『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』/wikipediaより引用

西郷どん感想あらすじ

『西郷どん』感想あらすじ視聴率 第34回「将軍慶喜」

本作の視聴率が「爆上げ!」と言われているようです。
10パーセント台まで下がると、13パーセントにアップでもそうなる、という……。

この調子ですと一桁陥落を回避して、『花燃ゆ』の平均視聴率を上回れば
【大勝利!】
とか言われちゃいそう。
問題は数字じゃなくてクオリティだと思うんすけどね。

本作が『八重の桜』のように国際エミー賞にノミネートされないことは明らかです。
それどころか『花燃ゆ』と競る出来だと思います。
まぁ、お前の思い込みだと言われれば、そりゃ価値観の違いとしか言いようがないんですけど。

先週の妊娠告白をほのぼのカップルとみなす意見もあるようですが、こういう時代物の定型や史実を無視して、ただのアホみたいなラブコメでウケを狙うあたり、本作はつくづく駄作です。

幕末の薩摩ならば、妊娠したところで男児とわからなければ世継ぎを産んでいないから、喜ぶことにはまだ早い。
当時は流産や産褥死の確立が今より断然高いです。
妊娠は、死への片道切符の可能性すらある。

その辺の記事はまり先生の連載に詳しいです。

江戸時代の乳幼児死亡率
江戸期以前の乳幼児死亡率は異常~将軍大名家でも大勢の子が亡くなる理由は?

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これから倒幕という武力行使に及ぼうとするのに、妻が子連れで「夫を失うかもしれない」可能性すら想像できずに喜ぶ。

まっとうな時代ものならば、あんなバカみたいに妊娠で大はしゃぎだけしないモノです。
深みも何もあったものじゃないんですよ。

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『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』(→amazon

 

【1分あらすじ】アイツ悪い内戦、俺イイ内戦

さて、今週は【ダブルスタンダード】の炸裂回でした。

とにかく史実イベントみっちりで。
先週、坂本龍馬の新婚旅行と糸の妊娠宣言をウダウダ描いておいて、今週のこの展開の速さ……。

マトモな幕末大河『八重の桜』だと、だいたいこのくらい時間をかけております。

・第十五回(家茂の死)4月14日
・第十九回(鳥羽伏見前夜)5月12日
それを45分でまとめる本作に、何も期待しちゃいけません。

まずのっけから、将軍・家茂が21歳の若さで死去。
思えばお菓子を食いまくるアホっぽい子役の頃から、ろくな扱いではないまま亡くなりました。

 

徳川家茂
14代将軍・徳川家茂(慶福)は勝海舟にも認められた文武の才の持ち主

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後継者は慶喜です。
「若くして将軍が亡くなったことをチャンスとばかりに、ゲス慶喜が将軍になりおったー!」
と言いたげな本作。
いや、そのゲス慶喜を将軍にすると頑張っていたのって、島津斉彬と西郷どんです? 大丈夫?

慶喜と薩摩の対立をスパッと省き、慶喜のゲスっぷりをゴリ推ししたせいで、斉彬や橋本左内まで人の見る目がなかったアホになるという。どうせ視聴者なんて週をまたいで覚えていないでしょ、とでも思っているのでしょうか。

西郷どんや大久保と岩倉は「四侯会議」というヤンキー漫画展開をするものの、慶喜に負けます。
あ、そういえば孝明天皇も崩御したって。

ここからはいかにして西郷どんが幕府を武力で倒そうとするか、捏造タイム。
慶喜はフランスから支援を受ける見返りに、薩摩を差しだすと提案したと思いっきり大嘘こかれます。
そのせいで武力討伐するんだってよ。

おいおい、西郷どん。
つい最近まで「長州を倒したいからって戦争起こす幕府は悪いんだああ!」って言ってたでしょ?
それが急に真顔でなんなのよ。
自分が慶喜をボコるのはええの?もうどうせ会わないしって?

