どうする家康感想あらすじレビュー

どうする家康感想あらすじ

『どうする家康』感想あらすじレビュー第47回「乱世の亡霊」

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『どうする家康』感想あらすじレビュー第47回「乱世の亡霊」
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どうするNHK

『どうする家康』なんて大駄作を看板として放送してしまった2023年。

NHKの放送倫理に向けられる目はこの上なく厳しくなっています。

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先日、クローズアップ現代のジャニーズ性加害問題特集を見ました。

NHKの建物内でも加害は行われてた。しかし、NHKはジャニーズに任せきりで、何が起きているかすら把握していなかったとのこと。

NHKでまさかそんなはずがないだろう。そう思い、被害に遭われた方。そのご家族。どれほど辛い思いをしたのでしょうか。

公共放送という信頼性があればこそ、NHKは他局と一線を画しているといえる。

その信頼性を悪用していたと明かされたにもかかわらず、呑気なものだと思わざるを得ません。

それでも、契約だからと今年の大河を放映し続けた。異例とも言える高待遇を主演に対して行なった。

朝ドラでは、放送前からこんな逆風が吹いたためか、ともかく各メディアで絶賛の嵐です。

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しかし、ドラマそのものを褒めるというよりも、モデルとなった歌手の逸話や、主演女優の家族エピソードを拾うような苦しい展開を見せています。

私の個人的意見ですと、今季の朝ドラはここ数年でも最低の水準に思えます。

何が問題か?って、昭和の大歌手を、歌唱経験の少ない役者に演じさせることに無理があるのです。

なぜ歌唱力と演技力があるキャスティングにしなかったのか?

どうして歌がテーマなのに、朝から耳に悪いドラマになっているのか?

疑念が募るばかりです。

もうひとつ、東北人の描写があまりに差別的です。

「とーほぐ弁を話す連中なんて、素朴で頭がちょっと緩い連中だべした」

そう言わんばかりのセンスには辟易とさせられます。ニヤニヤと差別でウケ狙いしながら、御涙頂戴の展開を入れてくる。あまりにも無神経ではありませんか。

時代劇に思い入れのない大河主演俳優。

歌唱経験が不足している朝ドラ主演女優。

適材適所すらできないテレビ局、しかも公共放送でこの体たらく、あってはならないでしょう。

 

「七実三虚」の必要条件

本作の脚本家はインプットが圧倒的に足りない。

ドラマ10『大奥』脚本家の森下佳子さんと再び比較させていただきますと、彼女の『大奥』は、原作の尺を切り詰めながら、時代劇愛にあふれた要素が追加されています。

赤ひげ先生のモデルである小川笙船

大岡越前守

遠山金四郎。

原作には出てこない、あるいは触れられる程度の人物を見事に生かして出してきます。

彼らは時代劇ではおなじみの人物。敢えて出すことで、時代劇への愛と面白さが増しているのです。

たとえ創作でも敬意が込められていて、幅広い世代に受け入れられているはず。

それに森下さんの場合「七実三虚」であると思えます。

七割が史実、三割は虚構であるという、『三国志演義』のバランスとされます。

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つまり「七実三虚」はインプットあってこそ。

歴史をきちんと踏まえてないと、描けないのです。

『どうする家康』は、その点があまりに脆弱でした。

三割の創作があるにせよ、その創作部分でも考証は必要になってくる。

例えば『大奥』で非常に重要だった“赤面疱瘡”という病気は実在しない伝染病です。

しかし、それを描くなら好き放題描いていもよいかどうか?というとそうではない。実際の種痘接種について調べた上で、克服する過程が描かれていく。それがドラマの見どころになっている。

では『どうする家康』はどうか?

