べらぼう感想あらすじレビュー

背景は葛飾応為『吉原格子先之図』/wikipediaより引用

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第8回逆襲の『金々先生』覚悟しろや赤子面!

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第8回逆襲の『金々先生』
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鶴屋「これは差別じゃない、区別です」^_^

「随分とこちらにも儲けがある話をお考えいただいたようですが、この世には金で動くものと動かぬものがあるんですよ」

鶴屋はそう前置きしながら、匿名の相手の発言とした上で、こんな意見があると言います。

ネットの意見ぽくまとめてみましたので、よろしければご覧ください。

・「吉原者」でしょ。そんな連中仲間に入れてられないっていうかw

・「吉原者」は卑しい外道だし、一般市民と同列に扱えないよね。

・関わって欲しくない。吉原者を大河ドラマ主人公にしていることが、もう気持ち悪いw

・大河の品格を貶めている。いったいなぜ?

・女性を搾取する連中なんて、取り上げないで欲しい

・もう本当にありえない! #吉原者の地本問屋入り阻止を求めます

・海外ならまずないでしょw 日本の恥wwww
(※これについては反論させてくださえ。『シン・シティ』というアメコミ原作の映画がありましてね。これの「ビッグファットキル」というお話は娼婦街を舞台としておりまして、吉原を舞台にした『忘八武士道』のような時代劇へのオマージュとされます。吉原は日本独自制度だから、そりゃ海外の作品には出てこねえだろうがよ。んでも、吉原を舞台にした作品へのオマージュはあるんだよ。ちったぁ調べてものを言ってくんな。あ、ちなみに『忘八武士道』も『シン・シティ』もおもしれえ映画でやんす)

鶴屋の舐めた態度で、さすがに忘八たちも怒り始めました。

そもそも地本問屋がいる日本橋の辺りは【明暦の大火】の前は吉原だったと大文字屋が反論。

鶴屋はそれを認めながら「こんないかがわしいもの江戸にはいらぬと追い出されたのだろう」ときました。

りつが「こちとら天下御免だよ」と攻撃し返すと、それもまた認めつつ、そもそもお上が僻地へと追いやった者に市中の土を踏ませては、お上に逆らうことだと屁理屈をこねる。

策士の扇屋は「そういう方たちは女も買わないのか?」と言います。

ご立派なことほざいてやがるけど、よほど綺麗な身の上なんだろうな?と挑発してるんですね。

すると蔦重は、ここに来てもなお心優しい提案をします。

その吉原を毛嫌いしている旦那様たちと、話をしたいって。そうして互いに理解したい。忘八をわかってもらうためにも、話し合って親しみを持ってもらうしかねえと訴えます。

しかし鶴屋は、私もそう提案したけど断られたと言います。

「吉原の方々とは同じ座敷にもいたくないってな具合で」

愕然とする忘八。冷え冷えとした空気が漂います。

「へっ」

ここで黙っていた駿河屋が笑った。そして立ち上がった。

 


駿河屋「うるせえ、差別は差別だ!」

「ハハッ!」

駿河屋が突如、鶴屋を掴み上げました。

突然の横暴な振る舞いに対し、慌てて止めようとする蔦重。

ま、仕方ねえな! ここは連携プレーが素晴らしくて、扇屋は酒をクイっと飲み干して立ち上がる。大文字屋は障子を開ける。

そしてラスボス・駿河屋に躊躇はありません。

「嘘くせえんだわ、おめえ! グダグダグダグダ理屈並べやがって! うら〜!」

階段の前に来ると、拍子抜けするほど呆気なく鶴屋を階段から落としました。西村屋も巻き込みます。

いいね、いっそこのマシリト面が毎週痛い目に遭う流れを定番化して欲しい。

駿河屋はどさっと階段に腰掛けてこうきた。

「悪ィけど、俺だって、あんたらとおんなじ座敷にいたかねえんだわ!」

大文字屋はこうだ。

「出入り禁止な、あんたら!」

松葉屋はこう言いつつ、青本を投げ捨てます。

「おや? ってことは、もうみなさんは吉原の本は作れない」

りつはこう。

「あらまあ、じゃあ今後は重三しか作れないってことんなるねぇ」

大文字屋がさらに凄む。

「黙って大門潜りゃいいなんて考えんなよ!」

扇屋はこうだ。

「そうですよ。二度と出て行けなくなりますから」

吉原の特性を踏まえると怖ぇ脅しだ。大奥と吉原は出入りが宣言されてっから、中で不審死するといなかなかややこしいことになりますからね。

「覚悟しろや、この赤子面!」

駿河屋がビシッと決めた。

「赤子面」と書いてある脚本を読んだ風間俊介さんは、森下佳子さんが「自分の特性を踏まえている」と感心したそうです。

そして鶴屋、西村屋、鱗形屋の顔がアップになります。ったく、それぞれの額に「偽・善・者」と彫りこみてえな!

