大河ドラマ『光る君へ』の第22回放送から登場している宋の商人・朱仁聡とは何者なのか?
いったい劇中でどんな役割があるのか?
3月に公式エックスで以下のように姿が公開されてから
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宋からやってきた商人らの長。船が漂着し、越前に逗留している。実は、宋の朝廷から、ある密命を負っており、越前国守の藤原為時と交渉にあたる。#光る君へ pic.twitter.com/afLgE87nLo
— 大河ドラマ「光る君へ」(2024年) (@nhk_hikarukimie) March 8, 2024
朱仁聡を演じる俳優・浩歌(ハオゴー)さんへの興味も相まって、ファンの間で早くも意見が飛び交ってきました。
大河ドラマではあまり聞き慣れない「宋の商人」というポジションだけではなく、藤原為時や主人公まひろとの関係性も漂っていて、余計に関心を集めたのでしょう。
そしてついに第22回放送に登場。
70人の宋人を率いる長として人格者であることを漂わせながら、朝廷へ貢物を送る静かな笑みの裏には、何か意図もありそうで一筋縄ではいかない印象があります。
そこで本記事では、平安時代の交易状況などを踏まえ、実在した朱仁聡がドラマでいかなる役割を果たすのか、考察してみましょう。
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中国語発音表記の役名に
本作『光る君へ』の朱仁聡に注目するときに欠かせないのが、同時に出演する周明(ヂョウ・ミン)でしょう。
松下洸平さんが演じる医師見習いであり、「名前の読み方が“ヂョウ・ミン”という点からして、大河ドラマとしては挑戦的な試みである」と以下の記事にも記しました。
『光る君へ』宋の周明(松下洸平)とは何者?紫式部の知力を強化する存在となる?
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記事を読んでいただいた皆様にはダブってしまう内容ですが、例えば『鎌倉殿の13人』に登場した陳和卿は「ちん・なけい」と読んでいます。
しかし『光る君へ』では、朱仁聡はこうなる。
朱仁聡(ヂュ・レンツォン/Zhū Réncōng)
要は、中国語の読み方なんですね。
日本語にせよ中国語にせよ、発音は時代によって変わるため、このころ実際に読んでいたかどうかはまた別の話で、ともかく中国語に即した発音となっています。
ちなみに中国語圏では、カナ表記の人名も漢字になり、ヒロインの「まひろ」は海外ファンの間では「真尋」となる。
「真実を尋ねる」という、彼女に似合った表記ですよね。
というわけで、中国語読みの朱仁聡(ヂュ・レンツォン)ですが、この宋の商人を演じる浩歌(ハオゴー)さんの経歴もまた非常に魅力的です。
彼は、2000年代から中国で活躍し、「中国で最も有名な日本人」とされています。
芸名を「矢野浩二」から「浩歌(ハオゴー)」に変え、朝の連続小説『ブギウギ』にも登場。
中国語を流暢に話す彼は、中国版Instagramとして人気のRED(小紅書)でも動画を公開しており、そこでも非常に人気を集めているのです。
「矢野か! 彼の中国語ならば全く問題ないな」
ネイティブからもそんな支持を得て、待望の大河出演となれば、注目されてしかるべきでしょう。
大河ドラマにおける逆輸入俳優の歴史
日本から中国に渡って活躍し、中国人として日本のドラマに出演する――いわば逆輸入俳優が大河に出ることは、史上初ではありません。
パッと思いつくのは『青天を衝け』のディーン・フジオカさんかもしれませんが、さらに先例があるのです。
1971年『春の坂道』で陳元贇(ちんげんぴん)役を演じた倉田保昭さん。
陳元贇は明滅亡の際に日本へ亡命した人物であり、様々な文化を日本に伝えたとされ、その中に中国拳法もあったとされます。
『春の坂道』は柳生宗矩が主役で、倉田さんはカンフーマスターとしての役割が期待されました。
倉田さんはもともと香港と台湾映画で活躍し、クールな日本人悪役を当たり役とした俳優。
海外では日本人としての個性を発揮しながら、日本に帰国するとカンフーの使い手役や中国からの刺客扱いが多いものでした。
今回の浩歌さんも、倉田さんと経歴は似ています。
二人とも海外で日本人悪役を誠実に演じて人気を博し、日本への凱旋帰国と共に中国からの役を演じるのです。
倉田さんの活躍がわかる一例に、映画『戦神ゴッド・オブ・ウォー』があり、これが日本の武士も非常に格好よく描かれ、内容も見応えありますので、みなさんもよろしければどうぞ。
渋カッコいい日本の武士が倭寇で大活躍!映画『戦神ゴッド・オブ・ウォー』が熱い
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『光る君へ』の浩歌さんも、きっと海外から注目を集めることでしょう。
では、平安時代を舞台に浩歌さんが演じる宋の商人・朱仁聡にはどんな役割があるのか――「交易の歴史」を振り返りながら考察して参りましょう。
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