ムチャクチャや!(岩倉具視風に)。
もう何もかもがムチャクチャやで><;

 

勝は家茂を高く評価していたのにそりゃねーぜ

今週も長州征伐から始まります。

いちいちナレーションでも長州藩上げが鬱陶しい。
薩摩藩の政治事情すらろくに描かないのに、長州藩を褒める時だけはやたらと時間をかけますよね。

そんで長州征伐の最中、家茂死亡。慶喜が枕元に駆けつけるあたり、本当に演出が下手くそ。
時代劇もののお約束とか無視していますね。

西郷どん島流し中に大久保自らやって来て呆れましたが、本作は顔と顔をつきあわせないと気が済まないようです。

岩倉具視の家では、西郷どんが罠にかかるというしょうもねえ展開。
いつまで、それ、やってんの? 誰が面白いと思うの?
もしかして幕府側が悪どく、倒幕側がほのぼのしてる――そんな風に見せたいんすかね?

いや、倒幕派が単なるバカで非常識に見えますよ。

本作って時代劇の魅力であり特徴の、緊迫感を出すことが嫌いで嫌いでしょうがないんですね。今週もヤンキー漫画の高校生レベルかよ。

んで、この場面。
岩倉のところに勝海舟が笑顔でやってくる。最低最悪だわ。幕臣なのに将軍が死んだ直後に笑うなよ。

勝は家茂のことを高く評価しているんですよ。
その主君が死んだのにヘラヘラ笑うとか、ありえないほどの侮辱です。

このドラマは歴史を侮辱しないと、ストーリーを展開できないの?

 

なんだこの二股膏薬ヤローが!

そして、まぁ、役者の使い方が下手くそですよね。
『真田丸』であれだけ輝いていたエンケンさんが、ナゼこんなことに?

エヘラエヘラ笑っているエンケンさんって魅力を引き出せていないでしょうが。
嗚呼、上杉景勝は味があったなぁ……。

ちなみにこの場面、勝と岩倉具視が昵懇だから、岩倉の家でホームドラマをするそうです。
幕臣である勝が堂々と岩倉の家に遊びに来るって、普通に考えてバレない?
本作は身分も何もかも無視しますよね。

ここでまた、長州征伐。

それにしても、なぜこんなに長引かせるのか、意味がわかりません。
薩摩藩の政治状況すら描かないのに、長州藩が、幕府を倒してカッコいい♪と言いたいのか。だから無意味に長いの?

しかも勝海舟が、もう徳川幕府は弱いし戦もできないし、一大名に戻っていいとか桂小五郎に主張して頭を下げているんですよ。
寛大な長州藩が、幕府を許してあげた、と描きたいらしいです。

勝海舟が最低最悪すぎる。
なんだこの二股膏薬(ふたまたこうやく)野郎。

福沢諭吉あたりが見たら、助走しながらパンチしそう。
本作スタッフは、勝海舟の墓前で土下座しなさいってば!

 

なぜか咳き込み、死を予感させる天皇

慶喜は孝明天皇の前におりました。

しかも、唐突に咳き込みます。
え、ぇ……えぇと……これは、孝明天皇の死が近いという演出?

だったら間違いでは?
孝明天皇は壮健だったのが急死して、暗殺説すらあるほどなんですよ。

正直、本作の孝明天皇は無視されたほうがいいです。
『八重の桜』を見直して欲しい。

慶喜は、フランスから贈られた軍服を着用しております。
はいはい、西郷どんがイギリスとくっつくのはいいけど、こっちはダメなのね。

んで、またフキがこの場面を見ているんだよ。

妾が、なんで将軍と外交官の話を覗き見できるんですか? もう徹底的に時代劇のお約束無視しおって。

こういう慶喜とフランスの接近は史実ではありますが、ダブルスタンダードっぷりが半端ない。フランスのライバルであるイギリスにくっついている薩摩はエエんかい?