もう無茶苦茶だと苦い顔の蔦重。

ま、仕方ねえよ。覆水盆に返らずっていうじゃないの。

 


MVP:忘八親父ども

まさかこいつらを褒め讃える羽目になるなんてよ!

鶴屋を蹴り落とし、下にいる連中まで巻き込むところはスカッとしました。

もう、あの場面では、ここでは書けない罵詈雑言と賞賛がわーっと頭の中をクルクル回っていったもんです。

そうなんですよね。差別主義者には、怒りを見せつけるしかないと思うんです。

あそこでガツンと言ってやんなきゃなりませんよ。

 

総評

先日、本作に関する意見を見て愕然としました。

要するに、吉原をキラキラしていて女の子が憧れる場所として描くとはけしからんってことです。

何を見てきたら、そうなるのでしょうか。いや本当は何も見てないのか。

初回の冒頭は、メイワク火事で生きながら焼死する女郎の悲鳴が聞こえてきました。

遺体を投げ捨てられるカタチで最期を迎えた朝顔の死もあった。

それだけに「いってぇこの人ァ、同じ番組見てんのか!」と呆れちまったんですね。

SNSなどでご高説垂れていらっしゃる方々は、往々にしてまともに見ていないか、あまりにも知識不足か。

吉原者は生まれついてなるもの――それを描いただけで過度に叩いて禁忌扱いするのって、要するに差別じゃねえですか。

だから、今年の大河に限っては、倫理面で叩いている側がかえって差別的なんじゃねえかと思っていたんです。

安心なのは、制作側に落ち着きがあることです。

初回の撮影がらみでデマが流れた際には説明する記事があったものの、せいぜいがその程度でして。

こりゃ策がある。隠し球がある。そういう相手はよくよく見ていかないと返り討ちに遭いまさぁ。

んで、今回すよ。見事じゃあねえですか!

鶴屋の言動って、あまりに差別主義者として出来がいいんですね。

自分ではなく他人の意見だと断った上でひでぇことを並べてくる。

相手の反論を受け止めつつも、ともかくお前らは下劣だと畳み掛けるように言ってくる。そしてニヤニヤして、余裕を見せてくるんだよな。

とあるフェミニズムに詳しいという方が、こんな論理で本作を叩いていました。

戦国時代は、戦争がないからには今とは状況が異なるからよい。

しかし吉原のような女性の搾取は現代にも繋がっている。だからけしからんと。

こいつァ、なんて冷血なんだ。テメエとその周囲数メートル程度しか見えてねえんだな!と思ったモンですよ。

戦争がないというのは、日本がそうだというだけの話。

しかしこの国でNHKを見ている中には、戦争のある国から逃れて来ていた人もいるでしょう。

隣国の朝鮮戦争なんて、本当は“休戦”であって、“終戦”ではありませんしね。そういう隣国からすれば、日本人は寝ぼけているとすら思われていそうだ。

子どもならまだしも、社会に責任ある大人の言動と思えない。

書く側も、載せる媒体も、なぜ事前に気づかないんですかね。

大河ドラマは、今までだって誰かしらを踏んづけてきましたよ。

特に幕末作品などに関して言いますと、いまだに薩長ルーツを自慢する現役政治家だっているのに、今と関係ないわけないでしょう。

幕末ものはサラッと「攘夷」だのなんだの言い出します。維新を成し遂げた連中が掲げていたからと、否定的に描かれるわけでもない。

しかし、あれは要するにヘイトでしょう。

海外がルーツの人が、攘夷を掲げる連中が英雄として描かれている様をみて、どう思うのか考えてみたことはないのでしょうか。

そういうがっかり感に対し、今回ドラマでバチンと答えを見せてきました。

蔦屋重三郎を大河で描くな!」

という思考は、要するに差別です。ではなぜ差別と言えるのか。

たとえば、本作をやたらと批判するメディアで、蔦屋重三郎を扱った新作歌舞伎を絶賛するレビューがありました。出てくる遊女もバッチリ褒めていました。

大河ドラマで蔦重やら遊女を扱うのは駄目でも、歌舞伎だったらいいのかい……わけわかんねえな。

なんでか足りねえ頭で考えたんだけどよ、これって要するに、権力勾配ってやつか?

