麒麟がくる感想

麒麟がくる第4回 感想あらすじレビュー「尾張潜入指令」

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麒麟がくる第4回
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東庵と再会

「おい、そこの両名、こっちへ参れ」

ここでやっと光秀と菊丸の前に、東庵がやって来ました。もしも織田信秀と双六をしてなければ、光秀と竹千代の出会いはありませんでしたね。

東庵は二人に話しかけます。

「おぉ、ご苦労! 申し付けた薬草、持参したか?」

「へえこちらに」

「おおーこれじゃこれ! これは珍しい。うん! うーん、これは違うな。茜草根と申してな。つまるところ、役立たずじゃ。あいわかったな。うんまあよい、これも何かの役に立つであろう」

無害なような会話をしているものの、すぐそばで織田家の近習が見ているからそこはお芝居をせねばなりません。堺正章さんによる、わざとらしい芝居という絶品が見られます。

彼の対応からして、何気ないようで何か掴んだことがわかる。

このあと、信秀は若い家臣を呼び出します。

「東庵殿に薬草を届けた者をとらえよ。怪しいものなら斬れ」

瓜を噛みつつ、そうあっさり。そうなりますわな。だって怪しすぎるもの。

 

山中の戦い

山の中を歩きつつ、光秀は東庵の密書を広げて読んでいます。

「流れ矢……毒……」

なるほど、毒矢ですか。鉄砲にはない弓矢のメリットといえば、やはり毒です。

アイヌの毒矢は『ゴールデンカムイ』でもおなじみになりました。蠣崎季広は、アイヌの毒矢を自慢の武器としていたとか。

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毒矢とはシブいですねえ。
兵士ならば即座に殺してナンボではあるけれども、将ともなれば毒矢はうまい手です。

将は苦しんでいても、さっさと殺すわけにはいかないでしょう。そのぶん、無駄に長引くから使うメリットはある。やっぱり毒矢。できるビジネスパーソンは、やっぱりこういうことを歴史から学ばないと。

ここで光秀と菊丸の前に侍がやってきて、いずこより参ったのか?と尋問して来ます。

西三河からと答えても、身元改をすると言われ……ピンチです!

そして殺陣が始まりました。
山の中を走るアクションですが、2020年代らしさを感じますね。

1999年の『マトリックス』あたりから、香港映画発のワイヤーアクションが一世を風靡しました。2000年代はなんでもワイヤーで跳ばそう時代ですかね。

 

日本だと、ドニー・イェンの元で学んだ谷垣健治氏がこのアクションでは随一ではある。ただ、2020年代になってまでそれでは、ちょっと古いんですね。

リーチ、武器の特性、高低差。そういうものを生かしつつ、生々しく見せる。JAC(ジャパンアクションクラブ)回帰的な流れになってきているのかな? これは海外、中国語圏でもそうかな、と感じてはおります。

ちょっともたもたしているとか。トロいとか。そういう感想も見かけますが、意図的に生々しく痛々しいアクションにしているんじゃないかと思います。これぞ、今の流行という気がしました。

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この場面は、武器特性が出ています。

刀が折れて光秀が焦っておりますが、これもリアルです。刀って、結構扱いが難しいんですよね。折れやすいことは確かでして。

リーチからすると槍が勝る。
三国志演義』にせよ『水滸伝』にせよ、長柄武器が多い。後者は打撃系の武器・狼牙棒あたりも多い。戦国武将でも、最上義光あたりは打撃武器を振り回しておりましたっけ。

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じゃあなんで刀を持ちたがるのか?

