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【『紅楼夢』林黛玉と薛宝釵】
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「紅迷」が二百年前に既に通過した道を我々は歩んでいる
本作は発表当時「軟弱なものを読みおって!」と批判されました。
『三国志演義』や『水滸伝』が好きな人からすれば、美少女といちゃついてばかりの本作は確かにそう見えたことでしょう。発禁になったこともあります。
しかし、熱狂的なファンはそんなことでびくともしませんせした。
中でも、本作には「紅迷」(ほんみぃ・『紅楼夢』オタ)というマニアがおります。
彼らは聖地巡礼、コスプレ、二次創作、ハッピーエンド改変作品発表と、およそオタクのすることならば全部やり遂げてきました。
『紅楼夢』は、作者の曹雪芹が作品未完のまま亡くなったため、後半は別の作者が書き足しました。
この不運な要素すら「教祖が亡くなったからには俺らが作り上げる!」という情熱をかきたてたとも言えるでしょう。
オタクのいる場所は、中国人はすでに二百年以上前に通過しているッ!
私も「紅迷」から本作を熱烈にプッシュされたことがありますが、ものすごい情熱でした。
もちろん映像化も幾度となく経てきてます。
原作を読んだことはなくとも、ドラマ版でファンになる人も多いわけで。
二百年間、本作は中国の人々から愛されてきたのです。
永遠のときを生きる美少女たち
こうして書いてくると、まるで美少女だけが売りのような物語に思えるかもしれませんが、それだけではありません。
貴族社会を描いたディテールや心理描写の細かさ等、繊細な細工物のような美しい世界観は、たいへん魅力的です。
そんな世界は永遠に続くものではなく、本作は主人公の置かれた環境が激変し、少年少女たち住むキラキラした世界が崩壊してゆく結末を迎えます。
だからこそハピエン厨(ハッピーエンドが好き)の「紅迷」は、改変してハッピーエンド版を二次創作したりしたわけですね。
しかし本作には、ハッピーエンドを捏造しなくてもよい仕掛けもありまして。
実は本作の少年少女は、天上界から下界に降りてきている、という意味です。
つまり悲しい退場をした彼らも、天上界に戻って「地上が怖いところだね」と暢気に言い合っている。そういう解釈もできます。
幻想的な設定であると同時に、力技で強引にハッピーエンドへ持って行ける設定なので、ハピエン厨の皆さんも是非参考にしてください。
★
繊細な世界観と魅力的なヒロインという、素晴らしい設定を持つ『紅楼夢』。
その世界そのものだけではなく、世間から軟弱な連中だと思われつつも、どっぷりハマって価値観すら変わってしまった「紅迷」の行動を見ても楽しくなる作品です。
二百年前の「紅迷」に親しみを感じてしまう人も多いのではないでしょうか。
日本でもドラマ版のソフトが販売されています。
興味のある方は是非ともご覧ください。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考】
『紅楼夢~愛の宴~』(アマゾンプライムビデオ)
井波律子『中国の五大小説〈下〉水滸伝・金瓶梅・紅楼夢 (岩波新書 新赤版 1128)』(→amazon)