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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第7回「おかしきことこそ」】
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狐に福を頼み込む猿ども
まひろは生き生きとした顔で散楽にやってきます。
直秀の傷に気づくものの、相手は「猿だって木から落ちるんだ」とそっけない。
まひろは笑える話を考えてきたと言い出します。誰も頼んでいねえと言われてもお構いなし。
さて、その話は?
狐に騙される猿の話です。
猿の顔をしている藤原一族が、神のふりをしている狐にすりよる様を描くというのです。
「福をくれ! 福をくれ!」
狐の周りをうろうろする猿を見て、面白がるという単純な話です。
狐に騙されて馬糞まで頭に乗せる猿を見れば、そりゃおかしくなりますよね。
これも漢籍を読みこなすまひろらしい話です。
「虎の威を借る狐」のように、漢籍は動物を用いたたとえ話が多いもの。
そして「狐」は安倍晴明だと読み解けるところもポイントです。
安倍晴明は、母が狐の「葛の葉」だいう伝説があります。
狐が人間に化ける説話は中国にもあり、それが日本に伝わったと考えられます。あまりに不可思議な存在ゆえに、そんな伝説が生まれたのでしょう。
ちなみに「化け狸」伝説は日本特有です。
ややこしいことに「狸」は中国では猫の古い呼び方で、タヌキは「狢」と書きます。
義懐の孤軍奮闘、花山天皇の嘆き
藤原義懐(よしちか)が張り切りながら政務をこなしています。
実態は、やる気をなくした花山天皇に代わり、自分のやり口を押し出すだけですね。
陣定めに行って参ると退出し、藤原為時に任せる義懐。
花山天皇は為時に足をさすれと命じてきます。
畏れ多いと戸惑う為時に向かって「朕が許す」と花山天皇。それでも躊躇していると「義懐が嫌いだろう?」と花山天皇が言い始めます。
為時があわてて否定するも、任せきりはよろしくないとポツリ。
花山天皇にしてみれば、もはや義懐と為時以外は信じられない状況です。
他の者は皆、右大臣に繋がっていて信用できない。自身が追い出されれば、右大臣の孫が即位する。忯子の死だって関与しているのかもしれない。
そう嘆く花山天皇に「東宮はまだ幼い」と為時は返します。その上で右大臣は義懐よりも政治を理解しているというのです。
花山天皇はうんざりしたように、やはり義懐は嫌いなのか?と力を落とすしかない。
義懐は、仕事はできても、人身掌握が苦手なようです。そういう意味では為時もそうでしょう。
前回、義懐は藤原斉信と藤原公任らの若手たちを酒宴でもてなしていました。
しかし貴公子たちは、自分の胸の内を打ち明けたかった。酒と女ではそれが足りません。
高階貴子はそうしたことを配慮して、夫の藤原道隆に「漢詩の会」を提案したのでしょう。
何か表現することで胸のつかえがすっきりする。ましてや清原元輔が掲げたお題は「酒」ときた。
書くこととは精神にとっての酒、解放することなのでしょう。
そうした状況と比較すると、義懐はどうしても人身掌握が拙い。
ちなみにこうした対比は『鎌倉殿の13人』でも見られました。
素朴な坂東武者は京都からきた大江広元たちを素朴な酒宴でもてなすものの、広元は目が笑っていません。自分の心や実力を発揮できなければ、心が濁る人もこの世界にはいるのです。
「ああ、忯子に会いたいな……」
寂しそうに呟く花山天皇には、確かに愛があったのでしょう。
そうはいっても天皇となればただの愛では終わりません。忯子に皇后の称号を贈るかどうかの是非を巡り、公卿たちが話しています。
皆「前例がない」だのなんだの言い出し、賛同されず。
義懐は孤立しながら、忯子の父である藤原為光に頼ろうとするも、意見は下位から述べるとそっけなく躱されるだけ。
しかし兼家だけが「先例が見つかればよろしい」と返すのでした。
ともかくしつこい実資のぼやき
ロバート秋山さん演じる藤原実資が登場します。
先週、見かけなかっただけで実資ロスに陥ったので、うれしい限り。
その実資は、帝がいよいよおかしくなったと憤っております。なんでも義懐の出世が早いのだとか。去年は蔵人頭なのに追い越されてしまった。
愛妻の桐子は、夫の愚痴が鬱陶しい様子。どうやら毎日嘆いているそうで、確かにそれを聞かされ続けるのは辛いところですが、それでも実資は止まらない。
参議の枠はいっぱいだったのに、帝が無理矢理増やした。誰も除目で異を唱えないとはどういうことだ。
右大臣もおかしい! 右大臣は嫌いだけどきっぱりと筋を通すのに今回はどうしたのか。
そうぶちまけていると「私に言わずに日記に書け」と桐子がこぼしています。
くだらなすぎて日記には書かないと、さらにイライラする実資。
いや、こんな細やかな心情は、日記『小右記』に掲載だからこそ残っているんでしょう。そうこちらが突っ込むところまでセットになっています。
しかしこの桐子、中島亜梨沙さんが演じる美人妻なれど、そこまで癒されないのは受け止めないからではないでしょうか。
その点、我が子を頼みたいという自己主張をゴリ押ししつつも、やんわりと受け止めて「おーよしよしよし」とできた寧子は達人に思えてきます。
寧子の前では、兼家がまるで雷に怯える柴犬状態でしたもんね。
もちろん兼家と実資の性格の違いもありますけどね。実資は非常にしつこい。いつもくどい。
『光る君へ』で異彩を放つ藤原実資(ロバート秋山)史実ではどんな貴族だった?
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そしてこの日記も重要です。
当時の貴族は、彼らがこだわる前例を残すために日記をつけます。
これがどれほど重要か。
当時の坂東あたりは記録が残っていなくて何が何やらはっきりしないことが多いのに、京都は日記のお陰で色々なことが生々しく伝わっているのです。
実資はそんな日記筆者の代表格です。
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