名誉や心情的なものもあるし、斬首に必要なのですね。世界的に見ても、あの重量で斬首ができる武器ってそうそうない。

近接戦闘では異常性を感じるほど強くはある。倭寇と戦った明軍、来日した外国人も怯えていたほどではあるのですけれども。

「日本人は全員処刑人ってことでいいんじゃね……」

そう絶望したスペイン人もいたほどでして。

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そんな光秀を救ったのは、崖の上からふってきた石つぶてでした。
直後に菊丸が救いにきます。

誰が投げたのか? これが明らかにならないところが、本作の奥深さだ。

「あのつぶてに助けられた。何者だ?」

「どうしました?」

「私を助けてくれた者がいる。一人や二人ではない。急ごう」

ここで誰か明かさないところが、超絶技巧だとは思う。人間は答えを知りたいもの。

底が浅いドラマならどうするか? 信長あたりですね。そうしたらネットニュースも光る。神回だ! すごい伏線!
でもそれでよいのか? 本作はその先を行くとみた。

二年連続で知略をどれだけ下げられるかチャレンジされたあとで、これですからね。不眠になるし、時間も手間も、調べ物も、はっきり言って比較にもならないほどですよ。まったく、策士ってもんは怖いな!

 

利政もうれしい、信秀のこと

カンタンなお仕事どころか、死にかけた任務も終わりまして。駒は、美濃に戻った菊丸を前にして文句をきっちり言います。

東庵先生もどこかに行って、誰も教えてくれない。

そう不満げな駒に、内緒だと言いつつ菊丸は東庵に会うため一緒に尾張に来るよう言われたと明かします。

東庵は双六をしたいのだと納得する駒。以前も大負けしたとか。

尾張でどうして双六ブームなのか?
経済のせいかもしれません。リッチなマネーに浮かれた民が、ギャンブルしちゃうのよ。殿までアレだもんね。まぁ、人心退廃ってことかもしれませんけど。

真面目で、帰蝶にも双六で勝てない。そんな光秀は、利政に出張報告しております。

・矢の根が取りきれておらず、体内に留まっている

・そして毒が回っている

・そのせいで発熱している

・いつ倒れてもおかしくない、既に手遅れ、重篤

そう聞かされ、利政は流石名医だと喜んでいます。十貫分の働きだとホックホク。

これは楽しい報告だ。即死よりもある意味タチが悪い。判断力低下した当主が、次の世代まで残るような愚行をすれば言うことなし!

ウェーイ、利政、はしゃぐ!
利政は怖いだのなんだの言われますが、浮かれるところは可愛げがありますよね。

信秀には痛い目に遭わされたが、今度はやり返すとワクワクしております。戦国大名って、本当にエンジョイライフしてますね! いやいやいや……。

光秀は、他人の不幸でメシがうまくなりそうな主君に嫌気をにじませつつ、駒の安否を確認します。東庵と娘も好きにしてよいと確認して、ホッとしております。

ここで利政は、常在寺の日運と明朝、鉄砲の話をしたいと言い出すのでした。

 

聖人君子とは

ひとまず光秀は、駒の元へ。
薬草調合はおいて、話を聞いて欲しいと切り出します。

もうここにいなくてもよい、いつでも京都に戻れる。そう伝えるのです。

「いやー、よかった。安心しました」

「十兵衛殿は、私が京へ戻るのがそんなに嬉しいのですか?」

「ん?」

うーん、これぞハセヒロさんの本領発揮だな。なんだこの、日本一の「ん?」は!

駒はムッとしている。

さみしい。恋心のようでいて、そうでないような。ただ、光秀のそばにいたい。そういう思いが満ち溢れていると、こちらには伝わってくるのに!

光秀は、駒殿は京都に戻りたいのではないかと、キョトンとしています。嫌味がない。どういう演技プランですか。嫌味が、ない! 光秀め……。

戻りたいけど、よかったと言われるとさみしい。そう訴える駒。そうですよ、帰蝶は帰って寂しくなると惜しんでいたでしょ。

「それは……」

光秀は困惑する。駒は言い切ります。

「私、東庵先生がお帰りにならないし、ここにます。京に帰るのは伸ばしますから!」

「ん?」

光秀、わかってない。

光秀って古典的な英雄像ではありますね。英雄像っていろいろありますけれども、「英雄色を好む」というのは、実はそういうものでもありません。

むしろ、どう考えてもエロいシチュエーションでも動じないとか。美女を「誘惑にはかからんぞ!」と斬り捨てるとか。

そうすると、読者はこうなる。

「すげえ! 俺みたいな凡人なら絶対エロいことするけど、彼はそうしない、すげえ!!」

あの関羽には、誘惑してくる貂蟬を斬り殺すフィクションがあったそうです。
三国志演義』ですらカットした設定ですが、これがその典型ですね。

 

