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『光る君へ』感想あらすじレビュー第18回「岐路」

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第18回「岐路」
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MVP:藤原道兼

初回のちやは惨殺のインパクトが強烈だった藤原道兼

道長に対しても常に暴力的でした。

それがこんなにも清らかになって、彼が関白となる姿をもっと見ていたかったと思わせるとは、すごいことでしょう。

花山院でもそうでしたが、当時の政治停滞をふまえ、具体性のある改革案をさわりだけでも見せてくるのが巧みだと思えます。

大河でも、綺麗事ばかり言って具体的な政治姿勢が見えない人物はいるものです。

もう「言われんでもわかっているぞ」と返されそうですが、『青天を衝け』での渋沢栄一の経済政策。

そして『どうする家康』における家康の政治。

どこが優れているのか説明がないに等しかった。

イケメンが綺麗事を並べればいいわけじゃない。

その点、道兼は、道長の救い小屋について賛同するだけでなく、税の減免や荘園制度の改革などについて触れていました。

聡明な人だった。惜しまれる人だ。そう思えてきます。

政治家としてだけでなく、人間としての温かさもありました。

落ちぶれた自分を見捨てない道長がもう愛おしくて大事で仕方ない。

共に政治に取り組むと語ったときも、病をうつすまいと遠ざけるときも、愛が溢れていて切ない。

義理堅い人なんだと思えました。

玉置玲央さんはNHK大河ドラマで毎回当たりを引いていると思えて、実に素晴らしいと思います。

彼の力量があってこそできた道兼です。

彼の魅力を引き出すためにこの脚本や演出を作り上げたチーム全体の大勝利でしょう。

藤原道兼
藤原道兼は実際どんな人物だった?兼家・道隆・道長に囲まれた七日関白の存在意義

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佞言は忠に似たり

先週に続いて、朝ドラ『虎に翼』関連ニュースです。

◆【テレビ用語の基礎知識】主人公は現代からタイムスリップ?「虎に翼」に違和感 政治的な意図やメッセージ、社会に訴えるためのドラマ使用いかがなものか(→link

この記事は『虎に翼』のヒロインの口癖を借りて「はて?」としか言いようのないものです。

要するに「ドラマに政治を持ち込むな」ということですが、これは朝ドラではなく、今年と来年の大河から「何を言っているの?」となる話でしょう。

まひろは白居易の新楽府に興味津々です。

その理由は政治批判をしているから。むしろ政治理念を込めてこそ、漢詩はよりよいものになるとされてきます。

「漢詩は単純に文字の素晴らしさを味わうためのものなので、楽しませるためだけに作った方がよいと思います」

漢詩鑑賞の上で、そんな風に語ろうものなら「へっ」と鼻で笑われます。

このドラマにおける清少納言紫式部の描き方にも、エンタメに政治を持ち込むことの対比があらわれているように思えます。

清少納言は、定子周辺の政治抗争を『枕草子』には反映させなかったとされています。

一方、『源氏物語』には当時の政治や価値観への批判も滲んでいるとされます。

そういう苦い要素を入れた方が文学として味がでると誘導しているように本作は思える。

『虎に翼』ほどわかりやすくストレートではないけれども、『光る君へ』もなかなかフェミニズム要素や家父長制批判、政治への洞察があるドラマといえます。

それでも『虎に翼』ほど激烈な叩き記事が出ないのは、今年の大河は白居易などを出してきて、読み解きが面倒だからでしょうか。

おじさま向けメディアの皆さん、そんな体たらくでいいんですかね。

フェミニズムを叩いてPVを稼げるならば、大河に絡めたほうが数字を狙えるはずですよ。

ついでに指摘しておきますと、こういう「エンタメに政治を持ち込むな」という考え方は、来年の『べらぼう』も楽しめなくなります。

江戸後期のクリエイターは「いかにオシャレに政治批判できるか?」という点が重要です。

政治を皮肉っておちょくると江戸っ子が買い漁る。

