こんばんは。武者震之助です。
今週はこんなニュースから。
◆後半戦で一変する『西郷どん』 鍵は男たちの戦闘スイッチ(→link)
今年って大河への優しさが半端ない年な気がします。
六月になってもこういう報道ばかり。他の年で、この出来とこの数字ならもっとボコボコにされておりません?
「男たちの戦闘スイッチ」だなんて、そもそも実装されてもいないのにドコで入れてくるというのでしょうか。
しかも、です。
来週はスペシャルの第二弾だそうです。
えぇと……大丈夫?
視聴率的が壊滅的になりそうで怖いです。
いや、もう、心配の段階を通り越してるかもしれません。
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島の子供を助けるイイ人西郷どん
さて、本編の西郷どんです。
ストロングゼロを愛飲していそうな男・川口雪篷(かわぐちせっぽう)に、口移しで水を飲ませられた翌週。
島民の子どもたちが、【西郷どんの食べ物を盗んだ】として怒られています。
なんでも、ヤンチュ(家人)という使用人の子供だそうです。
彼らが、流人様からもらったんだと力説すれば、その通りじゃと西郷どんも言います。こういう小さなことでいい人アピールするのが好きだなぁ。
ただし、島の身分制度とかはサラッと流しました……やっぱり。
そしてオープニングの後に、またストロングゼロが登場します。
西郷どんが、自分は死なないもんアピールするんですけど、もういい加減に過食気味です。
何度目なのよ、死ぬ死ぬアピール。
ちょっと前に入水までしているじゃないですか。
そりゃ史実ですけど、他に描き方はないのですか?という。
いくら死をアピールされても、結局、ビーチリゾート感覚が漂ってしまうんすよね。
座敷牢のビフォーアフターとかどうでもエエわ
名優・石橋蓮司さんが演じる川口雪篷。
なぜ沖永良部島まで流されたのか?
ドラマではお由羅騒動がらみとなっておりました。
実際は、諸説ありますが、おそらく酒の上の失敗かなぁ、というところです。
西郷が沖永良部島で出会った親友・川口雪篷 なぜ二人は流刑地で意気投合した?
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西郷どんの入る牢屋は劇的に改善されました。
それを黒葛原という男が怒ります……って、今週、薩英戦争ですよね?
どこまでもバランスがむちゃくちゃなドラマ。
そろそろ生麦事件とか、当時の薩摩藩について描かないと、ワケがわからなくなってしまいますよ。
西郷どんのリゾートエンジョイライフなんて、心の底からどうでもいいんです。
まったく、座敷牢の劇的ビフォーアフターとか、誰得なんだろう。
とか思いつつ呆れていたら……。
またここで、インスタ映えしそうなたっぷり島料理が出て来ました。
本作って、どこの料理でもお菓子でもさして美味しそうに見えないんですよね。演出にも気合入っていない証拠?
なんだかんだで西郷どんは、子供に学問を教える流れになります。
このへんも説明不足かなぁ。
西郷どんがボランティアで勉強教えるよ、えらいね、っていうだけ。
流人と教育には大きな意味があるんですけど、どうせそこまで深く掘らないでしょう。
予算は?大名行列が侘しさマックスの生麦事件
ようやく生麦事件です。
よっしゃー!!と期待を持とうとしたけれど、実際は全くワクワクできない。
なぜなら予算がケチられ過ぎて、大名行列もマトモに映らないのです。
島津久光の見せ所にもできるのに、これでは青木崇高さんも火傷だわ。
あまりにスケール感がなく(全長5メートルかな?)、アップでフレームに人を押し込めて誤魔化している。
島のときと全然撮影の仕方も違います。
『八重の桜』のとき、松平容保がしずしずと京都に入る場面はすごく凝っていて迫力がありました。
ブルースクリーンを背景に行列を撮影して、VFXで再現した京都の街並みと合成していた。
あれはすごくよかったです。
京都という街に、どれだけ会津藩の人が緊張感と使命感を持ってやってきたか。
そして京都の人はその威光をどう感じたのか。
伝わってきました。
あれから5年も経つワケです。
映像技術は格段に進歩しているハズなのに、本作では退化しているようにしか思えない――これは一体どうしたことなんでしょうか。
『八重の桜』レベルのVFXを使えば、もっとマシになる場面はあるはず。
生麦事件の表現そのものは、まぁ、超甘くみて及第点ですかね。。
一応、自顕流ぽい殺陣にしたのは正解。ちょっと前の「寺田屋事件」が駄目すぎでした。
結局、生麦事件を通して褒められるのは【自顕流のような剣の構え方】ぐらいで、その他の状況とか全然むちゃくちゃでした。
・気合いの入らない場面ではお金をケチりたい、
・時代考証やりたくない
そんな投げっぱなしの気持ちがヒシヒシと伝わってきます。
幕末ドラマで、生麦事件に気合いが入らないってのもどうかと思います。
結局、歴史を再現しようとか、そんな気概はないんですよね。
じゃなきゃ、こんな恥ずかしい大名行列はありませんよ。
天はドラマを見放した?