前述した阿月マラソンの場合、あの時代の若い女性一人が長距離を駆け抜けることは可能かどうか、検証が必要でしょう。

マザーセナの慈愛の国構想にせよ、数年間空砲を撃ち合うことは現実的なのか、考える必要がある。

それをこの脚本家は省いているのでしょう。だから時代考証以前に物理的にありえない、現実味のないくだらなさが横溢している。北半球で南に虹が出るようなことばかりだ。

しかし、私がくどくど指摘したところで、「へっ」と鼻で笑って屁理屈でもこねくり回すのでしょう。

「そーゆー真面目な歴オタ、史実至上主義、原理主義がつまらないんですよww」

「負けて悔しいんですかwww」

「偉そーなこと言いますけど、あんた勘違いしていたことありますよねwww」

といったような論点ずらしばかりで本質とは向き合わない。

はっきり書く人が少ないようですが、あえて指摘しますと……。

『どうする家康』から伝わってくる制作者の人間性が、あまりに幼稚です。中学生あたりで人間性の成長が止まっていて、頭にあるのはエロとマウンティングだけ。

そしてお決まりの言葉が出てきます。

「それってあなたの感想ですよねw」

「はい、論破www」

まぁ、その通りでいいですよ。

しかし、それで済むと思っているのであれば、武士としてのメンタリティ不足ではありませんか。

非力な私ではなく、例えばの話、薩摩隼人の前でも同じことを言えるかどうか?

武士というのは、

「心せよ。相手は薩摩隼人かもしれん。ならば初太刀だけは避けよ」

という心意気があるものでしょうよ。まぁ、こういう心境も新選組好きだけかもしれませんけどね。士道不覚悟は切腹だ!

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「シン・大河」とは結局何だったのか?

「シン・大河」――このわけのわからないフレーズに何が期待されていたのか?

迷う弱気なプリンスという描き方に、どういうわけか期待を寄せた人はそれなりにいたようです。

私はタイトルとコンセプトの時点で嫌気がさしましたものですが、言わんとするところは想像がつきました。

脚本家世代は、教養としての歴史にうっすらと反発を覚えていたのでしょう。

アジア太平洋戦争敗北まで、日本は臣民の教養や理想として、武士道を利用してきました。

例えば吉川英治『宮本武蔵』は格別のものでした。

それが敗戦後、GHQは問題視し、武士道奨励が禁忌とされます。

その規制が解け、高度経済成長期となると、一国一城の主となる出世物語や、自分たちの先祖に親しみや誇りを持てる時代ものが流行。

やたらと血生臭い武士道批判路線よりも、明るく穏やかなこうした作品が主流となりました。

代表が司馬遼太郎ですね。

当時は大衆教養主義の時代でもあります。

家に百科事典と司馬遼太郎の本を揃えることが、日本人のステータスシンボルになった。大河ドラマはそんな時代にピタリと当てはまったものです。

そうした司馬遼太郎と大河ドラマで教養を身につけた世代の下が、今年の脚本家と同世代です。

彼らは親のそうした大衆教養主義がウザい。反発したい。だからこそおちょくるようなことをする。

例えば戦国武将を萌えキャラ女体化して遊んだりする。

それでもまだ、親や先生の御機嫌取りのため、一応、司馬遼太郎を読んでいるのであればマシでした。

気合を入れて、あえてメインストリームから外れた血みどろ武士道、伝奇路線をこよなく愛する。これも少数派ながら、歴史への愛はあるでしょう。

小説ならば隆慶一郎、山田風太郎。漫画ならば『シグルイ』を熟読するようなタイプですね。

この脚本家の場合は、それすらないとみた。

司馬遼太郎を読み、大河を見てきた親をおちょくりたいだけ。高校生あたりで卒業して欲しいそうした精神性でもって、大河に乗り込んできたと。

そんなインプット不足で、面白い歴史劇が描けるわけがありません。

でも、彼らは誤魔化し方、いわば論破芸だけはマスターしています。

こういうときはまず、シナリオを描きます。

『どうする家康』は「シン・大河」だ。

それを理解できないのは、司馬遼太郎を愛読していてそれでマウントとってくるような古臭いおじさんだけ。

そういう残念なダサいおじさんは放っておこう。おばさんはイケメンを脱がせておけばなんとかなるだろ。『青天を衝け』もそれでうまくいったし。

オレたちはマジでやばい、センスのいい話を作れる!