 

当時から岩倉暗殺説も流れるほどの間柄だったのに

そして孝明天皇がスピード崩御です。

おいおい、岩倉具視が嘆いていてクッソ笑わせるやないか。
当時から岩倉具視が天皇を暗殺した説、あったほどなんですけど。

むしろ幼帝で玉握りたい放題で喜んだほうが、しっくりくるんですけどね。
史実を真逆に描くことに情熱かけているような本作です。

西郷どんと大久保が、ここで今度の天皇は若いし、慶喜の息がかかっていないとか言い出して岩倉が怒ります。
いったん怒ったものの、それはそうだと思い出します。
結局そうなるのか。

そして岩倉は朝廷、西郷どんは諸藩を巻き込むことにしました。

まずは久光の元へと向かいます。新しい天皇に徳川無力をアピールするそうです。
白々しいよなぁ。
ちなみに薩摩藩は、明治天皇の養育係を殺害しております。

明治天皇はそれを知ってから、彼の話はしなくなったそうで。そんだけ気遣いをしまくってたわけです。

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ここからは、西郷どんたちが土佐藩をまわったりして
「幕府が悪いから、諸藩も倒すことに乗り気になるんですよ〜」
とアピールします。

こんな調子じゃあ、薩摩と土佐が対立したとか、そういうことはやらんのだろうな。
明治時代、自由民権運動を土佐藩出身者が熱心に行ったのは【薩長への不満のせいだから】と覚えておきましょうね。

 

フードコードでヤンキーがダベってるの図

こうして四侯会議スタート。

越前の存在感のなさ。将軍継嗣問題でも協力したのに、松平春嶽も気の毒すぎます。
橋本左内なんか遊郭に入り浸る瀉血バカにされてましたね。

慶喜は、その四侯会議で「記念写真を撮る」とか言い出します。

もう、バカッ、バカバカバカ!
バカしかいない幕末日本。
これを、会議と言い切るつもりですか?

バカヤンキーたちが、フードコートでだべってるだけやないか。ミニバン乗ってやって来て、帰りにパチンコ屋に寄ってく姿が目に浮かぶわ。

ともかく今週は、史実がみっちり詰まりすぎた期間であり、これを超速でこなせばならないせいで、物語になってません。完全にダイジェスト版です。

結局、このフードコート会議は、慶喜のせいで久光が侮辱されたと言うことで終わります。

 

ようやく慶喜がアタマ良さそうに見えてきた

パークスと慶喜がワインを飲んでいます。
イギリス公使らを招待し、幕府の力を取り戻してゆく算段を描いているんですね。

やっと慶喜が、多少頭がよさそうに見えてきました。
それでもフキがうろつくわけで、本当に絶望的にセンスがなくて心痛が激しくなる。

ここで慶喜が、フランスから支援を取り付けるため、薩摩を領土として差し出す――そんな密約を描きます。

西郷どんは、お虎と二人仲良く鰻トーク。
薩摩の庶民食材でもあった豚肉は出さず、鰻ばっかり出すよね~♪

しかものんきにフキがやってきていて、鰻を食べながら何やら話してます。まさか慶喜の密約を漏らさないよね?

あるいは
「薩摩をフランス領にしないため、西郷どんは倒幕を目指すんだよ!」
と言いたいらしい本作。

アホなの?
九州の薩摩だけをピンポイントで要求するわけがない!!
せめて島嶼部(とうしょぶ)あたりにしましょうよ。

 

戦前の幕末史研究は、薩長大正義時代

攘夷隼人がうようよいて、台風は通過するし、桜島も噴火続きで土地が痩せている。
よりによって、そんな薩摩を要求するっておかしくない?
他に条件のいい土地いくらでもあろうに。

それにむしろ史実では、戊辰戦争のせいで奥羽諸藩が警備していた蝦夷地がノーガードになってしまい、危険にさらされているんですけどね。

戊辰戦争の支援を取り付けるために、会津藩と庄内藩は、プロイセン相手に蝦夷地を売却する密約を持ちかけております。

そのへんを元ネタにしたのかもしれませんけど、これはものすごく邪悪なことです。
会津藩と庄内藩がそう言い出したのは、戊辰戦争で追い詰められたからですよ。ちなみにこの密約は、プロイセン側があっさり断っています。

このドラマを見ていて、首をひねりたくなることがしばしばあります。現在ではとっくに否定されたような怪しげなことを出してきます。
てっきり脚本の創作かと思ったらば、戦前の幕末史のものを元ネタに使っているのではないか?と思えてきました。

ちなみに戦前の幕末史研究は、薩長大正義時代ですからね。
この勢力に不都合なことはほぼ語られず、幕府とその味方がいかに陰険で愚かだったか、強調しまくったものです。

って、あれ???それって『西郷どん』じゃないか。

これも本作をつまらなくさせてる大きな要因の一つでしょう。

 

トンデモ歴史観……未だそこ?