ここでまた、一橋慶喜がアホなことをホザいてしまいます。
当時の状況をまともにしないで、スカしたバカが政局を動かすただのヤンキー漫画になっている。
あのですね、文久2年から3年って幕末史のターニングポイントですよ?
どういうこと?
会津藩と新選組はむしろタッチしないで通過して欲しいのですが(しかし松平容保は出る。悲しいことに)、長州藩すら影も形もない。さすがに洒落になってなくないですか?
『花燃ゆ』では、薩摩藩は西郷隆盛だけで「ひとり薩摩藩」、「ぼっち薩摩藩」でした。
けど、今年は桂小五郎が「ひとり長州藩」、「ぼっち長州藩」をやる気かもしれません――そんなところばかりが薩長同盟。律儀すぎて鼻血が出そうです。
もしかして
『文久年間なんて西郷どんは流刑にあっているし、京都の政局めんどくさいから描かなくていい』
とか、考えていたら怖すぎます。
これはもうドラマが破綻する。
手遅れです。
天はこのドラマを見放した!
もっと詳細な説明が必要でしょうに
そしてノリノリで薩英戦争へと向かうわけですが……。
薩英戦争の背景がスカスカすぎて、こっちが猿叫しながらキーボードでPCモニタを叩きたくなってくる。
これ、薩摩がたいした被害を受けていないから、テキトーに流す気満々ではないでしょうか。
朝廷が攘夷方針を決定していたとか。
最低限の説明もないorz
大久保が開戦への決意をスカして語っていますけど。
これもテストでこんな理由を書いたら全部バツですってば。ヤンキーがイキッて他校と喧嘩する理由だからな!
イギリス側が何を要求したのか、どういう動きだったのか?
大切なことの説明がなんにもないのです。
よろしければ本サイトの以下の記事にまとまってますので、ここにいらっしゃった皆様だけでも内容を把握していっていただければと存じます。
薩英戦争で勝ったのは薩摩かイギリスか? 戦後は利益重視で互いに結びついたが
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なぜ、もっと薩英戦争の説明に時間を割かないのでしょうか。
そもそも調べたくない?
スカした顔した男がカッコつけた薄っぺらいセリフを言わせて、うわっつらだけのドラマを作ろうとしている――そんな印象です。
単なる歴史作品ではありません。大河ドラマです。
脚本家さんは年表作りました?
史実の整理はしました?
わかっていないまま、適当に書いてません?
五代友厚ぐらいの遊び心はアリだったのでは?
気がつけば、男同士が顔と顔を近づけて怒鳴っている。
ストーリーの省エネドラマ。
薩摩が大英帝国に立ち向かうとか言っていますけど……さすがにこの表現はどうなのでしょう。
ともすれば、大英帝国が本気で薩摩を潰そうとしたみたいな感じになっちゃってます。
賠償金ふんだくりたいだけだよ、連中は。
物資が不足していて、本気じゃない。
片手間で金むしりとろうってのりだから、自分たちに損害出たら即座に講和しているんです。
なのに、薩英戦争やばっ!てことで川口雪篷が島抜けしようとしたりする。
あのですね、十年流されっぱなしのストロングゼロが薩摩で何するの?
