鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第37回「オンベレブンビンバ」

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政子の政(まつりごと)

政子の政(まつりごと)が始まる――ナレーションがそう宣言。

書状を書いている彼女の手つきが美しい。

書道の所作、筆の持ち方は鉛筆やペンとは違います。現代人は慣れていない人が多いでしょうから、相当大変なはずです。それでもきっちりこなしています。

政子という名前は、父の諱である時政から取って名乗ったとされています。

しかしこうして見ると「政(まつりごと)」をする人だからとも思えてくる。

大江広元が慈愛に満ちた目で彼女を見守り、次の書状を書くよう促します。

時政の前とでは表情が全然違いますが、理由はわかる。何も学ぶ気が無かった時政に対し、政子は心構えが違うのでしょう。

なんでも政子は自分で書きたいと主張したそうで、その場にいた北条泰時に肩揉みを頼むのでした。

書状が平仮名だらけでよいのか?

その点を政子が気にしていますが、だからこそ女性が書いているとわかり、御家人たちも喜ぶと広元が答える。

どうやら彼は、自分の活躍だけでなく、見出した人物の成長する様に充足感を覚えるようです。

「王佐の才」(王者を支える才能)の持ち主ですね。

これはなかなか大事な指摘です。

頼朝が文書形式を変えたら、古株の御家人たちは「最近よそよそしいんだよなぁ~」と嫌がったとのこと。

時代がくだって伊達政宗も「なるべく自筆で書くように」と子孫に言い残しました。

仮に祐筆(代筆をする役)を使うにせよ、花押だけでも自分で入れろと。

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それでも筆を走らせる疲労には勝てず、広元にお願いする政子。

私が書いたことにするよう念押ししながら、泰時に怒ります。

肩揉みがなってないってよ。

そして、こうやるんだ!とばかりに政子が泰時に手本を示すと、呑気に気持ちよさそうな表情を浮かべる泰時です。

微笑ましいやりとりの中で、政子は時政の動向を義時に尋ねると、何か企んでいる様子。

義時は、広元に尋ねます。

「この先、執権殿はどうでる?」

もう御家人の心を戻すことは難しく、それは本人がわかっているはずとのことですが……。

 

三浦を味方にすれば和田もつく

御家人の信頼を失ったならば、一発逆転しかない――りくが時政に陰謀を語ります。

実朝を鎌倉殿の座からおろす!

そして平賀朝雅をつける!

平賀朝雅は、甲斐源氏の祖でもある源義光の血筋です。

源氏の出であるからには鎌倉殿のポジションも問題はなく、時政とりくの娘を妻としています。

政子から権力を奪い、孫を鎌倉殿にすれば、鎌倉殿の祖父母として権勢を振るうことができる。

その上で、時政に覚悟の程を問い詰めます。

鎌倉殿の座を狙うことになれば、その途中、政子と義時を討つことになるかもしれない。時政にそれができるかどうか。

問い詰めると同時に「向こうも同じことを考えているかもしれない」と重ねてプレッシャーをかけ、さらには「政範の魂が見守ってくれている」とまで言い出す。

りくは冷静さを欠いていますね。

支離滅裂で意味がわからない。鎌倉殿の座を狙うことと政範は関係ないし、京都での暗殺は知らないにせよ、政範を殺した朝雅を頼るのだからもう無茶苦茶です。

しかし、人とはそんなものかもしれない。混乱すると愚行に沈んでしまう。

困惑している時政に、りくはこう言います。

「しい様、こっちを見て。いい顔つきになられましたね。覚悟を決めた男の顔ってこんなにも艶っぽいのですね」

そう言いながら、しなだれかかるりく。

作戦としては、まず三浦を味方につけ、それに続く和田も引き入れる。つまり三浦義村を攻略すれば勝ちだとして、時政を焚きつけるのですが……。

さっそく時政は、三浦義村を誘います。

実朝では頼りない、おとなしすぎるとかなんとか言いくるめようとするのですが、義村は「威勢がよすぎて潰れたお方」のことをほのめかします。

源頼家のことですね。義村は、すでに時政の理論の危うさに気づいている。会話をしながら計画の確実性を探っているのでしょう。

しかし、そんなことに露とも気づかないのか、時政は、三浦が庇護している頼家の息子・善哉のことを持ち出します。

まだ六つだけれども、鎌倉殿にしたらどうか。頼家が泣いて喜ぶだろう。そう情に訴えつつ、善哉が幼い間は誰か別の人を立てると言い始める。

誰か?