真田丸』は秀次事件を最新説ベースで描き、大河ファンや歴史好きを唸らせました。

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『八重の桜』でも、川崎尚之助について発見されたばかりの史料ベースで描いたものでした。

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『おんな城主直虎』なんて、主役からして近年全国的に注目を集め始めた人物を取り上げたのですから、冒険そのものです。

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過去の大河を上書きするどころか、戦前まで後退するようなムチャクチャっぷり。
早い話、トンデモな歴史観をお披露目しています。

いくら「新たな西郷像である」と主張したって、んなもんごまかしようがありません。
これは戦前レベルのものです。

歴史的な正確さにおいても『花燃ゆ』以下。
あのドラマは、ごく稀にではありますけれども、長州藩に都合の悪い描写がないわけでもなかったのですからね。

 

「日本は、日本だけで解決する」

このあと、西郷どんがアーネスト・サトウと会います。

サトウは、「イギリスから支援してもいいよ」と話を持ちかけます。

幕府がフランスの支援を求めるのは悪。
薩摩がイギリスから求めるのはOKなの?

と思ったら、
「日本は、日本だけで解決する」
なんて急に言い出す西郷どんです。

どんなウソだよっ!
史実ではイギリスから武器を購入しまくっている。
なので明治維新後も、政府はイギリスからの介入を受けています。

このあと、西郷どんは大久保にこう言います。

「武力でもって徳川を討つ。威圧だけじゃダメだ」
武力倒幕という犠牲者多数の戦争も、慶喜が悪いからだと誘導します。

だから、その理屈じゃマズイんだってば。
江戸城の無血開城後はどうすんのよ?

会津藩「解せぬ」
庄内藩「解せぬ」
奥羽越列藩同盟「解せぬので同盟結成するわ」

つーことで、やっぱり本作のセンスのなさは絶望的。
慶喜は大政奉還するし、割とあっさり逃げますよ。

 

そもそも勅命自体が怪しい

このあと、岩倉に倒幕の勅命をもらいに行く西郷どん。

相変わらず無茶な改ざん脚本にしよるのぅ。
明治天皇の頭越しにやらかして、疑惑ムンムンの勅命をもらう話を美化させようとしてからに。

討幕の密勅
疑惑にまみれた討幕の密勅~なぜ大政奉還と同日に出されたんだ?

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そしてここで坂本龍馬の出番です。

土佐藩は武力倒幕に乗り気ではなく、大政奉還を目指しました。
けど、ここで出てくる山内容堂がバカっぽいんだなぁ。
歴史に名を残す賢人ですらいちいちバカにしてしまうんだから、他のキャラなんて死んだも同然ですわ。

このあと「ええじゃないか」が日本中に広まって、民は倒幕を望んでいるように描きます。

ちなみに倒幕ムードが西日本に広まったのは、攘夷のせいで幕府が賠償金を請求されたから。
攘夷にイケイケだった西郷どんが喜んでいい話か。

というか、この「ええじゃないか」は西日本・東海地方でしか広まってません。

江戸末期の庶民に広がった「ええじゃないか」/wikipediaより引用

民を描くなら薩摩御用盗に苦しみ、薩摩を芋と罵る江戸民衆も見たいなぁ。
江戸の庶民は薩摩を嫌っておりましたので。

このあと、岩倉が命を懸けて倒幕の密勅を取り付けます。
ちなみに『八重の桜』では「偽勅や」、と言い切っておりましたが。

まぁ、どっちの大河が史実準拠か、言うまでもないですよね。

 

本当に二条城なの?