役に立つわけないでしょ。なんかナポレオンの帽子かぶっているけど、これは『わろてんか』のキースまんまだわ。いやなものを思い出した。
ここで、イギリス相手に直談判しようとしていた五代才助(友厚)を出すぐらいのセンスが本作にあればなぁ。
『あさが来た』の五代役でブレイクした、ディーン・フジオカさんを引っ張ってくる裏技もできたでしょうに。
メディアもSNSも大騒ぎになったことと思います。
五代友厚(才助)は薩摩随一の経済人 49年の生涯で実際何をした?
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薩英戦争について、本気で何も知らないパターン?
島民が怯えるというのもわからん。
この時点でイギリスが来る理由がわからん。
薩英戦争についてある程度調べて書いたら、絶対にこんなトンチンカンな話にならないです。
すごーくゆるふわな認識で、ごまかしながら書いているのがわかります。
脚本家さんにやる気がないのはわかりますけど、ならばアシスタントぐらいつけたらどうでしょうか。
とにかく、今回の認識はひどい。
ストロングゼロが民を守るとか言い出すのも、力無く笑うだけっす、ははっ。
危ないのは薩摩でしょ?
まさか今日は、鹿児島炎上が20時40分とかのタイミング?
それで、この島民防衛作戦を引っ張るとか?
勘弁してくれ~い。
本作、緊迫感のつくりかたが絶望的に下手くそなんです。
毎回言っていますけど、薩英戦争ではこれまでにない緊迫感を出せるはずなのに、島民とリゾートライフ、子供が勉強する様子を入れたがる。
また『八重の桜』の話をしますと、あのドラマ、前半は平和な会津と緊迫する京都パートに分かれていたんです。
平和な会津パートすら、八重が兄から送られた手紙や噂を知ることで、緊迫感がありました。
そしてこの会津の平和は破壊されるとわかっているから、切迫感がギリギリと出ていた。
本作は、そういうところが全然ダメ。
朝ドラに『半分、青い。』にも完敗しています。
せめてCGをもう少し……
はい、ここで時刻は20時30分です。
薩英戦争が二日で終わったという連絡が入りました。
ズコーーーーっヽ(・ω・)/ズコー!
鹿児島城下町炎上し、斉彬の集成館も燃えた。
薩摩の危機だったのに2日で終わって西郷どんも召喚命令が出て、
「やったあ!」
ってまじか……。
あれですね。お金尽きちゃったんですね。
戦争シーンは描けないんですね。
大山格之助の姿はありましたが、この調子は、先々、外国人タレントを探すのも無理そうです。重要人物であるパークスやサトウは出番があるのでしょうか?
このあとも西郷どんは川口と酒を飲んだり、子供に勉強を教えたり。
20時40分に島を出立するため、時間を稼ぎます。
子供の勉強が、いい加減場面しつこすぎる。
新八、ドコ行った?
ここで、西郷信吾ちゃんが迎えにきます。
本当にダメだ。
ここは流刑仲間の村田新八あたりでいいじゃないの。てか新八のこと忘れてません?
本来なら……彼も西南戦争までくっついているのに、なんもキャラたっていませんよね。
さんざん有馬のキャラが弱くて寺田屋盛り上がらないと叩かれていたのに、村田もダメ。モブあつかいです。
村田新八って西郷隆盛と大久保利通を描くのであればかなり重要でおいしい人物ですよ。
それが本当にしょーもない扱いという。
大久保と西郷の間で揺れた村田新八~最期は西南戦争で西郷と共に散った生涯42年
続きを見る
ここで信吾の口から薩英戦争の話が出てきます。
と、これが「スイカ売りに扮装して軍艦に接近した」とか、そんなバカ話ばっかり。
鹿児島城下は大炎上しましたよね?