光秀は据え膳を食わぬ男。気付くことすらない男。そういう人物像とみた。

直江兼続にせよ、黒田官兵衛にせよ。
側室がいない=愛妻家という甘っちょろさゆえ大河になったなんて邪推もあった。

これも力関係もありまして、直江兼続の場合、お船の方が目上の家ですから、側室持てなかったとは思いますけれども。本作はこの点、光秀が極めて真面目だからそうなるという着地点にするとみた。

でも、現代からすると不思議な設定に思えるかもしれない。

だってそこはハセヒロさんですよ?
彼がヒロインに「おいで」と誘いをかけるだけでニュースになったこともある。昨年の朝ドラですね。

そういう艶になればいくらでも限界突破できる役者を、萌えにいかずにストイックにする。それなのに、周囲は光秀に魅了されて老若男女メロメロになるという。

本作の光秀は本当に、古典的で、意欲的で、挑発的で、難易度が高いと思う。

けれども、それこそがハセヒロさんにぴったりな理由でもある。賢い人には、賢い脚本が似合う。プレッシャーをかければかけるほど、彼は輝くのでしょう。

すごいな。本作の光秀はすごい。
見れば即座に魅力的だとわかるのに、その深淵は毎回掘り下げられるばかりだ。

 

本能寺で鉄砲を作っている

そして光秀は、利政と日運の話を聞くことに……。

京都のは本能寺という寺がある。そこで、種子島の末寺を通じて、密かに鉄砲を作らせているのだとか。

本作はすごい。織田信長がなぜ本能寺に宿泊したか? その理由を今から入れてくる。

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光秀も素晴らしいのですけれども、まだ登場すらしていない信長の影も本作からは感じる。

公式サイトは、五行説で光秀を司る青中心ではあります。けれども、メインビジュアルは黄が背景。黄は信長を司る色だとか。信秀の死が近いとされたからには、その嫡男の影だって感じる。

東庵の背中には、陰を示す月とウサギがいる。

じゃあ陽はどこに?

光秀は心を動かす。じゃあ信長は?

チラッと、信長を見せてくれませんか。ずーっと、最初から、私はそう言いたい。けれどもせいぜい予告で見る程度。

どうしてなのか?
それこそが本作の策そのものでしょう。影はあるのに、実態はない。そうなると、待ち望む心がどんどん育ってゆく。

朝ドラでも同じ策がありました。
視聴者が一目でいいから見たいと思うある人物のことを、セリフや設定が語りつつ、出てこない。

こんな策をやられて、演じる側はきついとは思う。それでもやる本作がもうたまらないものがあります。

信長の影はまだ早いか。

光秀は疑念を抱きます。そんな大量生産をしている理由とは?

後ろにいるのは、将軍家だそうです。

幕府の主だった者が鉄砲を見て、弓矢にかわるおそるべき兵器だと確信したのだとか。

これも気になる。光秀が会った三淵藤英は、鉄砲採用に消極的でしたね。

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この時点で、足利将軍家には誰かがいるとわかる。

光秀はまた気になってくる。あんな難しいものを誰が作っているのか。そう尋ねても、日運はわかりかねると答えます。

光秀は興味津々の顔になります。本作のすごいところは、挙げていけばきりがないけれども。集中度がわかるところです。光秀、スイッチ入りましたね。

このあと、光秀が明智荘で鉄砲を撃つ場面が入ります。

今度は当たる!
藤田伝吾も褒めます。

光秀は鉄砲を持ち上げ、しげしげと眺めます。

「よし!」

そう言い切る光秀は、何かが違うのです。

彼は集中し、鉄砲への関心を高めました。集中すれば、実力はより発揮できる。その逆もある。そう明瞭に示す本作は、しみじみとおそろしいと思います。

そのニュアンスを伝えるスタッフにも、役者にも、敬意しかありません。

 

MVP:望月東庵

なんでオリキャラの医者ごときに、堺正章さんなの? どうせこういうオリキャラなんて、歴史に興味ない女、ファミリー向けだろ?

