お好きな項目に飛べる目次
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逆境に強い高瀬姫 新しい生活に向けて活き活きと
隠し里で祐椿尼、高瀬、なつらがさばさばとした様子で今後について語り合っています。
高瀬は大事なものは失っていない、家名がなくなった今、一人一人が前向きに生きることこそ井伊を残すことになるはずだ、と語ります。
なんだかこの娘さんは、妙にたくましいんですよね。
着々と再スタートに向けて、井伊の残務整理に励む直虎。これでよかったのだと自分を納得させようとしています。
中野直之は、小野家他井伊家の家臣をまとめ、近藤の元に仕えることにします。
高瀬も弥助の孫という名目で近藤家に向かうことに。
あやめはどこかに嫁ぎ、なつは虎松のおともとして松下に行きたいとのこと。
虎松は松下に行くことを承知しました。六左衛門は守り役として虎松に同行します。
「身勝手なものですね、自分で決めたことなのに」
テキパキと作業を進めていた直虎であるのに、ここで言葉に詰まって涙ぐみます。
そして吉日を選び、虎松は松下源太郎の養子となります。虎松の聡明さはすっかり松下の人々に気に入られたようです。
「一緒になりてえ女がいるんですが、どうしたもんですかねえ」
直虎が井伊家当主としてつとめ終えた日。直虎が井戸端で祈りを捧げていると、そこに龍雲丸が顔を出します。
直虎は頭にこれからどうするつもりかと聞くのでした。
「俺ぁ、一緒になりてえ女がいるんですが、どうしたもんですかねえ。名前も知らねえんですよ」
「村の名とどんな娘かわかれば、調べておくが」
「……かわされてるんですかねえ」
龍雲丸のアプローチに気づかない直虎です。
そこでついに、直球。
「俺ぁ、あんたのそばにいたいんだ。いいって言ってくれれば、それでいいんですよ」
ええーッ、ここでその展開ですか!
「吾がそばにいると、ろくなことにならぬかもしれんぞ」
「死にそびれるのは俺の得意なんで、あんたを置いてったりはしませんよ」
「とわじゃ……吾はとわという」
直虎を抱き寄せ、頭巾を取る龍雲丸。
そしてそのまま、先週とは違って意識があるまま、口を重ねるのでした。
直虎にとっての井伊も、政次だったのかもしれない
その後、直虎は還俗し、龍雲丸とともに一農婦として土とともに生きる道を選んだのでした。
「地獄の底から井伊の行く末を見守ってやる」
そう告げて飛び去った鶴こと政次は、どんな気持ちでこの場面を見ているのでしょうか。
政次派は阿鼻叫喚かもしれません。
しかし、落ち着いてください。
彼も生き延びたらなつと夫婦になるつもりでしたしね。政次となつのラブシーンはそのためにあったのかな、と思ったりして。
それにやはり、直虎が井伊再興の望みを捨てたのは、やっぱり小野政次の死の影響が大きいと思うのですよ。
片翼を失い、もう飛べないと力尽きてしまったわけです。
龍雲丸は第33回で直虎に「(政次にとって)井伊っていうのはあんたなんだよ!」と言っておりましたが、直虎にとっての井伊も、政次だったのかもしれません。
井伊家が蘇る日が来るとすれば、政次の魂を受け継いだ者が戻って来た時でしょう。
信玄デスサンバは松平健さんのアドリブだと!?
