんなガス抜きとされたのが、南半分のみが日本領とされた樺太であったのです。
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単行本1巻の時点で、杉元と銭湯の客のセリフには樺太が出てきています。
思えば、これも伏線であったのかもしれません。
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