前にも指摘しましたが、性的搾取する人物を大河にしたといえば『青天を衝け』があります。

思想的にまずい。国際政治をふまえた上でも危険ということであれば、蔦屋重三郎よりも吉田松陰の方がはるかにまずい。

プロパガンダ臭ェといや、オリンピックを扱う大河も大概ですよね。

でも、歌舞伎や、こういう大河の時は見過ごされる。

となりゃ、題材云々でなく、叩きやすさてそうするかどうか、決めてんじゃねえのかと私は邪推しちまいますよ。

朝ドラでもそうなんですけど、モデルなし、低学歴、地方出身ヒロイン、脚本家が女性。

こういう要素が多ければ多いほど、朝ドラは酷評が増える傾向にある。

現実社会と同じで、言動やその中身云々でなく、背負っている権力で物事を判断する人は多いんじゃねえかってことだ。

蔦重は顕彰団体もないし、子孫もいない。安心して叩けるんすよ。

んで、こういう被差別者の話を覆い隠した結果が、今悪い意味で出てきてんじゃねえかと。

鶴屋だって自分が差別しているだなんて、毛ほども思っちゃいない。なんなら秩序を乱す蔦屋が悪いとでも考えているのでしょう。わきまえない愚か者を諭して阻止しただけだと。

このドラマを題材時点でやたらと叩いている人。

放送中止ハッシュタグまで作っている人らは、自分なりの正義を貫いているつもりで、差別しているなんて夢にも思っちゃいないんでしょうね。

私は差別したことがないなんて、口が裂けても言えません。

差別は大抵、悪意のない人がするという。私もきっと誰かを踏んづけていると思いますよ。

昔、左利きの人にこう言ってしまいました。

「左利きなんですね。なんかかっこいいイメージありますね」

貶していないし、差別だと気付かなかった。

しかし相手から、それは差別だと指摘されて、なんてこの人は素晴らしいんだと感動しました。

でもその同じ人が、あるとき私を罵倒するメールをぶつけてきまして。

それは相手を信じて私が明かした先天性の特性を貶し、「病院に行け」と書かれているものでした。

まあ、腑に落ちたっていやぁそうでした。目が冷たいっていうか、温厚な人格者ぶっているけど、言動の端々にどこか人を見下す嘘であるよう臭さがあって、そこが引っかかっていた相手なんで。

お利口さんの偽善者だったんだな、私も人を見る目がまだまだない。そう思ったもんです。

こういう鶴屋タイプはお利口さんてのが大事(でぇじ)だね。んだからこそっとターゲットを絞るわけ。

普段はすごく人格者ぽい投稿をしているので「さすが鶴屋さん!」みたいなフォロワーも大量についておりやす。

人間てぇのは、難しいもんですよね。

思い出してみてくだせえ。地本より上等な本を扱う須原屋は、蔦重を差別していないんですよ。

平賀源内長谷川平蔵もそう。田沼意次が蔦重を吉原者だと知りつつ話を聞いた場面が、ありえないという批判もありましたね。

あの意図はここまで来ればハッキリしてくる。本当に上等な人間は、差別なんてしねえと言いたいのでは?

地本問屋という成り上がりで、上方から流れてきた半端なエリート気取りが、誰かを蹴落としてマウント取ろうとしてくる。インテリ気取りでさ。

おかしいことを指摘してものらりくらりと逃げ回り、グダグダグダグダ、話題を逸らす。

基本的にこっちを見下してんだわな。

でも、なんでそんなに人を見下して生きていきたいでんすかね。わけわかんねえな。

私も心に駿河屋を住ませようと思いました。

鶴屋タイプにどうしたら反論できるかとか。納得してもらえるのかとか。その見下す態度をやめてもらえるのかとか。なんなら話し合ったら理解できるんじゃないかとか。

そう考えていたけど、時間の無駄だとわかったぜ! ほんとうに役立つドラマを毎回ありがとうな!


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文:武者震之助note

【参考】
べらぼう/公式サイト

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