そして場面が切り替わると、北条氏康が死んでおります。
思えば短い出番でした。
そしてその訃報を聞いて、文字通り小躍りする男が一人。
「死におった! 北条のじじいが! 死におった♪ 死におった♪」
武田信玄が妙に軽やかなステップで踊ります。
これが信玄デスサンバ……! 松平健さんのアドリブだそうです。凄いアドリブだ。
氏康の死をきっかけに、今川氏真夫妻は北条家を追放されてしまいます。そして、浜松城(旧曳馬城)に家康を頼ってやってきました。
どう見ても歓迎されていない二人ですが「瀬名殿はお元気ですか? 是非あって話がしたいです!」と空気も読まずに言い出します。ひきつる家康の顔がいいですね。
家康がこの二人を庇うリスクはあっても、メリットはありません。
氏真らを追い出したいと考えるのは当然です。
一応、織田信長の許可を取ってから追い出そうと考えるのでした。
もはや北斗の拳のモヒカン軍団にしか見えねぇ
元亀2年(1571)、進撃の信玄が赤備えとともにやって来ます。
私は昨年、武田家滅亡の場面で泣きました。
真田昌幸の「信玄公のような御方は二人といない」という台詞にもホロリと来ました。
しかし今年は「早く退場しねえかな、武田」、「信玄は一人で十分、二人もいらない」と強く思っております。
昨年あんなに胸を熱くした赤備え。
今年はもう『北斗の拳』のモヒカン軍団に見えて仕方ありません。
そんな武田の脅威が迫る中。
高瀬は何か思うところがあるのか、遠くを見つめているのでした。
◆MVP:武田信玄
「死におった♪ 死におった♪」
コミカルかつ悪夢のようなデス信玄サンバ。そして赤備えで粉砕する気満載の構え。
こいつらの嬉しそうな顔を見るたび、昨年の真田昌幸もセットで思い出されます。
『真田丸』の最終回で、家康が「おまえらみたいな戦で生き生きするような奴は絶対滅ぼす!」という決意表明にも納得。
こんな禍々しい連中を生かしておいては、とても太平の世なんて訪れません。
昨年の武田家滅亡時に流した涙すら一瞬で乾燥させる。そんな邪悪極まりない武田家。
最悪で最高です。
◆総評
ずっと家のために飛び続けた直虎。
小野政次という片翼すら失い、これ以上はもう飛べないと、ついに地面に降り立ちました。
「若い大事なときを、井伊のために費やして欲しくない」
という彼女の、家臣に対する思いやりは、自分の体験が念頭にあるのかもしれません。
が滅びたあと、武士はどうなるのかという悲哀がそこにはあります。
描かれていないだけで、井伊よりもずっと家臣が多い今川家でも、同じ事態が起こっているわけです。
そして日本全国各地で、滅んでいった小さな国衆たちのもと、今回のようなドラマがあったのです。
私たちの祖先も、武士であることをあきらめて、土とともに生きることを選んでいたのかもしれませんね。
あれだけ頑張っていた直虎がここであきらめてしまうことは、残念だけれども、挫折よりも安寧というかたちで決着をつけていたのでほっとしました。
まさかオリジナルキャラクターの龍雲丸と、あんなかたちになるとは。
創作でも直虎という一人の女性に、そんな安らぎを与えてくれた本作の優しさが胸にしみるなあ……。
と思っていたら信玄サンバですよ!!
やっぱり全然優しくなかった!
ハバネロぶちこんだ激辛鍋の前に、飴玉一個くれただけだった!!
考えてみれば龍雲丸がオリキャラというのも危ないわけで。
史実と整合性をあわせるためには彼との間に子供ができてはいけないし、夫婦として添い遂げてもそれはそれで問題があるんですよね。
来週、堺に向かう途中で龍雲丸が武田に見つかり散る……そんな展開になったらどうしようかとヤキモキし出しました。
小野政次は死のタイミングが読めたけれども、龍雲丸の場合はなあ……。
どう考えても嫌な予感しかしません。
来週を見るのが怖くなってきました……それでも見なくては!
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著:武者震之助
絵:霜月けい
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【参考】
おんな城主直虎感想あらすじ
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』公式サイト(→link)
【編集部が選んだ今回の印象ツイート】
ただ今の信玄サンバを忠実に再現したAAがこちらになります。 #おんな城主直虎 pic.twitter.com/pswfnS7hFf
— わた@シン・呉鎮守府 (@them_isto_cres) September 10, 2017