このあと、二条城大政奉還へ。

しょぼい絵面です。
四侯会議んときと同じ雰囲気じゃないですか。
宣伝費と出演者に使いすぎて、ロケ費用もなくなってしまったのか。

『八重の桜』ではVFXを凝っていたのに、本作はダメ。
ならばドコに力を入れている?
嘘つくこと?
てな愚痴の一つでもこぼしたくなるもんでして。

歴史作品の醍醐味って、豪華な史実再現じゃないですか。
本作はそこもポンコツ。もうどうしたらよいかわかりません。

坂本は大政奉還を喜んでいます。
嬉しそうな坂本を見て、西郷どんはやっぱりお前だったかと言います。

「坂本さぁは何もわかってない。こいでは何も変わらない」

そう語る西郷どんに、坂本もムッときます。
慶喜はごまかしているだけだと、喝破する西郷どん。武力をもって叩き潰すと言います。

坂本は内戦を起こすデメリットを説きます。
西郷どん、もうむちゃくちゃ。慶喜殺す宣言ですよ。

長州藩と内戦を起こすと国力低下を招くから悪なのに、慶喜を殺すために内戦を起こすのはあり。
意味がわかりません。

しかも次回は『戦の鬼』だってさ。急に何なんだよ!w

 

総評

「幕府が長州をボコるのは内戦だー! 外国に隙を見せるし酷いー! 不正義だー!」
「外国勢力の力を借りる幕府は汚いー!」

「薩摩が慶喜をボコるのは正義だー! 内戦するのも仕方ないんだー! 正義だー!」
「外国勢力の手をを借りたけど、ごかます!」

なんなんでしょう、ダブルスタンダード。
本作は関東で視聴率が苦戦しているそうです。

そりゃそうでしょう。
長州や京都の人を殺すのはダメゼッタイだけど、東日本の人を殺すのは正義だって?
一桁に転落しないだけ、ありがたいと思ったほうが良さそうです。

そして次回は『戦の鬼』です。

急に武闘派になって、なにカッコつけとるんですか。
来週がどれだけ無茶苦茶をするのか、もう予想がつきますよ。

だって慶喜、あっさり無血開城するじゃん!
幕府崩壊したら、フランスとの計略だって無効じゃないですか。

それでも東日本に進軍するんですからね。
そうせねばならない理由、ないんですよ。

だからきっと「薩摩御用盗」を削除して、唐突に庄内藩が薩摩藩邸を焼いても私は驚きません。
あるいは会津藩が焼き討ちにするかもしれませんね。

 

悲報:今後の展開が絶望的です

どうせ本作、江戸無血開城で最終回でしょ、とナメていました。
実際には今月末に江戸無血開城を展開するんだそうで。戊辰戦争も一回こっきりだそうです。

薩長同盟で土下座したりして、ダラダラするわ、龍馬の新婚旅行とパークスナマコ接待に一回使っておいて、どういうことだよ!!

どうせ「薩摩御用盗」も、赤報隊もないんでしょうなぁ。
西郷どんがニコニコええことを喋ったら倒幕完了ですね。

もう本作は幕末じゃないんだ。
そう思うしかないんだ。

ちなみに『八重の桜』は
・4/14に薩長同盟
・5/19に鳥羽伏見の戦い
・6/16戊辰戦争突入
・7/21終結
でした。

あの作品では、一ヶ月以上も戊辰戦争を描いたわけです。
VFX技術も素晴らしく、幕末戦闘の素晴らしい映像がたくさんストックできたはずです。

それが、使い回されるのが関連番組だけというのが終わっております。
『花燃ゆ』でも『西郷どん』でも使い回しがないんですね……。だったらもう、少なくともあと二十年は幕末大河をやらんでくれ。

それにしても『八重の桜』に対抗しての薩長大河だろうに、ろくに幕末の歴史をやらないで逃げまくってつまらんラブコメに流れるって、むしろ赤裸々に描けないと白状しているようなモノでは。

 