幸いにも死傷者はそこまで多くないですが、未だに焼け跡がぶすぶすいっているような時期なのに、バカなの? あんたらの血は何色なの?
単なる人でなしに見えまっせ。
んで、37分に島民に見送られてさようなら。
ストロングゼロが、「せごどーん!」と叫んで旗を振っています。
「てっぽうさー!」
と言いながら側をふるのが馬鹿みたい。なんなら、もう、気持ち悪い。
メインテーマが流れる以上、気合いの入ったシーンなんでしょうけど、いたたまれません。
川口ストロングゼロ、ただの酔っ払いでしたよ。
愛加那と何回別れたら気が済むのよ
で、旅の途中で愛加那も出てきます。
と思ったら、ようやく新八も出てきました。よかった。
信吾の気遣いにより、西郷は大島(奄美大島)に寄ります。
愛加那がやってきて、
「私に会わずに帰ろうとしたのか!」
と抱きつきます。
やっぱり村田新八の扱いが雑です。なんで? 何か恨みでもあるのでしょうか。
しかも、です。
本日最大の盛り上がりシーン(20時40分)は、愛加那とお別れ、という……。
皆さん、思ったはずです。
何回やっとんねん!
愛加那は、自分のことより民が大事な西郷どんがステキだとか言うとります。
こ、この、西郷さんが?
仲間が死んだあとでも妻と平然といちゃつく。
死にそうになっても国より妻子のことしか考えない。
そんな自分勝手なミジンコ西郷のどこがかっこよいのかさっぱりわかりません。
笑いながら、二度と会えんでもいい、私のこの体の中あなたでいっぱいじゃ。
とか、なんとか、愛加那のセリフもトコトン薄いのです。
別れの痛みすらない。このドラマ、今やってる朝ドラ『半分、青い。』から学ぶことがたくさんあると思う。
基本的に西郷どんって御都合主義ですよね。
愛加那が、いきなり服を脱ぎ出して「あんごにしてくれ」で始まり、分かれるときもニコニコ笑顔。
理想の現地妻。『島耕作』シリーズに出てきそうだわ。
島唄演出もしつこかったなぁ。
MVP:楡野鈴愛
楡野鈴愛半端ないってもぉー!
アイツ半端ないって!
後ろ向きの性格めっちゃ心エグるもん……。
萩尾律のプロポーズに「無理」とかそんなんできひんやん普通、そんなん言うことできる? 言っといてや、できるんやったら……。
漫画家もやめや、もう全部ネーム真っ白や。描けないしもう…また泣き出すし。
鈴愛やばいなぁー。
どうやったら鈴愛止めれるんやろ?
――とまぁ、死んでしまうのではないか?と思うほど、追い詰められる朝ドラのヒロイン。漫画が描けなくて、最愛の萩尾律が自分のもとから去ってゆく。
辛いです。追い詰められています。
結局、MVPは三週連続で朝の連続テレビ小説『半分、青い。』からですみません。
でも、仕方ないんです。
なぜなら、幕末の西郷どんより、平成を生きる鈴愛のほうが精神的に追い詰められているのです。
総評
どこまで省エネなんですか。
徹底的に西郷どん過保護。
愛加那との別れといい、絶対に傷つかないようにしている。
朝ドラが心をズタズタにするのに、なんで幕末ドラマがこんなに甘ちゃん?
そして、文久年間という幕末のターニングポイントを無茶苦茶あっさりと適当に流してしまいまた。
もう、ヤンキー漫画にするしかないでしょ。
薩摩も、長州も、慶喜も、会津も。
顔をしかめてかっこつけた台詞だけ吐いていれば、いつの間にか幕末終了みたいなことをやりそうなのです。
ともかく制作側のサボタージュ。
めんどくさいことは調べたくない、やりたくないという気持ちが『花燃ゆ』の時よりも露骨に伝わって来ます。
本当にガッカリ。
来週はスペシャルです。
また視聴率が壊滅しそうですね。
現状でも高すぎるから、現実を認識する良い機会かもしれません。
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著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【TOP画像】
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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等