そうシナリオを描いて、提灯記事を書かせよう。スポーツ紙に「SNSでは」「ネット大ウケ」と見出しを書かせれば世論なんて操れる。いつも通りだ、ちょろいもんだ。

なにせこちらにはあの事務所もついているんだし。紫色のハートマークが乱舞する。

めんどくせー歴オタだって、紫ハートーマークのいいね欲しさにコロッと参るだろう。

そうそう、熱狂的な固定ファンがいる『平清盛』『いだてん』スタッフとキャストを押さえておけばバッチリだな!

恐ろしいことに、このシナリオには、失敗した時の想定がない。だからシナリオ通りに大成功したと、主演や脚本家は振る舞っているのでしょう。

論破芸で勝てるという見込みもある。

脚本家のインタビューを読むと、論点をずらします。

批判されている箇所はそのくだらなさ、つまらなさがあるのに、認めようとしない。言い訳や自己満足、ナルシシズムを語るよりも大事なことはあるのに、そうしない。

ワースト2という不名誉に関する弁解があってもいいだろうに、現実逃避して軽薄なことをしゃべるだけ。

『レジェンド&バタフライ』でも同じように絶賛し、ノベライズを担当した、そんな半分身内のような相手に滔々としゃべるだけで終わります。

◆松潤主演NHK『どうする家康』は「シン・大河」になる? 大ヒット大河ドラマ“勝利の方程式”とは | 2023年の論点(→link

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私にはまるで劉禅と黄皓に見えます。もたれあいの精神に驚くしかありません。

 

聖人は天を体し、賢人は地に法(のっと)り、智者は古を師とす

聖人は天を体し、賢人は地に法(のっと)り、智者は古を師とす。『三略』

聖人は天を手本とし、賢者は地を手本とし、智者は古を手本とする。

『どうする家康』とその周辺に漂うくだらなさを彷彿とさせる、こんな記事がありました。

◆ 「自分こそ正しい」というバトル そのツールになった「エビデンス」(→link

小豆袋の逸話はあるだの。森蘭丸をあえて森乱丸にするだの。なじみのある呼び方ではなく、最新の説に応じた呼び方とする。

そのうえで、そんなことも知らんのかとマウントをとるあたりが、このドラマのいやしさの根源にあると思い当たった。

このドラマは歴史に対して敬愛がない。体系立てた筋道すら学んでいない。そのくせ、小ネタだけは仕込んでくる。

そうして逸話を仕入れている歴史ファンに目配せして、その蘊蓄語りをさせることで、批判する相手に「こんなことも知らないんですかぁw」とマウントを取ろうとする。そういう狡猾さが常に滲み出ています。

脚本家のインタビューを読んでいるとわかります。

彼は史実をツールとしてしか考えていなくて、蓄積を重視しない。積み上げてその結果を生かすことなく、その場しのぎで使う。

ワンクールドラマや映画ではそれでもよいのかもしれませんが、長丁場でそれをやったら物語は破綻してしまう。

以前、家康と氏真が抱き合って「ネット号泣」だのなんだの提灯記事が出ていました。

瞬間風速だけ競い、目の前の相手を言い負かして「論破w」と気取る手合いにはこれでいいのだろうと思える描写と反応のコタツ記事です。

しかし、キッチリと覚えている視聴者もいます。氏真がマザーセナ相手に、未遂であろうと性的暴行をやらかしたことを。

そんなことを綺麗さっぱり忘れて、瞬間的な感動だけを狙う。どこまで浅ましいのでしょう。

家康に捨てられた瀬名が氏真に「遊女」扱いされるなどあり得るのか?