ツッコミ:『ゲーム・オブ・スローンズ』路線に期待したい

視聴率で低迷する西郷どんに対し、こんな記事が発表されておりました。

◆西郷どん視聴率低迷、スカッとする明るさ足りない?(→link

全部間違っているとしか言いようのない分析。この通りにしたら、ますます酷いドラマになるでしょう。

幕末大河が数字的に厳しいのは、日本が東西に分かれて戦った内戦だからです。
東を主人公にすれば西が反発、西を主人公にすれば東が反発する。そういう題材です。

戦国もそうではありますが、戦国時代の影響が政治的に残っていることはほぼありません。
しかし、幕末の勝敗は現在に至るまで影響を残しております。

だからといって、幕末大河にこの方が書いていような単純明快さ、明るさを求めるのは厳禁です。
対立勢力の神経を逆撫でするだけです。

幕末は情勢が難しいから簡略化するのも、禁じ手。
対抗相手はバカで不義だから倒しちゃいました〜をやると、日本の半分が怒ることを考えておきましょう。

今年はもう手遅れですが。

画面や雰囲気が暗いから、というのもセンスが古いのです。
海外の重厚感ある歴史ドラマを見たあと、大河にガッカリすることといえばその薄っぺらい明るさです。照明や衣装のショボさ、女優のキャーキャーした幼稚な演技、イケメン男優がともかく怒鳴ればエエと言いたいような演技にはガッカリさせられます。

この分析は、幕末大河を始末する方法を分析しているのではないか、としか思えません。

国際エミー賞ノミネート作品『八重の桜』、ここ数年で一番ヒットした『真田丸』、脚本が高評価を得て小野政次処刑が話題となった『おんな城主 直虎』。

こうした作品はバカみたいに明るいわけでもないし、複雑な情勢をきちんと描き込んでいました。

「明るくて簡単にすればもっと見られるでしょ」
というのは視聴者をバカにしているのかとしか言いようがありません。

画面が暗いから嫌、というのもむしろ逆です。
大河ドラマの明るすぎる照明は、海外作品を見た後で見るとガッカリさせられます。
あまりに薄っぺらく見える。
海外の視聴者が大河を見た場合も、安っぽく感じるそうです。

日本で人気のある海外ドラマも、照明はむしろ重々しく、暗いのです。
テレビのサイズや画質もアップする中、テカテカ光らせてこそ視聴率アップというのはありえません。

大河をよくしたいなら
『ゲーム・オブ・スローンズ』
を徹底鑑賞して真似ろ!

『花燃ゆ』に絶望した年にこう書いたところ、翌年の『真田丸』の屋敷Pが『ゲーム・オブ・スローンズ』を意識していたと言及していたものですから、ガッツポーズしたものです。

 

歴史ドラマ好きが重視するポイントは、スカッとする明るさなんかじゃありません。
その時代ならではの苦難に対して登場人物がいかに挑むか。
そこです。

残酷描写はファミリー向けじゃない?
そんなもん知らん。
大河ドラマは、悪党をバタバタ斬り倒す仮面を被った侍に喝采を送るドラマじゃねえんだ。

はい、では、ここでなぜ『ゲーム・オブ・スローンズ』がヒットするか振り返りましょう。
答えは?
超カンタン。

圧倒的にえげつないからだよ!!

※動画『ゲーム・オブ・スローンズ』最大のトラウマシーンを見る視聴者。

ここまでしてこそ、このドラマは大ヒットしているのです

幕末はもう諦めました。
来年も面白そうですが、この手の作品ではないですしね。

この手の路線には、再来年こそ期待しています。本能寺の変で悲鳴をあげさせてくれよなっ!!

もういっそ大河は諦めて『ゲーム・オブ・スローンズ』を見ちゃおうかな、という方向けに最新シーズンまで鑑賞ガイド造っておきました。ご覧ください。

【ゲーム・オブ・スローンズ解説】

 

