五代友厚と黒田清隆

五代友厚(左)と黒田清隆/wikipediaより引用

明治・大正・昭和

五代は死の商人で黒田は妻殺し!幕末作品では見られない薩摩コンビ暗黒の一面

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そして【明治十四年の政変】へ

そもそも【開拓使官有物払下げ事件】がマスコミに知られたのはナゼなのか?

当時、このネタをリークしたと囁かれたのが大隈重信です。

薩長閥が権勢を競う中、肥前佐賀藩出身者として気を吐き、合間を縫うようにして台頭してきていた。

薩長閥からすれば目障りな存在です。

「だったら、薩摩と肥前を一緒に追い落とせないか?」

そう企み、成功させた人物がいます。

長州閥の伊藤博文です。

事件の風評を利用し、陰謀を企んだとして大隈を罷免、追い落としたのです。

薩長土肥が藩閥政治を繰り広げる中、一気に長州閥を浮上させたこの一手は【明治十四年の政変】と呼ばれます。

追い落とされた大隈は野に降り、立憲改進党を結成。

同じく下野した人物の中には、郵便制度でお馴染みの前島密もおりました。

 


失墜した薩摩隼人たちのその後

黒田にせよ、五代にせよ。

事件が大事になる前に身を引いたせいか、この事件で完全に失脚したわけではありません。

ただ、周囲の反応は変化していきました。

同郷の薩摩隼人だけでなく、北海道開拓に絡んだ人物からも距離を置かれた形跡があるのです。

五代はその後、実業家として活動を続けたものの、事件から4年後の明治18年(1885年)、糖尿病により亡くなりました。

享年49。

結果的に彼は功績よりも【開拓使官有物払下げ事件】による汚名が印象に残る人物となり、教科書にまで反映されていました。

2023年に記述が改められたとはいえ、そうなると教科書そのものから名前が消える可能性はあります。それ以外では記述がないのです。

となると、五代友厚はNHKドラマからこうなるわけです。

「イケメンであさを助けた五代様」

渋沢栄一とスペシャルなライバル」

それでよいのかどうか、悩ましいところです。

黒田は、明治21年(1888年)から明治22年(1889年)まで、第2代内閣総理大臣をつとめております。

しかしこの内閣も短命に終わりました。

明治30年代ともなると病に罹り、

「あの人もボケちまったんじゃないか……」

と囁かれるようになりました。

黒田は醜聞と疑獄のため、権力と共に同郷の友人すら失っていたのです。

なんせ明治33年(1900年)に脳出血で亡くなると(享年59)、その葬儀を取り仕切ったのは薩摩隼人ではなく榎本武揚でした。

黒田を見限った中には、後妻も入っていました。

明治13年(1880年)、黒田は41歳で18歳の後妻・滝子を迎えています。

黒田滝子

後妻の黒田滝子/wikipediaより引用

夫の葬儀のあと、この滝子が姿を消したのです。

他の男と密通し、駆け落ちをしてしまったという噂が囁かれました。

夫に遅れること4年、滝子は明治37年(1904年)に亡くなりますが、このとき彼女の籍は黒田家からのぞかれていました。

何かがあったことは確かでしょう。

 


西の五代 東の渋沢 汚職の五代 女遊びの渋沢

『青天を衝け』の見所として、メディアではしばしばこの言葉が使われました。

西の五代、東の渋沢――。

経済業績だけでいえばそうかもしれませn。

しかし、それはあくまで表向きのことであり、長州閥と親しい渋沢は、緩すぎる下半身事情が付きまといました。

伊藤博文や井上馨と遊んでいたと公言しているほどです。

女遊びが強烈すぎる渋沢スキャンダル!大河ドラマで描けなかったもう一つの顔

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金銭面についても悪名高いく、西郷隆盛が井上馨のことを「三井の番頭さん」と呼んだことは言い得て妙かもしれません。

渋沢が本当に清廉潔白ならば、そうしたことを見逃したのでしょうか……。

では、第2代総理大臣・黒田清隆ら薩摩閥に属する五代友厚は?

明治の長州閥が、あまりに激しいため見落としがちになりますが、金銭については薩摩もなかなか汚い。

そしてその悪評の代表格が、黒田と親しい五代友厚でした。

政商の五代、女遊びの渋沢――。

こう言い換えることもできなくはない。

意地悪な見方かもしれませんが、それが史実です。

1997年、NHKにて『夜会の果て』というドラマが放映されました。

黒田清隆の後妻・滝子がヒロインをつとめ、劇中では財津一郎さんが黒田に取り入る政商として五代友厚を演じています。

ディーン・フジオカさんの“五代様”も悪くはありません。

しかし『夜会の果て』の再放送なりリメイクを望んでしまうことも確かです。

イケメン王子様ではなく、より史実に近い五代友厚も見たい――そう願ってしまうのです。

そこでは重厚な【開拓使官有物払下げ事件】と【明治十四年の政変】の描写を望むばかりです。


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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

【参考文献】
坂野潤治『未完の明治維新』(→amazon
一坂太郎『明治維新とは何だったのか』(→amazon
皆村武一『『ザ・タイムズ』にみる幕末維新』(→amazon
泉秀樹『幕末維新人物事典』(→amazon
『幕末維新論集9 蝦夷地と琉球』(→amazon

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