大河ドラマがツマラン!というなら見なければいいじゃん。
そんな主張があります。確かに一理あるように感じますが、ここで一つ「週刊少年ジャンプを毎週買っていたあの頃」を思い出していただけますでしょうか。
『北斗の拳』や『ドラゴンボール』、あるいは『HUNTERXHUNTER』に『ワンピース』、『呪術廻戦』など。
王道路線の作品が今週どんな展開になるのか――。
気になって仕方ないからこそファンは毎週買い続けるものなのに、それらがすべて休載して、連載作品の大半が『珍遊記』ノリになったら?
いや、『珍遊記』は面白かったですよ。
『シェイプアップ乱』も当時は最高でした。
しかし、純度100%のギャグ漫画は、ジャンプの中ではあくまで脇役であり、王道作品の中にあってこそ光るものでしょう。
だからこそ週刊少年ジャンプも長く愛されている。
同じように大河ドラマも、日本が誇る歴史王道作品の中心に位置するものです。
それが今年はどうなのか……。
ということで『豊臣兄弟』第21回レビューへと進んで参ります!
モテモテの石田三成
北陸戦線の離脱を許され、織田信長から播磨への出陣を命じられた羽柴秀吉。
長浜で、そのことを聞いた加藤清正と福島正則が播磨地方の地図を眺めていると、侍女らしき女たちに追いかけられ、石田三成がやってきます。
「あいつばかり、なんでモテるんじゃ!」
清正も正則もワーキャーしていて、ここは現代の学校かと思うほど。
職員室には羽柴先生もやってきて、右から左から侍女に腕を引っ張られる三成を見て言います。
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「あれが今の播磨じゃ」
左(西)が毛利で、右(東)が織田ということでしょう。
いかにも素晴らしい喩えっぽく秀吉が話すのですが、戦国時代の争いって、基本はそのパターンじゃありません?
川中島を奪い合った武田と上杉。
桶狭間エリアの拠点を奪い合った織田と今川。
長良川周辺の国衆を奪い合った織田と斎藤。
大なり小なり、各勢力の中間地点に位置するところが戦場になりがちで、わざわざ三成のモテ描写を持ってきてまで説明することなのか?と思ってしまう。
三成がモテる理由もなんだか不思議で、劇中では「気が利くから」と説明されていました。
要するに、兵站や石高の計算力の高さを「気が利く」という一言で示したのでしょう。
しかし三成は、そうした計算力が凄まじくても、人の気持ちなどケアせず理屈や規則で押すタイプだったから、清正や正則と対立してしまったのでは?という印象が強い。
仮に女性に相談されても、理路整然と悩みの根源から解決法までを提示して、『そうじゃないんだよ!』と嫌われるタイプに見えます。つまりモテない。
それが本作では何かが違う。新しいイケメン三成像に挑戦なんですかね。
そもそも城内で女性と追いかけっこをしていて、城主の秀吉が笑っているだけというのも、どうにも締まりがなくて……ここは本当に戦国時代の武家でしょうか。
生野銀山からこの先は石見銀山へ
トータス松本さんが演じる荒木村重もキツいものがありました。
明るくて、声がデカくて、関西弁がわかりやすいから選ばれたのか。
後に出てくる別所賀相(吉親)さんの重厚さと比較すると、村重の話し方がトータス松本さんそのまんま過ぎて、とても戦国時代の人だと思えません。
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冒頭から批判続きて申し訳ありません。
今週は秀吉の中国攻略が始まるということもあり、非常に楽しみにしておりました。
なんだかんだで中盤最大の見せ場じゃないですか。
秀長が主役となれば、これまでの作品では認知度の低かった但馬方面、つまり山陰の進軍も見られる。
黒田官兵衛の活躍については『軍師官兵衛』ですでに既視感もあり、そこは薄い描写でも問題ないでしょう。
一方、山陰方面に着目すると、生野銀山と竹田城、さらに進んで石見銀山と鳥取城など、著名な城や合戦と共に、当時の主力鉱物だった銀まで絡んでくるじゃないですか。
そうした戦国時代の背景も見えるような描写へ期待も高まります。
そこで非常に重要になってくるのが、劇中で生野銀山を押さえていた太田垣輝延でした。
攻略を任されたのが豊臣秀長。
そして太田垣輝延を演じるのが、主役・仲野太賀さんのリアル父である中野英雄さんでした。
竹田城と太田垣輝延
親子出演、それも大河ドラマともなれば話題になる。
その一方で「自分が出ることにより色眼鏡で見られてしまうのではないか」と懸念を表明していたのが、以下、参照記事にある中野英雄さんでした。
【参照】中野英雄、サプライズで大河初出演 オリコンニュース(→link)
まぁ、普通に考えれば「話題を狙った配役」ですわな。
狙ってないわけがない。
問題は、中野英雄さんの出演が作品にプラスとなるかどうか――。
ぶっちゃけドラマの放映中に、太田垣輝延を演じている役者さんが豊臣秀長(仲野太賀さん)のリアル父である中野英雄さんだ!とはあまり意識されなかった気がします。
放送後のネットニュース的には大好物な話題かもしれません。
しかし、劇中では、太田垣輝延の人格があまりに酷すぎて……。
「オレ様は偉いんだから、水を半分よこせ!」
家臣を睨みつけながら堂々と主張するあの態度は、よくぞ今まで寝首を掻かれなかったなというほど。

ですので、秀長軍の罠にはまって城を落とされ、太田垣輝延が秀長にぶん殴られたときも「息子が父を殴った!」とか、そんな発想は全くナッシング!