平賀朝雅――我が婿だと答えます。

なるほど。

一見、納得したような返事の義村ですが、何が腑に落ちているのか?

娘婿ということは、その子は時政の孫になる。頭の中で真っ先に系図を描いていてもおかしくはないでしょう。

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とりあえず平賀に継がせ、そのあと善哉にすると持ちかける時政に対し、悪くはないと賛同する様子の義村。

「手を貸してくれますね」

そうりくに言われ、微笑む義村ですが、何処となくこの事態を面白がっているように見える顔が“素”なのでしょう。

こんな陰謀を手土産にすれば、義時に貸しが作れます。彼にとっては美味しい展開になってきました。

 

夫の重忠は討死する前に

政子と義時の前に、畠山重忠の妻・ちえがいます。

北条時政の娘であり、政子と義時の妹にあたりますね。

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ちえによると、重忠は家を出立して義時に討たれる前に、本領を彼女に渡していたとのこと。

政子は、重忠殿の思い出を大事にしたいからこそ、本領は全てあなたのものだと語りかけます。

「結構です。謀反人が所領をいただいてはなりません」

姉の言葉に、冷たく返事をするちえ。義時もここは素直に従って欲しいと訴えるものの彼女は頑なです。

「そんなことをすれば北条は身内に甘いと陰口を叩かれる、謀反人は処断して欲しい」

重忠は謀反人でないと政子がとりなしても、今更そんなことは聞きたくないと彼女は言い、武蔵へ帰っていくのでした。

心の底から、重忠という人間を愛していたのですね。

重忠が所領をたくさん持っているからとか、立場が良いとか、そういうことではなく、人間として大事だった。

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りくやのえと対比したくなります。

この二人は、露骨に夫が持つステータスを愛しています。地位が安泰で、高みに昇れば昇るほど心地よくなる。そのために夫が危険な目に遭おうが関係ない。

最終的に、ちえは本領を継ぎ、畠山の名は残りました。

再婚相手は足利義純ですが、重要なのは、女性の土地継承でしょう。

中世まではこうしたことはあったものの、近世以降廃れてゆき、明治維新以降は女性の権利に対してさらに制限がかかってしまった。

 

似絵を楽しむ後鳥羽院

後鳥羽院が平賀朝雅に何やら尋ね、筆を走らせています。

「できた」と見せてきたのは似絵(にせえ・似顔絵)でした。

なんでも北条時政とのことで、中原親能もそっくりだとおだてている。

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慈円によれば、後鳥羽院の特技の一つに似絵があるとかで、そこには藤原兼子の破られた似絵もあり、そっくりなのに破いて出ていったとか。デフォルメが効きすぎなんですよ。

「で、畠山はどうなった?」

後鳥羽院がそう気軽に尋ねると、親能が一族全て滅ぼされたと答えます。

思わず楽しそうに「力のある御家人がいなくなってきた」と微笑む後鳥羽院。

北条は天下を取ったようで、時政と政子たちが争っていると理解しています。慈円が耳が早いと誉めると、こうきた。

「生馬の目を抜くとはまさにこのことよ!はははは!」

そして慈円の絵が出され、思わずムッとして丸めてしまう。彼も不愉快だったようですね。

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その京都では、平賀朝雅が、中原親能に鎌倉における北条時政の陰謀を打ち明けていました。

「こんな時にわしは鎌倉殿などなりとうない、恐ろしすぎるわ!」

「では……」

「のるわけがなかろう!」

「それがよろしいかと」

「鎌倉でこの先何が起こるか全く読めん、一つ手を間違えると命取りよ」

焦る朝雅ですが、今更もう遅い。

北条家の跡取りになろうとして、政範に毒を盛った。そこから発展して畠山が滅亡した責任の一端は、この男にある。

源仲章に唆され、毒を手にした時点で運命は決まっていたのです。

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本作は、誰かが一つ間違えた瞬間がハッキリとわかります。

前回の稲毛重成も、その瞬間がありました。畠山重忠の惣検校職を与えると時政に持ちかけられ、一瞬乗り気になった。顔がパッと明るくなった。

ああいう反応をしたからには、稲毛重成が清廉潔白にも思えなくなる。罪に対して処罰が重いことは確かですが。

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