そう思った視聴者を罠にはめる。そんな彼なのです。

本作の根底には陰陽五行がある。
月が名前に入っている時点で、彼は「陰」の象徴なのでしょう。

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陰キャなのかな?
そういうしょうもない話じゃないですよ。

「陰」とは、駒や菊丸でもある。民衆のことでしょう。時代を作るのは、英雄だけではなく(「雄」は陽だ)、民衆でもある。そういうことです。

実際に菊丸は策略を理解し、重大な役割を果たした。

中国古典への造詣が深い本作です。

それを踏まえていると推察した要素をあげます。

「廟堂」と「江湖」です。

廟堂の高きに居りては、則ち其の民を憂い、江湖の遠きに処りては、則ち其の君を憂う。(范仲淹『岳陽摟記』)

高位の為政者になっても、民衆のことは忘れないで思う。江湖の民衆に紛れていても、都にいる為政者のことを憂う。これぞ、あるべき道である。

大名のような為政者。

東庵のような民衆。

両者がいてこそこの世界だ。そういうことです。

オープニングでも、この廟堂と江湖は示されています。民衆が座っている姿が映されているのです。

 

総評

毎週、ここまで見てきて、なんでこんな難解なものを作れるのかとゲラゲラ笑いそうになる。
いろいろ研究したはずです。戦国史だけではなく、日本史以外のことも。なんだかおそろしいことにNHKは踏み込んだものです。

今回は「用間篇」だと、しみじみ思いました。
まずは情報を集めないと話にならない。で、NHKはそこがまさに強みではある。

Eテレもある。レンジは広い。人間の心の動きに関するソースを手に入れる機会はありましたもんね? そういうNHKの強みそのものをフル活用してきたとは、朝ドラでも感じていました。

信秀と東庵のやりとりは、もう完全に情報戦でおもしろくって仕方ない。

血が流れないような殺し合いそのもので、興奮するしかない。つくづくビジネスに役立ちそなドラマですね。

本能寺が出たとか。
竹千代かわいいとか。

そのへんは置いておき、個人的にゾクゾクするのは、不在でありながら影だけ見える人物と要素です。

信長の姿がおぼろげに見えてくる。

日本史の本はさておき、本作の信長はきっとこうで、染谷将太さんはこうするだろうと想像する。それだけで時間が無限に持っていかれそうで。

こういう要素を溜め込むあたりに、本作の革新性を感じます。

そのうえで、あとはどうでもいいおまけタイムなんですけどね。

 

補足:戦国武将思考を学ぶと……

私は普段、誰かと大河ドラマと朝ドラの話はしません。

もしも話題を振られても、見ていないフリをして黙々と一方的に聞いているだけとします。歴史のことは教科書で読んで忘れたという設定。それが一番平和です。

冷静に考えて戦国武将は危険です。

たいていの人が他愛ない話だと思って話題にするものですが、本作なら、そう……斎藤利政、松永久秀、織田信長あたりですかね。『真田丸』の真田昌幸もか。

この手のタイプの人が周囲からどんだけ嫌われてきたか。当時ですらそうでした。


梟雄
第六天魔王
表裏比興

※表裏比興被害者の会代表・室賀正武さん

戦国時代ですらそれなのに、現代だったら?
職場でも家庭でもキツい目にあい、飲み会にも呼ばれなくなり、SNSもいつのまにか鍵をかけることになっているかもしれません。やめとけ、真似すんなよ。

そう……戦国武将じみた考え方とは?

黄金の稲穂をみたとき、
「ああ、美しい実りの秋……」
と、うっとりすることじゃない。

「ここに放火したら、きっと相手は困るよなあ!」
そう考えること。

こんな奴と一緒にご飯食べたくないでしょ?
食事中ずーっと「結婚式は謀殺に最高でござってな!」とかペラペラ喋ってんだもん。

※うるさいわ!

でも……そうすることは楽しいことでもあるんだな。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】
麒麟がくる /公式サイト

 



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