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スマホで検索した結果をふりかざし、自分は情報強者で相手は情弱だと決めつける。青年期をネット匿名掲示板と共に過ごしてしまった中高年らしい振る舞いに思えます。

確かに、それでしばらくは勝てる時代も続きました。

相手をおちょくる。相手に刺激を与える。相手がまごついているところで何かを突きつける。侮辱する。論点をずらす。そして「論破ww」だの「顔真っ赤ww」だのいいつのる。

ネット上ならば漫画のコマでも貼り付けて勝利宣言をする。大河ファンは字幕付き大河スクリーンショットも使いますね。

そういう軽薄さと、露悪趣味と、しらけきった冷笑を使えば、とりあえずネット論戦では勝ったふりができる。

これが論破芸の正体です。

『どうする家康』とはそんな論破芸を大河ドラマで一年間流し続けたようなものだと思います。

批判があれば、

「でもその史実って誰か見てきたのw」

「史実至上主義w 歴史絶対主義ww」

「勝者が作り上げた理屈でしょw」

とでも言って、小賢しく立ち回る。この言い分は制作チームで共有して使いまわしていますが、誰かがそんなシナリオを作り上げているんですかね。

それは、いつまでも通じるものでしょうか。

全てをしょうもないインターネットミームで消費するとき、使う側もネタとして消費されています。

冷たい笑いで何かを小馬鹿にするとき、している自分自身をも冷たく突き放しています。

「司馬遼太郎おじさん」だのと揶揄されてきた、昭和大衆教養主義を生きた人々。彼らは自分磨きをするために司馬遼太郎を読んで、大河を見るのだという名目はあった。

うんちく語りが鬱陶しくとも、一目置くに値するだけの教養を身につけたい意思があった。

しかし『どうする家康』を無理やり「シン・大河」だと言い募る層に、同じ志があるかどうか?

かつて、大河好き、歴史好きがそれなりに一目置かれたのは、人格の修養をしているという暗黙の了解もあったはずです。

今年は大河界隈の幼児性にしみじみと嫌気がさした一年でした。

もっともこれは今年だけでもない。それすらも積み重ねです。

例えば、聞かれてもいないのに唐突に「でも『いだてん』は好き」と言い出す方は、これだけ五輪関連の汚職が明白になりながら、大河ドラマは無関係だと言えるでしょうか。

工作に使われた可能性が高い作品を無邪気にほめる弊害はないのでしょうか。

『青天を衝け』も同様です。

あれをアイドルドラマやイケメンコスプレ動画として楽しんだのであれば、それでいいかもしれません。

しかし幕末明治史を学んだと言うのは危険。渋沢成一郎小栗忠順を出しながら、彰義隊に触れないドラマにどれほどの価値があるのやら。

あの酷い歴史修正は、局内でも恥晒しという懸念でもあったのか。『大奥』で軌道修正がはかられております。NHK内部にも幕臣ルーツの方はおられるでしょうし。

そして今年が極め付けだ。

ファンダムは狭い界隈で褒め合い、反対意見を揶揄しておちょくるばかり。

古を師とする態度なくして、どうして智者と思われることがあるのか。

『どうする家康』は最低大河の持つ要素を全て持ち合わせています。

今回はスイーツを無駄に出してきて『江』を彷彿とさせました。

さらには出演者が大麻所持で逮捕されました。『花燃ゆ』以来のことです。あの作品は放送後、今回は最終回目前という違いがありますね。

最終回直前に「出演者が逮捕でどうする!」となるとは、なんということでしょう。

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それのみならず、歴史好きや大河好きなんて嘘っぱちなのではないか、人格修養ができていないのではないかという疑念まで振り撒き、新境地の駄作に突入しています。

これぞ「シン・大河」ならぬ、「惨・大河」だというのだれば、賛同しかありません。

大河を愛する皆様方も、思うところあればNHKに送ってください。

◆NHK みなさまの声(→link

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文:武者震之助note

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【参考】
どうする家康/公式サイト

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