悲報:役者さんも、脚本に納得できていないようだ

一昨年、昨年と異なり、役者さんが脚本を褒めないことに定評のある本作。
以下のインタビューからは、脚本に納得できていないことが伝わってきました。

◆松田翔太「幕末は“全員正しい”からこそ面白い」『西郷どん』慶喜役で(クランクイン!)(→link

僕が調べた限りでは、慶喜ってそんなに感情的な人ではなさそうだったんですよね。でも今回の作品では“乱暴なお殿様”というイメージで。

そうそう、そうなんです。
むしろ何を読んだら、遊郭に入り浸り、フランスとのやりとりに妾を同席させる、そんなバカ慶喜像になるのか?と問い詰めたくなるほどです。

いろんな考え方、価値観があって、どれも正しい。
新しいことが起きるときは、その正しさを信じたやつの勝ちですよね。

本作の何がイラつかせるかって、役者さんですら、このように正義の数がそれぞれあると語るのに、脚本以下作り手がそうは思っていないことですよね。
慶喜はゲスでバカだから倒すんですよ、っていう作劇だから、役者さんが戸惑うような慶喜像になるわけです。

こんな脚本を役者さんに渡して、心が痛まないのでしょうか?

 

悲報:島津家現当主もお怒りのようです

◆島津家当主、「西郷どん」での島津久光に苦言(→link

話題はNHK大河ドラマ「西郷どん」にも及び、島津さんは「(島津)久光が悪役で描かれるのは仕方ない」としながらも、「自ら『国父(藩主の父)だ』などというのはみっともない」と指摘。ドラマの時代考証も務める原口教授が「話題を変えましょう」と苦笑し、会場の笑いを誘った。

ご当主にここまで言わせてしまう本作。
『真田丸』放映時の真田家当主と比べると可哀想でなりません。

あ、そういえば『八重の桜』の時も、会津松平家当主が絶賛しておりましたっけ。

子孫から褒められないドラマ。
本作は薩摩を褒めているようで、コケにしている――というのは、私も何度も指摘してきました。

今回のニュースを見て、やっぱりか……と切なくなった次第です。

ちなみに本作の脚本家が、子孫を怒らせたのは二度目です。

『花子とアン』でも、翻訳者のヒロインが辞書を漬物石にし、メソジスト教徒なのに泥酔するという侮辱ぶり。
あんな人だと思わないで欲しいと子孫の方が訴えていたとか。

人選ミス?
いいえ、ここまで無神経だからこそ選ばれたのではないでしょうか。

 

朗報:『八重の桜』再放送開始!

チャンネル銀河で9月17日より『八重の桜』が再放送されます!!

この作品についてよく言われる誤解として、
「会津の目線から描いたから、薩摩や長州の動向はわからないでしょう?」
というものがあります。

違います。
『花燃ゆ』よりも長州、『西郷どん』よりも薩摩の動向がよくわかります。

彼らの有能さ、格好良さ、賢さもこちらのほうが遙かにわかります。
自動車のカタログに譬えるならば、『八重の桜』には排気量やエンジン気筒数、スペックや走行性能について記載がある。

ところが『花燃ゆ』と『西郷どん』の場合、カタログにイケメンを起用したことや、お洒落なドリンクホルダーだの、ミラーについては書いてあるのに、スペックは記載されていないのです。

「薩長側のカッコよさを描く!」
と言いながら、この二作が捏造、デタラメ、つまらんラブコメを満載するのはナゼなのか。
何か語りにくいことでもあるのか、と推察したくもなるってもんです。

それとも視聴者をバカだと思っているのでしょうか?

ま、それはともかく!
これはもう、見るしかない!

 

悲報続報:JR九州、過ちを認めていた

◆西郷どん妻「ワンオペ」たたえるのは「不適切」? JR九州が広告サイトを修正 (→link

先週突っ込んだこちら、謝罪が来ておりました。

JR九州は8月29日、特設サイトの糸の項目からワンオペについてのフレーズやエピソードを削除した。同社広報室は「女手ひとつで頑張った糸をポジティブにとらえていたが、ワンオペという言葉は悪いイメージが強かった」と説明する。糸のポスターは元々8月末までの掲載予定だったといい、9月からは大久保利通のポスターに切り替えている。

いや、だから、糸には川口雪蓬もいたし、女手ひとつで頑張っていませんってば。

維新三傑の妻が女手ひとつだったら、明治政府ショボすぎでしょ?
なぜそんなことすらわからないのか。

それ以前に、ワンオペのマイナスイメージに気づかないあたり、駄目だこりゃ感が半端ないという。
チェストーと叫ぼうと、ごまかせませんからね。

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著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等

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