田沼意次時代はそれが自由にできたものの、松平定信以降は厳しくなる――そこをどう掻い潜るか? それが来年大河の戦いといえます。

その様子を見て視聴者が「今にも通じるなあ」と称賛したら、またこういう記事を出すのでしょうか。

「大河に政治を持ち込むのはどうかと思います。エンタメであるからには、純粋に楽しめるものにしてください」

あまりにも時代錯誤です。大河ドラマにはとっくに政治が持ち込まれています。

新札アピール大河の『青天を衝け』は、海外の大河ファンから「こんな露骨なプロパガンダを作っていいのか?」と心配された題材でした。労働運動を敵視して潰す渋沢を大河で礼賛するのはどうか?というワケです。

あるいは、スポーツに興味関心がないクドカンさんに、強引に政治イベントオリンピック礼賛『いだてん』を書かせたのも一体なんだったのか。

大坂の陣四百周年の年に無理やりねじこまれたような『花燃ゆ』。『真田丸』は大坂の陣401年目放映という、どこか間抜けなタイミングです。そのあとは明治維新150周年にあわせた『西郷どん』。

平成の薩長同盟とでも言いたいこの両作品は『八重の桜』の足元にも及ばず、会津に負けるために作ったのかと思えるほどでした。

むろん目的はその反対で、 会津大河を上書きしてやると息巻いた謎の力でもあったのでしょう。その時点でどうして指摘できなかったのでしょうか?

『虎に翼』と、それを叩く雑な記事のせいで、テレビ業界とそれを取り巻く環境の時代錯誤が露わになってきています。朝ドラだけではなく大河にまで波及すべき流れですね。

そろそろ認識すべきでしょう。

なぜ韓国ドラマがこうも受けているのか?

というと韓国のエンタメは政治批判が当たり前の要素とされているからであり、鈴木亮平さんはこう語ったとされます。

◆鈴木亮平「韓国に20年くらい差をあけられた」の衝撃 関係者が明かした、日本のドラマ現場の惨状とカネの問題(→link

世相を批判したドラマ『エルピス』で好演した彼らしい発言といえます。

どうして韓国に大きく差をつけられたのか?

その原因を真面目に探る局面に来ているでしょう。

これはコインの裏表でもあり、韓国ドラマの裏には、雑でくだらないプロパガンダに堕した大河ドラマや、企業や芸能界PR枠のような朝ドラが見えてきます。

ここ十年だけでもNHK大阪制作朝ドラは、執拗なまでに京阪神大企業と芸能界賛美をテーマにしております。受信料の意義を理解しているのでしょうか。

◆【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」(→link

それをどこまで業界が認識できているのかというと、この上にあげた記事を見ると暗い気持ちにならざるを得ません。

真実かどうかはさておき、この記事は前提がおかしい。

『光る君へ』は視聴率が低迷していて、そこに嵐の二宮さんを起用することで起死回生を狙うという、実在も定かではないNHK関係者の声が出ています。

今年の視聴率低迷は題材からしてNHKは覚悟の上でしょう。

2023年、鉄板の題材である徳川家康を主役とし、嵐の一員が主演であった大河ドラマは歴代ワースト2を記録しました。忘れたとは思えません。

ジャニーズが大河において起爆剤にならないことを一年かけて証明したとも言えるでしょう。

一度失敗した手段に二度頼るほど、NHK大河チームは無能でないと思いたい。

問題はこういう明らかにおかしい記事を、PV稼ぎのために書き回してしまう業界そのものにあると思う次第です。

「佞言は忠に似たり」と言います。

へつらいの言葉は、熱烈な忠誠心じみた響きを持つ。

ファン心理にこびへつらってアクセス稼ぎを狙うような記事は、邪悪なものだと私は思います。


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道長の母
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藤原道綱
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道長の娘
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文:武者震之助note

【参考】
光る君へ/公式サイト

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