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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第18回「岐路」】
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伊周には人望がない
帝は「右大臣道兼を関白にする」と伊周に告げました。
思わず愕然としてしまう伊周。
帝としても、右大臣をさしおいて内大臣を関白にすれば公卿の不満が一気に高まると懸念しているようえす。公卿に割れて欲しくないと、伊周に帝が謝ります。
伊周も受け入れるしかなく、悔しそうな表情を浮かべ、帝の隣で定子が虚な顔をしている。
妹と二人きりになった伊周は豹変しました。
これでは亡き父上が納得しない!と吐き捨て、おまえは何のために入内したのか!と毒付くのです。
定子が「このところ帝は夜もおやすみになっていない」と取り繕うとしても「迷うからだ、私を選んでいればよいのだ」と相変わらずの口調で吐き捨てています。
伊周を関白にすることを帝は不安がっている、もっと人望を得るように――定子がそうやんわり助言しても、
「人望?」
とトボけているのか本気なのか、苛立たしげに伊周が部屋を出てゆきます。
廊下ですれ違った清少納言が、頭を下げて伊周を見送り、定子のもとへ。
顔を合わせると、弱音を吐かれます。
「私はどうしたらよいのでしょう? 帝も、兄上も、私にとってはどちらも大切なお方なのに……」
「少し横におなりくださいませ」
そっと声をかける清少納言。このドラマは『枕草子』に書かれなかった姿がこうして描かれてゆきます。
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流星の関白・藤原道兼
道兼にとっての恩人は道長。
藤原公任の屋敷で荒れていたとき、救ってくれたと言われた道長は「そのようなこともありました」としれっと返す。
そして道長を右大臣にします。
道長は救い小屋を公の仕事にして欲しいと訴える。
「もちろんだ」
「兄上なら、よき政ができましょう」
そう語り合う兄と弟には、かつてない団結力を感じます。
道兼は、もう父の兼家に恨みはない。ただ、あの世の父を驚かせるような政がしたいのだと。
以前、その兼家は藤原寧子(藤原道綱母)との会話で「地位が人を作る」と語っていました。
今の道兼は、関白にふさわしい人徳を身につけているように見え、伊周にはそれがない。
具体的な政策としては、諸国租税を減免し、新規の荘園を停止するようです。これには道長も、敬意をこめたまなざしで兄を見て「兄上なら必ずや」と返すのでした。
そして道兼は、関白就任の慶賀奏上のため清涼殿へ向かいます。
しかし、そのとき、ふっと力が抜けたように倒れ込んでしまう。
音が消えて無くなり、静寂の中、道長が道兼を抱き抱える姿が見えます。露骨に喜びを見せる伊周の顔も映る。そういうところが人望のなさに繋がるのですが、本人も気付いていないのでしょう。
道長は、道兼のもとへ薬師を連れてゆきます。祈祷でなく薬師というところがありがたい。
しかし道兼は「疫病だから近づくな」と拒絶する。悲田院で見た者と同じ症状のようです。
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それでも「ご無礼を」と侘びながら、兄のもとへ近づく道長。
道兼は弟を遠ざけたい。道長が倒れたら家が終わってしまう。二度とくるなというけれど、まひろを看病した道長は疫病でも治る者はいると強引です。
「出ていけ、早く! 俺を苦しめるな、行け!」
そう道長を強引に追い払うと、道兼は手を合わせ、読経を始めます。そして自虐的に笑います。
「俺は浄土に行こうとしておるのか? 無様な、こんな悪人が……」
思わず道長は引き返し、兄を抱きしめる。
愛を求めて得られなかった道兼は、弟のぬくもりと共に人生を終えました。
関白の慶賀奏上から七日。
享年35でした。
次の関白をまた決めねば
疫病が猛威をふるい、道兼が死んでからわずかひと月の間に、道長、伊周を除く大納言以上の公卿は死に絶えた――衝撃のナレーションが語られます。
中関白家でも、このことを話しています。
藤原隆家が「七日関白とは情けない」とあざ笑うと、伊周は「よくぞ死んでくれた」と容赦がない。母の貴子ですら、たしなめることはなく、父上がお守りくださったのだと言います。
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伊周は自信たっぷりです。私が関白になれば家の隆興は間違いない。跡を継ぐ息子も、入内させる娘もいると語っている。
道長は、兄の死に呆然とし、倫子はそっと見守っています。
敵(かたき)とはいえ、これで良かったとは思えぬと語るのは藤原為時。
「さぞや無念であったろう」
と続けると、まひろが黙って立ち上がり、母の形見である琵琶を弾きます。
あのお方の罪も無念も全て天に昇って消えますように――そう願いつつ、琵琶を奏でるまひろ。
この父娘は、儒教教典も読みこなし、「人望」に繋がる徳を身につけています。
藤原詮子が、道長と倫子を呼び出しています。
遅いと言われ、内裏での仕事が長引いていたと詫びる道長に対し、詮子はこう切り出します。
「わかっていると思うけど、次はお前よ」
「私には務まらないと言うな」と先回りされて釘を刺されてしまった道長は、それでも「関白になりたいと思わない」と返します。
苛立ち、道長が断ったら伊周になってしまうと嘆く詮子。
「それでよい」と道長が返答すると、倫子も今のままで十分だと続けます。
イライラが沸点を超えてしまったのでしょう。詮子は「黙っていろ!」と声を荒らげ、倫子は謝るしかありません。
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道長はそれでも倫子の言う通りであり、今の帝は若く聡明であるから大丈夫だとして関白を辞退します。
一方、藤原伊周は屋敷で宴会を開いていました。
有力貴族を集めて自身の味方に固めよう、という魂胆でしょう。
伊周は、藤原実資がいないことを確認しながら「私の話など聞きたくないだろう」と語り、大勢の客を前にして「皆の意見を取り入れながら帝との橋渡しができる」と自信たっぷりに宣言しています。
しかし、受け止める公卿側はどうにも熱意には欠けている様子。
藤原実資は、伊周の関白就任が確実になった、よろしくない流れだとつぶやいています。
藤原斉信は、藤原公任と藤原行成を前にして、伊周で決まりだなと結論。
道長が関白になったほうがいいとはいえ、果たして本人にそんな気持ちはあるかどうか、公任は疑問を抱いています。
熱意をこめてやたらと道長推しを宣言するのが行成でした。
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