秀長も無血開城とかヌルいこと言わず、いいから「そんなヤツ、斬っちまえよ!」としか思いませんでした。
いずれにせよ、竹田城を無血開城させてホッと一息つく秀長に対して、前野長康から恐ろしいことが告げられます。
秀吉が攻めた上月城では、女子供に至るまで磔、串刺しにされて西との国境にさらされたとのこと。
絶句するしかない秀長。
「比叡山焼き討ちのときに女子供を逃がした優しい藤吉郎」とのギャップを描くことで、"闇落ち"を演出したのでは?とも指摘されていますね。
果たして秀吉は何を考えて、そんな過酷なことをしたのか。
無血開城を成し遂げた秀長との対比になったわけで、今後の三木城や鳥取城での戦いでも兄弟で言い争う場面があるかもしれません。
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鳥取の渇え殺しと三木の干し殺し|秀吉と官兵衛が仕掛けた凄絶な飢餓の包囲戦
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兵士に紛れた姿があまりにも兵士っぽい
放送後に話題となった、中野英雄さんと仲野太賀さんの共演。
映画『愛にイナズマ』、NHK『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』に続いて3度目の共演だそうで、セリフを交わしたのは今回が初とのことです。
中野さんは夢の大河出演に感動して「ちょっと涙が出てきてしまった」とコメントしており、多くの大手メディアで取り上げられましたが、正直、興味は湧いてこない。
それよりも糞味噌に嫌な性格をしていた太田垣輝延の迫力は見応えありました。
ドラマの放映中は「もしかして中野英雄さん?」とは思いながら、それよりも早く「このクソすぎる武将をどうにかしてくれ」という感情で一杯。
『麒麟がくる』の摂津晴門(片岡鶴太郎さん)のように、深く陰謀を巡らせるタイプのほうが“嫌なヤツ度”は高く面白いですが、本作は一話や二話で完結するパターンなのでそこまで描ききれないでしょう。
となると今回の太田垣輝延は、短い放送時間で一気に嫌なやつにするしか無かったと思えます。
問題は、秀長の成長度です。
尾張の村を出て20年程が経過して、但馬までやってきても、やはり昔と何一つ変わっていない。
兵士に紛れた姿が、あまりにも兵士っぽくて。
斎藤龍興の稲葉山城へ抜け穴から攻め上がった時と全く同じ印象というか……。
劇中では間もなく40歳ぐらいのはずです。
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もう一つ気になったのがサブタイトルです。
「風雲!竹田城」の元ネタは「風雲!たけし城」ですよね?
脚本家さんは昭和46年(1971年)生まれなので、「風雲!竹田城」と聞いた瞬間、脳内で「風雲!たけし城」と自動変換される世代のはず。
つまり敢えて今回のサブタイトルを付けたと思うのですが、なぜに突然たけし城をぶっこんできたのか、その答えが私には見えませんでした。
誰か、教えて……。
もしかして、その場の勢いというかノリ?
本作は、浅井長政の長男・浅井万福丸のことをあれだけ意味ありげに映し出しておきながら、結局、最期は織田軍に殺されたことは放映されていません。
そう考えると、その場のノリで色々と決められてしまっているのでは?という疑問も湧いてきます。
なお、太田垣輝延は実在した人物です。
但馬の有力国衆・太田垣氏の当主として竹田城を治めていたとされていて、以下に関連記事がございますので、よろしければ併せてご覧ください。
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太田垣輝延とは何者か?竹田城を守った山名四天王と秀長の但馬攻め
続きを見る
参考文献
- 河内将芳『図説 豊臣秀長 秀吉政権を支えた天下の柱石』(2025年 戎光祥出版)
- 岡田正人編著『織田信長総合事典』(1999年 雄山閣出版)
- 黒田基樹『羽柴秀長とその家臣たち 秀吉兄弟の天下一統を支えた18人』(2025年10月 KADOKAWA)
- 黒田基樹『秀吉を天下人にした男 羽柴秀長 大大名との外交と領国統治』(2025年9月 講談社)

