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『光る君へ』感想あらすじレビュー第47回「哀しくとも」周明たちの死を映す意義

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第47回「哀しくとも」
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恋愛部門MVP:倫子とまひろ

これを踏まえたうえで、この二人でも。

倫子が気づいていないわけがありませんよね。

こういうときは認めた上で「でもあなたとの縁も大事です」とでもしれっと返せばよいとも思いますが。

一から全部説明することが面倒くさいまひろは、どうするつもりなのでしょうか。

それにしても、まひろと比べると倫子は人間としての器がちがう。

聖女か、菩薩か。そのくらいできた人ですよね。

 


敵を知り己を知れば百戦危うからず

さて、歴史に「もしも」はないとしまして、それでも考えたいことはあります。

刀伊の入寇】をふまえて、政治のどこを変えるべきだったのか?

俎上にあがっている案は「武力行使」のように思えますが、私はあえて別の道があると考えています。

【刀伊の入寇】の問題点として、中国東北部勢力への無知もあると思います。

ここはかつては渤海国が支配しており、『源氏物語』で末摘花が愛用する黒貂の毛皮もそこの名産品でした。しかし渤海国が滅びると、日本の外交認識からこの地方は抜けてしまいます。

【刀伊の入寇】はだからこそ、正体のわからぬ連中から突如襲われたということになってしまっています。

これはあとになっても響いてきます。

中国の北から南下してきた勢力が築き上げた王朝である遼や元の情報を日本側はあまり把握しようとしません。江南から逃げてきた宋人の話ばかりに比重を置きすぎたのかもしれませんね。

鎌倉幕府はそうした偏った情報収集の高いツケを支払うことになります。

交易を求めてきた元の使者を殺害するという致命的なミスを犯し、【元寇】が発生します。

いくら防いだにせよ損害はありましたし、巡り巡って鎌倉幕府滅亡にもつながってゆきます。

さらに歴史がくだりまして、20世紀前半のこと。

日本の軍部はこの地域に楽土(理想郷)があるとみなし、満洲国を建設します。

しかし稲作にすら適しておらず、生産性が低い土地に何を妄想をめぐらせていたのか、事前に調べておけばそんな無茶ぶりをしなかったのではないかと思われても致し方ないでしょう。

平安時代。鎌倉時代。昭和時代。

時代が変わっても、中国東北部への情報不足ゆえにとんでもないことになる点では共通しています。

武備も大事だけれども、外交センスを発揮して、遼と交流すれば違った道はあったかもしれません。

【刀伊の入寇】についてのミスは、外交としてみても甚大なものだと思えます。

 


大コケか? 失敗か?

前回のレビューで、私は日刊ゲンダイさんの記事に突っ込みました。

他のメディアからも、ゲンダイさんへの反論のような記事が出ています。

◆「光る君へ」は視聴率が低い=失敗は早計では? ドラマとしては十分魅力的だった(→link

この通りです。ご指摘の通り「血みどろでなければ大河ではない」というのもおかしな話でして。

そこまで遡らなくてもよいかもしれませんが、江戸時代まで「歴史」というのはまひろや為時が愛読している『史記』や『春秋左氏伝』等の読解であって、日刊ゲンダイさんが好んでいる日本の血みどろ合戦ものは該当しません。

どちらかというとそうしたジャンルは、それこそ江戸時代から現代でいうところのキャラクタービジネスのような、教養を高めるものではなく、あくまでエンタメとしての消費でした。

キャラクターカードを集めるような感覚で【武者絵】を買い漁り、あくまで「おもしれぇモン」として真田幸村に拍手喝采を送っていた。お勉強扱いではないのです。

要するに「合戦がないから今年の大河はおかしいんだ」という意見は、ただの「お勉強は嫌いだ」宣言のようにも思えてきます。

確かに戦国時代の合戦は面白いですよね。

でもそこから教養を身につけることが本当にできるのか。ただの武将のいい話悪い話、ノスタルジーでマウント取りたいから戦国知識を振りかざしたりしていないか。

さらになんと東スポさんもつっこんでいます。

◆吉高由里子NHK大河「光る君へ」が残り2話 大コケどころか「成功」と言えるワケ(→link

これは突っ込まれた時点で『光る君へ』の勝利確定かもしれません。

東スポさんは日刊ゲンダイさんと想定読者層が近似です。

その層からも「大コケじゃないぞ」という意見が出るであろう、その手応えがあればこそ、こういう記事が出るわけでしょう。

そして、想定読者層被りといえばデイリー新潮さんにも言えることです。ただ、これは突っ込みたい点がありまして。

◆【光る君へ】偶然すぎる「まひろ」の出会いに突っ込みたくなるが… 謎多き人物を描く大河の宿命(→link

まず、ここで問題点としてあげている「オリジナル・キャラクター」ですが、特定の年代だけが極端に問題視しているのでは?と私は考えています。

それというのも、大河ドラマでは「オリジナル・キャラクター」が主役である作品も『獅子の時代』までありました。

それ以降の大河に親しんだからこその意見と見做せます。

さらに、ここでは粗悪なものとしてあげられている「韓流ドラマ」。

今の若い世代は、むしろ韓流ドラマこそお手本にすべきだと考えていますので、どうして唐突に出してくるのかと困惑するかもしれません。

ニヤニヤしながら「まるで韓流じゃん?w」と言い出すおじさんって、正直鬱陶しいと私も感じています。

ヨン様おばさんを揶揄していたころの癖が抜けないのかもしれませんが、それから何十年も経過していることに向き合うべきではないでしょうか。

そもそも『光る君へ』は、韓流や華流時代劇を意識していることは指摘したいところ。

手っ取り早くNHK BS放映中の『三国志 秘密の皇帝』でもご覧になられると良いと思います。

日中間で文化や書道の比較ができます。「曲水の宴」を見比べられるとは贅沢の極みですよ。

この作品はオリジナル・キャラクターである献帝の弟が主人公です。

ヒロインの一人である唐瑛(とうえい)にせよ存在程度しか史書には残されておらず、ほぼオリジナル・キャラクターです。

プロットのテーマのためにオリジナル・キャラクターを出すことは定番技法であり、今後ますます増えていくことでしょう。

そこを問題視するのは、センスが古いだけになりかねないので注意が必要です。

本作の「オリジナル・キャラクター」は、むしろ長所だと私は思います。

特に周明は、説明がややこしい【マージナルマン】を体現していて本当にありがたい存在です。

「あの大河に出てきた周明みたいな人のことだよ」

これで通じるようになるのは実に教育的効果として素晴らしい。

今年の大河ドラマは、戦国時代の知識や懐古でマウントを取りたい――そういう需要には応じられていないかもしれませんが、歴史を学ぶ意義や楽しみを提示する、極めて良質のドラマだと私は思います。

あと一回だなんて、本当に惜しまれることです。


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文:武者震之助note

【参考】
光る君へ/公式サイト

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